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おすすめ本

「ハンティング」

ベリンダ・バウアー「ハンティング」小学館文庫

三部作の完結編。
複雑な事件と、少年の成長を描ききって、読み応えがありました。

イングランド南西部の寒村シップコット村。
1年半前に連続殺人事件が起きたが、いまだに解決はしないまま。
スティーヴン・ラム少年は17歳となり、転校生の少女エムと好意を寄せ合うようになります。
スティ-ヴンの弟デイヴィーは、甘やかされて生意気盛りとなっていました。デイヴィーの考え無しの行動はさらに事態を引っ掻き回すことに。

狩猟のシーズンの終わる頃。
一人で車に乗って父を待っていた13歳の少女ジェスが突然、さらわれます。
「お前は彼女を愛していない」というメモが残されていました。
しかも、これで終わらず、子供がまた行方不明に‥

村の巡査ジョーナス・ホリーは前作の事件以来休職して、カウンセリングを受けていました。
何をする気も起こらず痩せ細った彼が、このタイミングで復職。

前の事件も担当したレノルズ警部補とライス巡査部長が捜査のため、苦い記憶のあるこの地にやって来ます。
それぞれにあまりにも人間らしい捜査陣と村人達。
どこかユーモラスで温かく描かれる人間味が、なんともいえない面白さ。
鹿が草を食んでいる、絵のように美しい田園でこんな事件が起こるとはと思う警部ら。
人口は少なくても土地は広く、捜索隊が探し回っても手がかりも見つからない。
それぞれに思い込みや優柔不断、判断の曇りが‥
人の世のさまざまな苦しみを視野に入れながら、決して諦めてはいないのがいいですね。
思わぬ突破口がどこでわかるかも、この作者らしくて、効いてます。

弱りきったジョーナス巡査の言動は心もとなく、切ない。
事件は一ひねりしてあり、鬼気迫る描写で、仮に俳優が演じたら凄いことになると目に浮かぶほど。
作者はもとは脚本を手がけていた人。
‥でもこれはちょっと映像化はしないほうがいい作品かと思う点も?(苦笑)
スティーヴンの成長は微笑ましく、頑張れ!と一家に声をかけたくなります。

「ダークサイド」

ベリンダ・バウアー「ダークサイド」小学館文庫

デビュー作「ブラックランズ」が好評だった作者の2作目。
舞台は同じ村で、4年後。
筆力ありますね~!

イングランド南西部のエクスムーア国立公園の中にある寒村シップコット村。
村でただ一人の巡査ジョーナス・ホリーは、美しい妻ルーシーが難病にかかったため、故郷に戻っていました。
寝たきりの老女が殺され、その息子が疑われます。
州都から刑事が数人やって来て、捜査に当たることに。

マーヴェル警部は都会育ちで田舎嫌い、傲慢な男ですが、その強引なやり方で結果は出してきました。
思い込みが激しいので、たまに見当違いの方向へ突き進む始末に、部下達もうんざりしています。
ジョーナスはマーヴェルにいじめ同様に見張りに追いやられ、いつもの巡回すら出来ません。
ある日、「それでも警察か?」というメモを受け取ります。

連続する事件、迷走する捜査。
ジョーナスは彼なりのやり方で、捜査の糸口をたどることにします。
難病のルーシーのもとに新聞を届けに来る少年は、スティーヴン・ラム。
探偵役が同一というシリーズではありませんが、1作目の主人公だったこのスティーヴンがあれからどうなったかを作者自身も知りたかったそう。

イヤな男も、憎みきれないような描き方。
脇役のちょっとしたシーンまで含めて、それぞれが人間らしく色々な面を持っている様子が、温かく描かれます。
それが偶然だったり必然だったりしながら絡み合っていく~面白さ。
1作目のスッキリ集約された完成度とはまた違った才能を見せてくれました。

「ブラックランズ」

ベリンダ・バウアー「ブラックランズ」小学館文庫

イギリスの新鋭のミステリ。
けなげな少年が頑張ります。

毎日のように、荒野に行っては掘り続ける12歳の少年スティ-ヴン。
母の弟が殺されたことから暗くなった家庭を救いたいと願って。

19年前に母レティの弟ビリーが11歳で行方不明となり、祖母は心を閉ざしました。
レティは弟と一緒に母も失ったようなもので、今もピリピリした所があります。
1年後に連続児童殺人犯が逮捕されたが、ビリーの遺体は見つからなかったのです。
せめて叔父の遺体が発見されれば、祖母や母の気持ちに区切りがつくのではないかとスティ-ヴンは望みを託していました。

イングランド南西部のシップコット村。
スティーヴンが、叔父の死んだ事情を知ったのは3年前。
友達のルイスが教えてくれて、エクスムーアを掘ることを思いついたのです。ヒースやハリエニシダが茂る広大なムーアを掘ることにルイスがすぐ飽きた後も、スティ-ヴンは事件のことを調べ続けます。
(ブラックランズというのはムーアの一部の名前)

無邪気な5歳の弟デイヴィー。
デイヴィーの方を可愛がりがちな母。
幼なじみだが横暴な所のある友達ルイス。
学校でのいじめっ子達。
目立たないスティーヴンの作文をほめてくれた先生。
時々現れる母のBFのなかで、一番好きだったジュードおじさん。
日常的な描写も過不足なく、一方では刑務所や地元の悪などのとんでもない現実も。

スティ-ヴンは、収監されている犯人に手紙を書くことを思いつきます。
埋めてある場所を教えて貰おうとしたのでした。
書くのも難しく、内容によってはすぐ刑務所から送り返され、なかなか届かない手紙。
長い刑期を勤めている犯人アーノルド・エイヴリーは、頭文字だけの短い手紙に興味を覚えます。
模範囚としての出獄をめざしていたエイヴリーですが、実は全然反省していない。
差出人が少年だということに気づき、事態は危険な方向へ…

事件によって3代に渡って破綻した家庭。
一途な思いで動いた少年の心は、通じるか?
スリリングな展開で、読み応えがあります。
ようやく解決に向かうときに、本当に嬉しくなります。

作者はイングランドと南アフリカで育ち、脚本家となる。
小説はこれが最初。上手いです!
2010年1月発表。2010年10月翻訳発行。
CWA(英国推理作家教会)賞ゴールド・ダガーにノミネートと書かれていますが、その後受賞したようです。
展開の皮肉な部分が~いかにもイギリス的かも。

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