「三匹のおっさん ふたたび」

有川浩「三匹のおっさん ふたたび」新潮文庫

「三匹のおっさん」の続編。
元気なおっさん達が、町内のちょっとした事件や家族の直面する問題をめぐって活躍します。

剣道の達人のキヨ(清田清一)、がっちりした武闘派のシゲ(重雄)、一見大人しそうだが実は危険な頭脳派のノリ(則夫)。
3人が力を合わせれば、なんでも解決!

清田家の嫁・貴子はお嬢さん育ちで早く結婚し、舅から見ていささか危なっかしい女性でした。
一念発起してパートを始めますが、そこでトラブルが。
大人の女性も何かのきっかけや経験あって、少しずつ成長するのが頼もしい。

キヨの出入りする本屋では、中学生による万引きが多発。
キヨの孫息子・祐希は、見た目は万引き犯に間違われるような男子だけど、中身は真面目。
中学生をとっ捕まえたおっさんらは、しっかり説教。
祐希の存在も子供らには睨みが聞いたのが面白かったり。

ゴミの不法投棄、連続する不審火、近所のお祭りをどうするか、といった起こりそうな事件と絡めつつ、対抗するようにパトロールを始めた別なおっさんが出てきたりとユーモアも含めて。
身近なテーマでわかりやすく、まだまだ枯れないおっさん達の存在が嬉しくなります☆
頑張ってくれ!(笑)

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「クジラの彼」

有川浩「クジラの彼」

有川浩ならではの自衛隊もののラブコメ短編集。
プロ意識と切ない思いがせめぎ合う展開~甘い満足感にひたれます。

「クジラの彼」
「海の底」の番外編。冬原の彼女の視点で、潜水艦乗りの恋人になるとめったにメールすら来ないという付き合い。
時には辛くなるけど‥?

「ロールアウト」
航空設計士の女性が自衛隊機を見ての困惑と努力。
経費節減のためトイレの場所をどう作るか?そんな悩みから出合うこともあるのです。

「国防レンアイ」
陸上自衛隊の女性隊員はなかなか恋愛に恵まれない。
自衛隊仲間とは転勤で終わり、民間の男性には偏見を持たれ‥
いやいや~身近に見守っている良い男がいるんですよ。

「有能な彼女」
「海の底』の番外編。夏木の場合は?

「脱柵エレジー」
自衛隊では隊員が脱走することを脱柵と呼ぶんですね。恋人にせがまれて、自らも経験した人物が、新人を指導する立場に。

「ファイターパイロットの君」
「空の中」の番外編。
パイロットの女性が結婚しましたが、その生活は‥?

取材を生かして専門的な問題をさまざま取り入れた展開。
男前な彼女達とがっつり組むお似合いの男達。
持って行き方が上手いです☆

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「旅猫リポート」

有川浩「旅猫リポート」文藝春秋

とても良かった!
有川さんの作品は、有川さんらしいなあとか、こういうところ上手いんだよなと思いながら読むことが多いんですけど、この作品は作者が誰か途中で忘れていました。

別れを経験したすべての人に。
別れを心配しているすべての人に。
心温まる物語です。

ある事情で猫が飼えなくなり、宮脇悟は猫のナナを連れ、銀色のワゴンに乗って、旅に出ます。
飼ってもいいという幼馴染の友人たちを訪ねて。
ナナは牡猫で、しっぽが数字の7のように曲がっているのです。
ナナの視点からの話が自然で、サトルとの出会い、5年間の暮らしが楽しげに、そして秘密を抱えたサトルの気持ちもお見通しだったり。
何とも猫らしくて、賢くて、いきいきしています。

サトルが小学生のとき、スイミングスクールの友達だったコースケ。
一緒に拾った猫を飼うのを親に反対されて、大騒動になった経験がありました。

中学のときの友達の吉峯。
高校のときの友達のスギとチカコ。
そして叔母のノリコのもとへの最後の旅。
転校が多かったサトルには、各地に大事な友達がいました。
どこかすっきりしない感情を抱えていた友達にも、再会でまた心動くものが。
サトルはあまりにもいい子なんだけど‥

叔母のノリコが口下手なのも、何だかそれらしい。
北海道でのナナの思いがけない行動に、もう‥
生い茂る草葉が波打つように、雪原にも日差しは降り注ぐように。
愛溢れる結びつきは、ある限界をも超えていくのですね‥
猫とのつながりを実感している人には、もちろんのこと。
哀しみがとけていくように暖かく広がる感覚は、多くの人に読んでもらいたい。
何かあったときにはもう一度、読みたいと思わせます。

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「空飛ぶ広報室」

有川浩「空飛ぶ広報室」幻冬舎

ドラマを先に見てしまったので、少し印象を冷ましてから読みました。
自衛隊の広報室の話。
パイロットの夢を断たれた航空自衛隊の青年と、報道部からはずされて自衛隊の取材をすることになった若い女性との出会い。
面白かったですよ。

空井大祐は、ブルーインパルスのパイロットになるのが夢でした。
実現を目前にして、交通事故で罷免に。普通に生活できるぐらいに回復しても、戦闘機パイロットはとても無理なのです。
市ヶ谷にある防衛省の広報室に配属されることに。
室長の鷺坂は詐欺師と異名をとる曲者ながら、鷹揚に対処してくれる上司。
ベテランの比嘉は昇進を望まず地道な仕事を続けていて、階級では上だが何も出来ない新米の空井を指導してくれました。

そんなところへ、テレビ局から新人ディレクターの稲葉リカがやって来ます。
報道の仕事できつい取材を経験してきたリカですが、自衛隊のことは何も知らず、つっかかるような物言い。
そんなリカに自衛隊のことを理解してもらおうとする空井。広報室の面々も変わったキャラ揃い。
「自衛隊のイメージが良くないことを知っても怒ってはいけない、それは広報の責任なのだから」という鷺坂の言葉には呻らされます。

航空自衛隊が空軍じゃないことぐらい、知ってる!けどねえ‥
他に何を知ってるかというと、確かに‥??

女を捨てた振る舞いをしている「残念な美人」の柚木さんが印象深かったですね。
女性が登用されたばかりの年代は厳しい経験をするもの。まして自衛隊では‥
ドラマでもほとんど生かされ、しっかり幸せになっていて満足。

俳優が頭にくっきり浮かんでしまいます。
空井の号泣シーンは綾野剛ならでは、他の俳優じゃちょっと。
かなり合っている配役!だけど、先に読んでいたら‥ヒロインは違ったかな。優等生的なのは合ってるけど、何年も仕事している人に見えないんで~でも健康そうでつるっとしたところが話を重くしなくていいのかもね。
ドラマのほうが気恥ずかしいような若々しいロマンスにしてあるし~有川作品としては十分ありうるので、原作があっさりしていてむしろ意外。
あの日の松島が終盤に来るため、ということもあったのでしょうか。

有川浩に小説の企画を持ち込んだリアル鷺坂(仮)は、いい仕事をしましたねえ!

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「図書館危機」

有川浩「図書館危機 図書館戦争シリーズ3」角川文庫

図書館戦争シリーズ3作目。
笠原郁は長身の活発な女子で、図書隊の防衛員。
2作目の最後に、憧れの王子様がほかならぬ堂上教官だとやっと気づき‥?

気づいたことを堂上本人に教えるわけにはいかないけれど、どんな顔をして会ったらいいかもわからない。
おくての郁ならではの大混乱を楽しく描きます。
まっすぐにではないけど、二人の間柄は少ぅしずつ近づいていくのですね。

高校生の毬江が盗撮され、犯人探しに結集する図書隊。
感情を表に出すことの少ない小巻の怒りはもちろんのことでした。

図書隊の昇任試験の時期が近づき、筆記が苦手な郁は大慌て。
だが本当に危ないのは、優等生の手塚のほうだったのです。
実技が「子供への読み聞かせ」という課題だったから。子供が苦手な手塚は柴崎に相談を持ちかけます。
情報通でクールな美人の柴崎と、真面目すぎるほどの優等生だが兄への葛藤を抱えた手塚が、微妙な距離感で付き合うのが面白いですよ。

「週間新世相」で人気俳優のムック本を出すことになりましたが、思いも寄らないことで暗礁に乗り上げます。
差別用語に設定されてしまった言葉を使うと良化隊に狙い撃ちされるという難しさ。
「床屋」が差別語とはね‥
玄田隊長の出したアイデアは?

地方の美術館で賞をとった絵画作品が、良化隊に没収されそうな危機に。
特殊部隊が警護に出向しますが、そこは郁の出身地。
戦闘職種であることが母親にばれて、ひと騒動。これも課題の一つでしたね。ようやく母親と向き合い、これまで知らなかった事情も知ることに。

事なかれ主義の図書館長の方針で、防衛隊は無力化されていて、一人だけ女子寮に泊まる郁は嫌がらせに遭います。防衛隊は一番下のカースト扱いだったのです。
戦闘もこれまで以上に大規模でリアルに描かれ、こういう理由での闘いが今さらながらショッキング。

いくつものカップルの微妙な関係を巧みに織り込みながら、面白おかしく展開するストーリー。
大事なことは誰かがきっぱり言うのが、小気味いい。
骨のある内容なんですよね。
それをいろんな味付けでぐいぐい読ませるのには、感心します。

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「レインツリーの国」

有川浩「レインツリーの国」新潮文庫

ネットで知り合った20代半ばの男女の恋愛もの。
聴覚障がいを持つ彼女の事情も含めて、丁寧に描かれます。

かって愛読した作品のラストが気になっていた伸行。
高校生が活躍するSFアクションもののハチャメチャな楽しさにはまっていたら、彼女が彼との別れを選ぶという結末にショックを受けたのです。
仕事にも慣れてきた頃、ネットで感想を検索してみたら、「レインツリーの国」というサイトを見つけます。
ひとみというハンドル名の女性が書いている感想に興味を持ち、伸のハンドル名で書き込むと、互いに好印象で、3日とあけずにラリーが続くようになりました。
会いたいという願いを最初は拒んだひとみでしたが、紀伊国屋で待ち合わせることになります。

重たそうな髪の少し野暮ったい彼女。
それは想定内でしたが、ところどころ不審な点があり、しまいに伸行は爆発してしまう。それは誤解だった‥
彼女は補聴器をつけていて、それでも聞き取れない場合があったのです。
障がい者枠で就職していましたが、身近な社員の理解を得られず、実は孤立している苦しみがありました。
いちいち説明なんかとてもできないと思ってしまいがちだけど、ほんとは説明したほうがいいことも‥そのへん、下手なところがあるんですね。

時にはぶつかり、行き違いを重ねつつも、また手を差しのべあう二人。
聴覚障がいについても適度に説明されていると思いますが、障がいに限らず、育ち方の違いやコンプレックスのあり場所などで、互いにこういった問題はよく起こるものと感じられます。
メールのやり取りがリアルでちょっとイタイ‥遠い昔に~身に覚えが‥?
そういう意味で、恋愛として普遍的なものを感じました。
彼にちょっと近づく女の子も、恋愛至上主義にしてはさばさばしていて、有川さんらしい。

めんどくさい女の子の気持ちを理解したいと思う寛大な伸。
その真っ直ぐさがまぶしい~!
何の苦労もしていないからではなく、彼にも人にはわかりにくいかもしれない経験があるのでした。
それを乗り越えた後だからの知恵の回り方。
「理屈っぽい」という理由で今まではフラれていたというのが笑えるけど。
お似合いなのね~ふふふ♪
用心して距離を置いていたのに、いつの間にか彼に甘えている彼女が、一歩ずつ成長していく甘~いお話です☆

図書館シリーズの2作目からのスピンオフ作品。
内容はこれだけで独立しているので、恋愛物が読みたいときにどうぞ!

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「図書館内乱」

有川浩「図書館内乱 図書館戦争シリーズ(2)」角川文庫

映画も公開されている~図書館戦争シリーズ2作目。
楽しみに取ってありました。
間が開きすぎて、設定を忘れていたけど‥
戦争というと剣呑だけど~本をきびしく検閲しようとする一派(メディア良化委員会)に対し、本を読む自由を守ろうとするのが、図書隊。

笠原郁は、一等図書士として関東図書隊に入隊。
戦闘職種である図書特殊部隊の配属だということを、保守的な両親には隠しています。
その両親が突然、見学に来るという‥
みなに協力を頼んで、事務職のふりをすることに。
心配性で子離れできない母親が重たくて、苦手な郁。
親の前では良い子に振舞ってしまう郁に気がつく堂上でした。
堂上に接する父のほうは、どうやら色々察して、挨拶に来たよう。なるほどね。

小牧の家の近所に住む中澤毬江という高校生が登場。
聴覚障害がある毬江に対して、10歳上の小牧は兄のように何かと親切にしていて、毬江は薦められた本を借りに図書館によく来ていました。
ところが、そのことが誤解を受け、良化特務機関に小牧が連行されてしまいます。
4日帰らない小牧を案じて、郁と同期の手塚は、疎遠な兄を頼ることに‥

郁と同室の柴崎麻子は、郁とは対照的な要領のいい美人で、頭は切れるが、意外に恋愛には恵まれていない。
図書館利用者の男性・朝比奈にランチを誘われ、思惑のある周りに盛り上げられて、行ったほうが面倒がないと、応じることにしますが‥?

主要キャラが少しずつ掘り下げられていき、事件の展開と絡み合って、恋愛模様も。
郁があこがれの王子様の正体に気づくまで。

甘々な展開でキュンキュン~気恥ずかしいぐらい。
その背景には骨のあるストーリーがあり、その上なぜか皆、口が悪いのよね~。
その絡み具合がうまくて、読んでいると~なんだか元気が出てきます!

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「ヒア・カムズ・ザ・サン」

有川浩「ヒア・カムズ・ザ・サン」新潮社

2作収録。
7行の設定から書いた小説と、同じ7行から舞台化されたものを見て書いた小説と。
登場人物は同じですが、途中からの展開が違います。

古川真也は、出版社に勤める30歳。
実は物に触ると、そこにこめられた過去の感情記憶を読み取ることができる能力があるサイコメトラー。
普段はできるだけ封印していますが、編集者としての仕事に活用できる場合もあります。

同僚の大場カオルとは、恋人同士。
カオルの父親が渡米するときに両親が離婚して、以来20年父とは会っていなかったのです。
今回帰国したHALというペンネームの映画脚本家・白石晴男を雑誌「小説ポラリス」で取り上げることになりますが、それがカオルの父なのです。
売れない脚本家だった父は、夢をあきらめられず、アメリカで再出発する決意をしたのですたが、そのとき母はついていくことを拒んだという。

アメリカではなおさら成功するわけもないという苦い現実。
一度も帰ってこない父への不満と葛藤。
20年会っていない間に何があったのか?という謎が、パラレルな二つの物語の存在を可能にしています。
面白い企画ですが~読み終わると、ちょっと混ざっちゃいますね。
帰国を待ちわびた少女の頃のカオルが、かわいそうで。
この父親、痛々しいし‥
いや、父親の実像が二つの話で違うのが~だんだん見えてくる話なんですけどね。

カオルの父親の話を親身に聞こうとする真也。
やたらと景気のいい自慢話をする父親に、そこまでのはずはないといたたまれない思いもしつつ。
時には能力を使って真実を探り、カオルのために良かれと願うのです。

なんだか恋人が父の味方になってしまったように感じるカオル。
何も悪いことをしていない自分のほうが、なぜ折れなければならない?
野暮に見える編集長が、真也の気持ちをカオルに気づかせます。
親を許せないままでいると、後悔することになるのを心配しているのだと。
いつか死なれたら、カオルが自分を責めることになる。

真也もまた、カオルがどうしたいのか聞くという基本を忘れていました。
一度でいいから謝ってほしいというカオルの思い。
このあたりはなかなか面白くて、さすが!有川さん。

結婚を控えて、真也が自分の能力を告白しなくてはと思いつめますが、この件は?
カオルは太っ腹に受け止めます。

一つ目の作品のほうが印象が強いです。
2作目はたぶん、舞台の上で俳優が演じたら、意外な展開が光ってくるのでしょうね。

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「シアター!<2>」

有川浩「シアター!<2>」メディアワークス文庫

新年だから、明るく、元気が出るような作品をご紹介したいなあと思いまして。
つぶれかけた小劇団の再生、がテーマの作品です。
これはその2作目。
癖のあるメンバー達それぞれに、恋の予感…?

売れない小劇団「シアター・フラッグ」が、300万円の負債を抱えて経営の危機に陥りました。
主催の春川巧は人が良くて、いささか気が弱い。
その兄・春川司が乗り出したのが、一作目でした。
お金を出資する条件として、前作で「2年間で劇団の収益から300万円を返せ、それが出来なければ劇団をつぶせ」という要求を突きつけたのです。
この兄弟の父親が実は、売れない俳優。
家族が皆、苦労したあげくに、父は若くして亡くなってしまったという生い立ちから、弟にも駄目なものならば見切りを付けて欲しかったのでした。

さて、今回は~次の公演時に、オリジナル・グッズに何を作るかという相談から始まり、次から次へと問題噴出。
声優として成功している羽田千歳が入団したことで、知名度は上がったのですが、それが内部の軋轢の元ともなるのでした。
俳優たちそれぞれの複雑な思い…
鉄血宰相こと春川司が、無愛想ながら、ここぞというときには出てきます。
当てにしないようにと、出来るだけ突き放しつつ。
自分たちで出来るようにならなければダメなのだという言葉も、劇団員に徐々に浸みています。

劇団の公演の準備が進む中、問題点を見つけながら、人間関係が展開していくのが上手いです。
巧の失踪という事件も。
いや~、基本はユーモラスで叱咤激励調なんですが、ふいに泣かせどころをついてきますね。
舞台にかける思い。
お互いにかける思い…
意外なカップルが誕生しそう?
いや、カップルじゃないのか??
あらあらあら~?と楽しく読めます。

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「海の底」

有川浩「海の底」角川文庫

有川さんの初期作品、自衛隊三部作の一冊。
二人の若くやんちゃな自衛官の登場から始まります。
SFというよりパニック物なので、わかりやすい。
おりしも米軍横須賀基地が春の桜祭りで開放される日。
ザリガニのような甲殻類が巨大化して人間より大きくなったのが横須賀に大量に上陸、襲いかかってくる。
怪獣というほど大きくはないが、すごい数と勢い。
桜祭りはパニックに。常識では対応できない‥

自衛隊の潜水艦は、米軍基地側にあるんだそうで。
潜水艦「きりしお」が停泊中。甲板にいるのは、海上自衛隊の夏木大和三尉と冬原春臣三尉という実習幹部。
ごつい顔で直情的な夏木と、冷静で優しげな冬原は一見対照的。
艦を乗っ取ろうとするテロが可能かどうかという模擬戦を行ったのがばれて、腕立て伏せ中でした。
上官は怒鳴りつけつつも、こういう跳ねっ返りが、危機に臨んでは役に立つと思ってもいたのです。

逃げてきた子供らを、かろうじて潜水艦に入れるだけは出来た二人の自衛官。
甲殻類にぎっしり囲まれて、身動きがとれなくなります。
自衛官としてはこれを外に漏らすことも出来ないという。自分で公表したら懲罰物なんだそうで。
子供が自分の携帯で親にかけるという形で、マスコミにリークします。
未成年者13人が取り残されたということで、騒動に。

子供らの面倒をいかに見るかという問題が、けっこう大きい。
たった一人の女の子・森生望が高三で17歳。けなげに頑張りますが、我慢するのになれている風情なのが、夏木は気になり始めます。
望に絡んでくる男子・遠藤圭介もいて、望よりは年下の中三だが、男子のリーダー的存在。
ご近所のイジメや葛藤が、非常時にも持ち込まれることに。

警察の機動隊が必死で頑張り、すぐには動けない自衛隊をいかに引っ張り出すか。
現地対策本部に、警察庁の三時間・烏丸警視正率いる派遣幕僚団が乗り込んできます。
県警本部の明石警部は、軍事オタクの掲示板をチェック。
明石は本部のリーダーになるほどの地位にはないが、実行力があるので少しずつ口を出しているうちに、おおかたを一番把握しているのは明石と、烏丸に見抜かれることに。

警察はこれほどの破壊力がある生き物に対して、対抗するほどの武器は持っていない。
自衛隊の出番なのに、こういう場面は想定外だったため?!に出動が遅れる。
例外的な災害出動ということにやっとなるのでしたが‥

日本の危機管理に問題があるという指摘は、今では洒落にならないけど‥
いや、危機管理については、みんなで勉強しましょう!
実行する権限のある人は、特にね。
そういう人を動かしましょう。

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