「明日のことは知らず」
宇江佐真理「明日のことは知らず 髪結い伊三次捕物余話」文春文庫
シリーズ11作め。
作者はデビュー20周年だったそうです。
廻り髪結いの伊三次は、町方同心の不破親子の手伝いもつとめているため、捕物にも関わっています。
だんだん、若い世代の話が増えていましたが。
今回は伊三次の出番が続き、女房で芸者のお文姐さんのいいシーンもあって、古くからのファンも満足する短編連作となっています。
「あやめ供養」
伊三次が髪結いに行ったことのある町医者の家族に事件が起こり、容疑者として直次郎の名が。
久々の再会に驚く伊三次。
直次郎は、すっかり良い父親になっているようなのだが?
「赤い花」
魚問屋の末娘は、大柄な男勝りで、店にも出て働いています。
そんな娘に、縁談が‥?
「赤のまんまに魚そえて」
伊三次はお礼すると言われたとき、弟子の九兵衛のために、髪結いに持っていく台箱を誂えてもらうことに。
その祝いの席の準備が始まります。
急に、老舗の若旦那の髪を頼まれた伊三次でしたが‥
「明日のことは知らず」
伊三次の息子の伊代太が通りがかりに見かけ、ほのかに憧れていた女性の身に何が‥
一方、武家に奉公に出ている不破の娘・茜は、女ながら武芸を生かせる職場に、何年かはいることになっています。
跡継ぎの男の子の世話と護衛をしていますが、殿様の最愛の子ではないため微妙に肩身が狭い立場。
身体の弱い少年の覚悟と諦念と優しさが切ない。
伊代太と茜、今は遠く離れている二人が、ふと互いを想う。
人情味ある展開で、しみじみ。
文庫化された2012年、作者は闘病中で、惜しくもその後亡くなられました。
まだ読んでいない作品を少しずつ読んでいきます。
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