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おすすめ本

「かたづの!」

中島京子「かたづの!」集英社

江戸時代のはじめに、唯一実在した女大名を描いた作品。
彼女に出会った羚羊を語り手に、ファンタジックな展開を見せます。

慶長五年(1600年)、角を一本しか持たない羚羊が、目力の強い少女に命を救われて、一目惚れ。
八戸南部氏20代当主である直政の妻・袮々でした。
羚羊は城に出入りし、袮々を見守ります。
寿命がつきた後も一本の角に意識は残り、いざというときには思わぬ活躍をする南部の秘宝・片角(かたづの)となるのでした。

幸せな年月が続いたある日。
城主であるまだ若い夫と幼い嫡男が、遠方で命を落とします。
叔父である本家の利直の謀略と思われますが、袮々は女ながらに領土を守ることを決意。
天下分け目の時節、跡継ぎに任せられるときまでと、駆け引きを重ねながら。

家臣との結婚を迫られたり、娘の婚約をほごにされたり、頼りになる人物を召し上げられたり、遠野に配置換えとなったり。
戦で大事なこととは、やらないのが一番。
どちらに参戦しているか、幟を立てて存在を示すだけでいい場合もあると。
父祖の教えを守りつつ、あの手この手で家臣と領民を守ろうと懸命に働く袮々。
河童が出てきて、遠野の領地とつながったり。
「かたづの」として秘宝となっている羚羊の出会う不思議なものたちとは‥

袮々の苦労が実感ありすぎて、その運命が哀しい部分と、妖怪?たち(複数!)の存在感の強さが、摩訶不思議な混ざり具合。
まさかこんなところまで、絡んでくるとは。
河童に惚れられていたという話を、険悪だった母娘が互いにして大笑いするシーンが印象に残りました。

第28回 柴田錬三郎賞
第4回 歴史時代作家クラブ賞作品賞
第3回 河合隼雄物語賞
確かに、インパクトの強い、なかなか出会えない物語です☆

「小さいおうち」

中島京子「小さいおうち」文藝春秋

直木賞受賞作。
戦前のある家庭で働いていた女中さんの回想という形式の小説。

良家には女中がいた時代。
嫁入り前の行儀見習いという意味もあって、行儀や家事を仕込まれて、お嫁に行ったものだったんですね。
昭和5年、尋常小学校を卒業して、東北から帝都東京に出た娘・布宮タキ。
上の4人も奉公に出ていたので当然と思っていました。

帝都東京は美しい都会で、目をみはり、わくわく。
山の手のサラリーマン家庭では女中は払底していたので、決して待遇も悪くなかったのです。
運良く、若奥様の時子と仲良くなれました。
時子は髪をこてで丁寧に形付け、洋装も似合う軽やかな美女。
姉妹のように仲良くなり、奥様が平井常務と再婚するときにも一緒に行ったのです。

赤い三角屋根が目立つ、美しい洋館。
年の離れた美しい妻のために建てられたのでしょう。
主人の地位や財産からすれば、そんなに大きくはない、おうち。
自分のための小さな部屋に、一生住みたいと思うほど嬉しかったタキ。
恭一ぼっちゃんが小児麻痺にかかったために、タキの結婚話も消えて、尽くす暮らしになります。
奥様への献身。恭一ぼっちゃんへの優しい気持ちと家事への熱意、家への思いに引きこまれます。

若い社員の板倉と、奥様の淡い恋が、危険な領域にさしかかっていくのもじわじわと描かれます。
時代が暗くなるのに伴う変化や、少しずつ見えてくる歪み、別な視点から見る違いも含めて、読まされます。
一人称で語っている場合、主観的な書き方だから~正確な証言とばかりも言えない面があるわけですね。

戦中戦後の苦難も乗り切るタキのたくましさ。
親を亡くした甥たちを育て、茨城で甥の一家の近くに住み、老後は孤独がちですがまずは悠々自適の暮らし。
甥孫の健史に手記を覗かれて、戦争が始まった時代がそんなに呑気だったはずはないと言われるのですが…
すぐ出征する家族でもいない限り、案外そんなものだったのではという気もしますね。
長く実態が報道されなかったこともあるしねえ。

タキが家事に絶対的な自信を持っているため、甥嫁には煙たいというのに苦笑。
最終章では、あの板倉がカルト的な漫画家イタクラ・ショージとなっていたという。
「小さなおうち」とは、板倉が時子とタキの暮らす家を思って描いたものでした。
大伯母のことが気になって、イタクラの記念館を訪れる健史。
戦争の影と個人の思い、大きな時代の流れをも感じさせる印象に。
よくぞここまで書き上げたものです。

「平成大家族」

中島京子「平成大家族」集英社

子ども達が巣立ったはずの家へ、いろいろな理由で再び家族が舞い戻ってくるという話。
夢に描いたようには、なかなかうまくいかないもの…
幸福な人生とは?
試行錯誤しつつ、にぎやかに展開する家族の行方。

一家の主・緋田龍太郎は、歯科の仕事をほぼ引退して、悠々自適のはずでしたが…
2006年、30歳になる長男・克郎は引きこもり~父親はふだん忘れようとしているその姿を見かけると、いらいらしてしまう毎日。

長女・逸子は期待をかけた愛娘でしたが、勝手に結婚して(父の観点からすれば)出て行ったのが、夫が破産して、親子三人で転がり込んで来ます。
孫息子・さとるは、有名私立中学から地元へ転校することになって、いじめに脅え、狭い部屋で親と同居する生活から切れて、物置に立てこもります。

次女の友恵は、さばさばしたキャリアウーマンと思われていましたが、じつは不妊治療に苦しみ、離婚してやはり引き上げてくるのでした。
若手の売れないお笑い芸人と関係があり…

龍太郎の妻・春子は、ぼけかかった実母のタケを介護する生活。
こんな大変な家族はいないように思うのですが、同窓生と会うと、そんなのは大したことないと次々にもっと苦労している例を聞かされ、ほとんど話を封じられてしまう。まあ、そんなもんですか?
タケの言動がおかしみを添え、平穏な状況なら一番心配なはずだけど、けっこうほっとさせる要素に。

一方、克郎とヘルパーのカヤノとの間に思いがけない愛が…
それぞれの視点から本音が語られ、かなりリアル。
一時は危機的ですが、ユーモラスな描写で笑える余裕はあり、徐々に道が開けていく~救いのある展開になっています。
ちょっと元気が出るかも?
作者は1964年生まれ。03年、「FUTON」でデビュー。

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