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「運命の日」

デニス・ルヘイン「運命の日」

ルヘイン(またはレヘイン)の5年ぶりの長篇、力作です。
舞台は、第一次大戦末期のアメリカ。

ベーブ・ルースが若き日に遠征先で、黒人だけのチームのうまさに驚いて、無邪気に参加するシーンで始まります。
他の白人選手が加わってきて、最後は無理押しで勝つ後味の悪さ。想像を絶する差別がまかり通っていた時代なのでした。
ベーブ・ルースはこの後も折りに触れて登場し、印象的なシーンを作っています。

このときにいた黒人の一人ルーサー・ローレンスは、恋人と新興の街タルサに渡り、差別の少ない土地で成功しかけるのですが…
仲間のジェシーのごまかしがばれ、銃撃戦に巻き込まれてしまいます。

同じ頃、ボクシングの試合に出ていたのが、コグリン警部を父に持つ巡査ダニー。
こちらは白人、ハンサムで恵まれた育ちですが、うまくいかないことも抱えていました。
当時は巡査の待遇は悪く、物価急上昇にも対応しないままの安月給。
ダニーは、刑事昇進と引き替えに、潜入してボルシェビキやテロリストの活動を探るように命じられます。
ロシア革命の影響でそういった活動も活発になり、政府側が神経をとがらせている時代でもあったのですね。
同じアパートのイタリア人親子と付き合いが出来て、美しい娘のテッサと親密になりますが…

コグリン家は、たたき上げのしたたかな警部トマスが家長として君臨するアイルランド系の一家でした。
家政婦のノラは、道で凍えていたのを警部が拾って連れてきたアイルランド移民の女性。
長男ダニーと密かに愛し合うようになりましたが、故郷に夫があったと知って、ダニーは別れたのです。
父親よりも純粋なところのあるダニーの不器用な人柄がなかなか魅力的です。
次男コナーがその事実を知らないまま、ノラに惹かれていくのですが…

一方、黒人のルーサーはタルサからボストンに逃げ延びて、コグリン家に雇われ、ダニーともノラとも親しくなっていきますが、やはり過去に追いつかれることに。
人望あるダニーはあちこちで評価されるのですが、待遇改善を約束した意欲的な市警本部長が急死するという不運にあい、スト破りの部署にとばされて、板挟みに…
警官のストライキという前代未聞の状態で、ボストンの街は大荒れに荒れます。
大きな時代のうねりの中、必死にあがく人々の鮮烈な生き方と、熱い心の通い合いを描ききっています。 

1918~19年、インフルエンザが大流行して数多くの死者も出た激動の時期。
ボストンでこれほどの事件があったとは、知りませんでした。
2008年発行の重厚な意欲作。
すぐに映画化が決まったようです。
ちょっと日本の「警官の血」を思い起こさせるところもありますね。

「ミスティック・リバー」

デニス・ルヘイン「ミスティック・リバー」早川書房

レヘイン名義のは読んでいたのですが、突然ルヘインと表記の変わったこちらは読み逃していました。
映画化されたので、一番有名なんじゃないかと思います~。

レヘイン名義のパトリックとアンジーのシリーズはハードボイルド系で、事件はハードで次々に危機に見舞われる話なのですが、エンターテインメント性が強いもの。
犯罪多発地帯に育った幼馴染みの二人が彼ら流の正義感を貫いて、傷つきながらも、カッコ良く生きていく物語でした。
ルヘイン名義第一作のこちらはぐっとシリアスで、筆力と冷静なまなざしが光ります。

幼馴染みのショーン、ジミー、デイヴ。
同じ町でも中流家庭のショーンと、スラム街に住むジミーとデイヴには差がありました。その違いが決定的になりかけたある日、路上でケンカしている所に車から降り立った大人が3人を叱りつけ、デイヴだけを車に乗せて連れ去ります。呆然と見送る2人。
警官を装った誘拐で、デイヴはもう帰ってこないと皆が思い始めた4日後、自力で脱出して生還。何が起きたかは語られないものの明らかで、デイヴはいたたまれない思いをしながら成長し、残る二人もデイヴを助けられなかった傷に苦しむことになります。

25年後、ジミーは十代で犯罪者集団のリーダーだったのが足を洗って雑貨店主になっています。足を洗うきっかけになった最愛の娘が惨殺され、刑事になっていたショーンと、容疑者としてのデイヴと、3人の運命が交錯することに…

それまでは真面目に暮らしていた危険な男ジミーがどう動くか。
ジミーの妻のアナベスは、犯罪者ばかりの一家の中でたくましく育ったしっかりした女性。デイブの妻シレストとは従姉妹どうしで、最初は似た印象があるのですが、どんどん対照的になっていきます。
一見恵まれているように見えるショーンも実は妻に去られ、警官として接する人間の愚かさに失望しています。旅先から無言電話をかけてくる妻と一体どうなるのか…

一筋縄ではいかない彼らの人生の暗黒と思いもよらない運命の巡り合わせが描かれた重量級の作品です。
悪人といえどもそれぞれ個性が明確なのと、男性が女性を熱愛する所、暗いトーンの話でもどことなしに生気が溢れているのがこの作者らしいですね。
たった1、2行で重要なポイントに触れてある箇所が幾つもあるので、読みとばさないようにしないと…
映画でこれは伝わっているのかなあ?

ショーン・ペンが出たということは悪党のジミー!と大抵誰もが思うのではないかと。でもケヴィン・ベーコン?あれ、こっちがジミーかな?だって弱々しいデイヴじゃないでしょう。育ちの良さそうなティム・ロビンスはショーンでは…
と思ったら、ケヴィン・ベーコンがショーンでした。なるほど、警官だからこっちもありですね。デイブにはティム・ロビンスの内面的演技が必要だったのね~。

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