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おすすめ本

「しずく」

西加奈子「しずく」光文社文庫

女二人がテーマの短編集。
西加奈子さん初読みにもオススメ。

「ランドセル」
かってピンクのランドセルで一緒に小学校に通った幼馴染。
頼りにしていた友達でした。
大人になって偶然再会し、ロスへ旅行することになりますが‥?

「灰皿」
夫を亡くし、30年暮らした一軒家を貸すことにしたら、借り手は意外にも若い女性。
小説家だった‥

「木蓮」
34歳の女性が恋人の幼い娘を一日預かることになります。
7歳の子に振り回され、だんだん‥?

「影」
会社の同僚の地味な男性と、ふと付き合ったことがばれて問題になった女性。
旅に出た先で若い娘に出会い‥?

「しずく」
猫のフクさんとサチさん。
もともと彼と彼女に別々に飼われていたのですが、同居することになりました。
楽しい暮らしでしたが、忙しくなった二人はしだいに‥
猫の視点からの描き方がいいですね。
最初は上手く行かず、同じようなことを言い続けて喧嘩したり、それを忘れたり、何となく一緒にいることに慣れたり‥

「シャワーキャップ」
恋人と結婚を考えている若い女性。
頼りない母親に苛立ちますが、それでも‥?

道を間違えていくような不安と、軽い苦味があるけれど、どこかでほっとするような空気感もあり、辛いことがあってもでも‥何とかなるよ、というまなざしを感じさせます。
「しずく」が切なくて、印象に残りました。

短編集なので軽めで読みやすく、いろいろな味わいの作品があるので、初めて読むのにもいいと思いますが~
もしこれでは、アッサリし過ぎ、と思う方だったら、長編を読んだほうがイイかもしれません。
決して、あっさりした作風の作家さんではないです(笑)

「サラバ! 下」

西加奈子「サラバ! 下」

直木賞受賞作。
怒涛の後半。
前半ではわからなかったことが明らかになるので、上巻だけでやめちゃダメですよ!(笑)

両親が離婚した圷家。
姉の貴子は強烈な性格で、学校では浮いてしまい、それを見て育った弟の歩は、目立ちすぎず人に好かれるように、そつなく生きていきます。
お似合いに見えた両親が離婚し、歩には理由が知らされないまま。
実は結婚のいきさつから問題があり、父はそれを気に病んでいたのでした。
そして、父の選んだ道は‥

歩は両親のいいとこどりの容姿に恵まれ、大学では奔放な生活に。
美人の恋人も出来ますが、姉の貴子が巻貝アーティストとして注目を浴びたときに、とんでもないことに?

歩は、学生時代から始めた仕事を続けますが‥
頭が薄くなってきて、容姿にも自信を失います。
再会した姉は、アメリカで自分らしく生きていて、すっかり落ち着いた様子。
まともに生きてきたつもりの歩のほうは、どこか本気になれずにカッコつけたまま、ずるずると落ち目になってきている有様。
あいたた‥(苦笑)

迷惑をかけてでも、全身で体当たりして道を探っていた姉のほうが、確実なものを掴んだということでしょうか。
弟はこの小説を書き切ったということなので、ある意味、いじいじ悩む性格が活用されたってことなのか??

自伝的要素がある作品なので、そういう結末にしたのでしょうが、これは嘘かもしれない、と最後に言われても読者としては?
最初から、フィクションには違いないんですが~‥
平凡で深く考えない弟の、ありがちな年の取り方。いやこれは、気をつけたほうがいいかも?
そして、姉がらみの特異なシーンも精緻に描かれ、熱のこもった力作には違いありません!

「あの日、君と Boys」

伊坂幸太郎ほか「あの日、君と Boys」集英社

8編収録のアンソロジー。
集英社文庫創刊35周年記念の文庫オリジナルだそうです。
初出はすばるが多いけど、もともとこのテーマで書いたってことなのかな。伊坂さんのは書き下ろし。

「逆ソクラテス」伊坂幸太郎
やはり別格で、すごくよかった~ほとんど覚えてしまったぐらい。
転校してきた男の子・安斎君が、教師に何かと軽視されている級友を守ろうとします。
いくつか面白い手を考え出し、そして当人には、何か不当なことを言われたときに「僕は、そうは思いません」と言うんだよ、と。
多くの人に読んでもらいたい内容。
出来れば子供の頃に! でも大人でもいい‥

「骨」井上荒野
幼馴染の陽と幸太。
骨がみしみし音を立てるような成長期です。
サイクリングでキャンプに行くという計画だったのですが、幸太が来るかどうか陽はあやぶんでいました。
サッカー部の出場辞退という件に関わったため、幸太は怪我をしているのですが‥

「夏のアルバム」奥田英朗
小学2年の雅夫は、自転車の補助輪無しで乗れるようになるのが目標。
親がまだ早いとはずしてくれないのでしたが‥
その夏、母の姉が入院していて、従姉妹たちは自分で家事をしているという。

「四本のラケット」佐川光晴
太二はテニス部。
朝練で荒れたコートを昼休みにならすのは、1年生の役目。
当番はグーパーじゃんけんで決めるのですが、ある日‥

「さよなら、ミネオ」中村航
学校では透明人間のように孤独な自分。
ミネオという友達だけがいれば、いい‥

「ちょうどいい木切れ」西加奈子
やたらと大きな身体にコンプレックスを抱いてきた青年が、ある日、電車の中で出会ったのは、とても小さな人。
風変わりでとても面白く、印象に残りました。
この本のテーマとしては、かなり変化球だけど。

「すーぱーすたじあむ」柳広司
元野球部の竜次が補導されてしまいました。
小学生のときに地元の少年団でスターだった彼。
ところが身長が伸びず、弱くなったのに気ばかり強くて、持て余しものになってしまったのです。
ヤケか嫌がらせかという感じの、破天荒な行動の意味は‥?!

「マニアの受難」山本幸久
昭和が終わりかかっていた頃。真輔は22歳になりました。
映画が大好きで、やはり映画が好きだという女の子と付き合っていたのですが。
真輔の選ぶ映画はマニアックすぎて、不満を抱いた彼女にはきっぱりフラれてしまう。
映画雑誌への就職を考えますが‥

男の子たちって面白いなあ。
女の子の話は出なさすぎなぐらい?
運動部の話が多く、テーマとしてはかなりまとまっている印象でした。

「ふくわらい」

西加奈子「ふくわらい」朝日新聞出版

とても良かった!
力強くて、ユニーク。
特異なシーンがあるので、小さい子どもにはススメないけど。
最高傑作なんじゃないかなあ…

鳴木戸定は、紀行作家の父親に、マルキ・ド・サドをもじって名付けられました。
定はほとんど感情を表さない子どもでしたが、母の買ってくれた福笑いに新鮮な感動を覚え、夢中になります。
母にもばあやの悦子にも可愛がられましたが、母は5歳の時に亡くなってしまう。
父は旅行先に定を連れて歩き、葬送で死者を口に含む部族の習わしに参加。そのことを本にしたため、定は学校で気味悪がられることになってしまいました。

編集者になった定は、25歳。誰にでも丁寧な話し方をしますが、人となれ合うことを知らない、変わった女性になっていました。
今でも福笑いのことを考え、目の前の人の顔のパーツを動かしてみる癖が抜けない。
作家との打ち合わせの様子など、ありそうなシーンにもどことなく面白みが漂い、読み飛ばせない濃厚さです。
悪役プロレスラーの守口廃尊の連載を本にする相談をする間も、顔を見つめ続ける定。
この男の歪んだ顔は、定にとっては興味がつきないものだったのです。

水森康人という高名な作家には、ヨシという献身的な妻がいました。
後に、思わぬ事件が起きますが、その対応をやり遂げた定は、編集部で認められるようになります。

新宿駅で白い杖を振り回している男に出会い、声をかけます。
武智次郎といって、見るからにイタリア人の顔だが、ハーフで日本育ち。
一目惚れしたと言って何かと連絡をしてくるようになり、定は戸惑いますが。

同僚の小暮しずくは、美人過ぎる編集者としてテレビに出たこともあるほど。
定より一つ下で、最初は互いになじめなかったのですが、ふとしたきっかけで親しくなり、定の初めての友達となります。
次郎のことも相談するようになりました。

もともとユニークな女の子が異常ともいえる経験を経て、どこか固まったままだった。
小さな事がきっかけとなって動きだし、いつの間にか世界がすっかり変わっていく‥
ぴかぴかの魂と、何を隠すこともないぴかぴかの身体に光を浴びて。
心があたたまり、勇気が出ます。
2012年8月発行。

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