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おすすめ本

「見知らぬ場所」

ジュンパ・ラヒリ「見知らぬ場所」新潮社

かねて評価の高いインド系女性作家の三冊目の本です。
アメリカに住むインド系の家族の葛藤が幾つか描かれ、何とも鮮やかな風景に、胸にしみいるような人生の一こまが展開します。
感情の機微の描き方のうまいことったら~。

表題作は、シアトルで夫のアダムと息子のアカーシュと暮らすインド系の女性・ルーマと、その父の話。
母を亡くしてから父は仕事も辞め、次々にヨーロッパへ旅行に出かけるようになったのでした。見え隠れする女性の影…
口数が少ない父でしたが、来てみたら孫を可愛がり、意外なほど手もかからない。
父の視点からも描かれていて、互いに再発見する面もあるのですが…

母が叔父に寄せていた激しい慕情を後に知る「地獄/天国」
姉が不安げに弟を見守る失望と哀惜の歳月「よいところだけ」
ラヒリって、どういう頭の中身をしているんだろう…??

ラヒリのデビューは短編集「停電の夜に」
次は長篇「その名にちなんで」で、映画化もされました。
そしてこれは前半が短編、後半は連作形式「ヘーマとカウシク」と、組み合わせも凝っています。

幼なじみの少女へーマと初恋の少年カウシク。
ヘーマの地味な家庭にしばらく居座った金持ちの夫婦と息子でした。華やかに見えた少年の母は、じつは癌で死を迎えるためにボンベイから転居してきたのでした…
戦場カメラマンとなったカウシクとのイタリアでつかの間の再会。
命のきらめきと不思議さ、はかなさ。
実在するとしか思えないような細部の描写に手応えがあって、胸が締め付けられるようです。

「その名にちなんで」

ジュンパ・ラヒリ「その名にちなんで」新潮社

インド系美女のジュンパ・ラヒリ~デビュー二作目にして世界的な作家になりましたね。
映画化もされて、文庫も平積みになっています。

主人公はインド系2世の男の子。仮にゴーゴリと名付けられたのが、色々あって定着してしまう。そのいきさつもなかなか読ませます。
インドで見合いしアメリカで結婚生活を送る両親は生まれ育った故郷を重く感じ、2~3年ごとに長期帰国。子供達は学校から引き離されて戸惑うんですね。
ABCDという略語があり、「アメリカ生まれで混乱しているインド系アメリカ人」を指すとは…!
アメリカにいながらサリーを着続けてあくまでインド式に暮らす母親や親戚の古い習慣に反発しながら、自分なりの生き方を求めるゴーゴリ。
インド系というだけで目立つのに、説明に窮する妙な名前…まわりは本人ほど気にしてはいないのだが、要所々々で問題になってくるんですね。

ゴーゴリ本人は本来は穏やかな性格のようですが、憧れや反発で思い切った行動をします。
関わってくる女性達3人はなかなか個性的で鮮やか~映画にしたら視覚的にも面白そうです。
父としては思いを込めて名付けたゴーゴリという名前、ちょっと言葉が足りないのもいかにもありそう~誠実に生きた父親でした。
ゴーゴリは同じインド系アメリカ人の葛藤を抱えた女性と、分かり合えると思って結婚します。華やかな妻も国と世代に引き裂かれて、あがいてあがいていた女性でした。
日常を伝える細やかな描写がユーモラスなまでに生き生きとしていて、それぞれの人生の重みが何とも言えない味わい。
さすがです。

「停電の夜に」

ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」新潮社

デビュー短編集でO・ヘンリー賞だけでなくピューリッツァー賞受賞という快挙を成し遂げたのも納得。
老練の作家のような熟成した手触りと、若い女性の澄んだまなざしを感じる作品集です。

作者は67年ロンドン生まれ。両親ともベンガル生まれのインド人で、一家でアメリカに渡ります。
これがまた雰囲気のあるすごい美女なんです~インド系は美形が多いとは思うけど、それにしても。
99年にデビュー、日本でも翌年8月には新潮クレストブックスで発行されてます。当時から評判が高く、いつか読もう読もうと思っていたんですよ~。
今は文庫化されています。

少女時代の経験を思わせる「ビルサダさんが来たころ」では、外国の大学町で親しくなったおじさんを心配する女の子が描かれ、国際的な感覚や考え深さを身につけてきた状況が窺われます。
インド系というか実際にはおじさんはパキスタン人でかなり違うのですが、英米で他に同郷がいないとなれば、身を寄せ合うように暮らす感覚もあるのでしょうね。
両親がモデルと思われる「三番目で最後の大陸」も人間味溢れる筆致ですが、「停電の夜に」「病気の通訳」となると名人芸!

「停電の夜に」は子供を死産してから上手くいかなくなり倦怠期に入った若夫婦が、 停電が何夜か続くと知り、ロウソクをともして一つずつこれまで話したことのなかったことを話そうと言い合うというもの。
リアルな生活描写とある日一変した人生、言ってはいけない言葉…鮮やかで哀しい、何とも言えない一編です。

読んだのは9月前半、古代史にはまる前でした。
あまり時期が開きすぎると何なので~(^^;

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