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おすすめ本

「黄昏の彼女たち」

サラ・ウォーターズ「黄昏の彼女たち」創元推理文庫

サラ・ウォーターズの新作ときては、読まないわけにいかない(感想書くのは遅くなりましたが)
翻訳されないわけではなく、寡作なんですね。

第一次大戦後の1922年。
戦争で父親と兄たちを喪い、老いた母と二人で暮らすフランシス。
屋敷を維持するのも難しく、下働きも雇えないので自ら労働する日々でした。
やむなく下宿人を置くことにして、若夫婦がやってきます。

レナードとリリーの夫妻。
ちょっと嫌味なところもあるけど明るいまあ普通の夫。
綺麗で繊細なところのあるリリー。
初めて家に他人を入れてギクシャクする描写も綿密で、これがいつしか思いがけない恋へと転化していきます。

フランシスの母親が生活のためにも娘の結婚を望むのは、ある意味では当然のこと。
しかし、フランシスにとっては重過ぎる難題。
時代もあり、周りにも理解は求められない閉塞状況。
それでも、惹かれあい‥

同性しか恋愛対象になれないというのは本当は理解しきれないものかも、と思っていましたが。
‥もしかして、恋に男女の区別はない!?
情熱的な恋愛とそうでもない恋愛があるだけかも‥という気がしてきました。
気恥ずかしいぐらい甘い恋愛の揺れ動きと盛り上がり。
ところが‥!

ミステリというより文学といったほうがいいかもしれないウォーターズ作品ですが、事件は起こります!
捜査も裁判も最近のものとは違う雰囲気で、ちょっと距離がある描写のなか、窮地に立つ主人公たちの不安、緊張、悲しみ、思いがけない面‥
救いはないでもないのですが~胸が締め付けられるようでした。
綿密な描写が巧みなだけにね☆

追記:
なぜか改行が反映されない変な現象が起きています。
書き直してみたけど、変わらない‥な、なぜ?
もしかしたら、そのうち、いつの間にか直ってたりするかも‥?

「エアーズ家の没落」

サラ・ウォーターズ「エアーズ家の没落」創元推理文庫

サラ・ウォーターズの新作。
「半身」「茨の城」「夜愁」に続く長篇4作目になります。

英国のウォーリックシャー地方で、200年以上の歴史を誇るハンドレッズ領主館。
近在で診療所を営む医師ファラデーは、友人デイヴィッドの代診で、館へ往診に出向くことになりました。
じつは母親がメイドとして館に勤めていたことがあり、30年前に一度、園遊会の時にこっそり入ってみた思い出があったのです。
館がすっかり寂れている有様に、驚愕することに。

家族は、先代の奥方エアーズ夫人と娘キャロラインと息子ロデリック。
奥方は美しかった名残をとどめて品のある女性ですが、昔を懐かしむばかり。
館の当主となった息子は責任を感じて奮闘していますが、経済的な危機は土地を切り売りしても追いつかない。
見るからに具合が悪そうで、戦場で顔にも火傷を負い、足を引きずる状態。
娘のキャロラインはしっかりした様子でしたが、身分に似合わぬ家事もしていました。
美人とはいえず、あまりの貧しさに将来の道は閉ざされそうだったのです。

部屋は一部しか使っておらず、住み込みの女中はまだ少女のベティが一人いるだけ。
そして、次々に怪しい出来事が起こってくる‥?
文学的な雰囲気ですが、内容はゴシックロマンとミステリとホラーとの融合?
なめらかな文章で、複雑な話もわかりにくくはありません。
ダークで謎の多い展開、精緻な描写で、ぐいぐい引きこまれます。

ロデリックが心労のあまり館を離れることに。
残されたエアーズ夫人と令嬢キャロラインを放ってはおけない気持ちのファラデー医師は、ますます頼りにされます。
令嬢キャロラインは地味な外見だが芯は強くいきいきとして、ファラデーとは身分も違うのですが、しだいに心が通い合うように。
不器用な二人の接近ぶりと行き違いがありありと描かれてまた、見事です。

館の壁に妙な文字が浮かび出て、それを見た夫人は何か思う所がある様子、だんだんと閉じこもっていきます。
幼いときに死んだ最初の子スーザンを夫人は誰よりも愛していたのでした。
スーザンの霊?それとも、夫人の思いなのか、何者かの作為なのか、無意識の生き霊?館にこもる怨念なのか?
あくまで科学的に捕らえようとするファラデーですが…?

どんどん崩壊していく館のものすごさ。
ホラー好きな人を満足させる~じわじわと盛り上がる描写。
厚みのある設定でリアリティがあり、単なるホラーではありません。
何通りにも解釈が成り立ちそうで、どれも怖い…
ウォーターズはすごい!

「夜愁」

サラ・ウォーターズ「夜愁」東京創元社

第二次大戦前後のロンドンが舞台。
これまでとはかなり作風を変えて、文学の領域へ。
こんな風に書けるとは、驚きました。独特なムードがあり、登場人物の抱えた秘密と関わりを知っていくミステリ的な要素もあります。

空襲から生き残ったテラスハウスに住むケイは、今は孤独に過ごしている男装の麗人。
その建物に住む治療家を訪れる人の中に、美青年と老人という奇妙な取り合わせがありました。
青年ダンカンは窓を見上げて名も知らぬケイにほのかな好感を抱くが、彼には周囲の知らない過去があったのです。
一方、ダンカンの姉のヴィヴは不倫相手ととぎれがちな関係をいまだに続けていました。同僚のヘレンとは上手くいっているが、お互いに何か少し秘密があることを感じながら…
ヴィヴは父に絶縁されている弟の家を毎週訪ね、どうしてこんなことになったのかとふと思う…

1947年、44年、41年と3段階に遡っていく構成。
戦後間もない頃の平和だがまだどこか戸惑っているような時期、戦争末期の思い詰めた危機感と高揚、その前の時点でまだ皆がうら若いうちに物事が始まるきっかけ~という展開になるんですね。
数人の登場人物の運命が交錯する~意外な絡み具合が面白く、すっきり解決というのではないんですが、人生の中の一瞬のきらめきに美しさがあります。
ラストから逆に作品の冒頭へとふわぁっと意識が舞い戻り、恋する切なさと生きる哀しみがひたひたと胸に広がります。

歴史物が好評というのが嬉しかったデビュー作「半身」、少女2人が主人公のディケンズ風味のエンタテインメント大作「茨の城」を期待すると、ちょっと違うかな~。
これほど筆力があるとはゴージャスだなあ。どんどん難しい方面へ行かれたらちょっと寂しいけど…次はどんな手で行くのか??興味あり。

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