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「No.1レディース探偵社、本日開業」

アレグザンダー・マコール・スミス「No.1レディース探偵社、本日開業ーミス・ラモツエの事件簿<1>

アフリカの国ボツワナの女探偵もの。
作者はスコットランド人ですが、ジンバブエの生まれとか。
マ・ラモツエは、人呼んでサバンナのミス・マープル。
(マというのは女性への尊称)
探偵社を開いた話から、父の人生、主人公の育ちへと戻り、また事件物へと進む短編連作。

プレシャス・ラモツエは愛されて育った一人娘でした。
母を早くなくしましたが、父の従妹に可愛がられます。
恋をした相手ノテと結婚したのですが、これはあまりたちが良くない相手で、じきに去られ、父の元へ戻ることに。
父の死後、残してくれた牛を売って、首都で探偵社を開くのです。
女性に探偵が出来るかという疑問を持たれますが、アガサ・クリスティを知らないのかと問い返すのでした。

機転が利き、押し出しも立派な、アフリカ女性の伝統的体型の34歳。
秘書の女性マ・マクチとも名コンビになっていきます。
行方不明の夫を捜して、意外な顛末を証明したり。
夫の浮気を確認してやったら、かえって依頼人にくってかかられたり。
小型の白いバンを独りで乗り回してどこへでも行き、時には鰐やコブラとも渡り合う。
車の修理工場をやっている男性マテコニとは親友で、ついにプロポーズもされますが…?

ボツワナというのは、アフリカではかなり平和なほうの国らしいですね。
独特なテンポ、住んでいる家や食べ物、知らない土地の雰囲気が伝わってきて、新鮮で面白いです。
呪術の話なども出てきます。一般の人は関わりにはならないようなものではあるのですが。
哀切な少年の話が解決して、ほっとしました。

作者は1948年生まれ。
アフリカ、イギリスの大学で学んだ後、スコットランドで教授に。
一時アフリカに戻り、ボツワナで最初のロー・スクール設立に尽力。ユネスコの議長などを務める傍ら、子供向けの本から学術書まで幅広く活動。
本書は1998年発行。
口コミで火がつき、のちにブッカー賞の審査員特別賞を受賞。

「友だち、恋人、チョコレート」

アレグザンダー・マコール・スミス「友だち、恋人、チョコレート」創元推理文庫

哲学誌の編集長イザベルの素人探偵シリーズ2作目。
タイトルがオシャレですね。
デリカテッセンを経営する姪のキャットが、友達が結婚するのでイタリアに行く間、代わりに店に入ってくれるかと聞きに来ます。
イザベルの仕事は融通がきくし、キャットの店は前にも手伝ったことがあるので、すぐ承知するのでした。

そこで出会った男性イアンに、意外な話を打ち明けられます。
心臓移植を受けて以来、知らない男の顔が頭に浮かんで、とても苦しい気がするのだという。
内臓に記憶はあるのか?
まさかドナーを殺した犯人の顔では‥?!
放っておけないものを感じたイザベルは…
ドナーを捜し当てて、訪ねると、その身近にいた男性の顔が?!

ジェイミーは心配して関わり過ぎるのを反対しますが、そういうイザベルのことが好きでもあるのです。
キャットの元恋人のジェイミーはバスーン奏者で、今ではイザベルの親友に近い~友達以上恋人未満の存在。
15歳も下なので恋愛対象にはならないと自戒しつつ、ジェイミーに恋人が出来た様子に動揺するイザベルでしたが‥

キャットに接近する男性トマッソの意外な展開も。
キャットには年齢が上すぎると聞いて、自分とあまり違わない彼を見て考え込むイザベル。
トマッソの方もイタリア男らしく慇懃にイザベルに誘いをかけるのですが、実は女性としては見ていないらしい?微妙な駆け引き。
トマッソがスコットランドに来た用件には、ビックリ。

表紙の狐は、エディンバラの街中にも出没するそうで~イザベルの家の庭にも現れるのにミスター・フォックスとあだ名を付け、ちょっと鳥の骨など置いてやっているのです。
目が合うと、敵ではないなと認知して歩み去っていく。

問題は刑事事件まではいかない微妙なところだけど、日常の謎というには大きいかな。
知的できまじめで親切な~ユニークな大人の女性が、やや不器用な行動を取りながら、いろいろなことに真摯に考えを巡らせていく様子を描いた、ゆとりある小説。
チョコレートについての考察も微笑ましい。

「日曜哲学クラブ」

アレグザンダー・マコール・スミス「日曜哲学クラブ」創元推理文庫

スコットランドの作家による、古都エディンバラが舞台のコージー・ミステリ。
1作目。

哲学ジャーナルの編集者という~教養ある40代の女性、イザベル・ダルハウジーが主人公。
日曜哲学クラブというのは、彼女が主催しているクラブ。
といっても~実際には日曜に哲学する気には誰もなれないために活動は行っていない、読者のあなたが会員ですよ、という。

劇場へ行って友人と話しているときに、上の席から青年が転落。
驚愕した彼の顔を目撃し、自分は彼が最後に見た人物かと思うと放っておけなくなるのです。
探偵としては素人だけど、知的で考え深く、好奇心も強い。いささか考え過ぎかも知れませんけどね。

今は一人暮らしのイザベルですが~若い頃にカリスマ性のあるアイルランド人学者と激しい恋をした経験があります。相手が浮気性だったために離婚という結末に。
近くで喫茶店を経営している姪のキャットが、最愛の存在です。
ただキャットの今の恋人トビーは気に入らないので、その気持ちを隠しきれずに衝突することも。

キャットの別れた恋人のジェイミーのほうがずっとイザベルとは気が合い、時には一緒に演奏したりもしています。
キャットが復縁すればいいのにと思いつつ、実は自分が惹かれている面もあるような。
紳士的で献身的なジェイミーが、キャットにとってはセクシーじゃないという考察もあったりして。
家政婦のグレースも、強い味方。
実際的で古風で頑固なグレースは、イザベルの付き合う仲間達とは、全く違う~エディンバラの別な面を代表しているとか。

コージー系というか~
ドロシー・セイヤーズみたいな教養系?
知的とはいえ超人的なわけではなく、日常を静かに楽しんでいる女性。
時には脅えたり迷ったりもしながらも~融通を利かせて行動を選んでいきます。
味わいのある結末。
へたくそな演奏のメンバーが集まっているテリブル・オーケストラが出てくるシーンがおかしいんですが、これは実在して、作者も参加しているのだそうですよ。

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