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おすすめ本

「宰領 隠蔽捜査5」

今野敏「隠蔽捜査5 宰領」新潮文庫

お気に入りのシリーズも5作目。
読みやすいので、少し読むのを延ばしていました。
一気に読み終わっちゃうので、もったいないから☆

大森警察署の署長・竜崎伸也は、もとは警察庁の官僚という大変なキャリア。
おそろしく堅物なのだが、合理主義者なため、じつは現場でも有能な男なのです。

警視庁の刑事部長の伊丹俊太郎から、衆議院議員の牛丸が行方不明になったという連絡を受けます。
牛丸を誘拐したという電話も来ましたが、神奈川からだったため、合同捜査が決定します。
じつは神奈川県警と警視庁は犬猿の仲?
前線本部に派遣された竜崎は、ピリピリした空気の中、本部がいっこうに機能していない様子に驚かされることに。 折りしも、竜崎の息子は浪人中で受験の時期を迎えており、家族も緊張していました。
そんなときに家を離れることになってしまったのですが‥
周りにはその心配を隠しているが署員にはバレバレの事情も抱えつつ。

横須賀で、対抗意識を剥き出しにする県警の刑事に手を焼きながらも、合理的に捜査方針を決めていく竜崎。
その判断の妥当さで捜査が進んでいき、当然のごとく、土地勘のある地元民を立てるやり方もとっていきます。
いつの間にか、納得していく刑事達。
そして、神奈川県警のSTSが現場で待機するクライマックスへ。

竜崎以外の人物がちょっと、おばかさんに見えてくるきらいはありますが~
ぐいぐい楽しく読めます。
幼馴染の伊丹との関係も、頑なな竜崎に対して伊丹の片思いっぽいのだが、相変わらず何となくにやにやさせられます。
そして、奥様のさすが、しっかりした賢夫人ぶり。
竜崎の考え方のスッキリしているところが、何と言っても、いいですね!

「ST警視庁科学特捜班」

今野敏「ST警視庁科学特捜班」講談社

軽く読める事件もの、シリーズ1作目。
特殊能力を持つ捜査官が、活躍します。
ちょうど「赤と白の捜査ファイル」として、ドラマ化されています。

警視庁科学特捜班、通称STが創設されました。
束ねるのは、真面目な百合根知久警部。
専門家のリーダーは、赤座左門。法医学担当。
彫りの深い顔立ちで無精ひげに男の色気があり、気難しい女嫌いなのですが、なぜか周りに人が集まってくるという。
毒物などの担当は、黒崎勇治。武道の達人でもあります。
(朝ドラの朝市くんがやっていて、寡黙でなかなかカッコイイ)
文書鑑定担当でプロファイリングもするのは青山翔。恐ろしいほど端正な美貌の青年。
物理担当の若い女性は結城翠。常にセクシーな服装で、異常に聴覚が発達しています。
そして、僧侶でもある山吹才蔵も化学担当。
僧服で現場に駆けつけ、まずお経を上げるという。

それぞれの分野でトップクラスだったのですが、優秀さと引き換えのように個性的過ぎて、組織からは浮いているメンバー。
たたき上げの警官・菊川警部補からは反発され、百合根警部は気をつかいつつ、何とか彼らの才能を生かそうとします。
ゴレンジャーのごとき色の付いた名前で、劇画乗りの展開とでもいいましょうか。
連続殺人事件は鮮明に描かれていますが、現実味があまりないので怖くはないです。

「隠蔽捜査」シリーズが面白かった今野さんですが、ものすごく多作な作家さんなんですよね。
手っ取り早く読めそうで、傾向の違うものを探して読んでみました。98年にノベルスで出ています。
前にドラマ化もされ、最近は連ドラに。
百合根が岡田将生とは意外な~原作どおりなら美貌の青山を演じるところかな。
ドラマでは青山は女性になってます。
最初は5人の特徴がばらばらすぎて、一人ずつの役割の印象はそんなに残らない。
悩める凡人・百合根警部のほうが心情的にわかりやすい、ってところはあるかも。
勢ぞろいしたところは、テレビのほうが視覚的でわかりやすいですね。
小説も、パーッと読めて、気晴らしになります☆

「初陣」

今野敏「初陣 隠蔽捜査<3.5>」新潮社

「隠蔽捜査」のこれまでの3冊や若い頃の事件を、伊丹の視点から描いた短編集。
番外編ですね。
「指揮」「初陣」「休暇」「懲戒」「病欠」「冤罪」「試練」「静観」の8編。

伊丹俊太郎は、竜崎伸也とは小学校が一緒だった幼なじみ。
警察学校で、思いがけなく同期となったのです。
頑固な竜崎の方は子どもの頃にいじめられた記憶があるので、気を許さないと言っていますが。
伊丹にはそんな記憶もなく、自分にはない良さがある竜崎を認め、親しみを抱いていました。

警察内部の事情や、役職による立場の違いなど、面白く読めました。
県警本部の長ともなると、県外に旅行することも滅多に出来ない。
何か起きたときに休暇中では無責任な印象で、すぐ駆けつけることも出来ないかも知れないから。
伊丹が福島の県警本部長だった3年間、妻はそれが不満でほとんど実家に帰ってしまいました。

竜崎は東大出で警察庁のキャリアでしたが、ある事件により、大森の警察署長に左遷されます。
伊丹のほうが、警察庁の刑事部長として、出世街道を上ることに。
警察幹部は東大出がほとんど。伊丹は私立大出なので、主流派ではない。
そのために庶民派としてやっていく道を選びます。
出来るだけ現場に顔を出し、マスコミにも身軽に対応、颯爽として話がわかる上司になろうと、意識的に努力して演出している伊丹。本人は気が小さいと自覚しています。

竜崎から見れば、そういうところは得な性格に見えているのかも。
でも伊丹って素直だよね?
迷いが生じると竜崎には何かと教えを請うていて、一刀両断にずばっと直言される。これがカッコイイんだわ~。
竜崎みたいな人がもっといれば…世の中変わる!?と思いたくなります。

竜崎が子どもの頃にいじめられた事件を、最後に伊丹がふと夢で思い出すエピソードが入っているのも、良いですね。
伊丹の遊び仲間が誤解してやらかしたことで、伊丹の意図したことではなかったため、悪気がないままだったという。
おやおや、変わらぬ好意が続いていたということ?
誤解があったわけだけど~伊丹は子どもの頃に止めなかったのだから、竜崎にしたら、イヤだよね。

本編では、竜崎の方も、何かと伊丹の好意に助けて貰っている印象があったけど、当人は案外意識していない?
その辺の微妙なズレも楽しめます。
2010年5月発行。

「転迷」

今野敏「転迷―隠蔽捜査4」新潮社

好調の警察物。
頑固一徹な警察署長の活躍を描くシリーズ。4作目。

竜崎伸也は、もとは中央である警察庁にいたエリートでしが、左遷される形で警視庁大森署の署長に。
(警視庁とは簡単にいうと~東京都の警察ということ)
今回は、ひき逃げ事故や放火といった案件に対応していきます。
本庁交通課からは、ひき逃げ事件の捜査に、大森署の強行犯係を出すように要請されます。
放火事件だけで手が足りないのに。
しかも事件が絡み合って、国際的な大問題に。
まずは、いつどこに捜査本部を置くか、人員をどう配備するかといった駆け引きが描かれます。

警察署長とは、エリートが赴任してきて、3年ほどで移動することが多いので、実はお飾りともいえる対外的な役割と、大量の書類に毎日判を押し続けるのが重要な仕事。
いぜんは若いキャリア組が、実務を経験するために着任するものだったので、若殿研修といわれていたほど。今はそこまで極端ではないらしいですが。
副署長のほうが、捜査の実務には関わることになるそう。

ところが竜崎の場合は、公務員だから国のために尽くすという明快な意図があり、メンツにも派閥にもこだわらない。
(警察官は、警視正より上は国家公務員なのだそう)
署長の仕事は、こまごま陣頭指揮を執ることではないと心得ているのだが、本来じっとしていられる性格ではありません。
目的のためには真っ直ぐな行動を取るために、結果的に非常に有能なのでした。

「麻取り」こと地方厚生局の麻薬取締官の矢島から電話が入り、麻薬の捜査のために泳がせていたのに、下っ端を逮捕したためにダメになったと恫喝されます。
頭ごなしに呼びつけられますが、行く必要はないと断る竜崎。
事前に何の相談もなかったのだから、邪魔をしたと非難される謂われはないと筋を通します。
驚く部下達でしたが。
同じ案件を、縦割りで別々に捜査するのが間違い、と思う竜崎。

小学校の同級生だった伊丹俊太郎が、今は刑事部長という要職にあり、これは一介の警察署長よりはずっと格が上の役職。
竜崎の力を認めていて、何かと協力を求めてくるのですが、正反対の性格なので、もともと気が合うわけではないんですね。
刑事部長に対等な口を利く竜崎に、部下ががく然とするのもおかしい。
「子どもじゃないんだから一人で行けるだろう」とかね。
年齢も同じだし、実は警視長という階級も同じ。

竜崎の娘の美紀は、恋人が外国に行っていて、飛行機事故にあったかも知れないと心配します。
コネを使って事情を調べてくれと頼まれ、竜崎は普段あまりやらないことをやらざるをえなくなったり。
それに絡んで、外務省の人間と、外国の犯罪につながる情報のやりとりをするよう伊丹に依頼され、関係が出来ていくのでしたが。
家庭での不器用な父親ぶりも微笑ましい。
時々、50じゃなくて80歳みたいだけどね?
2011年9月発行。

「同期」

今野敏「同期」講談社

32歳の刑事・宇田川が主人公。
大学を出てから警官になった同期の蘇我とは時々飲む間柄でしたが、内心は出世競争も意識していました。
長身で細身の蘇我の方はひょうひょうとしていて、あまり自分を語らない。
やる気があるつもりの宇田川は、自分の器の小ささを感じてガックリすることも。
蘇我が公安に入り、進む道は分かれていましたが…

暴力団の抗争と思われた殺人事件が起きます。
大がかりな家宅捜索を行うことになり、捜査一課も暴対の手伝いに駆り出されます。
手入れの現場から逃走する若い者を追う宇田川が撃たれそうになり、偶然、居合わせた蘇我にかばわれます。
驚く宇田川を、近くのレストランに来ていただけだとその店に誘う蘇我でした。

その後突然、蘇我が退職と発表されます。
しかも、懲戒免職。普通なら警官の不祥事として新聞沙汰になる騒ぎのはずなのに、一切が不明のまま。
しかも行方が知れなくなり、探しに出かけた宇田川に、上から圧力がかかります。
蘇我は一体、何に関わっていたのか?

逃走した男が殺される事件が起き、何と蘇我が容疑者として手配されることに。
思わぬことで、熱くなってくる宇田川。
危険な領分まで、踏み込んでいく…?
宇田川の上司・植松と、その同期である土岐の~しぶといおっさんパワーもなかなかいぶし銀の魅力。
男の友情物が好きな人には、お勧めできるかな。
2009年7月発行。

「疑心」

今野敏「疑心」新潮社

堅物の警察署長・竜崎が主人公のシリーズも、3作目。
もとは東大出のエリートで、しかも昔の頑固一徹な老人のような~探偵役としてはユニークな性格なのが、特徴です。
ある事情で左遷されて、一介の署長になったという立場。
警察署長というものの特殊性が意外でした。
しかし、この竜崎、官僚にしては現場を大事にする実力派で、ただものではないんですね~。

一日署長にアイドルがやってきて、若い者だけでなく、いい年をした署員まで浮き足立つのに呆れかえりますが…
自分も、秘書官として配属された女性に惹かれているのに気づいて、柄にもなく悩む羽目に。
事態はそれどころではなく、アメリカ大統領の来日の警備の重要な部署を任され、テロ警戒の仕事が進みます。

論理的合理的に生きようとする男が、恋心に戸惑う意外性が、ちょっと楽しかったりします。
小学校の同級生で親友と目されることの多い同僚、じつは正反対の性格で、竜崎の方は日頃、苦手としていたのに、他に相談できる相手がいなくて、相談してみたりして。
奥さんにも仮定の話でそれとなく持ち出すと、きっぱりやり込められます、はっはっは。
しかし、私とあまり変わらないだろうのに、父親の世代に思えるよ、この人~coldsweats01

「果断」

今野敏「隠蔽捜査2 果断」新潮社

2007年発行のシリーズ2作目。
前作のいきさつで左遷され、エリートコースをはずれて大森署の署長となった竜崎伸也。
署長というのは上から派遣されてくるので半ばお飾り、行事に出るのが重要な役目で、あとは大量の書類に印鑑を押さなければならないので、ろくに読む暇もなく押すだけで一日が終わるほどだとか。
左遷されてきた自分を実力のある署員がどう見ているかと内心では気にしながら、ひたすら判子を押し続ける毎日に退屈していました。
近くで強盗事件が勃発、犯人が警戒網を抜けて逃走したため、責任問題に。
しかも、立てこもり事件に発展したため、竜崎は現場に詰めて、異例のリーダーシップを思わず発揮することになります。

やや一本調子だった前作よりも、ふくらみを増している印象。
家庭を任せきっていた妻の冴子が倒れ、内心すごく落ち込む竜崎は、案外~愛妻家?
息子が東大を目指すと聞いて喜ぶが、それはアニメの勉強をしたいからというので、母校である東大にアニメ科が出来たと聞いて愕然とする時代遅れの親父っぷり。
息子に見せられたアニメ(なんだと思いますか?)に素直に感動するあたり、ヨシヨシって感じです。

仕事の面でも、最初は建前で生きているように見えた竜崎の合理精神が発揮されます。
筋違いの権威にはへいこらせず、現場では身分が下でも訓練を受けた専門家を立て、その後の厳しい査問にも主張を通す頑固一徹ぶり。
幼なじみの伊丹とも、前作とは立場が違いますが、なんだかんだ言いつつけっこううまいこと連携していくのです。
周りを呆れさせる行動や、持論の展開も筋が通っている面があって、にやにやさせられます。
日本はどうなっているんだという気分になる日々、こんな人がもっといたら風通しがよくなるんでは、と思いますね~。

「隠蔽捜査」

今野敏「隠蔽捜査」新潮文庫

この次の作品「隠蔽捜査2 果断」の評価が高いので、まずこちらから読んでみました。2008年に文庫化。
仕事一途の警察官の視点で描かれます。
人の良い一警官ではなくエリートで、しかも本音吐きまくりというのがユニークなところ。

竜崎伸也は東大法学部出のキャリア組。
警察庁長官官房の総務課長とエリートコースをまっしぐら。
それも当然と思っているプライドが高いおっさんで、けっこう嫌なやつ。
最初は、こんなの読まされても感情移入できないのでどうしてくれるんだって感じですが、国家を守るために全力を尽くすのが当たり前と大まじめに考えているところが買えます。
変人と言われて心外に思う自覚のなさ。家庭を守る冷静な妻に、唐変木とまで言われるのがちょっと笑える。
硬骨漢というのか~40代なのに、ここまで古い男も今時珍しい?

対照的なタイプの同僚も~それぞれ長所短所があるのが良いですね。
警視庁の伊丹は同期であるばかりか~たまたま小学校で一緒だった幼なじみ。
そうすると親友のように思われ、伊丹の方も親しげなのだが、実は小学校時代には伊丹の仲間にいじめられたという思いが竜崎にはあり、屈折した感情を抱いているという設定。
伊丹は東大出ではなく私大出なので、出世もこれが限界と見下ろしているような竜崎には、被害者意識が抜けきれなかったんですね。
明るい性格の伊丹の方が断然取っつきは良い感じだが、本来どっちが上というのではなくタイプの違いといった描き方になっています。

警察庁と警視庁の違いというのも一般にはピンと来ないんだけど~すごい違いらしいです。
警察庁の方が断然エリートだけど、一般の警察官からすれば警視庁も雲の上なんだとか。
組織というのはこういうもんなのでしょうか。

受験浪人中の長男が思いがけない問題を起こし、自分の出世もすべて水の泡になるかもしれないという危機に、家庭を妻に任せきりにしていたことをちょっと反省するのでした。
そもそも私立には受かった息子を東大でなければダメだと言って浪人させるなんて、それが良くなかったんでは…進路によっては現実にありなんだろうけどねえ…?

折しも警察内部の不祥事も明らかになりそうになり、隠蔽工作が動き始めます。
握りつぶすべきなのか…?
正直に迷う人間らしさと筋を通す偏屈ぶりで、読後感はナイス!

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