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おすすめ本

「警視の偽装」

デボラ・クロンビー「警視の偽装」講談社文庫

警視シリーズ12作目。
毎回楽しみなレベルの高さです。
どの作品から読み始めても大丈夫ですよ。

警視ダンカン・キンケイドと、巡査だったジェマ・ジェイムズは、もともと上司と部下の名コンビ。
恋人になった当初は、周囲に二人の仲を隠していました。
ジェマが警部補に昇進してノティング・ヒル署に移動し、今はそれぞれの子連れで同居していますが、いまだに結婚の決意はつかない。

ジェマは友人に頼まれて、オークションに出たブローチの調査を始めます。
年上の友人エリカはユダヤ人で、ブローチは父の形見で行方知れずになっていた品でした。
アンティークのオークションの世界の事情も出てきて、興味深いです。

ところが、ブローチに関係した人たちに、次々に死者が‥?!
ダンカンは、事件の担当になるよう申し出ます。
ジェマは担当ではないのですが、個人的に捜査に参加。エリカが話さなかったことにも気づくことに。
エリカが夫婦でイギリスに渡ってきた1940年代の出来事が、長く暗い影を落とします。
この部分が重厚で、魅力を増しています。もうこれぐらいお手の物という書きっぷり。
第二次大戦中の出来事を絡めた内容は、サラ・パレツキーの「ビター・メモリー」やS.J.ローザンの「シャンハイ・ムーン」に相当する感じでしょうか。

ジェマの母親が倒れて入院したため、ジェマは仕事の大部分を有能な部下のメロディ・タルボット巡査に任せ、自由に出入りする許可を得ます。
このメロディと張り合うような~ダンカンの部下ダグ・カリン巡査部長との関係も今後、面白そう。

頑固な父とジェマはもともと上手くいかないところがあり、互いに心配でぴりぴりしているためにさらに気まずくなってしまう。
しかしこれは、家族のことをもう一度考え直す機会ともなります。
優秀な長女を自慢に思いながら、どこか脅威にも感じてつっかかっていたという、父の本当の気持ちをジェマは病床の母に教えられて‥?

人の話を聞き出すのが上手い親切なジェマは、ダンカンの息子キットとの関係に悩みますが、キットにとっても既に良い母親。
キットがジェマの父の店を一生懸命手伝うシーンも。なんていい子なのー!
複雑に絡み合う多くのことがあった後だけに、いよいよ心を決めるジェマ。
ほのぼのと心温まる~未来の見える結末でした。
2009年のマカヴィティ賞最優秀作品賞を受賞。

「いつか還るときは」

シャーリン・マクラム「いつか還るときは」ミステリアス・プレス文庫

手持ちの本の再読です。
ミステリアスプレスだから絶版ですね~。図書館や古本ならあると思います。
実力派の女性作家が、真摯なタッチでぐいぐいと、土地に生きる人間たちをがっつり描き抜いた作品です。

アパラチア・シリーズの1作目。
1990年の作品で、1991年の第4回マカヴィティ賞受賞作。
(マカヴィティ賞は世界最大のミステリクラブの会員の投票によるもの。しっかり書き込まれた好感度の高い作品が多いようです)
作者が育ったアパラチア山岳地帯を舞台にした作品で、郡保安官のスペンサー・アローウッドが1作目の主人公ですが、シリーズは彼の事件簿という感じではないようです。

スペンサーは38歳。
戦没者記念日の朝、兄のキャルの墓を一人訪れます。
フットボールの花形だった兄は町でも目立つ存在で、ヴェトナム戦争で英雄となり、今も惜しまれていました。
実は、大人しい弟をいじめる気まぐれな兄だったのですが。
保安官助手のレダンはヴェトナム帰りで、どこか人と距離がある男。
通信係のマーサは、痩せていて気が強い、今は「夫と夫の間」というフリーな身の上。スペンサーとは高校の同級生で、ちょうど同期会の準備を始めていました。
同級生だったジェニーと少し前に離婚したスペンサーにとっては、苦手な話題ですが。

かってのスター歌手ペギー・マリヤンが町に越してきました。誰もが知るフォークシンガーですが、最近はぱっとしない。
差出人不明の葉書が届き、ヴェトナムで死んだはずの恋人からの脅迫としか思えない内容に、ペギーはスペンサーに助けを求めます。
美しいペギーにスペンサーは惹かれ始めますが。
折しも、女子高校生が行方不明になる事件も起き、町は不穏な空気に包まれる…

レダンは帰還兵仲間がどうしているか、様子を見に行きます。
フラッシュバックで戦闘状態と勘違いして暴れたり、ひとなかで普通に暮らせなくなっている者も多いのです。
皆、犬を飼っている…ヴェトナムでも安心して触れるぬくもりは犬だけだったから。

マーサは同期会のことで、ティンドルとサリーに会います。
クラスの花形だった二人に気後れしていましたが、ティンドルは母親の介護のために帰郷していたので面やつれし、かっての面影はほとんどありませんでした。
サリーは大学教授で若々しいが、母親の世代には認められていないと感じていました。寛恕たちの母親の世代は、ほとんど専業主婦だったんですね。
マーサは、陰のあるレダンに惹かれていましたが…

兄キャルへの複雑な気持ちを抱えたスペンサー。
歌手としてやり直そうとしているペギー。
ヴェトナム体験で破綻した人生に戸惑うレダン。
介護で疲れ果てていくティンドル。

それぞれに葛藤を抱え、人には言えない苦しみがありますが、全く違う経験に対してはほとんど無知な状態がありありと。
孤立しているようで、どこかでふと関わりが深まり、手を取り合うことも。
ヴェトナム戦争の影響が、日本とは全く違うものなのだと感じます。とはいえ、アメリカ人の間でも相当な温度差があるんですね。
今から考えると、9.11も3.11もまだなかった時代は、いくらか良い時代のように思えなくもないのですが。

保安官事務所のメンバーは数が少ないので、事件の捜査だけに集中するわけではなく、事があれば州警察に応援を仰ぎます。
地元に根を生やし、互いに理解を深めていく仲間なんですね。
結末はしみじみと感動的でした。

「丘をさまよう女」

シャーリン・マクラム「丘をさまよう女」ミステリアス・プレス文庫

アメリカならではのミステリです。
1995年、アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞をトリプル受賞した作品。つまり~批評家にもコージーファンにも一般のミステリ好きにも、評価されたということですね。

山間の村で、起こる事件。
終身刑で服役していた男ハーム・ソーリィが、63歳で脱走したのです。
本人はコルサコフ症候群で最近の記憶はすぐ消え、何で服役したのかも忘れている状態でした。
時折若い頃の自分に戻った感覚になり、どうやらその状態で脱獄を実行したのですが…
生まれ育った土地に向かったかも知れないと、捜査が始まります。

今も広大な原生林を含むアパラチア山脈。
アメリカ独立いぜんは、イギリスとの契約で、先住民(当時はインディアン)の土地として守られていました。
クーガの姿は滅多に見られないが、今も住んでいるという<豹の谷間>を意味する土地。
自然溢れる情景の描写が素敵です。

山の中に住む老女ノラは、子供の頃から、山を走って逃げる女の幻を見ていました。
その女ケイティが18世紀に誘拐された当時の歴史を研究している学者ジェレミーは、女性一人が驚異的な逃避行を成し遂げた山を自分で歩いてみようと試みます。
ハイキングの経験もないので、無謀な試みでしたが‥

警察の無線担当だったマーサは、保安官助手に昇格することを希望し、見習いとして捜査に同行するようになります。
保安官は、穏やかな性格のスペンサー。
保安官助手のレダンとマーサは付き合っていましたが、仲がぎくしゃくし始めます。
マーサは、これまで知らなかった怒りや恐怖に直面することに。

ラジオ番組で<北部出のハンク>で通っているディスクジョッキーのヘンリーは、脱走したのがどういう人物なのか調べ始め、情報提供を募集します。
ハームは血気盛んな一家育ちでしたが、裁判は不当と言えるほどいい加減な物だったようで、殺された隣人の方にも原因があったらしいとわかってきます。

ハームの元妻リタは、終身刑が決まった後に離婚手続きを取り、再婚して25年にもなる。
今は街中のりっぱな家に住んで、庭の手入れに余念がない暮らしをしていました。
娘シャラーティは大学で地質の研究をしているが、ラジオで母の名前を聞いて、駆けつけます。
しかし、リタは行方不明になってしまい‥?

それぞれの事情や願いを抱えた登場人物の行動が、交錯していく様子が面白い。
読み応えがありますよ。
翻訳が浅羽莢子さんだし。
ミステリアス・プレスだと、絶版かなあ…
発行当時に読んだけど、具体的な内容を忘れたので、再読。
スペンサー保安官が出てくる3冊目だそうで、ということはマーサの成長を描いた集大成になっているのかも知れませんね。

著者はアパラチアで育ち、現在も近くに住む。
作品には三つの系統があり、「暗黒太陽の浮気娘」というSF大会を描いたコメディタッチの異色作の作者でもあります。

「悲しみにさよなら」

ナンシー・ピカード「悲しみにさよなら」ハヤカワ・ミステリ文庫

ジェニー・ケインのシリーズ6作目。
評価の高い作品です。

舞台はニューイングランドの静かな港町。
ジェニー・ケインは、故郷のポートフレデリックに戻り、市民財団の所長をつとめて7年目。
どんな活動に資金援助をするかというジェニーの判断は大胆で、保守的な層には物議を醸すこともありました。

長く入院したままだった母が亡くなり、その葬儀の時に何者かに「あれは事故だった」とささやきかけられます。
母が入院したのはジェニーが学生で家を離れていた時期で、家代々の会社ケイン・クラムズが倒産するという騒ぎも起き、ジェニーには詳しい事情がわからず終いでした。
今になって、どういう事だったのか気になってたまらなくなります。
母の親友、主治医、神父、新聞社…
聞いて回ると、皆が隠し事をしているようで、少しずつわかってきたことの意味は…

ジェニーは金髪の理知的な美人で30代末、警部補のジェフとは結婚して3年、まだラブラブ。
本人にはほとんど欠点がないけれど、過去の倒産や母の長年の病気という事情を抱えていて、どこか暗い思いもありました。
世間体を気にする妹のシェリーとは気が合わず、度々非難されます。
事件に関わり合う姉をみっともないというのです。
ついに、とっくみあいの大喧嘩に。

3代目の社長だった父は、ハンサムでおっとりしていますが、何も考えていないタイプで、入院中の母を見捨てて離婚。
20歳も年下の受付の女性ランディと再婚して、既に20年がたっていました。

ジェニーは財団の仕事に身が入らなくなり、長期休暇を申し出るとそれは出来ない規定になっているといわれ、衝動的に辞職。
その後、酔って自宅のガレージに閉じこめられて一酸化炭素中毒に。
自殺と噂が広まり、評判が落ちてしまいます。
警察では温情から事故にしておくという態度で、捜査もされない。
殺人未遂と睨む夫のジェフは、やむなく一人で事情を調べることに。

倒産に至った事情や、信頼していた人々が隠していたことを次々に知るジェニー。
優しく美しかった母に降りかかった謂われのない非難。
母が病んだ最初のきっかけは、育児ノイローゼだったという…
哀しい事実を知った後で、母が望んでいたことにたどり着くジェニー。感動的です。

91年の作品。94年翻訳発行。
アガサ賞マカビティ賞の最優秀長編賞をダブル受賞。
アガサ賞を獲っただけあって女性向きですが、力作。
このシリーズ、この作品の前のがあまり面白くなかったので、そこで読むのをやめてしまったような気がします。
惜しいことをしてたのね。

「凍てついた墓碑銘」

ナンシー・ピカード「凍てついた墓碑銘」ハヤカワ・ミステリ文庫

ナンシー・ピカードのシリーズ外作品。
力作です。
猛暑なのに季節感真逆ですが~一瞬、寒い気分を味わって?

カンザス州の田舎町スモール・プレインズ。
17年前の雪の夜、若い娘の全裸死体が発見されました。
身元は不明のまま、名前のない墓だけが作られます。

アビー、ミッチ、レックスは、仲の良い幼なじみでした。
この事件で、3人の人生が変わってしまうのです。
アビー・レイノルズは16歳になり、恋人のミッチと一夜を明かそうとしていましたが、思いも寄らぬ展開に。
アビーの父は医師で、家に死体が運び込まれたのです。
レックスとその父、兄のパトリックの3人が牧場の見回りに出て、死体を発見したのでした。
大学を退学になって自宅に戻っていたパトリックは、家にいたことを隠していました。

アビーといたことがばれたミッチもまた、両親によって強引に別な街の高校に転校させられ、アビーとは二度と会えないまま、時が過ぎます。
ミッチの父は堅物の判事。
母ナディーンはきつい女性で、ミッチにアビーはふさわしくないと言い、妊娠してすぐ結婚しようとする娘とは付き合わせてはおけないと言ってのけたのでした。
アビーの母マージーは怒りますが、小さな町での近所付き合いはそう角を立てられない。
人気者のミッチをアビーが町から追い出した?という~妙な噂になってしまう。

あまりのことにアビーは納得がいかないまま、ミッチの飼っていた鸚鵡のJ・Dを盗んで、密かに飼います。
やがて園芸の仕事を始めますが、結婚はしないまま。
昔より少しはマシになったパトリックと、時折付き合うようになっていました。
パトリックに結婚を言い出されたのには驚き、姉にも反対されるのですが。

名前もない墓はいつしか伝説となり、聖処女として願いを叶えてくれるという噂が広がっていました。
アビーは根拠がないと憤り、身元を調べようと思いつくのですが。
今は保安官になっているレックスは、妹のように可愛いアビーを気遣います。
実は、死んだ女性の名前を知っている人物はいた…

ミッチの母ナディーンは、60過ぎて認知症になり、吹雪の夜に家をさまよい出ます。
よその世界で成功した噂も聞こえるミッチですが、両親に追い出されたと感じていました。
5月になって墓参りだけはとメモリアル・デーの祝日に町を訪れ、実家のランチハウスにとりあえず泊まります。
すぐには、父親と養子の弟と顔を合わせづらかったのです。
おりしも、嵐がこの地方を襲ってくる…

過去の出来事が、どう絡み合っていたのか?
痛ましくも不運なすれ違い。
人生が変わってしまった人々が、どう生きたか。
スリリングだがロマンスもあり、読み応えのある内容でした。
アガサ賞とマカヴィティ賞をダブル受賞しただけのことはある作品。

著者はミズーリ州生まれ、カンザス州在住。
1984年「死者は惜しまない」で作家デビュー。ジェニー・ケインのシリーズは10作を数える。2000年からは別シリーズを発表。
「結婚は命がけ」でマカヴィティ賞、「虹の彼方に」「悲しみにさよなら」でアガサ賞連続受賞。「悲しみにさよなら」ではマカヴィティ賞もダブル受賞。
本作は2006年発表、翻訳発行は2009年。初のシリーズ外作品。

「警視の死角」

デボラ・クロンビー「警視の死角」講談社

シリーズ5作目。
恋人同士になった警視ダンカン・キンケイドと、部下の巡査部長ジェマ・ジェイムズ。
もともと仕事仲間として名コンビでお似合いなのですが、同僚であることと離婚経験から~お互いに慎重な面もあります。
ジェマには、幼い子供もいるしね。

キンケイドの方は、一方的に妻に去られて11年。
突然、別れた妻ヴィクから連絡が来ます。
警官としての彼に、相談したいことがあるというのです。
ジェマは内心、面白くないのですが…

大学で研究をしているヴィクは生き生きしていましたが、再婚した夫イアンは出奔中。なんと教え子の女子大生とハワイにいるらしい。
研究対象の詩人リディアの草稿や手紙が、巧みに書かれています。
ちょっとヴァージニア・ウルフを思わせる女性詩人で、もっと若くウルフを崇敬していたという設定。何度も自殺を試みて、ついに死んでしまったという。
なぜか遺産は、ずっと前に離婚した夫に残していました。
その夫モーガンや、若い頃からの友人が大学近くに住んでいるため、ヴィクはインタビューを重ねていきます。
未発見の詩の草稿を見つけ、その内容と前後のいきさつから、自殺ではないのではと疑い始めたのでした。

ダンカンは当時の調査資料を見せて貰い、確かに不審な点もあると感じます。
大学町の美しい風景など、しっとりした描写も多い。
大学仲間の登場人物も、個性的。
知的な女性が、これほど何人も出てくる小説も珍しいでしょう。
そして、それらが吹っ飛ぶほどの大事件。
ヴィクが突然心臓発作でなくなり、毒殺も疑われることに。

そして、遺された11歳の息子キットは、実はダンカンの子供だったのです。
葬儀に訪れたダンカンの母は、一目でそれを見抜きます。
ヴィクの母ユージニアは気むずかしく性格に問題があり、さらにひどくなっている様子。
祖父母に引き取られたキットが、ダンカンは心配でなりません。
案の定、キットは家出してしまい…

ブログを始める前に読んだので、メモがありませんでした。
ここからとても良くなったので、再読してのご紹介です。

著者はテキサス州ダラス生まれ。
イギリスに渡って魅了され、最初の夫と共にイギリス各地に住む。
後に故郷に戻り、家業を手伝いつつ娘を育てながら、1993年から作家活動。
1997年発表のこの作品で、マカヴィティ賞最優秀長編賞を受賞。2009年にも受賞しています。

「凍りつく骨」

メアリ・W.ウォーカー「凍りつく骨」講談社文庫

実力派のデビュー作。
スリリングで引きこまれます。
じつに達者なものです。

キャサリン・ドリスコルは、テキサス州の田舎町で、犬の訓練士として地道に成功してきました。
ところが不景気で経済的に追いつめられ、11年払い続けたローンが払えなくなり、22日後には牧場と家が競売に付されるという危機に。
ゴールデン・レトリーバーの愛犬ラーまでも、優秀な資産として売られてしまうという。
ラーは優秀な血統ではありますが特に訓練もせず、ペットとして可愛がっているかけがえのない愛犬なのに。

折りもおり、5歳の時から31年間音信不通の父親から突然、会いに来るようにという手紙が。
頼みを聞いてくれれば、財政的には心配要らなくなるというのです。
迷いましたが、テキサス州の州都オースチンへ出向きます。
父親レスターは、オースチン動物園のベテラン飼育係でした。
ところが、父親はその朝、虎に噛み殺されていたのです。
何者かが、虎が出られないようにするワイヤーをカッターで切っていたのでした。

母親リーンと共に町を出て、その後は父だけでなく親族とは一切連絡を取らなかった生い立ち。
結婚に反対していた祖母は、今は高齢ですが動物園の支援者とわかります。
叔父クーパーが財団の総帥となり、その娘である従妹ソフィーも動物園で働いていました。
祖母は病気で面会謝絶、なかなか会わせて貰えない。
何もかも遅かった気がするキャサリンですが…

父が連絡を寄越したのは何故なのか?
父の家には、大人になったキャサリンを撮った写真がありました。連絡も寄越さなかった父だけど、名乗らずに見守ってはいたのです。
財産らしい物はないのに、倉庫には妙な写真や手紙が。その意味は…
事情を探ろうと、爬虫類館でバイトを始めたキャサリン。
難しい仕事ですが、動物の扱いは慣れています。

同僚で獣医のヴィック・ジャメールと親しくなり、相談を持ちかけます。
しかし…?
動物園を舞台に、ヒロインに危機が迫る!?

翻訳されているのは傑作ばかりの作家。
ブログを始める前に読んだので、ご紹介はしていませんでした。
どれも読んだはずなのに?これは思い出せないので再読。
…だんだん思い出してきました!
作者も、ゴールデン・レトリーバーを飼っているそうです。

1991年の作品。1992年のアガサ賞とマカヴィティ賞で新人賞をダブル受賞している作品です。
作者は1944年生まれ。全部は翻訳されていないけど、寡作のようです。どの作品も高い評価を受けています。

「警視の覚悟」

デボラ・クロンビー「警視の覚悟」講談社文庫

お~面白かった!
筆が乗ってますねえ。
あれ以上の傑作はなかなか出来ないだろうと思っていたら…
はらはらさせられますが、人の個性の違い、弱さや醜さも覗かせながら、上手いこと着地させていきます。

ロンドンで一緒に暮らす警部補のジェマと、警視のダンカン・キンケイド。
かってはダンカンの部下で名パートナーだったジェマ。今は違う部署ですが、まだ結婚はしないまま同居。
ジェマの連れ子とダンカンの息子と一緒に、クリスマスに初めてダンカンの実家を訪れます。
田舎のクリスマスは雪深いが、教会のある大通りなどは絵のようにとても美しい。

ダンカンに息子がいるとわかってから、初めての訪問。
ダンカンの別れた妻に育てられていた息子のキットは、ダンカンにそっくりの顔立ちです。
良い子なんですが、13歳の思春期で、母をなくし、その前に離婚して去って行った父は実父でないと知るなど、複雑な事情がありました。

ジェマの連れ子トビーは5歳で、無邪気で元気いっぱい。
ジェマは、初めて会うダンカンの両親や妹に受けいられるかどうか?やや不安も抱えていたのですが。
両親は大歓迎してくれます。
ただダンカンの妹のジュリエットは、実は夫と上手くいっていませんでした。
しかも仕事先で、モルタルに埋められていた死体を発見してしまい、クリスマスイブは台無しに…?!
そして、ジュリエットの娘のラリーは、キットと同い年。
美少女だけど反抗期で、何やら秘密もある様子。

田園地帯を走る運河、ボートで暮らす人々、美しい雪景色。
ダンカンの両親の家は、くつろげる雰囲気で快適そう。
犬たちやポニーも出てきて、可愛い。
そしてボート生活をしていた女性との出会い。哀切な人生。
検死医の女性もまた、意外な面を持っていた…
盛りだくさんな内容です。

ダンカンの地元なので、同級生だった警部に非公式に協力して、捜査に参加することになります。
キットは感じやすいのに、またしても試練にあうのが心配になるけど、これだけ周りに思いやってくれる家族がいるのだから~大丈夫!

著者は1993年に、このシリーズの第一作目「警視の休暇」でデビュー。
このときはまだ短い薄い本で、警視は若く、やや作風の印象が違いました。ジェマも出てこなかったんじゃないかしら。
1998年に第五作「警視の死角」がマカヴィティ賞最優秀作品を受賞。
この次の作品で再び、マカヴィティ賞を受賞しているそうです。
マカヴィティ賞はミステリ愛読者の投票によるもので、好感度が高いのはわかる気がします。
アガサ賞だと原則として警察官物は対象外なので、クロンビーがマカヴィティ賞と相性が良いのも納得。

「リンカーン弁護士」

マイクル・コナリー「リンカーン弁護士」講談社文庫

本のご紹介です~。
しばらくやってなかったので、なかなか頭が働きませんでした。ちょうど下書きも尽きてしまっていて…

ミッキー・ハラーは、リンカーンを乗り回すやり手の刑事弁護士。
ちょっと久しぶりな気がするマイクル・コナリーの作品です。
刑事ボッシュ・シリーズではなく、弁護士が主人公。

二度の離婚経験のあるミッキー、仕事に追われて、幼い娘に会いに行く時間もなかなか取れません。
広大なカリフォルニア州に点在する40を越す裁判所や刑務所を次々に回っているのでした。そこそこ成功してはいるのですが、大仕事には最近恵まれていないという焦りも。
別れた妻とはいまだにしょっちゅう顔をつきあわせる関係。しかも、検事と弁護士という敵対する立場でというのが面白い。

前半、現実的な事件の描写が続くので、カリフォルニアの実態がかいま見えます。あまり盛り上がりはしませんが、勤めている大人にはわかりやすいかも。
コナリーを読み慣れている人には、これがどう動くかな~このままじゃ終わらないよな絶対、という気分に。
そこへ飛び込んできた事件は…

大金持ちの一人息子で会社社長の30男が、女性に暴行で訴えられたのです。が、無罪を主張。
扱う事件のほとんどは常習的な犯罪者で、無罪の人間は少ないという現実があり、これは珍しい無罪かも知れないと思うハラー…
弁護士にとっては、無罪はやりにくいんだそうです。…なるほどね?

人生を変える事件に巡り会った中年の弁護士の奮闘を描きます。
リーガルサスペンスを書きたいとかねて思っていたというコナリーが、野球場である弁護士に出会い、満を持して5年がかりで書いた作品。
弁護士のハラーは刑事のボッシュとは反対の立場で、淡々と仕事をこなしていく様子だった始まりですが、なぜか似たような場所に住んでいる。
危機に陥って、しだいにボッシュと似てくるような?
犯人との対決はいかに?!

2006年、国際ミステリ愛好家クラブ主催のマカヴィティ賞最優秀長編賞を受賞した作品。
1999年に「わが心臓の痛み」でも受賞しています。
コナリーは達者ですね~。
続く作品では、ボッシュと共演もあるとか。

「女たちの真実」

ローラ・リップマン「女たちの真実」ハヤカワ・ミステリ文庫

ミステリの賞を次々に総なめにして12冠だというリップマン。
1997年、テス・モナハン・シリーズでデビューして以来、活躍しています。
タイプの違うミステリを書ける作家だからということもありますね。

これもメリーランド州ボルチモアが舞台なのは同じですが、探偵役は警官~彼らが共通して出てくるシリーズの3作目のようです。
誰が主役という描き方ではなく、ノンシリーズに近い味わいです。

30年前に行方不明になったベサニー姉妹サニーとヘザー。
交通事故を起こした加害者として入院した女性が、あのベサニー姉妹だと名乗り、波紋を呼び起こします。
なぜ今になって名乗り出たのか?なぜ二人一緒にさらわれたのか?もう一人はどうしたのか…?
娘を捜し続けた父親はもう亡くなり、母親はメキシコへ渡っていました。

ハンサムで女好きのインファンテ刑事と上司のレンハート部長刑事が捜査に当たります。
取り巻くのは、身元のはっきりしない彼女を一時引き受けるケースワーカーのケイ、やり手の弁護士グロリア。
事件を追い続けた退職警官ウィロビー、事件後に離婚してメキシコで店をやっている姉妹の母ミリアムなど、関係者の描写がリアルで上手い。

いろいろな時点での話が前後して出てくるのでわかりやすいとは言えませんが、それがまた謎が謎を呼ぶスリリングな展開で、ミステリ好きならオッケーでしょう!
そして、意外性があり、どこか救いもある読後感。いい仕上がりだと思います。
テス・モナハンの頃は整理しきれていない感じもありましたが…達者になったものです。
このシリーズは最初の作品が強烈そうだったので読んでいませんでしたが、遡って読んでいます。

2007年の作品。
2008年のマカヴィティ賞を受賞しています。
マカヴィティ賞とは、1987年にアメリカで設立された国際ミステリ愛好家クラブ(世界最大規模らしい)による推理小説の賞。
対象作品に条件はないようですが、どちらかというとコージー系。
アガサ賞よりは、広範囲な印象。
マカヴィティとは、T.S.エリオットの詩に出てくる暗黒街のボス猫の名前だそうです。
2008年2月翻訳発行は早いですね。

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