「マンスフィールド・パーク」

ジェイン・オースティン「マンスフィールド・パーク」中央公論社

ジェイン・オースティンの読んでいない作品を読んでみようかと。
オースティンの完成された長編は6作しかなく、すべて1810年代に発表されているんですね。なるほど~映画だとファッションが同じわけだわ。
これは1814年発表、最後から二番目の作品。モームに完成度が高いと評価されているだけあって、面白かったですよ。

パークというのは公園ではなくて、荘園というのか~広い庭園のあるお金持ちの屋敷のことだそう。
お金持ちの親戚に引き取られた内気なファニー・プライスが、中途半端な立場で忍耐強く暮らし、ひそかに想う従兄のエドマンドには想われず、想わぬ人に求愛されて苦悩しますが…
まったく違う結婚をした親世代の三姉妹は、長女がやかましやのノリス牧師夫人、これはかなり性格が悪い。美人の誉れ高い次女がマンスフィールド・パークに住むサー・バートラムの令夫人となっています。おっとりして品は良いけど、至ってものぐさと喝破されています。
末がプライス海軍中尉夫人~財産もない相手と駆け落ちしたこの結婚は家名を汚したとキッパリ言われる有様。当時の価値観て、そうなんでしょうね。
少々わがままな従兄姉たち、隣家の人々などの鮮やかでちょっと意地悪な描きわけがおみごと。

ヒロインは真面目すぎるほどで、ちょっと説教臭いとも言えますが~先を知りたくてたまらなくなる物語の書きっぷりに引き込まれます。
短期間だけ実の親のプライス家に里帰りしたファニーが、めちゃくちゃな暮らしぶりに閉口するあたりも何とも面白い。
貧しくても召使いを2人使っていて、でもその女中をちゃんと仕込めないのが主婦として問題らしい。食器がきれいに洗ってないので気持ちが悪くなって食べられないファニー、だったら自分で洗えよと言いたくなりますが~この場合そういうことをしてはいけないらしい!?

エドマンドが恋するメアリは、派手で魅力的だけど実は誠実さに欠け、堕落した所がある都会の女。でも、現代の感覚からすれば、そんなに悪くないんですよ。
牧師になろうというエドマンドとは、確かに似合わないですけどね。

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このミス2008

「このミステリーがすごい!2008年版」宝島社

2006年11月から2007年10月までに出た広義のミステリの人気ランキング本です。
国内73人海外73人ずつの投票で6冊ずつ選び、1位10点、2位9点、以下~6位5点という計算法。
20周年ということですが~20年の総括は前のだったか、特集号だか、どっか他の本でやっていたような。

出た時点でぱらっと立ち読みはしたんですが~
自分が少ししか読んでいないのはともかく、上位に食指の動くのが大してなかったのが寂しかったですね。でも細かくチェックすれば、おっといろんなのがあるぞ、というわけで。

国内編1位は佐々木譲「警官の血」、2位は桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」
読んでません~どっちも図書館にずっと前にリクエストしてあるんだけど。
国内で読んでるのは…
7位の「サクリファイス」8位の「楽園」17位の「悪人」18位の「中庭の出来事」(昨日読んだばかり)
21位以下(これ以下は順位がつかない)13点以上のリストの「私の男」「吉原手引草」
ベスト10にも足りないわ~まぁ仕方ないっすね…

海外編1位はディーヴァーの「ウォッチメイカー」ハイ、読んでます!
あとは~3位の「TOKYO YEAR ZERO」を最近読んでみたけど、好みじゃなかったです。
13位「病める狐」…やっと、このへんですかね~。
15位「双生児」…去年の作品として印象的ではあるけど、どっちかというとSF。
17位「異人館」知る人ぞ知る実力派ヒルの単発物。
18位「夜愁」ウォーターズは前作でミステリの女王になりそうな勢いでしたが、これはもう普通小説~評価は高いけど。
21位以下「再起」「終決者たち」「幼き子らよ、我がもとへ」
え、これだけ?誰も投票しなかったやつで、何か読んでるかしらね~。

仮に私が投票するとしたら、国内では「楽園」1位、「悪人」2位、「吉原手引草」3位、「私の男」4位、「中庭の出来事」5位、「ちんぷんかん」6位かな。

「悪人」は連載で読んでいたためブログで紹介はしてませんが~出会い系サイトで知り合った男女の関係を描き、犯人の男は悪人とされるわけですが、これが(問題はあるけど)悪いヤツじゃなくて気の毒で泣かせます。
「ちんぷんかん」の畠中恵はいちおう巻末のリストに入ってるけど、時代物かファンタジーの要素が強いので、誰も投票しないみたいですね~13点以下なのかも。
あれ、伊坂幸太郎は?去年じゃないのか~。

海外だったら~1位「ウォッチメイカー」最近のディーヴァーでは一番気に入ったので。
2位「再起」フランシスの復活を祝して。
3位「病める狐」お気に入り作家ミネット・ウォルターズのまずまずの力作。
4位「異人館」歴史がらみだし、なかなかの出来で好感度高し。
5位「夜愁」じつは一番印象が強いんだけど、ミステリとは言い難いので、このへんで。
6位「幼き子らよ、我がもとへ」歴史物だから~ひいきしてみました。アイルランドの7世紀というのが渋い!ヒロインは清新です。

次点「警視の週末」これは女性作家のコージー系と思われてるのかも知れませんが読み応えあります。「異人館」とちょっと似た要素があって、面白かったですよ。
あら、「終決者たち」が入らなかった…う~ん?

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「骨の城」

アーロン・エルキンズ「骨の城」早川書房

ハヤカワ・ミステリ文庫で出し直しているエルキンズの作品、いつの間にか8冊目。(うち一冊はクリス・ノーグレン物)
これはスケルトン探偵ギデオン・オリヴァー物の新作です。

古城で行われるシンポジウムに愛妻ジュリーが出席することになり、お供で参加したギデオンは、かっての友人とも再会します。
自然保護がテーマだからパークレンジャー(公園で遊ぶみたいだけど森林保護官とでもいうのか)のジュリーも発表の機会が与えられたのですが、2年前の学会では過激なメンバーが対立、さらに女性関係で大揉めになったことを知るのでした。
その後、当時のメンバーが行方不明に?
退屈しのぎに訪れた地元の小さな博物館に保存された遺物の中から、つい最近の骨を発見したギデオンは…

イギリスならではの中世の城を舞台に、クロムウェルの時代にちなんだ部屋の名前など、ご当地色を出しています。
最初は不機嫌で手のつけられなかった警官の人間像なども、ある意味イギリスっぽいのかな。もしかしてモデルがいるとか。
遺体探索を専門に訓練された犬も活躍し、面白く読める要素を入れています。
円熟の味ですね~。

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「終決者たち」

マイクル・コナリー「終決者たち」講談社文庫

ボッシュ・シリーズも11作目ですよ~。
2007年9月発行。原著は2005年。講談社文庫は4作目~以前のは扶桑社から出ています。

3年間私立探偵をやっていたハリー・ボッシュだが、ロス市警に復帰。
迷宮入りの事件を再検討する未解決事件斑に配属され、かっての相棒キズミン・ライダーと組むことになります。
頼りになる黒人女性のキズは、ボッシュの復職に力を尽くしてくれたのでした。
チームプレーの大切さを再認識して大人になったボッシュ、かっての暴走ぶりは影を潜め、ストレートな警察官物になっています。
腐敗を一掃しようとする時代の流れにも乗っていて、アメリカでは大好評だったというのも、うなずけます。
娼婦の息子でベトナム帰り、組織に馴染まない、いぜんの独特な陰影がほとんどなくなったけど~確かに私立探偵はやりにくそうだったんで、一匹狼のようでも根っから警官だったんですね。

終決者とは、事件の捜査をクローズさせる人という意味ですね。
他のタイトルと間違えなくて良いかも。( この前の3作は「夜より暗き闇」「暗く聖なる夜」「天使と罪の街」というハードボイルドっぽい長いタイトルで区別がつきにくいのよ)
新たなDNA鑑定の証拠を手に、17年前の少女殺人事件を再捜査するボッシュとキズ。
少女の母は娘の部屋を当時そのままに、父は行方知れずでホームレスらしいという家庭崩壊した状況にあり、事件の痛みはまだ長く続いていた…いつものように目線を低く、今は子を持つ親としても共感を保ちながら、捜査するボッシュ。
当時の警察の捜査が不十分だったことを突き止め、警察内部の反発を食らいながらも、猟犬のごとき本能を発揮します。
まっすぐに事件解決へ向かうボッシュはやはりいいですね!

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「Y氏の終わり」

スカーレット・トマス「Y氏の終わり」早川書房

ミステリ的要素もある途方もないSF、哲学的ファンタジーともいえる展開。気鋭の作家の驚天動地の物語。
他人の思考の中に入り、ついには…という~ジャンルミックスという感じでしょうか。
一番近い雰囲気なのは「数学的にあり得ない」かな~。コニー・ウィリスなども連想させます。

大学院生のアリエルは、指導教官のバーレムが行方不明になったことに戸惑います。
バーレムしか研究していない19世紀の忘れられた作家ルーマスの研究のために、大学に来たばかりだったのです。
しかも、大学の研究棟が地下の構造のために崩落。
研究室が足りなくなったのでシェアすることになり、神学を研究している元神父のアダムという青年と出会います。互いに強い印象を受けるのですが…

古本屋で、もう存在しないと言われたルーマスの奇書「Y氏の終わり」を入手したアリエルは、その本に書かれているとおりにした所、トロポスフィアという異空間に入り、そこから人の思考の中に入り込む事が出来るようになります。
非常に消耗するためなのか、この本を読んだことのある人間は全て死んでいるらしい。バーレム教授もそうなのか?
奇書を狙う謎の2人組に脅かされ、バーレムを探しながら、トロポスフィアの謎を捨て身で解き明かそうとします。
思考とは?異世界があるのなら、この世界とは…?

大学の研究者達や、独り身の私生活の描写がやけにリアル。
不倫の相手とは付き合いながらも、私生活はほとんど研究のために犠牲にしている様子。家族とは疎遠で、同じアパートに住んでいるゲイが唯一の友人らしい。
アインシュタインやハイデッガー、デリダといった名前が飛び交い、かなり難しい面もあって、こちらの知識では追いつけません。それでも、エピソードが面白くて、ぐいぐい読めてしまいます。
鼠の意識の中に入ったり、敵である男の頭の中に入り込んでしまったり、寮で女子高生を探して次々に入ってみたりと、その思考それぞれが生き生きしているのが抱腹絶倒。
表紙が綺麗で、好みだわ~。

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「時の彼方の再会」

ダイアナ・ガバルドン「時の彼方の再会」(ヴィレッジブックス)ソニーマガジンズ

ガバルドンの「アウトランダー」シリーズの3作目。
「時の旅人クレア」「ジェイミーの墓標」についで、これも3冊あります。既に9冊になるわけですね。
ドラマチックで良く書き込んであり、面白いですよ。

シリーズの発端は、第二次大戦終結直後に、夫フランクの郷里スコットランドに来た若妻クレアが、ストーンサークルで何故か18世紀にタイムスリップしてしまう。
そこで出会った青年ジェイミーと恋に落ちるというもので、イングランド人を憎むスコットランド人に嫌われたり、従軍看護婦だったので治療師として活躍するが魔女と疑われたりとさんざんな目に遭いながらも~愛を深めていきます。

[すぐ読もうと思っている方は下はさらっと斜め読みにしといて下さいね。
あまり詳しい事までネタばれはしないように書いてますけども]

続く「ジェイミーの墓標」はパリでの活躍やジャコバイトの反乱、そして18世紀から戻るに至ったいきさつが語られ、現代で夫フランクの死の後に、娘ブリアナを連れてスコットランドへ。
ブリアナに実の父ジェイミーの事を話し(最初はもちろん荒唐無稽な話として信じて貰えないのですが)、研究者のロジャーの協力を得て、200年前のジェイミーの消息調べが始まります。

さてこの「時の彼方の再会」は、タイトルで、まあジェイミーの元へ戻るのね?とわかりますよね。
でも一筋縄ではいきません~。
互いに死んだと思い、生きているとしても二度と会えないと思い込んで苦しんでいるクレアとジェイミーのそれぞれの生活がまず描かれます。

現代のアメリカで子供を生み、医者になる勉強もしつつ暮らしたクレアの日々。 実体験を込めているのか、忙しい子育てがえらく生々しいです。(夫のフランクとはあまり上手くいきませんが~フランクとしては無理もない?)
戦乱を生き延びたものの謀反人として捕えられたジェイミーの苦闘の年月と、それを辿るクレア達が描かれます。

そして、ついに18世紀に戻ったクレア。
エジンバラで働くジェイミーと感動の再会!
大柄で存在感のある心のあたたかいジェイミーは健在で、よく似た娘が無事に育っている事に感動してくれます。
しかし、20年の歳月は重く、ジェイミーが置かれた立場もまた新たな危険をはらんでいました。
ありとあらゆる苦しみが襲いかかるに近いですね~でも、手を携えて危機を乗り切り、時には体当たりでケンカする2人は変わりません。多彩な人物が登場して盛り上げてくれます。
ジェイミーの甥、ヤング・イアンが何者かの船にさらわれ、クレア達は救出のために大海原へと船出します。何と、ジャマイカまで…!
苦難の航海、疫病、意外な再会、エキゾチックな南海の自然と現地の人々、むざんな奴隷貿易と奴隷の反乱。
そして、時を越える意味とは……!?
まだまだ続くシリーズです。

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「黄金の羅針盤」

フィリップ・プルマン「黄金の羅針盤 ライラの冒険1」新潮社

フィリップ・プルマンの名作。
三部作の一作目で、一番中身が濃いです。
いぜんにハードカバーを借りて読み、重厚さと迫力に驚嘆しました。
文庫を買って読み直してますが、二度目のせいか文庫のせいか映画化された写真が載っているせいか~ずっと、わかりやすく感じます。

舞台は20世紀の初め頃(1930年代ぐらいかな)のロンドンに似た異世界。
両親を亡くしたライラは、おじである探検家・アスリエル卿を後見人に、大学の学寮に預けられて育ちます。
生来活発でおてんば、嘘の得意な~近所の子達のガキ大将的存在。
自分では知らないある運命を背負った子として、途方もない冒険に飛び込んでいく事になります。
地域の子供が謎の評議会にさらわれるという噂が立ち、友達のロジャーが行方不明になるに及んで、ライラは救出に乗り出すのです。
荒っぽい女の子がイイコになるってわけでもなく、強さを生かして難局にぶち当たっていく~果敢さが良いですね。

この世界には「よろいグマ」という知能も戦闘能力も高い白熊がいて、この中のはぐれ者イオレク・バーニソンがかっこいいんです。
イオレクに出会ってからのライラは勇敢で~後半、ぐっと盛り上がります。

この世界では人は皆、分身のような存在のダイモン(守護精霊)を持ち、常に行動を共にします。
ライラのダイモンはパンタライモンという名前で、オコジョになったりカナリヤになったり蛾になったりと便利に姿を変えます。
パンタライモンはすっごく可愛いですよ~。

ダイモンの姿はその人の本質を現していて、大人になると一つの動物の形に定まります。
探検家アスリエル卿のダイモンは雪豹。
世界を揺るがす陰謀に関わっている謎の女性・コールター夫人のダイモンは、金色の猿。
ジプシャンの中の女王的存在であるマ・コスタのダイモンは鷹。という具合です。

もう一つの特異な存在は「ダスト」
これが何かは、この世界の人達にも良くわかっていなくて、色々説があります。
一体どう転ぶのか全体像が少し見えかけた所で終わるので、ひい~って感じですよね。続きも必読です。

映画公開中。キャストはピッタリの感じですね。
児童文学の枠にはまりきらない重厚さと大胆さが~映画ではどうしてもスッキリ軽くなってしまうのではないかと思いますが…見てから読めば解りやすいかも?

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「ウォッチメイカー」

ジェフリー・ディーヴァー「ウォッチメイカー」文藝春秋

昨年発行、リンカーン・ライムのシリーズも7作目。
このミスでも文春でも海外部門1位でした。なるほど~快作です。

犯行現場に古い時計を置いていく連続殺人犯…
4日間のスリリングな事件がスピーディに語られます。
初期作品ほどの張りつめた緊張感はないけれど(あそこまで怖いのもそう何度も読むの大変だしね)~どんどんページをめくり、鮮やかなどんでん返しの連続を楽しむ事が出来ます。

ニューヨーク市警の鑑識の専門家だったリンカーン・ライムは仕事現場の事故で大怪我、半身不随となりました。特異な才能のために再三要請を受けて捜査に協力、今では彼の家は警察の支部のようになっているのでした。
動けない彼の代わりに現場に出向いて、手足となり目となるのが美しい巡査アメリア・サックス。2人は恋人になっています。
今回は、警官だったアメリアの父の過去も明らかに。

今回初登場するのはカリフォルニアから来た尋問の専門家のキャサリン・ダンス。無意識の身振りや表情で嘘を言っているかどうか見抜くという面白い才能を磨いた人。子育て中の彼女は大人の女性で、わがままな天才・ライムとも若いアメリアとも違う魅力がありますね。
所々に911以後を感じさせる展開もありました。
次回作はキャサリンが主人公の由。

ジェフリー・ディーヴァーは1950年シカゴ郊外生まれ。
雑誌ライター、弁護士を経て、1990年から専業作家に。
リンカーン・ライムのシリーズは、97年の「ボーン・コレクター」(日本では2000年の発行)から「コフィン・ダンサー」「エンプティ・チェア」「石の猿」「12番目のカード」「魔術師」そして本作となります。

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「骨の島」

アーロン・エルキンズ「骨の島」早川書房

2005年発行のスケルトン探偵ギデオン・オリヴァー物。
未訳の一作目を含めて11作目だそうです。…そんなに読んだかなあ?(順不同ですが「暗い森」「古い骨」「遺骨」「呪い!」「断崖の骨」?「死者の心臓」?~内容覚えてませんが)
同じハヤカワの文庫でも当初はオレンジ色のミステリアスプレスというシリーズで発行されていた物から、選んで赤い背表紙で出版され直している所なので、ややこしいです。
これは新訳だったんですね。

事の起こりは1960年。
イタリアの貴族デ・グラツィア家の当主ドメニコは、跡継ぎが出来ないので姪に代理出産を依頼します。
時は流れて数十年後、跡継ぎは建築業で成功し事業を拡大しています。
ところがドメニコの孫息子が誘拐され、一方グラツィア家の島で白骨が発見されます。

ギデオンは友達のツアーに愛妻ジュリーと共に参加して、当地に来ていました。グラツィア家の遠縁にあたる友達と領地の島にある邸宅を訪れ、捜査に参加する事に。
ある程度予想はつきますが~イタリアの景色や食べ物、美しい邸宅、個性ある登場人物を堪能出来るので、満足感があります。

後書きによれば、アメリカでは珍しい本格物シリーズとのこと。
え、そうだったんだ…
コージーじゃないけど、安心して読めるシリーズって印象ですね。
確かにハードボイルドでもサイコサスペンスでもないしね…
原題はGood Blood,骨ばかりじゃないのですね~。

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「病める狐」

ミネット・ウォルターズ「病める狐」東京創元社

CWA最優秀長編賞受賞作。
2002年の発表、こちらでは昨07年の発行。
ミネット・ウォルターズはお気に入りの作家ですが~ブログで取り上げるのは初めてかも。

ドーセットの寒村シェンステッドでは、不穏な空気が渦巻いていました。
狐は次々に罠にかかり、ある子供は虐待され、深夜に嫌がらせの電話がかかり、移動生活者(トラヴェラー)達が地主のいない空き地を占拠し、権利を主張する…
トラヴェラーのリーダーはフォックス・イーヴルを名乗る。その正体は?

シェンステッドの名家ロキャー-フォックス家の問題多い子供達レオとエリザベスはとうに家を出て音信不通になっていました。
当主ジェイムズの妻の不慮の死、犯人と疑われた老ジェイムズは次第に追いつめられていきます。
前半の重苦しさを跳ね返すような颯爽としたヒロインが登場。
ジェイムズを守ろうとする弁護士マークが探し当てたのは女性軍人ナンシー。勇気百倍のジェイムズと3人で、不審な出来事に立ち向かいます。

個性豊かな登場人物が描き分けられ、さまざまな愚かさや異常さがオンパレード。善意でも行き違ってしまった辛さもあるけれども~人の交流の暖かさも希望もある…
ぐいぐい食い込んでくるシャープな現実味。
辛口だがやや薄味かと思ったが、う~ん、さすがウォルターズ!
「鉄の枷」と「蛇の形」の中間ぐらいの重さかな。
視点が変わるのがややこしいので最初少し入りにくいが、実はいかにも英国的ミステリらしい展開なのでは。
視点が変わるのもクリスティがよくやっていたことで…クリスティが読んだら高く評価しそうな気がします。

ミネット・ウォルターズは49年生まれ、92年「氷の家」でミステリ作家デビュー。「女彫刻家」でMWA、「鉄の枷」と「蛇の形」でもCWA賞最優秀長編賞を受賞してます。
巻末を見ると翻訳されていないのもあるんですね……地味めなのか?
この前の作品「蛇の形」は傑作だけど~人間の醜さをえぐり過ぎるほどで、万人向きではないからかな…?

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「ジェイミーの墓標」

ダイアナ・ガバルドン「ジェイミーの墓標」(ヴィレッジブックス)ソニー・マガジンズ

ロマンティック・アドヴェンチャー大作「アウトランダー」シリーズの2作目。
1作目はブログを始めて間もない頃に紹介したんですが、それっきりになってたんですね。再読してみました。
第二次大戦終結直後、スコットランドを夫と旅行中に、ストーンサークルからタイムスリップしたクレアが、18世紀の若者ジェイミーと愛し合う波乱の物語です。
ジャンル的にはファンタジーですかね…歴史物の醍醐味があります。
作者は長年大学で教えた人で、細部までよく書き込んであり、臨場感たっぷり。

200年前、イングランドはカトリックの王を追放し、娘夫婦メアリとウィリアムのハノーヴァー王朝になっている時代。
スコットランドはカトリックの王を戴いて、反乱を起こそうと動きます。
クレアとジェイミーはスコットランドを出てパリで暮らし、悲惨な敗戦になるとわかっている戦闘に巻き込まれるのを食い止めようとするが?!
運命は…
現代に戻って娘を育てたクレアの回想という衝撃の展開!?まだまだ続くシリーズです。

↓以下、ややネタばれになりますので、これからすぐ読もうとしている方はご注意!

貿易商の叔父の元で暮らすクレアとジェイミーは、宿敵が生きていた事を知り、動揺します。
クレアは宮廷に出入りしつつ、治療師としても活躍。
ルイ15世の宮廷やワインの輸入商売、怪しげな薬草医など、歴史物の面白さと、スリルに満ちた恋愛描写がたっぷり味わえます。
ジャコバイトの乱が起きるのを防ごうと動いて、いったんはハイランドに戻って平和に暮らしますが、事態は急転!

反乱軍に加わるしかなくなったジェイミー達の軍勢は、戦争の実際を知らない指揮官ボニー・プリンス・チャーリーに振り回されます。
イングランド軍に追いつめられた時にイングランド女性の捕虜を装い、ジェイミー達を逃がすクレア。
預けられた先は何とどっちの味方かわからない曲者・サンドリンガム侯爵の館。パリで親しくなったメアリとアレックスとの思いがけない再会…
現代の夫の先祖にあたる一族と関わることで、歴史を改変してしまうのかと悩むことになります。
クレアが現代に戻されるいきさつ、全てを話した理由とは!?怒濤の展開です。

「アウトランダー」シリーズは本国では6作出ている模様。
こちらでは文庫で各3冊ずつ~邦訳タイトルでは「時の旅人クレア」「ジェイミーの墓標」「時の彼方の再会」「妖精の丘にふたたび」と続いているようです。
雰囲気はゴロン夫妻の「アンジェリク」が一番近いかな~。
面白いです!

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「奇跡の自転車」

ロン・マクラーティ「奇跡の自転車」新潮社

主人公のスミシー・アイドは43歳の男性で、126キロ。
昼間は単調な仕事をこなし、夜はビールを飲んでテレビを見るだけの生活をしていました。
両親の交通事故をきっかけに、衝動的に家を飛び出します。十代の頃に愛用していた自転車で、姉のべサニーが最後にいたと知らされた土地へ向かうのでした。

姉は精神を病み、ハイスクールの頃から時々「あの声」が聞こえてくると奇怪な行動をとるようになっていきます。症状は痛々しいけれど、どこかしらユーモアもあり、重すぎない筆致で描かれています。
発作の起きていない時期には美しく魅力的だっただけに、家族は希望を抱き、はらはらと見守り、振り回されて、へとへとに。
ついに行方が知れなくなった後は、両親も弟スミシーも次第に無気力に…
これが自転車で旅するうちに、自然に痩せて来るというおまけ付きのロードノベル。

主人公は出会う人々にはホームレスかと誤解されますが、善意の人も多いのでした。
奇妙でおかしな、やがて切なくなる展開。
付き合いが途絶えていた幼馴染みのノーマとの電話での繋がりもあり、ほのぼのします。
風邪のひきはじめにはチョイ無理だけど~治りかけの時に読むにはちょうど良かったです。

作者は長年投稿を続けては没になっていたそうで、これが大ヒット。
主人公と同じ年頃に両親が交通事故にあった経験を元に、後に書き上げて、亡くなった糟糠の妻に捧げた作品です。

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「ジェイン・オースティンの読書会」再録

カレン・ジョイ・ファウラー「ジェイン・オースティンの読書会」白水社

ジェイン・オースティンは「エマ」「高慢と偏見」などで有名な(というか私が多分これしか読んでない)19世紀前半のイギリスの女性作家。
ロマンス小説の元祖みたいな作風で、村の中流家庭の男女の恋愛をいつも描いていて、当初軽く見られた面もあるけれど、現実味もあり、実に上手く書けているので~後の作家にもファンが多いんですね。

この小説は、現代アメリカのごく普通の町で、オースティンの読書会を開く6人の男女の物語。
月に一度、誰かの家に集まり、一つの作品について語り合う会を開くんですね。持ち回りでお茶とお菓子などを出すわけです。
こんな企画があり得るんですねえ…

言い出しっぺのジョスリンはお嬢様育ちで仕切りたがりという現代版のエマ50歳といった感じ。大型犬のブリーダーというのも面白い。
ジョスリンの長年の友達シルヴィアは司書で、夫に去られたばかり。
その娘で同性の恋人と揉めているアレグラ、唯一の男性でオースティン初心者のグリッグなど…
それぞれの状況の変化や、作品に関連して思い出される痛い思い出などを織り込みながら、数ヶ月の成り行きが語られます。
ユーモラスで皮肉をきかせた現実味がオースティンの作品を彷彿とさせ、結末もそれなりにハッピーエンドなのも倣っているようです。

オースティンを読んだことがなくとも、十分面白く読める内容になっています。
巻末には作品リストとあらすじに加え、オースティンについて語った有名人の評などもまとめられていて、これも楽しい。
女性だったらまず、オースティンの作品を読みたくなるんじゃないかなあ?
映画で見るのでもオッケーだと思います。

[追記]先日、たまたま検索ワードというのを見てみたら~なぜかこの作品名が着物に次いでトップ。不思議に思っていたら、映画が公開になるんですね!
自分の記事を探すのにえらく手間取ってしまったので~アマゾンの画像を左サイドに出し、ついでに再録ですが記事も上にしました。

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「ヴォイス」

アーシュラ・K.ル・グウィン「ヴォイス」河出書房新社

「西のはての年代記」三部作の二作目。
ル・グウィンが80歳近くなってから書き始めたシリーズで、若々しい知性とパワーに圧倒されます。
三作目の邦訳は今年、刊行予定。

一作目から20年後、南の国アンサルの首都が舞台。
オルド人に侵略され、見る影のない荒廃した姿になったアンサル。
砂漠地帯で一神教を信じるオルド人は、武力に優れた民で、口承のみで文字を持たないのです。
アンサルの都は交通の要衝で、かっては大学や図書館でも有名でしたが、駐留するオルド人は文字は邪悪な魔物として、本をすべて水中に投じます。

ガルヴァ館に住む少女メマーは、オルド人の落とし子。
ガルヴァ館の娘だった母がオルド人の兵士に襲われて生んだ子で、もしゃもしゃの羊のようなオルド人の髪とアンサル人の黒い目を持っていました。
事情をよく理解していない幼い頃から隠された図書館に出入りし、「読み手」として「道の長」の教えを受けながら成長します。
お告げの家であるガルヴァ館はアンサル人の精神的な支柱だったのでした。

前作の2人がすっかり大人になって登場。
著名な存在となっているオレックとグライはオルド人にも一目置かれ、民人の尊敬を集め、反乱の指導者に担ぎ上げられそうになりながら、慎重に場を選んでいきます。
一途なものを秘めたメマーはまだ男の子のようでさばさばした良い子だし、才能溢れるオレックとりりしいグライの夫婦が素敵。
緊迫した情勢の中でも次第に、親のないメマーと彼ら(それにハーフライオン!)が仲良くなっていくのは切ない幸福感があります。

一作目の「ギフト」では家に伝わる超能力が問題でした。
家を継ぐようなギフトではない才能のあるオレックが詩の語り手として自らの人生を見い出した今、民族全体が抑圧された状態で育った17歳のメマーは、お告げの家の役割を知るのです。
アイルランドや古代ローマを合わせたような構造の世界ですが、お告げ(ヴォイス)のファンタジックな意味合いはル・グウィンならでは~圧巻です。
前作の民話的でもあり荘重でもある雰囲気とはまた違って、社会が変わっていく活気と希望があり、グウィンにしてはわかりやすい方の作品といえるでしょう。
オルド人も一枚岩ではなく、アンサル側にも考えを異にする色々な人がいる…
安易な押しつけや暴力への根強い「NO!」の意志が感じられます。

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「略奪」

アーロン・エルキンズ「略奪」講談社

美術探偵リヴィアの一作目という事です。
第二次大戦中にナチスによって強奪された著名な絵画をめぐるサスペンス。
スケルトン探偵が有名なエルキンズですが、絵画物ではクリス・ノーグレンのシリーズが3作あります。
こちらのリヴィアは中年男の奮起がテーマになっているようです。

元学芸員のリヴィアは転職を繰り返し40になっても腰が定まらず、元妻に愛想を尽かされた身。
親しくなった質屋の老人シメオンの元に持ち込まれたベラスケスの絵に大興奮!
ところが美術館と連絡を取っている間にシメオンが襲われ、殺されてしまい、絵の来歴を辿ってヨーロッパを飛び回ります。
シメオンの姪で元妻とはタイプの違う生き生きした女性も登場、ほどほどに面白い。
アクション・シーンも多く、ちょっと「ダヴィンチ・コード」ぽい展開~多分、この方が早いと思いますが。(再読ですが、ストーリーはほとんど忘れてました)
ものすごく素晴らしいとか、新しさがあるというのではないけれど、絵画への愛が基調になっていて、気分転換には安心して読めるレベル。
ロシア・マフィアに有名絵画というと、エロイカと少佐が絡んでもいいような話だなあ。

エルキンズを未読の方なら、初期の「古い骨」「暗い森」をオススメします。
こちらはちょっと他にない味わいですから。

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「幸運は誰に?」

カール・ハイアセン「幸運は誰に?」(上下)扶桑社ミステリー

このミスなどで名前を見かけたカール・ハイアセンの作品を読んでみました。

ジョレイン・ラックスは動物病院に勤める黒人女性、美人でタフだが男運には恵まれず、男と別れた年齢の数字でロトくじを申し込み続けたら~これが大当たり!
ところが、同じ数字を書いたのがたちの悪い2人組のチンピラで、半分ずつになるところを全額を我が物にして当然と根拠なく考えてジョレインを襲ってくる。
当たりくじの取材に来た新聞記者トムがジョレインと意気投合して、対抗手段をこうずるが…?!

ジョレインの住む町はいささかインチキな宗教がかった客寄せで有名で、宣伝に協力を求められたジョレインは可愛がっている亀をその店に預けるが、その亀に奇跡が…?
トムが別れようとしている妻はミュージカル版の「羊たちの沈黙」に出ているとか、ちょっと笑えるくすぐりもたくさん。
悪役はちゃんとした家庭に育ったのに悪くなってしまった白人優越主義者というサイテー男。言動が気色悪いけど~言い訳のきかないアホでまぬけなアメリカ人っぷりが痛烈に書かれてます。
奇人変人大集合のはちゃめちゃなコメディーです。
イヴァノビヴィッチより皮肉だけど~キャラがぶっ飛ぶ所がちょっと似てるかな。頼りになる脇役も出てくるし。

作者は53年マイアミ生まれ。
マイアミ・ヘラルド紙の辛口コラムで知られ、自然保護運動にも力を入れているそうです。
それでヒロインは動物好きで、自然を守ろうとするんですね。
トムは作者の分身&願望なのか?新聞社の中間管理職の情けなさや意味のない賞など、妙な実感こもってます。
97年の作品で、こちらでは05年発行。

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「贖罪」

イアン・マキューアン「贖罪」新潮社

ちょうど公開になる「つぐない」という映画の原作です。
イギリスでは2001年の発表、日本では2003年発行。

13歳の少女ブライオニーの誤解から、姉と幼馴染みの恋が無惨に壊されてしまう。
裕福だが実は色々な問題のある家庭で起こった思いがけない出来事。
空想的で感性はあるが思い込みの激しい少女と、周りの人間の抱えている性格的な弱さや置かれた立場による苦しみがどのように作用したか。
登場人物の一人一人が生々しいまでの存在感があり、真実に迫ろうとする筆致は迫力に満ちています。

おりしも時代はまもなく第二次大戦に突入、戦争によってまた人は翻弄され…
戦時中のフランスでの行軍やロンドンの病院での勤務の実態もすごいものがあります。「双生児」の爆撃や「夜愁」での空襲の描写を思い出しました。あちらでは当時の事を描くのがある意味、流行っているのか?日本ではあまり最近の作品ではこれと言って思い浮かばないのですが…

探偵はいないけど、ミステリ的に読む事も出来ます。
実際には何が起こったのか、犯人は誰か、そして小説はどのように展開するのか?
中盤いちおうの解決を見そうに思われるので、確か一生をかけた償いという話じゃなかったかなぁと考えつつ読んでいたら、その意味は次第にわかって来ました。
重いけど、勇気ある生き方で、人の尊厳の感じられる物語です。

作者は1948年生まれ。
76年作家デビュー、98年の作品「アムステルダム」でブッカー賞を受賞してます。

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「でかした、ジーヴス!」

P・G・ウッドハウス「でかした、ジーヴス」国書刊行会

ジーヴスものは楽しい!いつものパターンでも吹き出します。
人は良いけど怠け者でお気楽な若主人バーティと、何でも解決する有能な執事ジーヴスは名コンビ。
お気楽な生活を脅かす自分の縁談や仕事口の脅威を撃退しつつ~身近な友達の恋は取り持ってやろうとします。

国書刊行会のウッドハウスコレクションの5冊目。06年7月発行。
ウッドハウスの作品は文芸春秋からも出ているので、どれを読んだのか、だんだんわからなくなりつつあります~!?

原作は1930年。
いぜんは世紀初頭ぐらいの古き良き時代のイメージで読んでましたが、もうクララ・ボウにグレタ・ガルボが少年の憧れという時代なんですね。
すさまじい女性が車を飛ばしたりしているわけです。
おっかない親戚が多いバーティですが、一番理解のあるダリアおばさんの出番が多いので、今回はそんなに怖くないですね。

作品中に投影があると言われる義理の娘のあとがきやウッドハウスの結婚のいきさつなども興味深いです。
結婚した相手は当時としては奔放というのか?一人で出かけちゃうような強い奥さんだったらしいですが、案外上手く行っていたのは外の世界から夫を守っていたんだとか。
奥さんの連れ子の娘さんはいきいきとした魅力のある人で、仲が良かったんですね~。
ウッドハウスは幸せに生きていてくれて良かった!と思う作家さんですねconfident

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「ガラスの宮殿」

アミダヴ・ゴーシュ「ガラスの宮殿」新潮社

1885年、ビルマ最後の王がイギリス軍に追放される所から、百年以上に渡る大河小説。
ビルマとインドの3家族3世代の物語です。
重量級の作品ですが、文章はわかりやすく、エピソードが生き生きしているので、広範囲の方にお勧め出来ます。
私にとって上半期ベスト1になるかも。

インド系の孤児ラージクマールは、ビルマに置いていかれ、王宮の前にある屋台で働く事になります。
折しもイギリス軍が侵攻し、光り輝く宮殿(グラス・パレス)に仕えていた幼い侍女ドリーは、王一家と共に追放されてインドの孤立した館で軟禁状態に。
ラージクマールは2度見かけただけのドリーを忘れられず、中国系のサヤー・ジョンに雇われて材木商として金持ちになってから、初恋のドリーにはるばる会いに行きます。

追放の地で、孤独なドリーは大人になっていました。
王家を見張る立場の高官の妻ウマと親友になります。ドリーと終生助け合うウマは、後にアメリカへ渡り、やがてインド独立を目指す活動家へ。
サヤー・ジョンの息子夫婦は農園をモーニングサイドと名付け、そこへ集う子や孫の代までの恋愛や不思議な縁がありありと描かれます。
映画的なシーンも多く、鮮烈。

後半、第二次大戦中に日本軍が侵攻してくる時、イギリスからの解放になると期待する人に、ドリーの次男がまだ十代で、独逸や伊太利亜のようなファシストになりたがっているだけと切って捨てるように言い放つシーンがあります。
同じ頃に日本の十代の子は全然わかっていなかったんじゃないか。報道管制があり、偏った知識しか与えられていませんからね。
当時のビルマもインドも政治情勢は複雑です。
ウマの甥は、イギリス軍に入隊してインド人初の士官となりそれが名誉と思っていたが、独立の気運も起きてきた時に、何が忠誠か?どう生きるべきか?引き裂かれてしまう…
どう転ぶかわからない時期には何とも難しい問題で、何が正しいかは時代によって変わり、解決策というのはなかなか見つからない。しかも置かれた立場によって、決断する間もなく流されてしまうことも多いんですね。
現在でも、情報はあるけれども、あり過ぎるのか~真相は見極めにくい難しさ。
アウンサンスーチーもちらっと登場する時代で終わります。

互いに葛藤し、時には運命に押しひしがれながらも生き抜く人間達。
年月を経た後のミャンマーでの出会いと、思いがけないエピソードのおまけが余韻を残します。
どの人物にも血の通った存在感があり、、心があたたまる読後感でした。

作者は1956年カルカッタ生まれ、新聞社勤務を経て文化人類学で博士号を取得、ニューヨーク在住。
2000年にこの作品を書いて世界的ベストセラーに。日本では07年10月発行。

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「水底の骨」

アーロン・エルキンズ「水底の骨」早川書房

懐かしい気がするアーロン・エルキンズ。
スケルトン探偵ギデオンのシリーズの最新作です。
初期の物は大好きだったのだが、途中から熱が入らなくなった…のは、何故だったんでしょう?
これはなかなか佳作です。

ハワイで成功した牧場主一家で起きた謎の死と失踪。
スケルトン探偵の異名をとる文化人類学者(でいいんだっけ?)ギデオンは、ハワイ出身の親友ジョンと休暇を過ごしに訪れた先で、水没した飛行機から発見された骨を鑑定する事になります。
北欧系のハワイ移民というのが面白く、長老格の伯母のかくしゃくとした様子が存在感あって良かったです。
大富豪と癖のあるその一族、過去の謎、美しい風景と変わった料理、ジョンとの捜査に愛妻ジュリーも途中で合流し、色んな要素がほどほどに組み合わされ、なかなか上手くできています。
後味もよくて、読みやすい。

これの前の作品を読んだのかどうか、別シリーズのクリス・ノーグレンものはどうなっているのか?さだかではありません~そのうち、調べておきましょう。

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「竜と竪琴師」

アン・マキャフリイ「竜と竪琴師」ハヤカワ文庫

パーンの竜騎士のシリーズ、10作目。07年6月発行。
作者は60年代からこのシリーズを書いているんですから、すごいもんです!
ジャンル的にはSFでしょうが~ファンタジーが好きな人向きの話も多いです。
惑星パーンは地球人類が植民した星。科学は忘れ去られ、人々は岩山を生かした城塞と巖洞に住み、中世的な暮らしをしています。

いくつもの作品に登場し、老いた賢者という印象のある竪琴師ノ長ロビントンの生い立ちから描いた作品。
パーンは長い間、宇宙からの糸胞に襲われる事がなく、糸胞の危険に備える貴重な竜と竜騎士や竪琴師の存在意義が失われつつありました。
ロビントンはそういう時代に生まれ、難解な曲を書く気むずかしい父親に愛されずに育ちます。
母親はすぐれた歌唱師でもあり、とてもあたたかい女性なので、この母と周りに守られながら才能を伸ばす少年ロビー(!)
父との葛藤を底流としながらも、淡々と話は進んでいきます。

竜を感合することは残念ながらなかったけれど、竜の声を聞くことが出来る特異な才に恵まれ、ベンデンの竜騎士のフ-ロンと親友になります。
フ-ロンの息子達、フ-ラルやフ-ノルの時代になると、感合の時にシリーズの最初の方を思い出して、微笑ましくなりますよ。

若い時のみずみずしい恋愛と波乱の展開、各地の城塞を転任し、竪琴師に対する誤解や反発にもあいながら経験を積み、可愛い弟子に恵まれる中年期。酸いも甘いも噛みわけた長ロビントンはこうして現れるわけですね。
そして、幼いレサと劇的に出会うまで。
このままシリーズの最初になだれ込んでも楽しいかも。

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「紙の迷宮」

デイヴィッド・リス「紙の迷宮」ハヤカワ・ミステリ文庫

これ一時話題になっていて、読んだつもりになっていてすっかり忘れていたわ~、と思って読み始めたら~実は読んだのを忘れていた、という…(爆)
2001年アメリカ探偵作家 クラブ最優秀新人賞を受賞した作品でした。

18世紀初めのイギリス。
元拳闘家の主人公ベン・ウィーヴァーが捜し物を手伝う探偵業の走りのような仕事を始め、やがて金融界の闇に立ち向かいます。
まだ警察もない時代、盗品を取り返す仕事をして英雄と目されているのが実は盗賊の大本締めという有様。これは実在人物です。
主人公は堅物で冷たい父に反発して家出、若い頃は非行を重ね、裏事情にも通じているという設定。大本締めのライバルとなっていきます。

落ちぶれた貴族のバルフアの訪問を受け、バルフアの父が馬車に轢かれた事件はウィーヴァーの父の死とも絡んだ殺人事件だと言われます。
久々に家族の元を訪れ、成功した株屋だった父の関わった南海会社の株偽造事件を調べる事に。
気の良い外科医の親友と共に進める調査は、(何しろ探偵小説もないわけだから)何のノウハウもないので、なかなか進みませんが~
ユダヤ人社会の様子や当時のカフェや仮装パーティーなど、歴史好きなら興味が尽きません。
時代的には「トム・ジョーンズの冒険」あたりと近いですね。そのちょっと前になります~。

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「殺しはノンカロリー」

コリン・ホルト・ソーヤー「殺しはノンカロリー」創元推理文庫

理想的な老人ホーム「海の上のカムデン」に暮らす元気な老婦人2人組が探偵するシリーズ。4作目かな…?
小柄で辛辣なアンジェラと、巨体でおおようなキャレドニアは共に提督の未亡人。キャレドニアの感化で、わがままなアンジェラがだいぶ丸くなってます。

今回は、滞在型のエステサロン(美容スパというらしい)を経営する友達に頼まれ、客として潜り込んで事件の捜査をすることに。
グルメで大の運動嫌いな2人が何とか逃げようとしつつ、悪戦苦闘。
でもトランポリンが楽しそうだったり~表紙のイラストにもなってます。
いつもよりも容疑者の年齢層が少し若く、美貌だったりするのがみそ?
いつものハンサムな警部に心配かけつつも~仲良く解決。
このシリーズはかなり安定してますね。
作者本人も、高級な老人ホームで悠々自適の身だったらしいんです~。