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おすすめ本

「私のなかの彼女」

角田光代「私のなかの彼女」新潮社

プラチナ本という紹介があり、傑作を読み落としていたのか!?と読んでみました。
作家になる女性の話で、具体的には違っても、自伝的要素もあるのかもと思わせます。

本田和歌には、大学時代から、仙太郎という恋人がいました。
仙太郎はアーティストとして個性を認められ、ちょっとしたスターに。
とくにやりたいこともなく就職した和歌は、結婚を夢見つつ、置いていかれた気分。

祖母のタエが作家志望であったことを知り、どんなことがあったのか想像をめぐらして、初めて小説を書いてみます。
ボーナスでワープロを買い、記念にと応募した作品がなんと受賞。
母親には露骨に嫌がられますが、いつしか作家として生活することに。
祖母は若い頃、作家修行に先輩作家の元に身を寄せ、家族にとってはスキャンダルだったらしい?

売れなくなった仙太郎と、仕事に打ち込む一方の和歌とのすれ違い。
とうに別れてもいいのではと傍からは思うほどだけど、そんなものかも知れないですね‥
致命的なことが起きるまでは。

仕事にのめりこんでいく状態。
パートナーにわかってもらいたい気持ち、認めてほしい気持ち。
それが無理だと気づき始めても‥

祖母のタエについて少しずつわかっていくことがあり、そのときに応じて和歌の解釈も変わっていく。
最後のほうの解釈に救いが感じられます。
ちょっと痛いけど、それだけ、読み応えのある内容でした☆

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「今日も一日きみを見てた」

角田光代「今日も一日きみを見てた」角川書店

初めて猫を飼った角田光代さん。
おずおずと可愛がり、感嘆し、だんだんと愛が深まっていく様子が、控えめな筆致で描かれています。

猫好きなら、わかるわかるの連発!
最初は犬派だった作者が書いているので、猫好きでない人にも、入っていけるでしょう。

トトちゃんの、なんて可愛らしいこと。
大きな目、柔らかい身体、お茶目な態度、優美なポーズ。
そっと寄りそってくれる猫らしい優しさと、猫らしくない?ちょっと、とぼけたところも(笑)
角田さんとダンナさまの撮った写真ならではの、信頼感溢れるくつろぎぶり。
見ているだけで、癒されますね。

どちらかといえば犬派と自認していた角田さん。
大ファンである作家(西原理恵子)さんから、いきなり、子猫が生まれたら欲しいならあげるという話をされて、驚きつつも、もともと猫好きなご主人は大喜び。もちろん、否やはありません。
ドキドキしながら一緒に、子猫が生まれるのを待つのです。
そして、後に‥
なぜ、あのとき、子猫をあげるといわれたのか、がわかり‥

猫飼いはすべての猫の幸せを願うようになる。
そのわけとは‥
共に暮らし、目で追い、触れ合い、心通い合う。
この幸せを多くの人が実感してくれますように。
出来るだけ長く続きますように☆

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「平凡」

角田光代「平凡」新潮社

もしもあのとき、違うほうを選んでいたら?
そんな思いを抱えた女性たちの人生に、何が‥
リアルにありがちな悩みを、いくつかのケースで、面白く読ませます。

「もうひとつ」
夫婦のギリシャ旅行に、もう一組の友人カップルが同行することに。
いい顔をしなかった夫の予想も間違いではなかった‥
問題の二人は不倫のカップルで、しかも途中で結婚式を挙げたいと(仮の、ですが)言い出し‥?!

「月が笑う」
結婚6年の平穏な生活。
突然、妻に離婚して欲しいと言われた夫が思い出したのは‥

「こともなし」
別れた恋人が幸せになっていて欲しいか、不幸になっていて欲しいか?
友達とそんな話をしたのは8年前、婚約者にふられた頃。
なりゆきで結婚したが今はまずまず幸せな主婦で、5年前からブログをやっています。
なんのために、とふと考える‥

「いつかの一歩」
若い頃に付き合っていた彼女が店を出したと聞いて、行ってみる男。
本当は結婚したほうが良かったのではといまさら思ったりするのでしたが‥

「平凡」
高校時代の友人で今は人気の料理研究家になっている春花。
主婦で土産物屋のパートをしている紀美子は、ツイッターでまた連絡をとるようになり、春花が来ると知って機嫌が良くなります。
春花の目的とは‥
別れた相手の不幸を願うわけではない、平凡でいればいいという思い。それは呪いというよりも、願いかもしれない、と気づきます。
どちらにせよ、それぞれは他人の気持ちなどは入りようもない強固な人生を生きているのだということ。

「どこかべつなところで」
貼り紙を見たという人からの電話が入ります。
猫のぴょん吉が窓から逃げて、行方不明になっているのです。
離婚後すぐに飼い始めた猫。
見かけたという人のところへ行き、話し込むことに‥
幼い息子の事故という重い話題だが、もしもあのとき、という思いを重ねることに、不思議な安らぎが。

もしもあのと時‥というのは、誰しも考えたことがあるでしょう。
でも、いつまでもそんな気持ちでいるばかりでは、どうしようもない。
読んでいても、なんだかな‥という気分になるけど、情けなくてもそれが人間らしいのかも。
それぞれに方向転換していくところが、良かったです☆

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「ツリーハウス」

角田光代「ツリーハウス」文藝春秋

新宿にある中華料理店・翡翠飯店で暮らす一家3代の話。

のどかなある日、藤代家の孫の良嗣は、奥の部屋で療養していた祖父の泰造が息をしていないことに気づきます。
あちこちに散らばっている家族を呼び集め、葬儀を行うことに。
同じ日に、新宿ではバスジャック事件も起きていました。

一家には、昔から家でゴロゴロしている叔父の太二郎がいて、子供の頃はどこもそういうものなのだと思っていました。
良嗣自身、仕事に違和感を覚えて辞めてもう3年。バイトはしているし、すぐに就職するつもりで無職とは思っていないのですが。自分の家族は変わっていると気づき始めます。
兄の基樹と姉の早苗は家を出ていますが、何をしているか良くわからないまま。
通夜の直前に現れた早苗は妊娠していて、後で結婚相手を連れて来て、店を改装しようと言い出します。

祖父亡き後は、店にも出なくなった祖母のヤエ。
祖母はふと子供のような声で「帰りたいよう」とつぶやきます。
良嗣は祖父母が満州で出会ったと知り、一緒に中国旅行をすることを思い立つのです。
孫にはほとんど語らないのですが、少しずつ思い出しているヤエの回想を交えながら進む~旅の話。

祖父の泰造は、開拓団を逃げ出したため、ルーツも断たれている身だったのです。
親切な人々に、助けられてはいたのでしたが。
流されるままというか~逃げるだけのような生き方。
ヤエはただ、新しい所に行ってみたいという気持ちだけで大陸に渡ったのでした。
無惨な大陸引き揚げと、収容所…

ヤエの故郷に戻ってみても、二人の居場所はありませんでした。
東京の焼け跡の誰の物だったかもわからない土地にバラックを建て、夫婦で店を始めたのです。
子供達にそういう話はしないまま、好景気になる世の中を見ながら、とにかく働き続けます。

ヤエは6人の子供に恵まれますが、それぞれ時代の渦に巻き込まれます。
慎之輔は漫画家を目指すがうまくいかず、やがて実家を継ぐことに。
太二郎は頭が良かったのですが、あることがあって…
今日子はサラリーマンと結婚して、普通の家庭を築こうとしますが…
性格が良かった基三郎は、反戦運動に身を投じ…

ある一家の昭和史を描いた力作。
非常に有為転変のあるドラマチックともいえる人生です。
人間に耐えられる限界かも知れない…影響なしでは済まないでしょう。
経験も思いも語ることなく逝った祖父。
子供達に「逃げることだけしか教えられなかった」と語るヤエ。
それでも店を守り通した泰造。
翡翠飯店は、家族が逃げ戻ってくることの出来る場所、よりどころになっていたと思えますけどね。

戦争当時を知る祖父母からは、とんでもなく恵まれていると思う世代の生活。
とはいえ、高度成長期を知る親の世代からすれば、全然頑張っていないかもとも思う。
でもまあ別にそれでいいんじゃないか…というのは実感?

最初の方は、淡々と否定的な感情を書かれることが多い印象でした。
リアルだけど、読むには時々しんどくなります。
そんなもの、なのか?どうか…
大事な所を際だたせるためでもあるのかな。
少しだけど理解が深まったり、家族がまたスタートしていくのですね。
2008~9年連載、2010年10月単行本発行。

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「八日目の蝉」

角田光代「八日目の蝉」中央公論社

1985年のある日、若夫婦が出かけたアパートへ忍び込む希和子。
じつは不倫相手・秋山の妻が生んだ子を見て、気持ちにふんぎりをつけるつもりだったのだが…
泣き出した赤ちゃんをとっさに抱えて思わず逃げ出し、転々とすることに。

何も知らず懐いてしまった子どもに、生めなかったわが子の名・薫とつけて可愛がります。
転がり込んだ集団エンジェルホームに警察の手が入り、小豆島へと逃げるのですが…
逃げていく様についハラハラ、逃げ延びて欲しいような気持ちにさせられます。

発見されて親元に帰された子ども・恵里菜(本名)は、どうなったのか?
母だと思っていた人間が誘拐犯と知らされて、実の親にもなかなかなじめないまま、子ども仲間でも遠巻きにされて育ちます。
誘拐事件とその報道のひどい内容で、壊れかかっていた夫婦。
ここでまた微妙な問題を抱え込んで、どこかぎこちない家庭が築かれていった様子が次第にわかってきます。
実際にあった有名な事件を幾つか想起させつつ、さまざまな立場の人間のありようを丁寧に掬い取るように描いているのがおみごと。
少しずつ救っていく展開で、しみじみとした気分になります。

推理小説というわけではないのですが~事件を扱っているので、カテゴリにはミステリも加えておきました。

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「Teen Age」

「Teen Age」双葉文庫(角田光代・瀬尾まいこ・藤野千夜・椰月美智子・野中ともそ・川上弘美)

タイトル通りのテーマでの若手実力派?女流作家競演。
思春期の揺れ動く感情と、大人になれば懐かしいモチーフを扱って、みずみずしく気怠げで戸惑いつつも熱っぽい~若々しい息づかいが感じられます。
佳作揃いで、期待通りに読めるんじゃないでしょうか。
以下の要約はこれから読む人には不要だと思うけど、自分が作家の区別がまだつきかねているので、メモしておきます。

角田光代「神さまのタクシー」
 女子校で、カッコイイ憧れの上級生が放校されるのを、ふだんは仲の悪い同級生と見送る。
瀬尾まいこ「狐フェスティバル」
 転校してきた女の子を伝統あるお祭りに誘い、断られながら訪問し続ける地元の男の子。
藤野千夜「春休みの乱」
 親友の小清水さんには不思議な力があると信じる高校生…ホントなのかも!?
椰月美智子「イモリのしっぽ」
 進学先も決まった暇な時期、生物部の元部長の女の子は相変わらず部室やペットショップに出入りする。
野中ともそ「ハバナとピアノ、光の尾」
 ハバナでバイトする少年が、日本人の美女が恋人だったピアノ弾きを捜すのを手伝うが…幻想的なストーリー。
島本理生「Inside」
 母が入院した二週間の間に、家は崩壊の予感が。でも、真面目なBFとは進展が…!?
川上弘美「一美ちゃんのこと」
 予備校で知り合った一美ちゃんは、クロ-ン人間だという。しかも姉妹もそうだと。牛丼を一緒に食べたり、クローン牛を解放しようとしたり、というエピソードの不思議面白さと、のほほんとした語り口が印象的。

作風の区別がつき、日がたった今も内容をはっきり覚えているのは角田光代と川上弘美。
他に長編を読んだことがあるのはこの2人だということもあるけど、巻頭巻末を飾っているので力があるのも事実なのでしょう。
藤野千夜もちゃんと読んだことはないけど、区別はつくんです…
島本理生はあれでしたっけ…??
今後どこでお目にかかるか楽しみ~そのうち読んでみようとは思ってるんです。

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「この本が、世界に存在することに」

角田光代「この本が、世界に存在することに」メディアファクトリー

とてもわかりやすい文章で、本好きのハートに響く短編集。
本名なのでしょうか、四角い字体でかっきり書いたような~誰にでもわかり気づかずにはおれないような骨太で着実な文章に、名は体を表す…という思いがします。

18歳の時に売った本に再び出会う「旅する本」はやや幻想的な趣。
本の好みが合った恋人と別れる時に、本を仕分けする「彼と私の本棚」は、本など読まないらしい女性と付き合うことになった彼への複雑な思いもありで、何となく気分が想像出来ますね。
幼い頃に近所に一軒しかなかった本屋に万引きした本の代金を返しに行く男性の話「ミツザワ書店」は店先で万引きも気にせず本を読みふけっているおばあさんがいたというのが、ある意味本好きの楽園として描かれているみたいですね。
子供の頃はさんざん立ち読みしたよなあ…と懐かしくなりました。
万引きはしてないですけどね。…してないよね?うん。(本を借りて返し損なったままってのはあるけどぉ)

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「いとしさの王国へ」

角田光代ほか「いとしさの王国へ」マーブルトロン(中央公論新社)

文学的少女漫画讀本というのが副題。
角田光代の著作リストから選んで図書館で借りたんですが~若手女性小説家8人プラス2人の執筆陣による少女漫画論というか、それぞれの立場による漫画の思い出談義。
最近は本屋に行っても知らない漫画がどっと増えているので、わからない話が多いかと思いましたが、特にエポックメーキングな作品や少女時代に愛読した作家についての話なので、けっこう知っていて懐かしく読めました。
夢中になって読んだあの頃を思い出す本です。

文学的というぐらいだから、私のお気に入りだった大島弓子や萩尾望都の話は多いしね~。全盛期のことならこっちが本を書けるかも!?
岡崎京子はあまり読んでないし、逆に?「キャンディキャンディ」も愛読してはいませんでしたが、どちらももちろん知ってはいます。
「キャンディキャンディ症候群」という題で横森理香が書いている内容は、当時の少女の憧れが一杯詰まった物語だったのだが、結末でキャンディはお金持ちの王子様とは結ばれず、孤児院で献身的に生きる。こういう日本的なストーリーを読んで影響を受けた少女が大人になってけなげに一生懸命頑張ってる。それは下手すると単なる不幸症の女になりかねないと…
ど、どうでしょうかね!?

むしろ書いている小説家をよく知らない。三浦しをんは読んでいるけど、角田光代、嶽本野ばらは1冊ずつ。他はたぶん読んでない…
このリストを参考にぼちぼち読んでいこうかなと思っています。
三浦しをんはいつも何かを求めて気合いを入れて漫画を読んでいる由。短い文章でもいつもながらオタク爆裂です~。
嶽本野ばらの「鱗姫」はポーの一族を読まなければ書かなかった作品だとか。異常に美しい兄妹の話で…それは確かにそうでしょう~。

驚いたのは樹村みのりのデビューが64年で「ピクニック」という作品が初めての内面的な少女漫画作品だということ。
うっすらとどこかで知っている気がするんですけど~そ、そんなに古かったんでしたっけ…?(き、記憶力がぁ…)萩尾さんのコメントか何かで後から知ったのかな?
巻末に年表みたいな図が入っていて面白いですが、もう少し資料的な部分も完備していた方が~買う価値があったかなと思います。

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「対岸の彼女」

角田光代「対岸の彼女」文藝春秋

04年の発行の本で、これで直木賞を取ったんですね。
なるほど、良い出来です。
初・角田光代だと思うので、この作家の特徴はこれだけではわからないんですが…(ちょっと篠田節子の「女達のジハード」での受賞を思い出しました)
時期的に勝ち犬・負け犬といったコピーがついていますが、内容はそんな単純な対決ではなく、少しほっとしました。

主人公は幼い娘のいる主婦の小夜子と、独身で小さい会社の社長をしている葵。共に35歳で同じ学校出身の二人の出会いは、小夜子が葵の会社のパートに応募したことから。
理解のない夫と姑に囲まれた孤独な小夜子は公園デビューに失敗し、娘のあかりが友達の輪に入れない様子を見て、閉塞状況を打破しようとします。
仕事内容は派遣のお掃除で、研修がかなりきつくて戸惑いながらも、新たな経験に立ち向かっていく小夜子。そのあたりが具体的にありありと描かれています。
一見、全く対照的な葵とはすれ違いも起こりますが、しだいに友情をはぐくんでいくのです。
「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことの方が、うんと大事な気が、今になってするんだよね」
という葵の言葉は印象的です。

葵の高校時代の出来事が現在と交互に語られていきます。
横浜で子供の頃から何故か苛められていた葵は、その過去を知らない群馬の高校に進学、自由な雰囲気をまとった人なつこいナナコと親友になります。実はナナコの家庭は荒廃しきっていて、そのことで仲間はずれにされるようになります。
二人の純粋な気持ちは家出という形をとり…
対岸で手を振るナナコのイメージが切ないです。
彼女の印象が強いので、2人の話というより3人の物語のように感じました。

女性ならどこかで共感出来る要素があると思いますが、男性にはわかりにくいかも…
作品中で男性の影がものすごく薄いので、何となく弾かれている気がするのでは?
理解のない夫というのがまた、ごく普通の男!みたいな感じで放って置かれてますが、見込みがゼロってわけじゃないんです。葵のお父さんなんか良い人なんですよ~。

小夜子が仕事でお掃除をしていて感じたように、しつこい汚れをずっとこすっていて、ある瞬間ふっと落ちていく、そんな風に何かが変わることもあるんですよね。

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