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おすすめ本

「ありふれた祈り」

ウィリアムケントクルーガー「ありふれた祈り」   ハヤカワ・ポケット・ミステリ   

少年の日の、ひと夏の事件を回顧する内容。
初めて読んだ作家さんですが、切なく、確かな描写で、とてもよかったですよ。

ミネソタ州の田舎町、1961年。
13歳のフランクはやんちゃ盛りで、街中をすばしこく飛び回っていました。
穏やかで博識な父親は、牧師。
母は、良家の出で、芸術家肌。
二つ下の弟ジェイクは賢い落ち着いた子なのですが、緊張すると吃音になるため、からかわれることもあります。
18歳の姉のアリエルは美しく、音楽の才能に恵まれていて、弟達にも優しい。
一家の希望の星である姉には、失意を抱える母親が特に大きな期待を寄せていました。
その姉が行方不明となり、フランクの住む世界はとつぜん悲痛な色を帯び始めます‥

豊かな自然に恵まれた町ですが、上流階級と庶民の住む区画は分かれています。
人種差別もあり、普通の人々の中に、いろいろ癖の強い人間もいる。
互いに何とか許しあってほど良い加減で暮らしていた、ゆったりした描写が、しだいにテンポを速めていきます。
複雑な出来事をただ目を見張って受け入れるうちに、男の子達は大人の世界に一歩、足を踏み入れていく‥

卑小な人間のどうしようもなさ、悪気はなくとも個性がぶつかり合い、弱点がすれ違う哀しさ、苛立ち、切なさ。
タイトルになっているシーンは感動的です。
よく描ききってくれたな、と胸をうたれました。
エドガー賞はじめ全米の主要なミステリの最優秀長編賞を独占した作品です☆

「死と陽気な女」

エリス・ピーターズ「死と陽気な女」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

ずっと前の下書き記事を見つけました。
古い作品ですが面白かったので、アップしておきます。

カドフェルのシリーズを読み直そうかどうしようか迷っていて、若い頃のこんな作品があることに気づきました。
イギリスの作家ですが、これは1963年のアメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞受賞作。
日本では昭和62年(1987年)の発行と、ややこしい…
つまりカドフェルより前の、デビュー間もない作品なのです。

少年が、年上の美女に恋をする所から始まります。
パーティの夜、バルコニーに出て裸足で踊っていた娘キティ・ノリス。
恋に落ちた少年ドミニックは成績も主席から落ち、ラグビーの試合も全くダメになるほど。
少し落ち着いた頃に、たまたま献血所でキティを見かけ、車で送ってもらいます。
暗紅色のカーマン・ギアで。大金持ちの令嬢の割には、気さくな彼女。
 

大実業家アルフレッド・アーマイジャーが古い建物を豪華に改築して、「陽気な酒場女給」という酒場を開きます。
大きな割には不便で買い手の付きにくいために安かった建物は、昔「陽気な女」という店だったらしいのですが。
オープニングパーティーに顔を出した地元の刑事ジョージ・フェルスは、ドミニックの父。
じつはアーマイジャーの意に反した結婚をして家を出た息子レスリーが住もうとしていた家を奪って改築したことなど、複雑な事情を次第に知ります。

アーマイジャーが殺され、直前に会っていたキティに殺人の容疑が!
キティには、レスリーと婚約の話があったのですが…
疑いを晴らそうと、少年は奔走するのです。
言葉遣いに少し古いところがあるけど、綿密な描写はレベルが高く、かなり濃厚で面白いです。
恋愛ムードのせいか、何となくフランス風な印象もありました。
なかなか得がたい味わいでしたよ。

「毒の目覚め」

S.J.ボルトン「毒の目覚め」創元推理文庫

MWA賞受賞作。
イギリスの田舎町を舞台に、蛇をめぐる異常な事件に立ち向かう女性獣医のミステリ。

クララ・ベニングは、野生動物病院の獣医。
自然が豊かで、年代の古い家屋敷がまばらに建ち、住人は少ない静かな村に住んでいます。
人付き合いが苦手で、同僚に肩を触られるのも嫌なクララ。
それには、理由がありました。
赤ちゃんのベッドに蛇がいると近所に住む若い母親に助けを求められ、無事に捕まえます。
同じ日に父と姉からはしきりに電話がありましたが、家族のもとへはすぐには向かわないクララ。

その後、蛇に噛まれて死んだ男性があったと聞きます。
クララは専門家として招かれ、地元の名士の館で開かれた、蛇退治に乗り出そうとする住民の集会にいやいやながら出席。
蛇に噛まれて死ぬことなど非常にまれで、イギリスでは野生の蛇を殺すことも禁じられているのですが。
一同にストップをかけたマットは、クララの家の裏手に建つ家に住む男性。実は警官だったのです。

今は住む者がいないはずのウィッチャー家の古い館で、死んだはずの老人の姿を見かけ、目を疑うクララ。
そういえば葬式はなかったのだが‥まさか?

蛇がたくさん入り込んだという家に駆けつけたクララは、マットが捕まえようとしている蛇を見て驚愕。オーストラリアに住む世界一危険な毒蛇タイパンだったのです。
何者かが違法に持ち込んだのか‥いったい、なぜ?!
世界的な爬虫類学者ショーン・ノースの教えを請うことに。

顔に傷跡があるヒロインですが、実はそれ以外は綺麗で、他の人はいつまでも気にはしないということに、やっと気づきはじめます。
村の過去の事件まで、さかのぼる展開に。
スリリングで緊張感がみなぎり、密度の高いサスペンスとして、水準高くまとまっています。

蛇がたくさん出てくるホラー的な作品だとしたらあまり好きになれないかも?という疑問もあったのですが。
野生動物全般に愛情深いまなざしを向けるヒロインが、蛇の美しさに瞠目する様子に、違う視点で見ることが出来るようになりました。
イギリスに毒蛇タイパンがいるなんて、タイパンに対する虐待なんですね!
故郷に帰った「癇癪持ちのクララ」(捕まったタイパンにつけられた名前)、よかったね。

「市民ヴィンス」

ジェス・ウォルター「市民ヴィンス」ハヤカワ・ミステリ文庫

1980年10月、ジミー・カーター大統領が選挙戦で負けそうになっていた時期。
揺れ動くアメリカ社会の片隅に、こんな男がいたという。

今はスポーケンという田舎町で、かたぎのドーナツ店の雇われ店長をしているヴィンス・キャムデン。
案外、この生活も、性に合うと思っていました。
生まれて初めて、大統領選挙にも興味を持ちます。
4年前には良くなると思われていたアメリカは、どうなるのか?

根っから小悪党で、今もクレジットカードの詐欺はやめられません。
36歳、身長6フィートと、見てくれは悪くないけれど、どこか信用出来ない風貌。ポーカーは強いのです。
子供の頃からまわりの子供が皆やるような小さな悪事から始めて、他の生き方を知らないままでした。
じつは証人保護法で、あらたな身元を得ています。
いつか追っ手が来るかも知れないと、内心は脅える日々。

マフィアに借金が出来たことから、生まれ育ったニューヨークを出る羽目になり、恋人を置いてきました。
弁護士のべニーは恋人の兄で、これもマフィアと付き合うのを何とも思わないような男でしたが、年の離れた妹の結婚相手には考えがあったのです。
そして、4年がたっていました。

馴染みのベスは娼婦ですが、子供が出来たと知った途端に麻薬を一切辞めたことで、廻りの尊敬を得ています。
詐欺の仲間が殺され、ヴィンスは警察に疑われることに。
マフィアの差し金かと思ったヴィンスは、決着をつけようと動きますが…?

ヴィンスが出会った州議会議員候補アーロンは、ヴィンスの案内で夜の街を体験します。世間知らずのアーロンは市民との交流に感激しますが、演説した相手らは選挙権を持っていないのでした。
ヴィンスの後を追った刑事デュプリーも又、ニューヨークで悪徳警官と組まされ、えらい目に合うことに。

マフィアにも人間的な面があり、ちっぽけな人間にもそれぞれのこだわりがあり、警官にも暴力的な面がある。
行く先々での物思いや、出会ったばかりの人との意外に深い会話など、普通小説に近い味わいがあります。
ねじれた問題は落ちつく所へ落ちつき、少しずつ再生へ向かう。
読後感は良かったですよ。
アメリカはレーガンが大統領になって、一見は期待させたがとんでもない時代に入るという皮肉をほのめかしつつ…?
2005年の作品。
2006年12月翻訳発行。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞受賞。

「甦る男」

イアン・ランキン「甦る男―リーバス警部シリーズ」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

スコットランドの警察物。
シリーズ13作目。
初期の物をずっと前に読んで以来、久しぶり。
MWA賞受賞作だということで。

ジョン・リーバス警部はいつもマイペースで、規則ギリギリの仕事ぶり。
今回は捜査会議中に女性上司ジル・テンプラーにカップを投げつけるという規則を越える事をやらかし、警察学校の再教育コースに送り込まれました。
そこには、上司に反抗的だったり、チームの仕事で問題を起こした警官が各地から数人集められていたのです。
平均して勤続20年は越える~古強者ばかり。
中でもグラスゴーのフランシス・グレイ警部は、大柄でいつも座の中心になるような人物。

授業の一環で、協力して再捜査をするというコースがあり、取り上げられた古い事件にリーバスは驚きます。
暗黒街の殺し屋リコが殺され、証人が失踪した事件。リーバスが浅からぬ関わりを持った事件、忘れたい悪夢だったのです。
リーバスがここに送り込まれた真の理由とは…?

上司にも再捜査のチームにも疑心暗鬼となりながら、孤独な葛藤を続けるリーバス。
交際中の女性には、最悪のタイミングで鉢合わせ。
何かと頼りになるのは、部下の女性シボーンでした。

セント・リバーズ署では、リーバスの相棒のシボーン・クラークが部長刑事に昇進。
リーバスの留守中は、年下の新人ハインズと組まされています。
さらに、リーバスの代わりにと送り込まれてきたのが、デレク・リンフォード。
短い期間シボーンが付き合ったことがあるのですが、いささか勘違い男。
いまだに気がある様子で、何かと緊張が漂うことに。

美術商マーバーが自宅前で殺された事件が起きていました。
関連して、エジンバラの陰のボス、ビッグ・ジェルことカファティが、浮かび上がってきます。
リーバスにとっては宿敵なのですが、リーバスがカファティに取り込まれているのではないかという黒い噂を立てられている人物でもありました。
シボーンが聞き込みを続けるうちに、保護したいと見張っていた女性ローラが目の前で前夫に刺されてしまう。
そのとき聞いた、ドアが閉まる音を一生忘れられないだろうと思うシボーン。
かなりしっかりしてきた様子で、頑張ってますね。
リーバスに似てきたと言われて、複雑な心境?

平行して起きる事件や多彩な登場人物が重層的に書き込まれ、剛腕ぶりが発揮されています。
ちょっとした滑稽さや情けなさも交えながら。
読み応えがありました。

著者は1960年、スコットランドのファイフ生まれ。
86年に作家デビュー、リーバス警部シリーズで人気を集め、97年に「黒と青」でCWA賞ゴールド・ダガー受賞。
この作品は2001年発表。

「ブルー・ヘヴン」

C.J.ボックス「ブルー・ヘヴン」ハヤカワ・ミステリ文庫

MWA(アメリカ推理小説作家協会またはアメリカ探偵作家クラブ)賞・最優秀長編賞受賞作。
田舎町で、思いがけない大事件が起きます。

ノース・アイダホの平和な町、クートネー・ベイ。
12歳の少女アニーと弟のウィリアムは、森で殺人現場を目撃してしまう。
しかも、男達に気づかれ、後を追われることに。

母のモニカ・テイラーは一人で子供達を育てている女性でした。
前々から口説かれていたトムを前夜家に入れ、翌朝子供達に見られて、気まずくなっていました。

一方、ジェス・ロウリンズは、ロウリンズ・ランチという牧場を経営している初老の男性。
妻には出て行かれ、一人息子には事情があり、牧場は経営が破綻して、監督を雇う金もなくなったところ。

銀行家のジム・ハーンは、学生時代にはロデオに出ていて、モニカの亡き父にロデオを習って行動を共にしていたため、モニカのことを気にかけています。
ジムは、頑固だが信頼できるジェスのこともよく知っていて、何とか伝統あるランチを守る手だてがないか考えようとしていました。

二人の子供は帰らず、行方不明事件として捜査が始まります。
アイダホ州には、ロサンジェルス警察を退職した警官が、何と200人以上も住んでいました。
都会と違って治安が良くて地価も安く、アウトドアスポーツを楽しめる環境を求めてのことです。
ロサンジェルス市警では、ノース・アイダホのことを「ブルー・ヘヴン」と呼んでいるというほど。

こういう事件には慣れていない保安官ケアリーに、数人の退職警官らがこういう事には詳しいからと援助を申し出て、ドリーム・チームが結成されます。
ところが、その警官こそが…

カリフォルニアの警察を退職したばかりの警官ヴィアトロが、折しも町を訪れます。
サンタ・アニータ競馬場の売上金が強奪された事件を追って…
既に8年もたち、犯人も収監されているのですが、強奪された金は見つからず、犯人も何も知らずに嵌められたように見えるのです。
担当した未解決事件に、いまだ執念を燃やしているのは、ヴィアトロ一人。

冷徹なリーダーのシンガー元警部補、大男で力の強いゴンザレス、適度に地元に溶け込もうとしているスワン、一家で腰を落ち着けているニューカーク。
悪巧みをする連中にも個性があります。

子供達は、ジェスの牧場の納屋に逃げ込んでいました。
ウィリアムは現れたジェスの手に怪我をさせ、賢いアニーはすぐにはジェスのことも信用しないけれど、落ちつくと溢れるように話し始めます。
警戒してはいてもまだまだ無邪気な子供達。

殺人を目撃したという話をにわかには信じられないまま、事情を探りに町へ出るジェス。
真相に近づくと共に、逆に子供らの誘拐犯という疑いを掛けられそうになります。
車で近づくと相手に気づかれるので、山道を馬に乗って一味の様子を探りに行ったり。
ヴィアトロと出会い、互いに信頼できるのではと感じます。
病気を抱えた息子との再会や、哀切な人間模様も。
孤高の牧場主が、暴力に慣れた悪党らといかに戦うか…?!

いい人と悪い人が、かなりはっきり分かれています。
でも、いい人にも弱点はある。
ハーンの妻など、女性達もそれぞれはっきり描き分けられていて魅力的。
誰がどこでどう動いて、それがまた…?はらはらドキドキ、スリル満点。
テンポの良い筆致で、内容の割には重すぎない読み心地。
面白かった!でも…泣かされます。
2007年の作品。2008年翻訳発行。映画化されるそう。

著者はワイオミング生まれ。様々な職業を経験した後、妻と国際観光マーケティング会社を経営。ロデオ関係の理事も。
2001年のデビュー作で、史上初の新人賞4冠(アンソニー賞、マカヴィティ賞、バリー賞、ガムシュー賞)達成。
この作品で、2009年のMWA賞最優秀長編賞受賞。
これまでに9作発表しているそうです。

「カリフォルニア・ガール」

T.ジェファーソン・パーカー「カリフォルニア・ガール」

下書きしてあったのに~ご紹介はまだだったのを発見しました。
カリフォルニアの60年代を描く力作です。

ベッカー兄弟の成長と、幼い頃から知っていた娘の死を巡って。
1954年、ベッカー4兄弟とヴォン家の兄弟がまだ皆10代だった頃、ベッカー家の三男クレイが原因で、兄弟同士での果たし合いのようなケンカになります。
両親に連れられて、謝りに行かされたベッカー兄弟は、ドアから見える室内の貧しさに内心、驚きます。
ヴォン家の養女で末っ子だった幼いジャニルは、大きすぎるチュチュを着て、ギターを抱えていました。片方の目を腫らして。

兄弟達がそれぞれの道に進んでバラバラになる時期、ヴォン一家の母親が自殺。
1963年、ベッカー家の長男デイヴィッドが牧師になった年、ジャニルが訪ねてきます。虐待されているジャニルを救い、兄たちを訴えることに。
それはケネディ暗殺の起こった年でした。

1968年、ジャニルが殺されます。
一度はミス・タスティンにも選ばれたほどで、いきいきして人目を惹く美しい女性になっていました。
オレンジを持つ黒髪の美女がモデルの~カリフォルニア・ガールのポスターのように。
ベッカー家の次男ニックには、これが刑事として初めて自分が中心になって担当する事件になります。
末っ子アンディは新聞記者として、関わっていくことに。

定職のない若い女性にしては、立派な住居に住んでいたジャニル。交錯する事情が、次第に明らかになっていきます。
多彩な登場人物の描き分けが巧みで、いかにもなアメリカンライフが血肉の通うものになっています。
ベトナム戦争の泥沼化、ヒッピー文化、テレビでの説教、LSDやマリファナの流行など時代の推移が描かれていきます。
作者にとって12作目の長篇。
2005年、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀長篇賞を受賞。
2002年の「サイレント・ジョー」に続く受賞とのこと。

「心理検死官ジョー・ベケット」

メグ・ガーディナー「心理検死官ジョー・ベケット」集英社文庫

児玉清さんが推薦していたので、読みました。
なるほど~ジェフリー・ディーヴァーをこよなく愛する児玉さんらしいかも。

ジョー(ジョアナ)・ベケットは、法精神科医。
警察の依頼を受けて、死者が生前どういう精神状態にあったかを調査して心理を分析、死因の判断に寄与するのが仕事。

連邦検事補のキャリー・ハーデイングが、謎の交通事故死。
自殺のように見えるが、その理由は見あたらない。
美人でやり手で、出世の階段を上っていたのに。

彼女の脚には、口紅でdirtyの文字が…?!
精神科医が急に現場にまで呼び出されるのは異例のことでした。
ジョーを呼び出した市警察警部補のエイミー・タングは、小柄な中国系。
「セレブの謎の死が相次いでいるので、食い止めたい」とジョーに告げます。
警部補のとっつきはよくないのですが、仕事熱心な女性同士、しだいに信頼関係が出来ていきます。

「ダーティ・シークレット・クラブ」という謎めいた組織の存在が浮かび上がってきますが、その正体はなかなかわからない。
この妙な設定の強烈さが、ユニーク。
ストーリー展開は、かっ飛ばし気味にスリリングです。
さらに、ジョー自身の過去にまつわることも起きてきて…?

ジョーは、アイルランドにエジプトと日本が混じっているという、血筋がわかりにくいエキゾチックな外見。
祖母が日本人という設定で、祖母に教わったという日本趣味が時々ちらっと出てくるのはご愛敬。

登場人物は、派手で多彩。
ジョーには救急の現場で、夫を亡くした過去がありました。
夫の同僚で、空軍州兵の降下救難隊だったというカッコイイ男性も登場。
マッチョというか?ものすごく理想的な~気はやさしくて力持ちな男性が好きなようです。

作者は、1957年カリフォルニア州生まれ。元弁護士。
イギリス人と結婚して、イギリス在住。
イギリス人がアメリカを舞台に書いたと思われて、アメリカでの発行は遅れたそうです。
この本とは別シリーズの「チャイナ・レイク」で、スティーブン・キングに絶賛され、2009年エドガー賞最優秀ペーパーバック賞受賞。

エドガー賞とはMWA賞(アメリカ推理小説作家クラブ賞)のことです。エドガー・アラン・ポーへの敬意を込めての通称。

「ラスト・チャイルド」

ジョン・ハート「ラスト・チャイルド」ハヤカワ・ミステリ文庫

アメリカ推理作家協会(MWA)賞最優秀長篇(ベストノベル)賞受賞作。
「このミステリーがすごい」2011年版海外5位。
力作です。

双子の妹アリッサが行方不明になって、1年。
少年ジョニー・メリモンは、探し続けている。
近くで捕らわれのまま、きっと生きていると信じて…
10歳ぐらいにしか見えない13歳の男の子の頑張りように応援せずにはいられません。

父は娘を一人にしたと妻に責められて、出奔。
母キャサリンは酒浸りとなり、言い寄ってきた金持ちの男ケンの言うなりに。
調査に当たった警官クライド・ハントもまた、人生を狂わせていました。
あまりののめり込みように半年で妻が去り、高校生の息子アレンとは上手くいかない。
ここへ来て新たな展開が?
同じ学校の少女ティファニーが、行方不明になったのです。

交通事故の現場に行き合ったジョニーは、倒れている男が死に際に「あの子を見つけた」というのを聞きます。
たった一人の親友ジャックと共に、懸命な探索を続けるジョニー。
事故現場にいた謎の大男は、殺人犯なのか?

刑事ハントのジョニーと母を守ろうとする姿勢に、絶望していた親子もしだいに気づいていきます。
刑事も知らないことを自ら発見するジョニーの活躍は、痛快。
ところが家庭の実情が怪しまれ、児童保護局が動き出しますが…

重い内容をだれずにきっちり描き分け、生命力を感じさせます。
ジョン・ハートは3作読みましたが、一番良いですね。

「川は静かに流れ」

ジョン・ハート「川は静かに流れ」ハヤカワ・ミステリ文庫

海外ミステリの話題作です。
アダム・チェイスは、殺人罪で裁判にかけられて離れた故郷を、5年ぶりに訪れました。
親友だったダニーから電話で助けを求められ、断ったものの、気になって3週間後に戻ってきたのです。
ところが、ダニーは行方不明。

故郷は、ノース・カロライナのソールズベリの町。
原子力発電所を誘致するかどうかで、町は緊迫していました。
土地の価格が跳ね上がるのを期待する人も多い中、広大な土地を所有するアダムの父が売却を拒んでいるために、交渉は暗礁に乗り上げていたのです。

かって、父の所有するレッド・ウォーター農場の一角で起きた事件。
アダムは、確たる証拠もなんの動機もないと無罪になりましたが、義母には不利な証言をされ、厳格な父には勘当されたのです。
恋人ロビンは、何の連絡もしなかった彼を恨んでいましたが、まだ愛は…?

妹ミリアムは婚約中というのに何か問題を抱えていて、ダニーとつるんでいた弟ジェイミーは借金があるとわかってきます。
一方、農場内に住む監督ドルフの孫で、アダムにとっては幼い妹のような存在だったグレイスは美しく成長していました。が、会うなりアダムに反発。
頼りにしていたアダムを失って、孤独に苦しんでいたのでした。
しかも、なぜか、何者かに襲われ…?

事件が起こるたびに、疑われるアダム。
ロビンは、ソールズベリ警察の刑事なので、板挟みにもなります。
絶望的な状況から次第にはい上がる主人公がいいですね。
親しい人たちが皆、何か嘘をついている…
登場人物が個性的で、ぐいぐい引き込まれます。
どこが静かなんだという土地だけど…川だけは静か?

著者は1965年、ノース・カロライナ生まれ。
フランス文学、会計学、法学を学び、刑事弁護などでも活躍。
作家を志して職を辞し、2作目の本書でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀長篇賞受賞。

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