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おすすめ本

「冬虫夏草」

梨木香歩「冬虫夏草」新潮社

「家守綺譚」の続編。
大事に取っておいた本です。
美しい文章、旅するような心地。本当に大切にしたくなります。

綿貫征四郎は亡き友・高城の実家を託され、駆け出しの文筆業にはげみつつ、愛犬のゴローと暮らしていた。
河童が時折、池にはまっていたり。
不思議なことも自然に受け入れる綿貫。
亡き友もまた姿を見せることがある‥

人望のある犬ゴローが、半年も戻ってこない。
鈴鹿山中で姿を見かけたと噂を聞き、綿貫はついに探しに出る決意をします。
花の名前がついた短い章が続き、掌編小説のような趣。
今よりはだいぶ昔ふうの、明治の文豪が書いたかのような文章で、でもそれよりはわかりやすい。日本語の美しさにうたれます。
一つずつ、ぱらっと読み返してもよさそうです。

山中に住む人々の素朴さ、温かさ。
重なるように茂る草花の何と風情のあること。
そして、しっくりと溶け込み、存在を疑わせないあやかし達。
天狗を空に見上げ、親を待つ河童の少年に話しかけ、イワナの夫婦がやっているという宿を探し当てる綿貫。
このイワナの夫婦の奇妙さは、なんとも面白みがあります。
主の赤竜が留守にしているとちらほら耳にしつつ、お戻りになったと喜ぶ様子も見ることに。

犬のゴローはあちこちで助けになっていて、「ゴローさん」と尊敬されているらしい。
犬離れしているというか既に人間離れしているレベル?
山中で必要とされているから、もう再会しても戻ってこない別れの場面になるのでは‥とハラハラ。
それがまっすぐ走ってくる可愛さに、やられましたよ☆

「りかさん」

梨木香歩「りかさん」新潮社

「からくりからくさ」で主人公が大事にしていたお人形のりかさんの物語。
しっとりした和風ファンタジーです。

ようこは友達が持っているリカちゃん人形が欲しくて楽しみに待っていたのですが、おばあちゃんが送ってきたのは何と、市松人形のりかさん。
ようこは、がっかり!
りかさんは、しゃべることのできるお人形で、ようこの元へいくときが来たということだったのでしょう。
最初は手に取らなかったようこですが、おばあちゃんに言われたとおりに朝晩りかさんの世話をし、心を通わせるようになっていくのです。
りかさんはほかの人形が抱える過去を感じ取り、ようこも一緒になって、その苦しみも解きほぐしていくようになるのでした。

「からくりからくさ」は染色や織物にたずさわる女性達が同じ家でともに暮らす話で、人生模様が結構濃くて複雑な作品でした。
それに比べると、だいぶゆったりしていて、心地よいテンポです。
人形達の過去には、ずいぶん悲しい物語も秘められていたけれど。

祖母と孫娘の関係、良いですね。
祖母が早くなくなったので、私はおばあちゃんを知ってはいるけど話したこともほとんどないので‥
(あ、でも私のお雛様はもしかしたら、おばあちゃんが何かしてくれたのかしら?選んだのは母のはずだけど)
市松人形を特に欲しいと思ったことはないけれど、お人形大好きで、着物も好きなので~りかさんが着物を何枚も持っているという点に思わず、よだれが‥(笑)

「からくりからくさ」の後日談もあり、これは子育ての大変さが出ていて、「りかさん」の次に読むには意外な重さ。
まあ全体としては、繋がってくる部分もあって、納得ですが‥
梨木さんはどうしてこんな作品が書けるのか、どれを思い浮かべても、その豊かさにぼうぜんとします。

「雪と珊瑚と」

梨木香歩「雪と珊瑚と」角川書店

離婚した若い女性が、周囲の人に助けられて、店を出す話。
具体的に書き込まれ、運もありますが必然性もあり~なかなかいい感じです。

山野珊瑚は、21歳。
同棲のような結婚。出産は、同じアパートの隣人で助産師養成学校に通っていた那美に、手伝って貰ったのです。
そして、離婚。生後7ヶ月の赤ちゃんの雪を抱え、途方に暮れていました。
まず預けなければ、働くことも出来ません。
さまよっていたら「赤ちゃん、お預かりします」という張り紙を見つけます。
古びた普通の民家に一人で住む中年の女性・藪内くらら。
くららの好意に救われ、背水の陣からの暮らしが、どうにか始まります。

高校を中退したときから勤めていたパン屋に戻ろうとすると、今は歓迎するけれど、実は来年店を閉めると言われます。
親切な店主夫妻なのですが、何か事情があるらしい。

くららは料理上手で、知恵と包容力があります。
尼僧として海外に行ったこともあるという変わった経歴は、少しずつゆっくりとわかってきます。
くららの甥の貴行は農業をやっていて、美味しい野菜を作っていました。
珊瑚は生い立ち故にあまり人に馴染まない方だったが、少しずつ、くららに料理を習っていきます。
くららさんの料理と気配りが何とも素敵なのです。

パン屋「たぬきばやし」で働きながら、仕事帰りで疲れた人に、身体にも心にも優しい料理を作りたいと思い立ちます。
店を出したらいいと助言され、驚愕しますが。起業のために借金する方法があるのですね。
店を出すとはどういう事か教えて貰うために、知り合いの店の手伝いに行くと、何もかも初心者なので、きびしく怒られてしまう。
しかし物件を見に行くと、少し駅からは遠いが、木立に囲まれた雰囲気のある古い家で、すっかり気に入ったのです。
パン屋のバイト仲間・由岐も、積極的に協力。
意外にとんとん拍子に、店の話は進んでいきます。

珊瑚自身は、やはりシングルマザーだった母にネグレクトされて、家に何の食べ物もないまま何日も放っておかれたという育ち。
給食で生き延びていました。
スクールカウンセラーの藤村に思い切ってそのことを訴え、毎朝トーストを食べてから教室に行くようになったのです。
高校に行けたのも彼女のおかげですが、母親は学費を払わないまま連絡が取れなくなったので、中退。
その後は連絡できなかった藤村に、ようやく連絡してみると…

赤ちゃんの雪が、とても可愛い。
子供は無条件にかわいいと思う方ではないんですが、この描写にはやられました。
夜泣きをされて苦しむ珊瑚には、ちょっと同情するけれど。
そういう時期は大変だよね。
わずか1時間、雪のいる部屋の扉を閉めてしまったことに深い罪の意識を抱く珊瑚。
こんな一途な人だから、周りも手助けしたくなる。

パン屋のバイト仲間だったが、珊瑚を嫌っていた美知恵。
後にわざわざ手紙に「あなたが嫌いです」と強い非難を書いてきます。
人に甘えていいのか迷っていた珊瑚は、全否定された思い。

こういう事が起きうるってことは、年の功でわかります。
異質なものがよく思われないことは時々あるけど、きついことをわざわざ言ってくる場合というのは~
言われた側の真実を見ていることは、まずない。言う側の性格やこだわり、コンディションのほうが大きいもの。
ネグレクトされた生い立ちの珊瑚に、ようやく訪れた幸運の方が多かった時期。
こんな人の様子をポーズと思うのがねえ…美知恵は心得違いをしていると思うけど。
おそらく店を見に来て、すごい労働量で苦心もしていることに気づいたら、少しは見方が変わるでしょう。少しは。
言われた側が深く考えた結果、何か成長することもありますよ。
一人で生きてきたのではないと、珊瑚が改めて実感したように。

若い無責任な元夫・泰司が顔を出したり、その両親が孫に会いたいとやって来たり。
行方がわかった母に、会いに行ったことも。
はっきりした結論を出さないまま、珊瑚がなんとなく希望を抱く心境になるのがいいですね。
そして、雪の生命力溢れる言葉。
無敵だなあ!

「丹生都姫比売」

梨木香歩「丹生都比売」原生林

草壁皇子(くさかべのおうじ)が主人公の和風ファンタジー。
淡々と夢見るように語られていきます。

父の大海人皇子(おおあまのおうじ)が、一家で吉野に逃れていた時期。
丹生都比売(におつひめ)の加護があると皆は信じて、安心していたのですが、実は顕現がないために大海人皇子は悩んでいました。
草壁は、大海人皇子と鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ)の一人息子だが、身体が弱い。
吉野には来ていない異母弟の大津皇子には、何かと負けていて、引け目を感じていました。

野心などない、吉野で僧になると、人が来ても言う大海人皇子。
だが、それで済むだろうか?
古人大兄王(ふるひとのおおえのおう)がやはり跡継ぎ争いの緊張が高まったときに吉野に逃れた後で、中大兄皇子(今の天智天皇)に3ヶ月後には結局殺された例もあります。
弟の大海人皇子はいぜんは天皇の跡継ぎと目されていましたが、天智天皇が実子の大友皇子に継がせたくなったのです。
卑母の出の大友皇子の即位には、反対する勢力もあります。
時期を待っているということは、誰もが察していました。

草壁は地元に住む少女に出会い、口がきけない不思議なその子にキサと名付けます。
キサは、青い勾玉をくれました。
キサのことは、草壁と弟の忍壁皇子にしか見えない事に気づいていきます。

鵜野讃良皇女(のちの持統天皇)の野心。
正当な血を誇る実母に圧倒され、畏れる草壁。
鵜野の姉・大伯(おおく)皇女がかって、草壁に語ったこと…
幻視なのか?草壁が見た女性の、したことは…

草壁の見るふしぎな光景の中に、ゆったり引き込まれてしまいそうです。
激動の時代、強く生きた人々の陰に埋もれたような、ひそやかな人の存在感。
渋い作品ですが、キラキラと輝くようなイメージも込められています。
このあたりの日本古代史に興味があれば、なお面白いのは間違いなし。
そうでなくとも、独特な文体やイメージの美しさは味わえるでしょう。

「春になったら苺を摘みに」

梨木香歩「春になったら苺を摘みに」新潮文庫

イギリスに留学した体験を描いたエッセイ。
丁寧な文章で、真摯で独特な視点でとらえられた情景に、なんだか今まで動いたことのない悩の部分を刺激されます。
ユーモラスな出来事や、人の暖かさが心地良い。

おもに、下宿先のウェスト夫人との交流が描かれます。
素敵な人ですね。
学校教師で児童文学作家でもありました。
どんな人にも手をさしのべようとするホスピタリティに満ちているため、面倒な相手の世話を背負い込むことにもなるのですが。

著者がイギリスに半年滞在していたとき、その20年前の学生時代に下宿していたウェスト夫人の元を訪れます。
そこはロンドンよりも北のエセックス州、S・ワーデンという町。

「ジョーのこと」では、ウェスト夫人に紹介されて知り合ったジョーという女性の思い出。
地元で教師をしていたジョーは、大家族で育ち、快活で子どもの世話が上手。
ジョーは信じられないぐらいドラマティックなことが起きる身の上だとウェスト夫人が称していたのです。
後にジョーの元彼が舞い戻ってきて、実はインドで結婚もして妻子有りらしいと途中で知れたのです。
心配したウェスト夫人にそれを知らされた著者も、具体的には触れることができずに、ただジョーを応援する手紙を書くのでした。
が、エイドリアンはふいに姿を消し、ジョーも、消息が知れなくなってしまう。
「人間には、どこまでも巻き込まれていこうと意志する権利もあるのよ」と彼女なら言いそうだと思う著者。

「王様になったアダ」は、ナイジェリアのファミリーに困った話。
わがままで傲然としていて、お礼も言わない。
身分が高く、後に一家の父親アダは本当に王様になったのでした。

「ボヴァリー夫人は誰?」は近所に越してきた脚本家の女性ハイディが、うっかりした発言で反感を買う。
反核運動が盛んな頃で、著者も近所の人と共に参加していました。
そういう土地柄なのに、ボヴァリー夫人の現代性を語るときに、「地元の女性のほとんどが専業主婦で有り余る時間をもてあまし幼稚化している」と書いてしまったのです。
ウェスト夫人はさりげなく和解の場を設けるのでした。

「子ども部屋」は一人で旅行中の出来事と、その時々に思い出した出会いの話。
ウェスト夫人の元夫のナニーの話が印象深いです。
元夫は、ヨークシャの裕福な地主の家柄。
ドリスという女性は子守りとして8歳から奉公に来て、家事一切をするナニーとして、88歳まで独身でその家に仕えました。
ウェスト夫人はお茶もいれられない若妻として、家事を教わったのです。

ウェスト夫人は、もとはアメリカ生まれ。
親がクエーカー教徒だったわけではないが、途中で共感して自らそうなったそう。
ウェスト夫人の父親は、戦争で銃を持つことを最後まで拒否した人だったという。
夫人の3人の子はインド人のグルに傾倒して、グルに付き従ってアメリカへ渡ってしまう。ある意味、親に似たのでしょうか。
その数年後に出会った著者。
空いていた子ども部屋には、児童文学の蔵書がみごとに揃っていたそう。

2001年末のウェスト夫人からの手紙で締めくくられています。
春になったら苺を摘みに行きましょう、と。
著者は1959年生まれ。
映画化された「西の魔女が死んだ」など、作品多数。

「エンジェル・エンジェル・エンジェル」

梨木香歩「エンジェル・エンジェル・エンジェル」新潮社

ぼけかかっている祖母の思い出と、同居し始めた孫娘の生活が交錯するストーリー。
描写は文学的で濃いめですが、共感しやすい入り口だと思います。
書き込みも中ぐらい…かな?

ストレスを感じて、熱帯魚を飼いたいと思い詰める少女・コウコ。
優等生を演じすぎていたのかも知れないと思うのでした。
日頃の情緒不安定がカフェインの過剰摂取のせいと気づいたのはいいけれど、他にストレス解消法を思いつかないのです。
(ぼけ始めた祖母と同居したばかりで、目の前が真っ暗になっていた母親という描写が介護生活をしている身には超リアルcoldsweats01
コウコは祖母を夜トイレに連れて行く世話を引き受けることにして、熱帯魚を飼うのを反対していた母に許可を貰います。

夜中に祖母と二人でいると、時々鮮明な言葉でコウチャンと孫を呼ぶのです。
この家に住んでいた少女時代と混同しているらしく…
現代と過去の二人の思いが交互に描かれていきます。

大きな茶園の孫娘・さわとして、女学校に通った日々。
学校内では派閥があり、対立する派閥の女の子を嫌いというわけではなくても、なぜかいじめるような行動をとってしまった後悔…
家の中では女中のツネを姉のように慕っていたのですが、それも急に別れの日が来ます。

一方、コウコが飼うことを許された熱帯魚は、同じ水槽に入れたエンゼルフィッシュがネオンテトラを攻撃してしまう。
(そういえばそうだったような気が…)
水槽を置くために物置から出してきた古い木彫りの台、それには…?
迷いや悔い…別れの哀しみ。
息づかいが感じられるような文章。緊密な構成で、切なさもあります。

ちょっと古い作品のせいか?アマゾンで書影が出ませんでした…weep

「からくりからくさ」

梨木香歩「からくりからくさ」新潮社

日本を舞台に、染色に関わる若い女性の共同生活がしっとりと描かれます。
しだいにわかってくる縁の糸…
祖母の家を継いだ蓉子は、古い家を生かしたいと思い、下宿人を募って、自分は管理人として住むことにします。
心当たりもあって、それは…
まず、英語と日本語を交換で教え合っている留学生のマーガレットが、下宿することに決まります。
それに、美大の学生・与希子と紀久が、一緒に住むことになりました。
機織りをする音がうるさいと、前のアパートでは言われたりしていたのです。

蓉子は、祖母から貰ったりかさんという市松人形を大事にしていました。
子供の頃から心で話し合える、ふしぎな人形…
祖母はかってコレクターだったのですが、赤光という人形師のつくったものを集めていたとわかります。
紀久が実家の法事に帰ったとき、りかさんとそっくりな人形が…
その衣装がたくさんあったというのが、垂涎物だったりして。

与希子もまた、先祖に縁があったことを知るのです。
誰が何のために作った人形だったのか…
時代がかった因縁話から、怪談風のなりゆきになるのかと思えば、世界を股にかけた展開へ。
いや、女性達が行くのではないのですが。
紀久とつきあっていた時期のある神崎は、その後マーガレットとつきあうようになっていました。
が、調査に海外へ出かけたまま、クルドで消息を絶ち…?

古き佳き日本の暮らしと、シルクロードをトルコまで通じる~機を織る女達の心、人形に宿る何者か…えんえんと続く命がゆらめき交錯するような、重厚でふしぎなファンタジー。
平成11年単行本発行。

「村田エフェンディ滞土録」

梨木香歩「村田エフェンディ滞土録」角川書店

1899年、土耳古(トルコ)に留学した村田の手記という形。
エフェンディというのは、トルコで知識階級の男性に対してつける尊称で、ちょうど「先生」と言われるのに似た感じだそうです。そういえば「イスタンブールの群狼」などにも出ていましたね。
歴史物というか、前半はファンタジーといった方が良いのか…

スタンブールの下宿に集う国際的な顔ぶれの友人達に起こる出来事が、どこか乾いた空気の中、最初はゆったりしたタッチで描かれます。
英国人のディクソン未亡人が営む下宿には、トルコ人の下男ムハンマド、美男のギリシャ人のディミィトリス、ドイツ人考古学者オットーなどが生活していました。
拾ってきた鸚鵡のエピソードなど、いかにも楽しい。

苦難の旅を続けて到着した日本人・木下を見舞い、お礼にと稲荷の札を貰って困惑する~宗教心のない村田。
さらに、バザールで売っていたアヌビス像も預かります。すると怪異現象が…?!
下宿の礎石は、正体もわからないほど古い遺跡を流用してあるらしく、そこの神々と争っているかのよう…?

ふだんは顔を隠しているイスラムの女性達の、室内で見せる妖艶な美貌に驚いて、これは隠すのも無理ないと思ったりする村田でした。
終盤は時代からいって、革命や戦争へとつながり、厳しく切ない展開に。
とりどりの要素が不思議な印象を残します。

帰国後に村田が「家守奇譚」の家に転がり込むあたり、あの作品を読んでいる読者には楽しいですね。
2002年から書かれ、平成16年発行。文庫本も出ました。

「西の魔女が死んだ」

梨木香歩「西の魔女が死んだ」新潮文庫

昨年、映画化されたので~有名ですね。
それは見ていませんが…
原作はテンポ良く話が進み、過不足がないのがお見事です。

中学1年で不登校になった少女・まい。
「扱いにくい子」「生きにくい子」と、母が電話で話すのを聞いてしまいます。
父は単身赴任中で母も仕事が忙しく、イギリス人の祖母(母の母)に預けられることになります。
「おばあちゃん、大好き」と言うと、「アイノウ」と答えてくれる祖母。

イギリス人の祖母は、日本を気に入った曾祖父の話を聞いて、日本に憧れて留学し、そこで出会った男性と結婚して、ずっと日本にいるわけなのです。
祖母は魔女の血筋と聞いたまいは、魔女の修行をしたいと言いますが、その修行とは…
きちんと生活して、自分の考えを決めるといった、誰にでも通じることなのでした。

ハーブを育て、自家製のジャムを煮て、洗濯機もない暮らし。
切り株のあるお気に入りの場所を、孫娘にとっておいてくれた祖母。
人生における大事なことはすべて、教えてくれた人なんですね。
とんがっていた思春期の少女にすんなり寄り添って、見守りながら共に成長したかのような気分になれました。
この素晴らしいおばあさんに、まいの母は押しつぶされそうになったという一言もありました。
しっかり者で正しい母親だったからこそ、その娘が自分らしく生きようともがく時期にはそういうこともあるだろうなぁ…という感慨も覚えました。

さすがに、よくまとまったいい話です。
ちょっとショッキングな題名も、実は必然的な~大事な意味があるのでした。
マクレーンの娘サチが、映画でおばあさんの役をやったのも、決まっていたことだったのでしょうと思わせます。

「家守奇譚」

梨木香歩「家守奇譚」新潮文庫

売れない小説家・綿貫征四郎が、亡くなった友人の実家の家守を頼まれ、仕事を辞めて、引っ越してきます。
庭は草木が生い茂るままで、短い各章のタイトルはそうした身近な花の名前がほとんどで、親しみやすい。
時代は明治?らしい。
表記は現代かなづかいですが、どことなしに古風で、静かな世界にふっと誘い込まれます。

湖でボートを漕いでいて行方不明になり亡くなったはずの友人・高堂だが、雨の日に掛け軸の中からボートを漕ぐ音がして、ふと登場します。
「どうした、高堂」と対する征四郎に「なに、雨に紛れて漕いできたのだ」と答える高堂。粋ですねえ。
河童のお皿や抜け殻、狸や狐も登場。
居着いた犬のゴローもなにやら異界に通じている模様…

私にはすごく読みやすかったです~ほとんど、デジャビュ。いつかどこかで掛け軸のあたりででも~すれ違ってたのかしら?

2004年の作品。
作者は1959年生まれ、英国留学で児童文学者に師事とのこと。

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