「エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏」

P.G.ウッドハウス「エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏」国書刊行会

いつも楽しいウッドハウスの短編集。
主人公がエッグ氏、ビーン氏、クランペット氏の3人というわけではなく、これは事件の起きるクラブに出入りして茶々を入れてくる~まわりの人々のこと。
頭の格好をたとえたところから、人を指す言葉になったのだそうです。
当時の紳士達の空気を伝える言葉なんでしょうね~。

主人公は、執事のジーヴスではなくて、ユークリッジやビンゴ。
いつもお金がないユークリッジ。
女流作家で金持ちのおばさんの機嫌がいいときだけはその邸宅に住み込んで、与えられた高価な服を着込んでいるのですが、遅かれ早かれ~へまをして追い出される羽目になるのです。
小金を手にしようと必死でひねり出すアイデアがおかしい。
ウッドハウスの腐れ縁の友達がモデルというのも~服のサイズが同じなので付き合いが深くなったとはまた、何だか、おかしい。

愛妻の監視を抜け出して賭け事をしようと~ひそかな情熱を燃やすビンゴ。
まだ新婚で、愛し合っている二人なのですが、賭け事が嫌いな妻と、どうしても妻の信頼は失いたくない夫。
身も細る思いをしながら、いつもギリギリで何とかごまかしおおせる~大笑いの短編集です。

巻末の解説も詳しく、モデルになったクラブの様子や、当時そこに通っていた人物のエピソードなども楽しめました。

「ジーヴスと朝のよろこび」

P.G.ウッドハウス「ジーヴスと朝のよろこび」国書刊行会

ウッドハウスコレクション7冊目、2007年3月発行。
お気楽な紳士バーティと有能な執事ジーヴスの名コンビぶりが楽しい。

おそるべきアガサ伯母さんと再婚したウォープルスドン卿ことパーシーおじさんの住む村へ、いやいや訪れる羽目になったバーティ。
友人で作家のボコと、伯父が後見するノビーとの恋愛を応援するためだったが、じつはジーヴスの好きな釣りの穴場があるために、断り切れない展開になっていたりして。

伯父の娘フローレンスは、かってバーティがうっかり婚約した仲だが~何とか逃げ出したという経緯があり、よりを戻されそうな危機が迫る…?
横顔が麗しいフローレンス、じつは小難しい本を読んでは教養を高めている女性で、まったくバーティには合わないのですね。
その弟はボーイスカウトにはまっていて、結果は度し難いいたずら小僧になっているのでした、これがまた。
誤解が誤解を呼ぶ大笑いの展開。

1947年発行の作品で、ドイツ抑留中に書かれた物。
インタビューに答えたのが英本国から誤解を受け、強く非難されて、渡米したんですね。
いきさつは痛ましいですが、後には名誉を回復しています。
作品には力があり、陰りがないですね。

「ブランディングズ城の夏の稲妻」

ウッドハウス「ブランディングズ城の夏の稲妻」国書刊行会

2007年9月発行。原著は1929年。
ウッドハウス・コレクションで、ジーヴス物はもう8冊も出したんですね。
4冊ぐらい読んだのかなあ…
これはウッドハウス・スペシャルとして出始めた2冊目。

第9代エムズワース伯爵クラレンス卿は、気の良いボーっとしたお人柄。
小さな脳みそは豚やカボチャを育てることでいっぱい。中でも受賞した豚のエンプレス・オブ・ブランディングズが何よりの誇り。
ブランディングズ城には今日も若者達が集い、恋模様が行き違います。

姪のミリセントと甥のロニーを結びつけようと~卿の妹でうるさ型のレディ・コンスタンスは画策しているのでしたが。
ミリセントに恋する秘書のヒューゴ、コーラスガールのスーに恋する甥のロニーの計画が行き違って、二転三転します。
騒動の渦中で、卿の最愛の豚エムプレスが行方不明に!?

一方、卿の弟ギャリーは回想録を執筆中。
過去のとんでもない行状が書かれそうで隣人が気を揉み、レディ・コンスタンスも社交界で立場がなくなるのではと恐れています。
執事も出てきますが、ジーヴスほど超人的でないのがみそなのかも。
復帰を目指す元秘書バクスター、私立探偵ピルビームが入り乱れ?大笑いの一幕。
このシリーズも好きですねえ~楽しく読めました!

巻末に作者が見知っていたらしい~偉大な豚エンプレスと同じ種類の豚の写真があります。
耳がたれている大きな黒豚で、イギリスではもう黒豚は廃れているらしく、黒豚が一番人気があるのは日本だとか。そういえば、黒豚のシューマイとかありますよね。

「でかした、ジーヴス!」

P・G・ウッドハウス「でかした、ジーヴス」国書刊行会

ジーヴスものは楽しい!いつものパターンでも吹き出します。
人は良いけど怠け者でお気楽な若主人バーティと、何でも解決する有能な執事ジーヴスは名コンビ。
お気楽な生活を脅かす自分の縁談や仕事口の脅威を撃退しつつ~身近な友達の恋は取り持ってやろうとします。

国書刊行会のウッドハウスコレクションの5冊目。06年7月発行。
ウッドハウスの作品は文芸春秋からも出ているので、どれを読んだのか、だんだんわからなくなりつつあります~!?

原作は1930年。
いぜんは世紀初頭ぐらいの古き良き時代のイメージで読んでましたが、もうクララ・ボウにグレタ・ガルボが少年の憧れという時代なんですね。
すさまじい女性が車を飛ばしたりしているわけです。
おっかない親戚が多いバーティですが、一番理解のあるダリアおばさんの出番が多いので、今回はそんなに怖くないですね。

作品中に投影があると言われる義理の娘のあとがきやウッドハウスの結婚のいきさつなども興味深いです。
結婚した相手は当時としては奔放というのか?一人で出かけちゃうような強い奥さんだったらしいですが、案外上手く行っていたのは外の世界から夫を守っていたんだとか。
奥さんの連れ子の娘さんはいきいきとした魅力のある人で、仲が良かったんですね~。
ウッドハウスは幸せに生きていてくれて良かった!と思う作家さんですねconfident

「エムズワース卿の受難録」

P.G.ウッドハウス「エムズワース卿の受難録」文芸春秋

世界中にファンがいるというユーモア小説の大家ウッドハウス、代表作はジーヴス物ですが、その次に人気があるのがこのエムズワース卿物だとか。
ジーヴス物ほどではないのだろうと思ったら、これが何とも面白いんですねえ!
訳文が生き生きしていて素晴らしいんです~水を得た魚のように楽しみながら訳されたんじゃないかな?

主人公は第9代エムズワース伯爵クラレンス・スリープウッド。
脳みそは綿菓子のようで性格はおっとり、願いは美しいブランディングス城でのんびり平和に暮らすこと。
末っ子のフレディはトラブルメーカーですが、ほかの子供達は巣立ち、奥方は既になく、最強の妹レディ・コンスタンスに脅されながら貴族の義務を果たそうとしています。…というか、何とか逃げようとするのをコンスタンスにとっつかまるといった方が良いかな。
最大の関心事は品評会に出すカボチャや見事な豚のことで、弱いおつむはほとんどいっぱい、コンスタンスの小言も耳に入りません。美人のコンスタンスもアガサ伯母さんほどは怖くなくて、なかなか意外性があって面白いです。
「南瓜が人質」や「豚よほほほぉーい」などで、頑固者の庭師に気を遣う有様も面白おかしく語られます。
フレディはバーティにちょっと似ていますが、アメリカの富豪の娘と結婚後はセールスに才能を発揮するという展開に。この関係で老伯爵が生まれて初めてセールスを試みるエピソードも。
若い者達の結婚騒動はジーヴス物でお馴染みの調子、執事も出てきますが、ジーヴスほどは目立ちません。
妙に利口すぎるかっての秘書が甥の家庭教師になって舞い戻ったのを城から追い出そうという「ブランディングス城に吹き荒れる無法の嵐」も傑作でした~。

推理小説ではありませんが、古典的推理小説に影響を与えたことが巻末にまとめられていますので、カテゴリに「ミステリ」も加えました。
歴史小説として書かれた作品でもないのですが、イギリス貴族の伝統的な暮らしがうかがえるので「歴史もの」というカテゴリも。
厳密には「書籍・雑誌」というカテゴリしか当てはまらなかったので、ついに「海外小説」というカテゴリも新設しちゃいました。国内小説は少ないので前に作ってあったんですけどね~。

「それゆけ、ジーヴス」

P・G・ウッドハウス「それゆけ、ジーヴス」国書刊行会

国書刊行会のジーヴスもの、3冊目。
万能執事ジーヴスとお気楽な若主人バーティー・ウースターのシリーズ短編集。
他で出しているジーヴズものの1冊目とたぶん2作だぶっているので、ちょっと既視感がありましたが~
まだゼンゼン飽きてないので、微妙な翻訳の違いを(正確に覚えているわけじゃありませんけど)味わいつつ、楽しい時間を過ごしました。

おそるべきグロソップ嬢そっくりの従姉妹やサー・ロデリックなど敵役?もにぎやかに登場~。
おっかない親戚はバーティー自ら「この世のバカの面倒を見る天の配剤」と認めているのが笑えます。
いやこの親戚も堅物なりにおバカさんなんですよね~。
「刑の代替はこれを認めない」で、友人の恐るべき伯母さまへ(もちろんジーヴスの勧めで)直談判に行った顛末が面白い。
「フレディーの仲直り大作戦」もチャーミングなお話。
最後の「バーティー考えを改める」はジーヴス視点で、バーティーへの愛情が感じられて微笑ましい作品。
好評なので続きも出ることになったそうです。

発表当時は同時代の物として書かれていたと思いますが、歴史好きにも面白いと思いますので~カテゴリーに「歴史もの」も加えました。今となっては百年も前の話ですね。

「比類なきジーヴス」の世界

P.G.ウッドハウス「比類なきジーヴス」国書刊行会(森村たまき・訳)

英米では知識人にファンが多いという噂のジーヴス本、ついに本邦でも刊行というわけで、読んでみました。

ジーヴスというのは執事の名前で、これが何でも解決する完璧なスーパー執事。
常に丁重で礼儀正しく、控えめでありながら~やる時ゃやる!?

バーティという主人の方の視点から語られます。
バーティはお気楽な独身の紳士で、いたって気は良いが特に能はなく、なぜか巻き込まれ体質。
友達の恋愛沙汰に振り回されたり、難題を押しつけてくる叔母をごまかすのにあたふたとしているのです。

名コンビの二人ですが、たまに微妙な意地の張り合いが起きるのは、ジーヴスの良識には耐え難い流行の服や小物をバーティが着たがる時…
些細な事に火花を散らすところもユーモラスで楽しいです。

それと、余りにも有能なジーヴスばかりを皆が高く評価して頼ってきて、バーティがないがしろにされていると感じる時でしょうか。
ジーヴスを必要としているバーティをジーヴスは内心可愛がっているというか、ある意味高く評価しているんじゃないでしょうかね?

2冊目の「よしきた、ジーヴス」も読みました。こちらは長編。

選りすぐられた物だから楽しみにしていましたが、短編の楽しさが長編になるとどうなるのであろうか…?と、余りイメージはわかなかったのですが。
脇役も大活躍で、もう可笑しさの連鎖が大がかりになっていって…
良い長編になっていました!(^^)

ウッドハウスは1902年から作家活動を始めた大変多作なユーモア小説家。
75年にサーの称号を受けて亡くなったということです。

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