「彫刻家の娘」
トーベ・ヤンソン「彫刻家の娘」講談社
ムーミンの作者トーベ・ヤンソンが、子供時代のことを書いた自伝的作品。
父は著名な彫刻家、母も挿絵画家。
芸術的な環境だったんですねえ。
母方の祖父は牧師で、王様に説教したとか。
エデンの園のような祖父の庭で、従姉妹とイスラエルの民ごっこをしたり。
夏は、8分で一回りできる小さな島で、漁師小屋を借りて一家3人で暮らしていたという。
(そういえば、晩年もそこに住んでいたんじゃなかったかしら)
想像力豊かで、やんちゃで、好奇心溢れる女の子。
豊かな自然の中で、魔法に満ちた暮らしが何とも言えず、素敵です。
地元の少年と釣りに行ったり。
氷山の一つを自分の物と決めて、ついてくると感じたり。
泊まりに来たおばさんの、ちょっと変な物作りを見物したり。
火事が起きると、皆を起こして見に行く~父。
やたらにペットを飼う父の、猿や鴉に呼びかける甘ったるい声に怒りを感じたりする女の子。
猿のポポリーノはいたずらだけど父の親友なので仕方ないが、父のことを何とも思っていない羊にはうんざりとか。
カナリアが増えすぎたので、誰にでもあげると広告を出したところ、前に死んだり、いなくなったりしたカナリアの話をして泣くのを一人一人聞かされる羽目になったとか。
クリスマスの準備の思い出は素晴らしく、父と天井まで届く樅の木を選び、母はジンジャークッキーを作り、部屋中にキャンドルを灯す。
母は聖ルチアに扮して夜中に白い服を着て現れる、というのが彼の地の風習なんだそうです。
サンタだけじゃなくて、そういうのも素敵ですねえ。
1958年に父が亡くなり、その後10年たって発表した作品。
それまでは書けなかったのでしょう。
母は、スウェーデンで初めてガールスカウトを組織した女性だとか。
1970年に母が亡くなった後は、ムーミン谷のシリーズはやめたんですね。
創作の源が、何よりも家族にあったことをうかがわせます。
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