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おすすめ本

「過ぎ去りし王国の城」

宮部みゆき「過ぎ去りし王国の城」角川書店

宮部さんの現代ものファンタジー。
中学生が不思議な絵の中に入り込み‥?

中学3年の2月、もう高校が決まった尾垣真は、ある日ヨーロッパの古城を描いたデッサンを拾います。
絵の中に吸い込まれるように感じ‥
どうやら自分のアバター(分身)を書き込むと、その世界の中に入れるらしい?

テニス部で「壁」と呼ばれ、友達らしい友達もいない真。
美術部の城田珠美に、絵を描いてもらおうと思いつくのです。
珠美は、女子にもっと露骨にハブられていました。
その世界では森の奥に古城があり、城の中には女の子がいるように見えます。
もう一人、パクさんと名乗る四十男も、その世界の探索を試みていたと知ることに。
10年前に起きたある失踪事件が、関わっているのかも知れない‥?!

それぞれに問題を抱えた3人が、事件の真相を知ろうとして、出来ることを探していきます。
中学3年の終わり、進路が分かれる前の限られた期間での出来事。
珠美自身の境遇は、そう簡単に解決できるようなことではないんですね。

子供向けのファンタジーならば、もっと解決しやすい問題にして大きな爽快感を味わわせることも可能なはず。
そこをやらなかったのは、重さを実感させる告発的な意味があるのかも。
現実にもこういう家庭やいじめはあるでしょうから。
けれども、共に冒険に乗り出し、他の人のために精いっぱいの勇気を出した経験、事態が変わることに力を貸せたという喜びは、奥深い自信となっていくでしょう。
やや軽くまとめてあるのかと思えたけれども、予想より余韻のある読後感となりました。

表紙の絵は、黒板に白墨で描いたものだそうで、すごくいいですね!

「ペテロの葬列」

宮部みゆき「ペテロの葬列」集英社

「誰か」「名もなき毒」に続く杉村三郎シリーズ3作目。
ドラマ化もされて放映されました。

日常に潜む悪がテーマのシリーズ。
杉村はごく穏やかな妻子ある30代男性で、その人のよさが救いとなっています。

今回はバスジャック事件が起きるという出だしで、しょっぱなから事件性が高い。
仕事で海辺の町に住むかっての社員にインタビューに行った帰り、女性編集長の園田とともにバスジャックの人質となってしまいます。
犯人は言葉巧みな老人で、人質達は言われるがままになり、緊張しつつも非現実的な感覚になっていました。
ピストルを持っていて、本気だとはわかるのですが、どこか紳士的で、しかも事件に巻き込んだ慰謝料を後から送るという奇想天外な提案をします。
小さな工場を経営している中年男性は、金の話に目の色を変えるのでした。
若い男女にも、それぞれにお金が欲しい理由はあった‥

杉村は何か出来ないかと模索しつつ、うっかり手は出せずに推移を見守ります。
バスジャック犯の老人にも、冷静で頼りになる、事件に慣れているのではと指摘されるほどでしたが。
しっかり者のはずの園田はひどく動揺している様子を見せ、早めにバスから降ろされます。
何が原因で、それほど動揺したのか?

人質だった人たちは、その後も何度か相談に集まることになります。
ハイジャック事件の理由が、少しずつわかってきて、それは現実に起きた事件を思わせ、かなり怖いです。
人の気持ちをコントロールしようとしたセミナーがかってあり、後にそれを金儲けに利用しようとした人間も少なからずいた。
儲け話に引き込まれた人間が、また仲間を引き入れ、成績を上げようともくろむ‥
そういう悪が現実に犯罪として今も広がっていることを思うと‥
こういう社会的に大きな影響がある問題を取り上げ、変わった角度で描いていく力量はさすが。

杉村の置かれている微妙な立場が、これまでより以上に延々と書き込まれているその理由とは‥
杉村三郎は菜穂子と恋に落ち、結婚の条件として、菜穂子の父の経営する会社に入りました。
今多コンツェルンの会長に直属する社誌編集部員となったのです。
菜穂子は会長の愛人だった画廊経営者の娘で、母の死後引き取られ、何不自由ない財産を分け与えられていましたが、会社の経営に関しては何の力もないという条件付きのことでした。
杉村は会長の娘のヒモ呼ばわりされ、実の両親から結婚に猛反対され、ほぼ義絶しています。
兄や姉は連絡をよこしますが。
‥‥そこまで反対するようなことなんですかね?

何年かたつうちに和解するのが普通なんじゃないかな。
菜穂子は待ちきれなかったというか。
夫の立場の苦しみを気に病み、不満に違いないと思ったらしい。
夫の浮気を疑い、何が大事なのかを見失ったような行動をとります。

杉村が気づかなかった菜穂子の苦しみもあると思いますけどね。
愛人の娘という立場だし、菜穂子の耳に毒を注ぎ込む輩にも事欠かなかったよう。これが悪のような気も‥
杉村のほうは、嫌な視線や閉塞感にも耐えていけそうな人間でした。
とはいえ事件に夢中になったのは、しだいに内側でストレスが高じていたせいかもしれない。
義父である会長を尊敬するあまり、菜穂子を自分の妻というより大事な預かり物のように見るようになっていたような。
妻が一番望んでいることを与えられなかったのか‥
まあ、ないものねだりというか、すべてを望むあまり、ぶち壊すって、子供か?ってとこですが。
妻のほうは、本人すら気づいていなかった夫の苦しみに気づいていたともいえます。
肝心なことを互いに話していない夫婦だったようですね。

違う立場となった杉村が主人公の事件話も今後、書かれるのでしょうか。
今回の後味を払拭してくれるといいのですが。

「泣き童子」

宮部みゆき「泣き童子 三島屋変調百物語参の続」文藝春秋

「おそろし」「あんじゅう」に続く三島屋変調百物語の3作目。
楽しみにしていました。
輪郭がくっきりした話が多い印象。

神田の袋物屋、三島屋では、不可思議な話を集めています。
黒白の間という座敷で、話すのは一度に一人だけ、くわしく聞くのは姪のおちかという娘一人。
語って語り捨て、聞いて聞き捨て。それだけが約定。
事情があって実家を離れ、叔父夫婦の三島屋で働いているおちかです。

「魂取の池」
神無月の炬燵開きの日、若い娘が訪れました。
祖母の育った村に村にあった不思議な池とは。

「くりから御殿」
白粉問屋の夫婦が訪れます。
病を得た主人は、漁師町の出。
四十年前、子供の頃に、山津波で大勢の村人や友達が亡くなったのです。そのとき、不思議な夢を見るたびに‥
心配して隣室に控えていた妻は、生き残ったことを悔いる夫の気持ちを知っていた‥
震災で生き残った人に寄せる、作者の思いが感じられます。

「泣き童子」
霜月のねずみ祭りの日。商家にとっては大事な風習なのです。
やつれきった男性が訪れ、幼い子の話をします。
なぜか言葉が遅く、泣き出したら泣きやまない。
後ろ暗いことのある人に気づくと、泣き出すらしい‥

「小雪舞う日の怪談語り」
冬奉公といって農村から出稼ぎに来る女手が増える時期。幼いおえいという女の子も三島屋にやってきました。
珍しく、おちかが振袖を着てお出かけする楽しい趣向。
青野利一郎とも、このときに久しぶりに会うことに。
札差の井筒屋の肝いりで、「年の瀬に心のすす払いをする」という怪談語りの会に誘われたのだ。「怪談を聞くと、人の心は神妙になる」と。
この中に四つ話が入ってます。
普請道楽の父が建てた家の怪異。橋から異界にさまよいこむ話。片目で病を見抜く母の話。岡っ引きの半吉が若い頃、看取った男のもとに夜ごと現れた怪異。
おちかが両国橋で出会った微笑ましいことも。

「まぐる笛」
若い侍が話す故郷の話。
いつ現れるかわからない怪物「まぐる」が村に現れた日。
侍の母は、「まぐる」を抑える役をになう女性だったのです。

「節気顔」
年あけて、おちかも18に。
春分の日に聞いた話。
放蕩者の長兄が、改心して戻ってきた。
離れに隠れ住むようにして、二十四節気の日には一日出かけています。
姪が見てしまった秘密とは‥
大人になった姪が、死んだ人に会いたいという気持ちを理解した様子に、どこか心揺り動かされます。

三島屋の人々の暖かさ。
女中のお勝は疱瘡の跡があり、<禍払い>という役目も持っていました。
おちかが聞く話は、若い娘が一人で聞くには重すぎるような場合もあるけれど、尋常でない経験をした身には、そうでもしなければ救われないものがあるのでしょう。
「お嬢さんはもう、去年(こぞ)のお嬢さんではありませんからね」というお勝の言葉が、心強い。
江戸情緒ゆたかに、静かに流れる日々。
おちかが幸せになることを祈ります。

「桜ほうさら」

宮部みゆき「桜ほうさら」PHP研究所

宮部さんの長編時代小説。
藩での騒動もありますが、主に人情ものかな‥
タイトルは、甲州では、色々あって大変なことを「ささらほうさら」ということから。

故郷を離れ、江戸の長屋で暮らす古橋笙之介。
長屋から見える桜の木の下に、珍しい切り髪の若い娘を見かけます。
桜の精のように不思議なそのひとは‥
ロマンチックな出会いです。

笙之介の父は、小藩の小納戸役でしたが、収賄を疑われて自刃。
まじめなのが取り得の実直な父が、そんなことをしたはずがない。
家族はばらばら、文武両道の兄は預かりの身となったのです。
父自身にも自分で書いたとしか思えないほど字が似ていた書状。偽の証拠を作った犯人を捜そうと江戸に出ることに。

江戸留守居役の東谷の紹介で、笙之介は貸本の村田屋の写本を作る仕事をしているのでした。
字を真似るのが巧みな人物を探すために。
ある日、押込御免郎という作家が書いたどぎつい話をもっと読みやすく売れるよう書き直してくれと頼まれ、笙之介はしぶしぶ取り掛かります。

料亭の絵を立体的に作ることが出来る起こし絵に興味を抱いたり。
桜の精のような女性は、和田屋の娘・和香。
事情があって家にこもりがちだった和香もアイデアを出したり、だんだんと協力する仲に。

将来を嘱望されていた兄に比べて、武道はからきしで特に優れたところがなく、誇り高い母には見放されていた笙之介。
気のいい青年が、さりげなく誠実に周りと関わっていき、しだいに居場所を見つけていきます。
長屋に生きる人々も、存在感があります。
タイトルの響きほどは、ほのぼのした話じゃないけれど。
巻き込まれる事件にもこの時代ならではの特色があって、しだいに繋がってもいき、さすが宮部さんと思わせます。

「ソロモンの偽証 第Ⅱ部 決意」

宮部みゆき「」ソロモンの偽証 第Ⅱ部 決意」

面白い!
話題作の中盤です。
事件はⅠ部で次々に起きて、関連があるのかないのか、噂が飛び交う状態でした。
真相が解明されないままに蓋をされそうになり、下手すれば別な犠牲者も出かねない事態に。

中学の裏庭で、あまり目立たない生徒だった柏木卓也が発見されました。
投身自殺と思われ、いじめは疑われますが、はっきりはしない。
ところが、不良グループの大出俊次が柏木を落とすところを見たという告発状が‥そして?!

藤野涼子は、夏休みに学校で模擬裁判を開くことを考え、提案します。
北尾先生は、応援してくれたのですが。
高木先生は優等生の反乱という目で怒り、生徒の面前で言い合いになって‥
涼子は両親にもよく相談して、いろいろな場合を想定した上での行動でした。
北尾先生の指導の下の課外活動として、許されることに。
頭が良くて、りりしい涼子はカッコイイ!
とはいえ、最初は陪審員役の生徒たちもろくに集まらないのですが‥

涼子は、疑われたままの大出の弁護人を買って出ようとしていました。
そのつもりで大出の家にも行きますが、いろいろあって検察側にいくことに。
大出の父親は攻撃的で、札付きの不良の俊次もまったく頭が上がらない状態と知ります。
親が放任状態なため、俊次のアリバイを確認するのは難しい。
告発状を書いた人は名乗り出るように連絡を回すと、望み薄と思われた反応が。

弁護人は、他校生ながら柏木と塾で友人だったという神原和彦に。
弁護側の助手に名乗り出た野田健一は、涼子の手助けをしたかったのですが。
気が弱い野田ですが、じつはやれば出来る男子?
大人しそうだが冷静で、どこか変わっている神原に感心したり、やや不審を抱いたり。
超然としていた柏木とも、神原は似たところがありました。
涼子の親友の古野章子は、裁判には関わらないと明言、涼子にもやめるように言っていました。神原と野田の聞き込みにも反発しますが、やがて協力的に。
夏の間に、正義の味方と思われて、神原と野田の人気は上がっていきます。

探偵社の河野は、生徒たちの行動に好感を持ち、かげながら協力的な態度。
告発状の内容を信じて噂を報道したテレビ局の茂木は、ミスに気づかされ、学校内裁判に興味を持ちます。
警察は生徒たちの知らない何かを追っている。はたして‥?

実は掟破りでⅡ部を先に読みました。
図書館で先に来てしまったため。
Ⅰもあと少しで来そうなので、迷いながら待ってたんですが。改めて予約しなおすと、Ⅱ部を読むのが1年後になりかねなくて。それじゃあまりにも覚えてなさそうでしょ‥書評であらすじをざっとチェックして、Ⅱ部からでも大丈夫そうかなと見当をつけて。
Ⅱ部は裁判を始めるいきさつと、その課程が主なので、すごく面白い部分です。
いろいろな立場の思惑や、周りがだんだん協力するようになっていく様子がありありと描かれています。
このすぐ後にⅠ部を読んで、ああこの事はあの人はⅡ部になっても知らないんだ‥とわかった部分があり、それも一興でした。
Ⅲ部からいきなりは無理ですけどね!

「ソロモンの偽証 第Ⅰ部 事件」

宮部みゆき「ソロモンの偽証 第Ⅰ部 事件」新潮社

中学生の転落死を発端に描く大長編~宮部みゆきの話題作。
現代ミステリは5年ぶり?
さすがの描写力で、長さを感じさせません。

雪が積もったクリスマスの朝、中学の裏庭で2年生の柏木卓也の遺体が発見されました。
屋上から転落死したらしい。
一ヶ月前に不良グループ3人と揉めた後、不登校になっていました。
大出俊次をリーダーとする不良グループのせいという噂も流れるが、卓也の親が自殺と認めるような発言をしたことから沈静化します。
ところが、連鎖するように事件は起き続けて‥
大出の父親は横暴なタイプで、世間に対してはむちゃくちゃな態度で息子をかばいますが、家では暴君という。

同級生の急死にほとんどの女子は泣きますが、クラス委員の藤野涼子の目は乾いていました。
友達ではなくほとんど知らなかったためとはいえ、自分が冷たいのかと内心悩みます。
剣道部でも活躍する文武両道の涼子のりりしさはすっきり輝いていて、親子関係も含めて、重い話の希望になっていますね。
優等生(しかも美人)は嫉妬されることもあるけれど。

発見者の野田健一は大人しく、学校では目立たないようにしているタイプ。
家では不安定な母親を支えるため、何かと我慢を重ねてきました。
父親が家を売ってペンション経営に乗り出そうとし、反対しても聞き入れないことに絶望した野田は‥
親友のおっとりした向坂行夫がいいですねえ。

柏木卓也が頭はいいが超然とした孤立しがちな性格だったので、教師達は家庭訪問を重ねてはいたが、あまり急いではいなかったのです。
卓也は子供のころは病弱で、幼い弟に振り回される偏った生活に兄の宏之は苦しめられ、祖父母のもとで暮らしていました。

大出らにいじめられていた三宅樹理は、柏木が突き落とされるところを見たという告発文を作成、学校と、担任の森内恵美子と、藤野涼子に送りつけます。
藤野の父・剛は警視庁の捜査一課の刑事で、娘に来た見るからに不審な手紙を開け、学校へ向かいます。

森内はモリリンとあだ名される若い教師で、男子にアイドル的な人気はあるが、えこひいきするタイプでした。
森内のところに届いた手紙は、マスコミに流され、騒動に。
校長らが生徒のことを考えて伏せたことも裏目に出て、学校側のことなかれ体質が批判を浴びることにも。
ニュース番組の記者・茂木は涼子にも取材に来ます。
相次ぐ事件が噂ばかりで解明されないことに憤りを感じた涼子は、自分達で調査すると宣言します。はたして‥?

一人々々がそこにいるかのようにありありと描写されていきます。
それぞれの家にある思いがけない事情。
親の影響を強く受け、意志は持ち始めていても上手く伝えるすべも知らない子供達。
少年課の佐々木礼子刑事が、問題児を見る現実的なまなざしにも納得。

時代がバブル末期の1990年という設定なので、まず携帯が出てきません。
他にどんな意味があるのだろうか‥?
いじめの質やスクールカーストは違うのでしょうか。
重い内容だけど、重苦しすぎることはなく、先が知りたくなるばかり。
さすが宮部さんというか~最近のものでも、かなりいいほうですよね!

「ここはボツコニアン」

宮部みゆき「ここはボツコニアン」集英社

ゲーム大好きな宮部さんが楽しんで書いた軽い作品。
RPGをやったことがないと、わかりにくいかも?

ボツコニアンとは、実はボツになったネタで構成されている世界、というパロディ的な設定です。
大陸に7つの国があり、神の与えた魔法石がパワーの源。
モルブディア王国では、12歳になると枕元に長靴が現れ、その子達の中から長靴の戦士が選ばれます。
魔法石をもっと貰うための冒険が始まるのでした‥

少年ピノは12歳になり、赤い長靴を持って役場へ出頭。
ピピという女の子と組んで、旅立つことになります。
ピピは、実は双子の姉だという。
植木鉢に咲いた花のような「トリセツ」が時々案内をしてくれるが、時々姿を消してしまう。
暴れる龍を封じ込め、王都へ向かい、迷宮に挑戦し‥?

ゆる~いテンポに肩の力をほぐしてもらいながら、読みました。
ゲームはやったことはあるので何となくわかるけど、詳しくはないので、パロディ部分に爆笑ってところまでいかない。笑いもゆる~く、にやりとするぐらい。
作者の発言や映画などの知識も混じっているので~エッセイ的というか、大人には薀蓄のほうが反応できるかも?
(ランス・ヘンリクセンに反応してしまった私)

ゲーム好きで本は読まない青少年が読むのにいいかも!
そこから、宮部さんのほかの作品に行ってくれれば‥
2010年8月~2011年8月「小説すばる」連載。

「チヨ子」

宮部みゆき「チヨ子」光文社文庫

短編集。
ミステリというより~ややホラー色。
手際よく、少し哀しく、ぞーっとさせます。

「雪娘」
小学校で6年間一緒だった4人が、集まることに。
ゆかりは気乗りはしなかったのですが、他にすることもないので出かけていきます。
最後には、そこにいない女の子の話になります。実は…

「オモチャ」
商店街の角の玩具屋さんに、幽霊が…?
偶然引っ越してきた先で、玩具屋のおじいさんが実はクミコの父方の遠縁に当たるというのです。とはいえ、付き合いはないままでした。
おばあさんが亡くなった後に、相続で揉めているという噂が聞こえてきましたが…
クミコは、おじいさんの幽霊を見かけ?
薄い縁でものがなしいが、人情味のある話。

「チヨ子」
スーパーのバイトで、着ぐるみを着ることになった女子大生のわたし。
5年前に使われたきりで、古ぼけてしまったピンクのウサギ。
いやいやながら着てみると~まわり中がぬいぐるみに見える!いや、それだけではなく…ガンダムやバービーまで?!
チヨ子とは、主人公が子供の頃に大好きだったぬいぐるみの名前なのです。
ほっこりさせてくれるお話。

「いしまくら」
公園に、若い女性の幽霊が出没するという噂がたちます。
子供らが深夜に水上公園を見に行き、その子達を狙うたかりが発生するなど、問題が起きていると、町内会会長からの通達が回って来ました。
石崎は娘の麻子に、被害者の女性が不当に悪く言われていると聞かされます。
麻子のBFが、殺された女性の年下の幼なじみで、よく知っているというのです。
調査を始めた石崎は…?

「聖痕」
子供相手の調査員をしているわたし。
ある日訪ねてきた寺嶋は、12年前に事件を起こした少年Aの実父でした。
早くに離婚して以来、子供とも縁は切れていたのですが、その子・和己が実母とその内縁の夫を殺し、教室に立てこもったのです。
和己は内縁の夫に虐待されていたのでした。
驚いた寺嶋はその後連絡を取り、しだいに息子も心を開くようになっていました。
ところが、ネット上に奇妙な動きがあり…?

これは、かなり怖い異色な話でした。

「撫子が斬る」

宮部みゆき 宇江佐真理 北原亞以子「撫子が斬る」光文社文庫

女性作家による時代小説アンソロジー。
傑作揃い!
読みやすいのもポイントです。

作家は~宇江佐真理、小笠原京、北原亞以子、澤田ふじ子、杉本章子、杉本苑子、築山桂、畠中恵、平岩弓枝、藤水名子、藤原緋沙子、松井今朝子、宮部みゆき、諸田玲子、山崎洋子。
セレクトは宮部みゆきによるもの。自作は編集者による?

人気シリーズの紹介としても、有効ですね。
宇江佐さんは「髪結い伊三次」だし、畠中さんは「しゃばけ」からなので、既に読んでいましたが。
まだまだ全然知らない作家さんがいるわ~。
これを参考に、読んでないシリーズや作家さんへ行けそう。

次々に違う設定の人物が出てくることになるから、ゆっくり読み進んだ方が良いかも。
え~と、この人らはどの辺に住んでるのかしら?とかちょっと気になったり。
時代もちょっとずつ違うし、たとえ同じ時代でも、作者の違うパラレルワールドだから、出合うわけもないんですけどね。

「あかんべえ」

宮部みゆき「あかんべえ」新潮文庫

これ読み落としていた!と気づいて、喜々として読みました。
好みとしても上位に入る作品。
素直な女の子が主人公の時代小説。幽霊も出てきます。

江戸、深川で、太一郎夫婦は「ふね屋」という念願の店を構えました。
太一郎が勤めていた賄い屋・高田屋の主の七兵衛が、「料理屋を出すのが夢だった」と店を出して独立させてくれたのです。
ところが、何故か縁起でもないことばかり。
最初の宴席で、抜き身の刀が暴れるという怪現象が?!

一人娘のおりんは、12歳。
引っ越した早々に高熱を出して生死の境をさまよい、そのためか幽霊が見えるようになります。
幽霊本人も、何故ここにいるのかは、わからないという。
あかんべえをする少女、美男の若侍・玄之介、色っぽい姐さん・おみつ、按摩の爺さん、おどろ髪の浪人風の男。
この組み合わせも、不思議なのですが…?

幽霊たちが成仏できないのは何故か、調べようと差配の孫兵衛の家を訪ねるおりん。
そこで働いている男の子は「ヒネ勝」と呼ばれているぐらい、かわいげがない。
すぐにケンカになってしまい、なかなか差配さんには会えず、事情も教えて貰えないのでしたが。
ヒネ勝には女の子の幽霊だけは見えているらしく、お梅と呼んでいました。
いぜん向いの土地には寺があり、大変な事件があったとわかって来ます。
「ふね屋」にとどまっていた幽霊たちの正体は?

関係者が集まった席で、また恐ろしい異変が?!
危機に際して、人の性根が試される…
厳しいようですが、赦しも希望もはっきりとある暖かさ。
この時点では道を誤っている者も、心を入れ替えれば、いつでも違う方向へ進めるという。

善意の人はややこしいことに気づかなかったり、理性的な人には幽霊のことが理解できないといったあたりも面白い。
思春期にさしかかる少女の成長も含めて。
ファンタジーとミステリと人情味が上手く溶け込んだ感動の時代小説。
平成14年発表。

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