「ファイアーウォール」
ヘニング・マンケル「ファイアーウォール」創元推理文庫
スウェーデンの警察もの。
刑事クルト・ヴァランダーのシリーズ第8弾。
仕事は有能だけど、数年前に離婚し、世話がかかった父をなくし、恋人バイバには去られ、糖尿病を抱える50男ヴァランダー。
かっての親友ステンも、牧場を売って遠くへ行こうとしています。
娘のリンダとはうまく行っているが、遠くに住んでいて忙しい。
付き合う相手を求めたらどうだというリンダの勧めで、迷いつつも広告を出すことに。
19歳と14歳の少女がタクシー運転手を襲って金を奪い、怪我させたのがもとで死なせてしまう事件が起きます。
罪悪感がなくふてぶてしい二人の様子にショックを受ける大人たち。
ただ金が欲しかったというのは、嘘だと直感するクルトですが‥
14歳のエヴァが母親に何度も殴りかかるのをとめたクルトは、エヴァを殴ったところを写真に取られ、新聞に報道されてしまう。
母親はエヴァが殴ったことを否定。問題となったため署長に疑われ、クルトは苛立ちます。
19歳のソニャは署内から脱走してしまい、後に変電所で死体となって発見されることに。
自殺か他殺か? 事件は奇怪な様相に。
中年の男性ファルクがATMの前で倒れていたという事件も起きていました。
ファルクはITコンサルタントで、当初は心臓発作かと思われたが、不審な点があり、しかも遺体が盗まれてしまう。
ファルクの遺したコンピュータは異常に警備が厳重で、クルトらはハッカーの少年を頼ることになります。
コンピュータ犯罪がテロリズムに悪用されるという現代的なテーマ。
国際的なスケールになっていくと、作者の独壇場ともいうべきペースに。
アフリカに住んでいたこともあるマンケル。
今回はルアンダでの出来事が事件の背景に。
原著は1998年ですが、古さは感じません。
コンピュータに詳しかったら、やや古いのかな?
署内での問題も起こり、内憂外患といった趣だけど、娘のリンダが将来を決めたと報告してくる喜びも。
リンダ中心の作品も出るのかな?
2012年翻訳発行。
あと2作で完結だそうです。
その前にシリーズ外作品が発行されるとか。
それも楽しみ。
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