「スペードの3」」

朝井リョウ「スペードの3」講談社

とある歌劇団がらみで、若い女性の生き方をめぐる連作集。
「スペードの3」「ハートの2」「ダイヤのエース」の3編。

「スペードの3」
香北つかさのファンクラブは、つかさが歌劇団を卒業してもなお、「ファミリア」として続いていました。
ファン達を仕切る美知代は、有名化粧品会社勤務と思われていますが、実際は関連会社の事務。ファンクラブのリーダーとしてここでしか感じられない優越感にしがみついていました。
子供の頃はそつのない学級委員でしたが、ある日かわいくて才能もあるクラスメートにあっさり、その座を追われた過去があったのです。
そして、ここでもまた‥
美知代の生き方が最初から破綻するだろうと思われて、意外性がないですね。
学級委員が大人になればただの人、って普通だし。
追い詰めるほうも、感じ悪く見えてしまう。
展開に少々難あり、ってことかな。

「ハートの2」
地味で目立たない女の子だった明元むつ美。
劇団のスター・香北つかさに憧れていました。
演劇部では裏方の美術を務めて、重宝がられています。
それなりのやり甲斐もあったのですが、がんばって、変身することに‥?

「ダイヤのエース」
男役のスターだったつかさは、退団後、だんだん仕事が減ってきています。
オーディションで演出家に「いつも優等生でリーダー的な存在だった恵まれた人間が、人の心を動かすことなんて出来るのか」と厳しい言葉を浴びせられ、答えられない。
(え、本気で‥?そんなこと言う人間がいるのか)
つかさの同期の沖乃原円(まどか)には、生い立ちにドラマチックな不幸があり、劇団受験の頃からテレビ番組に取り上げられていました。
そんな円が引退することになり‥
つかさも引退を妄想しますが‥

作家さんが恵まれた優等生であることに批判的な見方をされたことでもあるのかな?
いやそんな‥ めちゃ変てこな面白い人じゃないですか。
人間はみんな違いますからねえ!
さわやかな若さを嫉妬しつつ、ないものねだりをして危ぶむ、とか?
若くして有名になることもある意味、特異な不幸かも(苦笑)

前に読んだんですが、登録もし忘れていたよう。
登場人物が歌劇団のファンらしく感じられず、あまり好きになれなかったので、感想を書くのをためらったのです。
ずっと読んでいる作家さんなので、一応、書いてみました。
こういう作品もあったね、という若い作家さんの道筋をたどる気持ちで。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「世界地図の下書き」

朝井リョウ「世界地図の下書き」集英社

朝井リョウの長編7作目は、児童養護施設を舞台に、小学生が主人公。
どうしようもない悲しみやいじめがあり、思うままにならない境遇でも友達は出来て、希望を見出していく話です。

太輔は小学校3年生。
両親を交通事故で亡くし、伯父伯母ともうまくいかず、児童養護施設「青葉おひさまの家」に入りました。
子供のいない伯父伯母をお父さんお母さんと呼ぶことがどうしても出来ず、しだいに叩かれるようになったのです。

施設で親切にしてくれた佐緒里は、中学3年のお姉さん。佐緒里のことが大好きになる太輔。
同じ班の淳也、美保子、麻利とはだんだん仲良くなります。
同じ年の淳也は小柄で優しく、学校で何かといじめられがちでした。
美保子はおませで、母親のことが大好きで自慢なのだが、その母親から虐待を受けていたために施設にいます。
麻利は淳也の妹で、天真爛漫ですが、クラスで仕事を押し付けられたり、変だとからかわれたりしていました。

3年がたち、佐緒里が予定していた大学進学を諦めなければならなくなります。
事情を知った太輔らは、自分達でお祭りにランタンを飛ばす行事を再現しようと、頭を絞ることに。
子供ならではのつたないやり方でも、だんだん形になっていき‥

前半は重苦しいですが、後半の頑張り、子供達の仲のよさが救いになりますね。
「逃げてもいい、逃げた先にも同じだけ希望はある」「私たちみたいな人にこれからまた絶対出会える」と最後に繰り返し語る佐緒里の言葉が感動的です。

2013年7月の作品で、「何者」の次。
直木賞受賞後初の作品ということになりますね。
朝井リョウが書いているという感じがあまりしない。
ある意味、若さを抑えて、広範囲の人に読みやすいようにと意識した、大人になった書き方かな。
この作品で坪田譲治文学賞を受賞しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「何者」

朝井リョウ「何者」新潮社

直木賞受賞作。
就活をする大学生の話だってこと、知らない人ないぐらいじゃないかな。

自分は何者なのか、生まれて初めて突きつけられるような就職活動の時期。
不況で就職難なので、結構いい大学の学生でも次々に落ち続けることに。
特異な状況で、内定が出たことが学内でヒエラルキーの頂点に立つことになるという。

演劇サークルで脚本を書いていた二宮拓人。
今はすっぱりやめて、就職活動中。
3年のときから拓人とルームシェアしている光太郎はバンドのボーカルですが、今回のコンサートを最後に引退することになっていました。
いぜん光太郎と付き合っていた瑞月が、1年の留学から帰って来ます。
拓人は瑞月に片思いしているのですが、見守るしかない。瑞月は拓人にはけっこう優しくしてくれる良い友人ではあるけれど、そういう対象ではないのは目に見えている感じ?
光太郎は人に好かれる性格で、コンサートの後は髪を切って変身。
突然、追い越されてしまいそうな拓人ですが‥

瑞月の友達の理香が、アパートの上の部屋に住んでいるとわかり、4人は就活の情報交換を始めます。
理香も留学経験があり、ボランティアにも積極的なしっかりしたタイプ。
理香の部屋には同居し始めたばかりの恋人・隆良もいました。
就職はまったく考えていないという隆良は、いささか気取った芸術家肌のよう。
拓人はかって二人でコンビを組み、今も演劇を続けている烏丸ギンジが隆良に重なって見えて気になり、現実味がないと感じてしまうのです。

ツイッターやフェイスブックを駆使する若者達の人間関係は、リアルな付き合いとネット上の短い文章の語るものが交錯します。
どちらが本当なのか、どちらもまやかしを含むのか?と思わせるような‥
しだいにピリピリして来た彼らは、批判し合うことに。

あ痛たたた‥てぐらい、痛烈ですね。
まあその結果は‥
一段階成長したという希望が持てる結末。
ここまで書くとは~前半の余裕はこんなところへ行き着く前提だったとは。
就職活動を終えたばかりで、良くぞここまで抉るように書けたもの。
なるほどの直木賞でした!

こういう就職活動をしたことがない自分って、馬鹿なんじゃないかとしばし呆然‥いやカッコつけてたとかでは全然なく。
事情があったんだから仕方ないわねぇ‥とだんだん思い出しました。でも賢かったとはいえないけど(苦笑)

読んだ時点では、単行本化されている作品はこれでコンプリート。
次はどんな作品が来るか?
楽しみです!

[追記]「世界地図の下書き」っていうのが新作ですね~!

| | コメント (2) | トラックバック (0)

「最後の恋 MEN’S つまり、自分史上最高の恋。」

伊坂幸太郎ほか「最後の恋MEN’S つまり自分史上、最高の恋。」新潮文庫

男性作家7人の競作アンソロジー。
忘れられない恋の話。
「最後の恋」というテーマにぴったりとは限らないけれど~
いろいろな味を楽しめるという点ではお得感があります。

伊坂幸太郎「僕の舟」
病の床にある夫をもつ妻が、人生を振り返って、初恋の人は誰だったのかと‥
出会いの不思議。

越谷オサム「3コで5ドル」
日本人観光客に恋する男の子を軽快に。

朝井リョウ「水曜日の南階段はきれい」
高校の卒業を前にして。
最初の恋のような気もするけど、純粋な恋への思いには共感しますね。
印象に残りました。

石田衣良「イルカの恋」
会社を辞めて、カフェに勤めだした女性。
いわくありげな美女が、夜はバーをやっている店でした。
暗めの話だけど、濃厚な雰囲気に恋の気分がありました。

橋本紡「桜に小禽」
別れようとしている男女。
これといった理由は明かされないのですが‥

荻原浩「エンドロールは最後まで」
38歳になって結婚をあきらめた女性が出会った年下の彼。
医者だという彼の言動に、少し矛盾が見えてきましたが‥それにどう対するか?

白石一文「七月の真っ青な空に」
犬猫の里親探しで出会った二人。彼には過去が‥

それぞれの作家さんの個性が出ていて、「‥‥なるほどねえ!」と。
きめの細かさも、どれが粗いというのじゃなく、豆腐だったり、真綿だったり、みたいな手触りや空気感の違いが。
意外に女性目線の話もありました。
そのあたり~微妙に期待と違うような感じもあるんだけど。
これで初めて知った橋本紡さんもよかったので、これから読んでみようと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「学生時代にやらなくてもいい20のこと」

朝井リョウ「学生時代にやらなくてもいい20のこと」文藝春秋

爆笑!
朝井リョウって、こんな人だったの?

「少女は卒業しない」の後だと、ギャップが‥
「チア男子!」の後なら、まあ繋がるかな。

学生時代に体験したことをそのまま描いているエッセー。
ダンス部だったそうですが、部活そのものは出てきません。
ダンス部ののりのいいメンバーが一緒というケースはあります。

早稲田大学では、100キロハイクという催しがあるのだそう。
仮装で埼玉から大学まで歩き、仮装をも競う。
バスローブでワイングラスを持つという仮装で電車に乗って目的地へ。
仮装に本気の人たちはこんなもんじゃなかったという。
途中から足はたまらなく痛み、駐車場で痛み止めを飲みシップを貼りまくり、寝転んで休む。
雨が降り出し、バスローブは驚異の吸水力を実証するとは‥!

島で花火を見ようという企画が、嵐で島に接岸できずに東京まで一度戻り、23時間船に乗り続けたという。
これはその後すぐに、大島まで行き、無事に夏を楽しむことはできたのですが。
レンタカーでコンサートに行こうという北海道旅行の計画が、無残に流れるにいたるいきさつやら。

就職活動について書くように2年生のときに求められ、何もわからずに適当にでっち上げたエッセイを収録、自分で突っ込みまくってあります。
就職については、すでに小説家デビューしていたので意外に思われることもあったとか。
(いやそりゃ‥冷静に考えれば、小説を書き続けられる保証はないし、まして売れ続ける保証もないもの)
それに経験豊富なほうがネタに困らない‥?

学生時代の経験からして、すでにネタを超えている感じだけど~
京都まで自転車で行こうと二人で企画し、一日100キロ以下という計画を立てる。‥連日?!正気か~っていう。
途中で友人に連絡を入れたら「頭悪いね」と言われてしまう。
出会った人に「自転車で東京から来た」と答えたら、ドン引きされたり。
それでも何とか行けてしまった体力がすごい!実行できたのだから無謀とも言い切れない‥
けど!
しかし、やっと就職したばかり。若いねー!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「少女は卒業しない」

朝井リョウ「少女は卒業しない」集英社

高校の卒業式の日。
女子の視点で語られる短編集。

さわやかで切なく、痛みと悲しみもどこか甘やか。
成長していく時期の女の子の気持ちを、細やかに、髪の動きや息づかいまでありあり感じるほど、丁寧に描いています。

3月25日の卒業式。
来年度からは合同になるため、廃校に。
翌日には校舎の取り壊しが始まる前日という、特別に遅い日程になったのです。

「エンドロールが始まる」
「作田さん、返却期限、また過ぎてますね」
それがいつもの会話。
図書室のカウンターにいる先生に、ほのかな思いを寄せていました。
これまでのことを思い出す最後の日…

「屋上は青」
幼なじみの尚輝と屋上に来ている孝子。
待ち合わせのメールが来たので、卒業式をさぼることにしたのです。
地元の国立に進む真面目な孝子は、さぼるのは初めて。
進学校で、ダンスの事務所に所属する尚輝は異色な存在。
中退してしまったのですが…

「在校生代表」
長い送辞を読む亜弓。
卒業式の催しで、照明をやっていた田所先輩に惹かれて、生徒会に参加。
成績が悪いふりをして勉強を教わったり、重ねた月日…

「寺田の足の甲はキャベツ」
女バスの部長の後藤。
男バスの寺田と付き合ってきましたが…

「四拍子をもう一度」
卒業ライブで体育館にいる軽音部。
ヴィジュアル系バンドの衣装が盗まれてしまい…?

「ふたりの背景」
帰国子女のあすかは、H組の正道くんと美術部に入ります。
クラスでは最初は仲の良かった女の子に無視されるようになり、浮いた存在でした。

「夜明けの中心」
卒業式も終わった夜、校舎に忍び込んだまなみ。
これが最後と思って、駿によく作ってあげたお弁当を作った…

それぞれ進路が分れていく高校生たち。
校舎に幽霊が出るという噂をモチーフに。

自分の高校時代には、こんな事は何もなかったな…とふと思いました。
2012年3月発行。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「もういちど生まれる」

朝井リョウ「もういちど生まれる」幻冬舎

20歳前の大学生、浪人、専門学校生を描いた短編連作。
高校生よりはちょっと世界が広く、初めての経験もまだ期待感があって、ゆったりしているような~
でも、社会に出る日は近づいていて、自分の限界に直面しつつある…
青春群像というには軽めだけど~優しくて、重すぎない所が、なかなか感じはいいです。

「ひーちゃんは線香花火」
R大学に入学して13ヶ月。
何も成長しない一ヶ月が積み重なっただけのような気がしている汐梨。
ひーちゃんこと、ひかると、風人の3人で、今日も麻雀。
誰が見てもクラスで一番美人のひーちゃんですが、最初の一言でクラスの女子を敵に回したのです。風人は小型犬系の男子。
ややはみ出し気味の3人が仲良くなったのでした。
汐梨には尾崎という彼氏も出来たので、もうこの3人だけでいっぱいいっぱい。
ある日、寝ている間に誰かにキスをされ…?

「燃えるスカートのあの子」
翔多は、バイト先の休憩室でハルを見つけ、今日も椿ちゃんの話をせがみます。
大学で一緒の椿という可愛い女の子に夢中なのです。椿には彼氏がいるけれど。
黒髪に青いメッシュを入れたかっこいいハルは、専門学校に通うストリートダンサー。
椿とは、高校の時に仲が良かったという。
同じ講義を取っている友達の礼生は、もしゃもしゃの頭に虹色の眼鏡。いくつも映画サークルに入っています。
椿が、礼生が撮る学生映画に出ることになったと知る翔多。
なんと、椿が礼生を好きになったかも…?

「僕は魔法が使えない」
美大に通う渡辺新は、ナツ先輩に憧れています。
先輩の絵は美術展で高い評価を受け、一号館のスペースに張り出されています。光が交錯するクラブで踊るダンサーの絵。
新の父は交通事故で亡くなり、1年後に母が鷹野さんを家に連れてくるようになりました。
新はナツ先輩に人物画がいいと言われ、たまたま下北沢駅で見かけた結実子という女の子にモデルを頼みますが…

「もういちど生まれる」
柏木梢は、二浪中。
予備校の堀田先生に恋しています。
梢の双子の姉の椿は、要領よく推薦で大学に入りました。
読者モデルをしている華やかな椿。
どこをとっても少しずつ地味な外見の梢は、姉が嫌いだったのです。
二十歳の誕生日、華やかに祝われた椿の携帯に掛かってきた連絡を見て、思わず…

「破りたかったもののすべて」
ハルこと遥は、ダンスが出来てカッコイイと以前から友達や後輩に評価されてきました。
同級生のとても可愛い女の子・椿は、高校で最初は人気がありました。
読者モデルとして祭り上げられた頃から、友達がだんだんいなくなり、タイプの違うハルに近づいてきたのです。
可愛いだけの椿や、部屋にこもって絵を描いているだけの兄のナツは、努力が足りないと思っていたハル。
だが今、自由に踊るロックダンスをしてきたハルは、基礎訓練が出来ていなかったことを痛感しています。
後列の端で踊るのが定位置で、大きなステージに上がるダンサーになるのは難しい…
ハルをカッコイイと思ってくれている翔多には、それらしくふるまおうとしますが。

こういうのって、あるよねえ…
と何だかちょっと気恥ずかしくなりつつ。
当人はこの時辛いだろうなと思いつつも、どこかさわやかで初々しい。
2011年12月発行。
4作目になるのかな?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「星やどりの声」

朝井リョウ「星やどりの声」角川書店

朝井リョウの家族小説。

「星やどり」という喫茶店の名は、父が名付けたもの。
父の星則は建築家で、リフォームも多く手がけていました。
天井に星形の天窓を開けてあり、雨宿りのように星を受け止めるという。
父亡き後、母が一人で頑張って続けています。
手作りのビーフシチューやデザートの評判が良いのです。
常連さんはいるけれど、連ヶ浜駅前の商店街からは少し離れた所にあるため、ひっそりした店でした。

母は早く起きてお弁当を三つ作り、仕込みのために店に行きます。
早坂家の長女の琴美は、宝石店に勤める26歳のしっかり者。
警官の孝史と結婚していますが、休みの日には弟妹の朝ご飯を作りに来ます。6人きょうだいで大騒ぎの朝食。

長男の光彦は就活中ですが、7月になってもいっこうに決まらない。
二男・凌馬の同級生のあおいの家庭教師もしています。
いささか頼りない光彦は、15歳のあおいに慰められる始末。あおいの部屋は父がリフォームした物で、光彦にとっては父のすごさを感じる場所でした。
あおいは出来が良くて、家庭教師の必要なんかないのではと思うほどでしたが、実は…

小春とるりは、高校3年生の双子。
顔はそっくりだけど、性格は正反対。
小春は髪を染めてスカートを短くし、サンダルで学校に行っています。
店の手伝いに良く行くのは、るり。
父の墓参りに帰り道、母が男性と会っているのを見かけた小春は、ショックを受けて怒りますが…?

二男の凌馬は、母に怒る小春の声を聞きつけて悩みます。
元気いっぱいの高校1年で、テニス部だけど、さぼりがち。
同級生のあおいが時々お腹を空かせている様子を心配して、お弁当を作ってやろうとしたり。

末っ子の真歩は、小学生の男の子。いつもカメラをぶらさげて歩いています。
卒業文集の委員に推薦されてしまいます。卒業アルバムの撮影でも笑顔を見せなかったのですが、転校生にくっついてこられて写真を撮って歩くことになりました。
写真屋の大和に、こつを教えて貰ううちに、笑顔に。

弟妹の色々なことを見抜いているかのような琴美。
さりげない助言や苦言に、エスパーかと驚く弟妹。
琴美は疲れた様子の母を心配し、じつは自分のことでも悩んでいました。
家の事情に気づいた弟妹は…?

にぎやかな暮らしの中に、それぞれの悩み、亡き父を思う気持ち、揺れ動く寂しさや不安。
緩やかな成長と、家族の暖かい雰囲気が伝わります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「チア男子!!」

朝井リョウ「チア男子!!」集英社

デビュー2作目。

大学でチアを始めた男子の奮闘を描きます。
柔道を続けてきた幼なじみの二人~一馬と、ハルこと晴希。
命志院大学に入学して、3ヶ月。
ハルは怪我をして、練習に参加できなくなっていました。
二人とも小柄で身体はきくけれど、柔道には行き詰まりを感じていたのです。
一馬のほうは、早く両親を亡くしています。
祖母の見舞い中にテレビのチアを見ていて、両親がチアをやっていたことに改めて感銘を受けたのでした。

一馬が言い出したことに、変わったメンツが集まってきます。
料亭の息子の溝口。成績優秀だが、人つきあいは苦手で、ずっと孤独だったのです。ダンスのセンスはないのですが…
ヒマワリ食堂の大食い記録保持者の遠野は、体格はいいが、機敏な動きは苦手。
けれども、皆が根気よく付き合って、上手くなっていくのですよ~。

ハルのほうは柔道一家の子で、板東道場の長男。
姉の晴子を応援するのが何よりも楽しかったのですが、晴子のようには強くなれないことに気づいていました。
怪我をして休んだまま柔道をやめたハルに、納得のいかない晴子は口もきかなかったのですが…

さらに体育の授業に勝手に潜り込んで、素質のある学生を捜すという奇策に出ます。
群を抜いて体操が上手かった翔は、チアの混成チームの経験者。
ある理由があって、やめたのですが‥
じつはこの大学、女子のチアは非常に強いのでした。
女子との合同練習で馬鹿にしたような目で見られてしまい、萎縮したり。
OGの女性も手厳しいのですが、なんとコーチを買って出てくれます。

いささか無謀な展開だけど、いきいきしていて、とても楽しい。
作中にも出てきますが、タイプとしては「ウォーターボーイズ」に近いかな。
三浦しをんの駅伝ものとか、思い出しますね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「桐島、部活やめるってよ」

朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」集英社

高校時代をまだ生々しく覚えている若い作家の作品。
清新なデビュー作です。

バレーボール部のキャプテン桐島が突然、休部。
そう知らされた部員達は…

桐島は、小学校の頃からバレーボールをやっていて、ひときわ真面目で熱心だったのです。
性格は悪くない。一人だけ確かに能力も上だった。言っている内容も正しい。
が…
一人で皆を叱り続けるような形になり、桐島一人が浮いてしまったのです。
それぞれの気持ちが独白体で、わかりやすく。
桐島本人のは、ありません。

菊池宏樹、小泉風助、沢島亜矢、前田涼也、宮部実果、菊池宏樹という名前での章立て。
菊池は、桐島がやめると竜汰に聞いて、「マジで?」と聞き返す。
菊池は野球部に籍があるのですが、真剣になれず、それでも試合にだけ駆り出されたりしていました。
竜汰のほうは、部活に入っていない。友宏とバスケをしたり、そのあと桐島と一緒に帰ったりはしていたのですが。

小泉は、桐島のいるバレー部で、同じリベロ。
桐島の力は誰よりも認めていましたが、いなくなれば自分が試合に出られるということでもあるのです。
葛藤しつつ、孝介や日野らと桐島が気まずくなっていくのをただ見ていた日々。

亜矢は、ブラスバンド部の部長。
クラスの華やかなメンバーからは、外れています。
クラスでも一番カッコイイ竜汰、菊池、友宏とは話す機会もないのですが、実は好きな男子がいました。

前田は、映画部。
クラスでも特に地味なオタク二人で、行動しています。
意外にも高校生映画コンクールで賞を獲り、嬉しい驚き。
中学時代は放送部で、映画が好きなかすみと親しくなったこともありました。
今はすっかりキレイになったかすみとは、つきあいもないのですが‥
お互いに、忘れてはいない。

実果は、バレーボール部の孝介の彼女。
孝介のごく普通の高校生な単純さが、好きだったのです。
母と二人で暮らしていますが、じつは子連れ同士の再婚だったのが、事故で父と異母姉がなくなり、血の繋がらない二人が残ったという状況。
高校のクラスメートは誰も知らないことですが、一番複雑な家庭です。
亡き姉のカオリがやっていたソフトボールをやっているのですが‥

スポーツをしている感覚が生き生きしてますね。
スポ-ツは苦手だし、高校では経験ないから、熱心に部活やるって実感としてはわかんないですけど。
バレーボールで食べていくわけじゃないし?という子もいたりね。
高校生の表面的な階層みたいな物、その絶対的な感じと、あつれき。
実はそういうこととは別に、静かに積み重なっていく物やきらりと光る物がある。

こういうのって…
もう無理かなあとも思いつつ、いや皆が本気で嫌って追い出しにかかったのとは違うし、それぞれに振り返ったり、惜しいと思ったり…
これでは終われないんじゃ?!と希望も残されています。

作者は1989年生まれ。岐阜県出身。
早稲田大学文化構想学部。
2009年本書で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
大学ではストリートダンス部に所属。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

bベスト本 | i本屋大賞候補作 | l本屋大賞 | l直木賞 | l芥川賞 | l:日本エッセイスト・クラブ賞 | mf:世界幻想文学大賞 | mf:日本ファンタジーノベル大賞 | m:CWA賞 | m:MWA賞 | m:このミステリーがすごい! | m:アガサ賞 | m:マカヴィティ賞 | name:あさのあつこ | name:万城目学 | name:三上延 | name:三浦しをん | name:上橋菜穂子 | name:上野千鶴子 | name:中島京子 | name:乾くるみ | name:五木寛之 | name:京極夏彦 | name:仁木英之 | name:今野敏 | name:伊坂幸太郎 | name:佐々木譲 | name:佐藤多佳子 | name:佐藤賢一 | name:佐野洋子 | name:勝間和代 | name:北村薫 | name:原田マハ | name:坂木司 | name:大島真寿美 | name:大崎梢 | name:太宰治 | name:姫野カオルコ | name:宇江佐真理 | name:宮下奈都 | name:宮部みゆき | name:小川洋子 | name:小川糸 | name:山之口洋 | name:山崎ナオコーラ | name:山田詠美 | name:島本理生 | name:島田荘司 | name:川上弘美 | name:恩田陸 | name:有川浩 | name:朝井リョウ | name:木内昇 | name:杉本苑子 | name:村上春樹 | name:村上龍 | name:村山早紀 | name:村山由佳 | name:東川篤哉 | name:東野圭吾 | name:松井今朝子 | name:林真理子 | name:柚木麻子 | name:柳広司 | name:栗田有起 | name:桜庭一樹 | name:梨木香歩 | name:森絵都 | name:森見登美彦 | name:森谷明子 | name:横山秀夫 | name:橋本治 | name:池上永一 | name:津村記久子 | name:海原純子 | name:海堂尊 | name:湊かなえ | name:町田康 | name:畠中恵 | name:百田尚樹 | name:矢崎存美 | name:碧野圭 | name:磯崎憲一郎 | name:神田茜 | name:米村圭伍 | name:米澤穂信 | name:綿矢りさ | name:荻原規子 | name:菅野雪虫 | name:葉室麟 | name:西加奈子 | name:角田光代 | name:誉田哲也 | name:貴志祐介 | name:辻村深月 | name:近藤史恵 | name:道尾秀介 | name:長野まゆみ | name:香山リカ | name:高田郁 | oその他の作家 | o海外作家:C.J.ボックス | o海外作家:M.C.ビートン | o海外作家:P.Gウッドハウス. | o海外作家:R.D.ウィングフィールド | o海外作家:S.J.ローザン | o海外作家:アガサ・クリスティ | o海外作家:アラン・ブラッドリー | o海外作家:アリアナ・フランクリン | o海外作家:アリス・マンロー | o海外作家:アレグザンダー・マコール・スミス | o海外作家:アンナ・マクリーン | o海外作家:アン・クリーヴス | o海外作家:アン・タイラー | o海外作家:アン・マキャフリイ | o海外作家:アーシュラ・K・ル=グウィン | o海外作家:アーロン・エルキンズ | o海外作家:エミリー・ブライトウェル | o海外作家:エリザベス・ギルバート | o海外作家:エレイン・ヴィエッツ | o海外作家:エレン・カシュナー | o海外作家:カズオ・イシグロ | o海外作家:カミラ・レックバリ | o海外作家:カルロス・ルイス・サフォン | o海外作家:キャロル・オコンネル | o海外作家:キンバリー・ウィリス・ホルト | o海外作家:ギヨーム・ミュッソ | o海外作家:クリストファー・プリースト | o海外作家:クレイグ・ライス | o海外作家:クレオ・コイル | o海外作家:ケイト・キングズバリー | o海外作家:ケイト・モス | o海外作家:ケイト・モートン | o海外作家:ゲイル・キャリガー | o海外作家:コニス・リトル | o海外作家:コニー・ウィリス | o海外作家:コリン・ホルト・ソーヤー | o海外作家:コルネーリア・フンケ | o海外作家:サラ・ウォーターズ | o海外作家:サラ・スチュアート・テイラー | o海外作家:サラ・パレツキー | o海外作家:シャロン・フィファー | o海外作家:シャンナ・スウェンドソン | o海外作家:シャーリィ・ジャクスン | o海外作家:シャーレイン・ハリス | o海外作家:シャーロット・マクラウド | o海外作家:ジェイソン・グッドウィン | o海外作家:ジェイニー・ボライソー | o海外作家:ジェイン・オースティン | o海外作家:ジェフリー・ディーヴァー | o海外作家:ジェフリー・フォード | o海外作家:ジェラルディン・ブルックス | o海外作家:ジャニータ・シェリダン | o海外作家:ジャネット・イヴァノヴィッチ | o海外作家:ジュンパ・ラヒリ | o海外作家:ジョアン・フルーク | o海外作家:ジョナサン・キャロル | o海外作家:ジョン・ハート | o海外作家:ジョージ・R.R.マーティン | o海外作家:ジョー・ウォルトン | o海外作家:ジル・チャーチル | o海外作家:スティーグ・ラーソン | o海外作家:ステファニー・メイヤー | o海外作家:スーザン・イーリア・マクニール | o海外作家:スーザン・プライス | o海外作家:スー・グラフトン | o海外作家:タニス・リー | o海外作家:ダイアナ・ウィン ジョーンズ | o海外作家:ダイアナ・ガバルドン | o海外作家:ダン・ブラウン | o海外作家:ディック・フランシス | o海外作家:デイヴィッド・アーモンド | o海外作家:デニス・ルヘイン | o海外作家:デボラ・クロンビー | o海外作家:トレイシー・シュヴァリエ | o海外作家:トーベ・ヤンソン | o海外作家:ドナ・アンドリューズ | o海外作家:ドナ・ジョー・ナポリ | o海外作家:ドミニク・シルヴァン | o海外作家:ドン・ウィンズロウ | o海外作家:ナンシー・ピカード | o海外作家:ネレ・ノイハウス | o海外作家:ノア・ゴードン | o海外作家:パウロ・コエーリョ | o海外作家:パトリシア・A.マキリップ | o海外作家:ピーター・キャメロン | o海外作家:ピーター・ディキンスン | o海外作家:ピーター・トレメイン | o海外作家:ピーター・ラヴゼイ | o海外作家:フェイ・ケラーマン | o海外作家:フランセス・ファイフィールド | o海外作家:フレッド・ヴァルガス | o海外作家:ヘイリー・リンド | o海外作家:ヘニング・マンケル | o海外作家:ベリンダ・バウアー | o海外作家:ベルンハルト・シュリンク | o海外作家:ポール・ドハティ | o海外作家:マイクル・コナリー | o海外作家:マーガレット・アトウッド | o海外作家:マーセデス・ラッキー | o海外作家:ミネット・ウォルターズ | o海外作家:ミュリエル・バルベリ | o海外作家:メアリ・W.ウォーカー | o海外作家:メグ・ガーディナー | o海外作家:メグ・キャボット | o海外作家:ユッシ・エーズラ・オールスン | o海外作家:リサ・クレイパス | o海外作家:リチャード・ノース・パタースン | o海外作家:リース・ボウエン | o海外作家:ルーシー・モード・モンゴメリ | o海外作家:レジナルド・ヒル | o海外作家:レスリー・メイヤー | o海外作家:レーネ・レヘトライネン | o海外作家:ロイス・マクマスター ビジョルド | o海外作家:ロビン・ホブ | o海外作家:ローズマリ・サトクリフ | o海外作家:ローズマリー・マーティン | o海外作家:ローナ・バレット | o海外作家:ローラ・チャイルズ | o海外作家:ローラ・リップマン | o海外作家:ローリー・キング | o海外作家:ローレンス・ブロック | o海外作家:ヴィヴェカ・ステン | o海外作家:ヴォンダ・N.マッキンタイア | お人形 | お人形着物 | お茶 | アニメ・コミック | ウェブログ・ココログ関連 | グルメ・クッキング | コージー | ジェイドール | ジェニー | スイーツ | ドールmomoko | ドール:Misaki | ドール:SD | ドール:シドニー | ドール:ピュアニーモ | ドール:プーリップ | ドール:ユノアクルス・アズライト | バービー | ファッション | ファンタジー | フィギュアスケート | ベスト本 | ミステリ | リカちゃん | ロマンス | 介護 | 作品 | 健康・ダイエット | 児童書・YA | 動物 | 国内作家:あ行 | 国内作家:か行 | 国内作家:さ行 | 国内作家:た行 | 国内作家:な行 | 国内作家:は行 | 国内作家:ま行 | 国内作家:や行 | 国内作家:ら行 | 国内作家:わ行 | 国内小説 | 家事 | 心と体 | 日記 | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 歴史もの | 海外小説 | | 病気体験 | 着物 | 経済・政治・国際 | 絵本 | 舞台・バレエ | | 言葉・歌 | 評論・エッセイ | SF