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おすすめ本

「夢違」

恩田陸「夢違」角川グループパブリッシング

これはホラー? ファンタジー? SF?
恩田陸作品にはお気に入りもあるんですが~ちょっと遠ざかっていました。
テーマが作風に合っていて、はっきりしない恐怖感がじわじわ漂う雰囲気は上手く書けている印象でした。

ドラマの「悪夢ちゃん」はけっこう見ていたんですが、原作とは思いませんでしたよ。
「獏」という機械が発明されていて、デジタル化した「夢札」によって夢を他の人の目にも可視化できるようになった、という設定は同じ。
予知夢を見る場合がある、というのも同じ。
後はぜんぜん別物で、原案というぐらいでしょうか。

夢を解析する夢判断を仕事としている野田浩章。
「夢札を引く」をいわれる事業は、日本では主に心療内科の治療として、海外ではインスピレーションや啓示を求める人々のアイデアの源泉などとして用いられるようになっていました。

浩章は、図書館で何年も前に亡くなったはずの古藤結衣子の姿を見かけ、幽霊かと思います。
兄の婚約者だった結衣子は、子供の頃から予知夢を見ることがあり、災厄を避けることが出来ればと何度かそれを公表していました。
マスコミの餌食になってしまい、しだいに兄とも上手くいかなくなったのです。
浩章はその頃、高校生でした。

小学校で子供達が奇妙な行動をとる事件が、各地で起きます。
子供達に何があったのか、浩章はその後数日の夢を解析する仕事に携わることに。
とても鮮明な夢を見る少女・早夜香の夢の中には、結衣子の面影が‥?

神隠し事件が起き、消えた子供達を捜して、解析も熱を帯びます。
結衣子が生きているのではと思い始めた浩章ですが‥?!
現地へ飛び、数人で子供らに会い、夢を解析し‥
不可思議な状況に直面する様子は盛り上がります。

結末はちょっと急な転調で、え?これハッピーエンド?
いや‥だって‥夢?異次元?それとも‥
この作者は結末ですっきり解決してしまうのが嫌いらしく、読み終わっても悩むようなのが好きらしい。
余韻を残すぐらいなら良いけど、途中ももやもやしているのが、ここでまた?!っていう。
これはホラーってことかなあ。
中盤はじゅうぶん楽しみ、読後感も極端に悪くはないんですけどね。

夢を可視化できたら‥
すばらしいアートを作れるのでは?と思ったことがあります。
思い描いたものをそのまま作品に出来たら、良いなあ!

「夏の名残りの薔薇」

恩田陸「夏の名残りの薔薇」文春文庫

山の斜面に孤立した豪華なクラシック・ホテル。
嵐の山荘を思わせる館に、毎年秋になると、招かれた客達が滞在するのです。
沢渡財閥の三姉妹は、招待客を前に意味ありげなお喋りを続けます。毒気のある内容なのに、なぜか聴かずにはいられないような…

三姉妹の甥・隆介の妻で妖艶な桜子は、秘密の関係を伯母に気づかれます。
今まで来たことがなかった育ちの良い夫・隆介がいつになく駆けつけ、周りは緊張するのでした。
次女の娘で女優の瑞穂も、様子がおかしい…

秘密を抱えている人、一部を知っている人、ほのめかす人、疑う人…
それ以上の悪意と恐怖が館を覆っているような…
かって三姉妹に何があったのか?
映画「去年マリエンバートで」をモチーフに挿入しつつ、記憶の変容をテーマに描く、意欲的な作品。
語り手によって次々に説明が変わっていくのです。そこまでしか知らないのか、嘘なのか、記憶違いか…?
本格推理のバリエーションとして書かれた物のようですが~理屈で割り切れない耽美ホラー系の酩酊感があります。

2月前半に読んだのですが、あまりに季節はずれなので、アップは少しずらしました。内容的には何年にもわたる話なので、読むのには差し支えありませんでしたけどね。
単行本は2004年9月発行。

「象と耳鳴り」

恩田陸「象と耳鳴り」祥伝社

恩田陸にしては珍しい~本格ミステリの短編集。
1999年に編まれた物の、2003年発行の文庫版でした。
こんなのがあるの、知らなかったんですが~かっちりと練り上げた味わいに感動しました。

退職した判事・関根多佳雄を主な主人公に、その周辺で起こる事件。
高齢の男性の視点だからか、男性が書いたかのような淡々とした面もあり、女性ならではのなめらかさもあり…
どっちかというと渋めですが、かなり読みやすい方ではないかと思います。

ふとしたことから気づく友人の死の真相。
渋谷の雑踏に突然現れた男の死体の謎。
写真を見て持ち主を推理しようとする関根の息子と娘など、思いがけない着想が楽しく、なんともいえない面白みがあります。
関根一家が登場する作品は他にもあるのかな?

「往復書簡」というタイトル通り、手紙の往復するうちに事件が解決する話なども、 趣向が凝らされていますね。
発表当時、洗練の極みという評があったというのもうなずけます。

「上と外」

恩田陸「上と外」幻冬舎

2000年に文庫6冊で書き下ろしされた作品を、2007年上下巻にまとめた新装版。
子どもの視点で書かれているので、子どもにも読みやすいでしょう。

祖父と暮らす中学2年の練と、母と暮らす小学6年の妹・千華子。
両親が離婚した後も、一家4人で年に一度は集まっていました。
この夏も、中米のG国で発掘に携わっている考古学者の父・賢のもとへ。

ところが、どこか異様な緊張がただよっていたのは、母が恋人との再婚を決めていたからでした。
しかし、クーデターに巻き込まれて事態は急転、それどころじゃなくなります。子ども達はヘリからジャングルに放り出されてしまうのです。

密集した木々の上に着地した練と千華子兄妹。
見渡す限り、鬱蒼とした森…
マヤの遺跡を目指して、サバイバルが始まったのです。
異様な轟音の響く巨大な人工の建築にぶつかり、どこからともなく現れた少年ニコに助けられますが…
ジャガーのいる地下洞窟での成人儀式への参加を強要されるのでした。

一方、とらわれの身になりながら、懸命に捜索を続けようとする親たち。
日本でも、ネットや大使館を通じて、さまざまな救出の動きが起きていました。
祖父にもまた意外な人脈があるあたり、頼もしい。
ところが、火山の噴火も始まり…

いったい、話をどう広げるのだろうかと思っていたら、描ききりましたね~映画のような大冒険活劇!
新生G国の登場と、家族それぞれの特技を生かした健闘、子どもが大人になっていく~なかなか夢のある展開で、楽しめましたよ。

「エンド・ゲーム 常野物語」

恩田陸「エンド・ゲーム 常野物語」集英社

常野物語3部作の最終作だそうです。
不思議な力を持つ常野(とこの)一族が登場するシリーズ。
しかし「光の帝国」「蒲公英(たんぽぽ)草子」どれをとってもかなり雰囲気が違うので~このシリーズの中では未来編ともいうべき硬質な感じが、いわば過去編に当たる「蒲公英草子」とは特に違うので、ちょっと戸惑いました。
作品毎に作風を変える作家・恩田陸の面目躍如といったところでしょうか。
「光の帝国」に入っている「オセロ・ゲーム」の続編。

主人公は拝島瑛子の娘・時子。
大勢の人の中に出ると、銀色のボーリングのピンが群衆の中に見えるという奇怪な現象が怖くて、広場恐怖症と友達には説明しています。
裏返さなければ裏返される、正体不明の「あれ」と戦い続ける一族で、強い力を持った時子の父が行方不明になって十数年。
キャリアウーマンの瑛子が旅先の辺鄙な土地で倒れたという知らせに時子が駆けつけると、眠ったままのような姿でまったく目覚めないのでした。
これは裏返されたのか…?
不安に駆られた時子は何年も前から冷蔵庫に貼られたままの電話番号についに電話します。

両親以外の一族と初めて出会う時子。
「洗濯屋」という謎めいた青年・火浦と、「洗って、畳んで、しまう」というおばあさんと、独特な言葉遣いが面白い。
血の近い結婚に反対されたために一族と疎遠になったという、両親に聞かされていた話も真実ではないらしく、食い違う話のどれを信じればいいのか…

前半はかなり怖いのでホラーとして良く出来ているのかな…二転三転するストーリーが面白くて中盤は目が離せません。
で結局~なんなのかというと、えっとぉ…裏返しまくった、というか。
こういう話のラストって難しいと思うんですが、よく理解出来てないのかも??
三部作の終幕というほどには、何となく釈然としない読後感です。

「ドミノ」

恩田陸「ドミノ」角川文庫

楽しく読める小説です。これと、三浦しをんで、お盆休みは笑って過ごしたって感じ。

ある日、東京駅にさまざまな理由で集まって来た27人と1匹。
町ほどもある巨大な駅構内で、句会のために上京してきた老人、ライバルの母親に下剤をもられた子役、恋人に別れ話を切り出そうとしている男、次の幹事長を決めるために推理合戦をしているミステリ研究会のメンバー、ホテルに滞在中の映画監督、3時までにノルマ達成を目指して奮闘する保険会社の面々、爆弾を持った過激派…
彼らの行動が絡み合い、もつれ合って、最後はもうれつな勢いでドミノ倒し状態になるわけです。

恩田陸、こんなのも書けるんですねえ。
作品ごとにタイプと雰囲気を変えるのが最大の特徴ではありますが、どちらかといえば丁寧でしっとりした印象で、こんなにテンポが速いのは珍しいのでは。
登場人物が多いので、一つ一つは薄味になるかと思っていたのですが、これが上手く描き分けられていて、細部のリアリティに爆笑!

初めての人に「動輪の広場」で待ち合わせはちょっと無理でしょう!?
奥さんからこの袋の店でお土産を買ってくるように言いつかってきたとか、それがわりとしっかりした黒い袋(どらや、つまり虎屋がモデル)なので、怪しげな物を入れて運ぶのに使う奴がいるのもわかる気がするし。
デパ地下大好きなので~おやつを買い出しに行くなら東京と銀座とどっちにするか?ふだんなら松屋だけど、この時間だったらいつもは売り切れてしまう限定の物を買いに行きたい!とか、すっごいよくわかる~。
何といってもカッコイイのは一見地味なOLのえり子姉さんでしょうか。
ピザ屋の兄さんの巨大なバイクとそれに乗ってふらふらになる社員もおかしい。
子役もなかなか活躍するので、あの子が良いかな~と思い描きつつ読みました。
実写でやって貰いたいなあ~!

これ、ジャンルは何だろう?

「ユージニア」

恩田陸「ユージニア」角川書店

とある海に面した古い城下町で起きた殺人事件をめぐる因縁めいた物語。
名家で米寿の祝いの集まりがあった時に、毒を飲まされた十人以上の人が亡くなった異常な出来事に小学生の時に遭遇した女性、満喜子は10年後にただ一度、一冊の本を書いたのです。
「忘れられた祝祭」という奇妙なタイトルで、当時を知る人にインタビューしてまとめたものだが、犯人については「被疑者死亡のまま未解決」以上のことは特定していない内容でした。

満喜子が語る当時の話やメモ、家族の話、調査に協力した後輩や、捜査した刑事など、様々な視点から語られていき、異様な事件がそれだけで終わらなかった吸引力を感じさせるいきさつが描かれ、一家で一人だけ生き残った盲目の少女をめぐる謎が次第に膨らんでいきます。
端正な文体で興味をひく展開に上手く持っていってますが…

え~と、ネタばれはしない主義なんですが~
最後の方でのあのほのめかしは…結局…
もう少し書き込むなりなんなり、やりようないんですかね?
直木賞候補作だそうですが、受賞しなくとも無理ないかと…(@@;

推理小説と言うよりも「六番目の小夜子」の読者が大人になった時に読む、リアルな恐怖小説、かな?

「夜のピクニック」

恩田陸「夜のピクニック」新潮社

本屋大賞をとったことで有名な2004年の作品。

高校の行事で年に一度、全員で一昼夜歩き通す「歩行祭」というのがあるのは、作者の母校で実際にあるものだそうですね。(良いネタ持ってはるぅ~)

朝の8時から夜中まではクラス毎に移動し、夜中の仮眠を挟んで、翌朝8時までは自由歩行となっていて、順位もつくもの。
そのため、運動部の生徒はゴール目指して走るし、そこまでしない生徒も、思い出作りに好きな友達と一緒に歩くのが楽しみなわけですね。

西脇融や甲田貴子は高校3年で、これが最後になるため、それぞれに心中期する所があった… この二人は出来ているという噂があるんですが~実はもっと複雑な関係というところがミソ。
寡黙で頑固な融は3年になってから親しくなった気さくな友人・戸田忍に心を開き始め、一緒に走ろうかどうか迷っている。
貴子は自慢の親友・遊佐美和子と歩くつもりだが、ついて行けるか自信がない。実はこの機会に小さな秘密の賭をしていた…

一昼夜クラスメイトと歩く間には、これまでのことが頭をよぎり、色々なことも起こりますよね。
実感のこもった描写が続くので、夜間歩行を知らなくとも追体験出来ます。
自分の「あの頃」の息吹が蘇ってくるよう~上手いです!

児童書というわけではないですけれど、10代の人に特にオススメなので、児童書・YA(ヤングアダルト)というカテゴリも入れておきました。

※じゅびさんの所に書評があるかな~と見に行ったところ、何とアップされたばかり。初トラックバックに挑戦してみました~(^^)

「蒲公英草紙」

恩田陸「蒲公英草紙―常野物語」集英社

20世紀初頭の東北の農村を舞台に、峰子という主人公が少女時代を回想して50年後に書いたという形式の物語。
不思議な力を持つ常野の一族を描いた「光の帝国」に続く第二弾なのですね。
感じが良くて気に入っていた「光の帝国」は現代の話でしたが、こちらはだいぶ遡り、古き良き時代の懐かしさ漂う雰囲気です。

峰子は村の旧家の末娘・聡子の話し相手にお屋敷に出向くことになります。
聡子は病弱で学校にも行っていなかったのですが、美しく聡明で、峰子はすっかり仲良くなります。
お屋敷の人々もいかにもそれらしく良い人達なのですが、聡子は特別でした。出入りの絵描きと日本画と洋画の違いを洞察するくだりなど、面白く読めました。
お屋敷とも関わりの深い春野という一家が近くに引っ越してきてから、不思議な出来事が起こり始めます。
彼らの能力を「しまう」という言葉で表現しているのが印象的でした。

前半、少女の回想で「たんぽぽ草紙」とひらがなにした方が良いような調子が、後半は急転して緊迫した展開になります。
様々な要素を取り入れたかなり良い出来です。
完璧と言うには~もう少しトーンを揃えて終わってくれた方が読後感が良かったかな?
けれども、完璧という言葉を連想するほどの作品です(^^)

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