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おすすめ本

「ブラックベリーパイは潜んでいる」

ジョアン・フルーク「ブラックベリー・パイは潜んでいる」ヴィレッジブックス

人気のコージーミステリです。
お菓子探偵ハンナのシリーズ、17作目。

故郷の町で手作りクッキーの店を出しているハンナ。
気さくで料理上手で親切な、三姉妹の長女です。
素人探偵としても有名になってきましたが。

未亡人の母ドロレスが再婚するのはいいけれど、そのパーティの準備に苦労するハンナたち三姉妹。
任せると言ったはずの母が、次々に気を変えるのです。
すごい美人の母親だけどシリーズ当初はきつさが目立っていましたが、ずいぶん可愛いところも出てきているこの頃。
人を振り回すのは相変わらず?

そんなコミカルな状況の中、思わぬ出来事が。
雷雨のなか、運転していたハンナが事故を起こしてしまったのです。
身元不明の男性が道路に倒れていて、ハンナは妹の夫に逮捕されてしまうことに。
もちろん親しい人が駆け付けて、応援してくれますが‥?!

妹の友達の相談を受けたり、またまた母の披露宴の相談も続くなか、事件の裁判は、次の作品に持ち越され‥
ちょっと違う意味合いの危機で、新味はありましたが、この段階だと読後感がちょっと。
これって、すっきり解決になりうるのかなあ??
続きが待ち遠しいですね☆

「王とサーカス」

米澤穂信「王とサーカス」東京創元社

太刀洗万智が主人公の長編。
前年の「満願」に続き、ミステリのいろいろなランキングで1位を獲得した作品です。

2001年。
太刀洗万智は新聞社を辞めて、初仕事。
海外旅行特集の取材のために、ネパールの首都カトマンズへ。
まずは事前に雰囲気をつかもうというゆるいスケジュールのはずで、宿で懐いてきた少年にガイドを頼んだのですが。
突然、王宮で国王たち王族が何人も殺害される事件が起き、あっという間に異様な空気になります。
太刀洗は、ジャーナリストとして取材しようとしましたが、暴動寸前の空気と報道規制に阻まれる。
そして、取材しようとした関係者に事件が‥!

『さよなら妖精』の出来事から10年がたち、海外のことも他人事ではないと感じている万智が遭遇した、思わぬ事件。
報道に携わる人間として、情報をどう集め、どう発信すべきなのか?
クールで真剣なヒロイン、太刀洗万智のこれからの生き方が問われると同時に、読んでいる人へも疑問を投げかけてきます。
実際に起きた事件を背景にしているため、重厚感も。
鋭い切り口と壮大なテーマが新鮮で、強い印象を残します☆

「死神遊び」

カミラ・レックバリ「死神遊び エリカ&パトリック事件簿」集英社文庫

エリカ&パトリックのシリーズ、8作目。
相変わらず切れ味鋭く、濃い内容で、平均してレベルが高いですね。

ヴァール島で35年前に起きた失踪事件。
寄宿学校の校長一家が、テーブルに並んだご馳走もそのままに、一歳の娘エッバだけを残して消え失せたのです。
この出来事の謎がそう簡単にわからず、興味を引っ張ります。

生き残った娘・エッバが夫と故郷へ帰ってきました。
途端に止まっていた過去の事件が動き出したかのように、放火が起き、そして‥?!

エリカは前々作で妹アンナと共に事故に遭い、とくにアンナのほうが重い結果となり、夫婦仲にも影響して、今も苦しんでいます。
かっては姉に反発していたアンナでしたが、何かと助けられてもいます。

エリカは作家として、次の目標にヴァール島の事件を取り上げようと考えていたところに、意外な展開があったため、どんどんのめり込んで行くことに。
夫で刑事のパトリックは、夢中になりやすいエリカの暴走を心配して止めつつ、そんなエリカの才覚を認めざるをえない‥かも?

ちょっと、アンナは気の毒すぎる気がしますが?
な~るほど‥!と唸らされる展開☆

「死者に祈りを」

フェイ・ケラーマン「死者に祈りを」創元推理文庫

デッカー&リナのシリーズも9作目。

警部補に昇進して部下も増え、ますます忙しくなったピーター・デッカー。
最愛の妻リナと3人の子供たちとも、すれ違いになりがち。

高名な医師が惨殺された事件が起きます。
医療の最先端をリードする心臓外科医で、医療スタッフも曲者ぞろい。
背景にある重層的な問題が、次第に明らかに。

厳格だったらしい医師の家族関係は複雑で、そのあたりもじっくりと描かれていきます。
事件の報を聞いて、動揺を隠せないリナ。
被害者の息子の一人が、リナの最初の夫の親友で、夫が亡くなる前後に力になってくれた古い友人だったのです。
ハンサムで生真面目な青年ブラムは、頼られる長男だったのに、家族の信仰となぜか決別し、今はカトリックの神父になっていました。
若き日に深い心の交流があったブラムを心配し、個人的に接触するリナに、気を揉むデッカー。

アメリカのユダヤ教徒の世界や、慈しみ合う家族の様子が、丁寧に描かれていくのが魅力のシリーズです。
ひとつの宗教でまとまっている育ち方というのは実感としては知らないことだけど、何となく少しはわかってくるような。
デッカー自身は自分がユダヤ系とは知らなかったという育ちですが、リナと出会って、自らのルーツに目覚めたという。

名士の家族が崩壊していくのは、アメリカのミステリの伝統的なパターンでもあるかな。
驚かされる事情もあり、複雑な味わいでした☆

amazonの書影をいつも左列に出しているのですが~この本がリストにありませんでした‥絶版か何かでしょうか?(汗)

「ファーストレディの秘密のゲスト」

スーザン・イーリア・マクニール「ファーストレディの秘密のゲスト」創元推理文庫

マギーのシリーズも、5作目。
元気な若い娘が主人公のコージーみたいな表紙ですが~
主人公はまあそうだけど、けっこう苦い味もある本格的なストーリーです。

マギー・ホープは、わけあってアメリカ育ちのイギリス人。
チャーチル首相の秘書になったことから、諜報員の訓練まで受けて経験を積んできました。
今回は、首相のアメリカ訪問に同行します。
苦境に立つイギリスは、アメリカの参戦を熱望していました。

アメリカ大統領は、フランクリン・ルーズヴェルト。
夫人のエレノアも知的で有名な女性ですが、思わぬスキャンダルに巻き込まれそうになります。
大統領夫妻の秘密に近づきつつ、絡み合う事件をひそかに解きほぐそうとするマギー。

かっての恋人のジョンは、激戦地帰りのパイロット。
首相に同行しましたが、英雄として人気が出たのをきっかけに、アメリカで思わぬことに?
こんな展開になるとは、ねえ‥
つらい過去を乗り越えて、マギーもさらに別な意味で?たくましくなるんでしょうか。
なかなかの読み応えでした。
マギーの運命やいかに?

「愛憎の王冠 下」

フィリッパ・グレゴリー「愛憎の王冠 下 ブーリン家の姉妹 2」

力作の後編です。
激動の16世紀イングランド。
メアリー女王とエリザベス女王の二人に仕えることとなった女性ハンナの波乱の人生。

ヘンリー8世没後の混乱期。
キリスト教徒内部でプロテスタントとカトリックのせめぎ合いが続き、どちらも命がけ。
聖なる道化として宮廷で女王の側近くにいるハンナは、派閥と無関係なので、女王の慰めとなります。
スパイまがいのこともするのですが、それぐらい女王たちの方もお見通し。
ハンナ自身はキリスト教徒でさえないユダヤ人であることを隠している恐怖がずっとつきまとっているのですが。

本を読んで育ったハンナは、当時としては自立心の強い、婚約者にとっては面倒くさい女性。
やっと結婚したものの、さらに思いがけないことに‥?
ぐっと大人になっていく展開になります。

メアリー女王は、30代も後半になって政略結婚。
スペイン王子の肖像画をひと目見て恋した可愛い女でしたが、不運な成り行きに‥
カトリックの信仰を守ることだけが支えとなり、異端の処刑でブラッディメアリーと怖れられることに。

妹のエリザベスは命の危険に晒され、異母姉のメアリーに迫られて礼拝には出るものの、改宗は拒み通す。
恐怖で再三病気になりながら、回復して宮廷に現れたときには人々を魅了。

どちらも父には否定された女性の身で、自らの地位や国のあるべき姿を必死に考えていた‥
それを思うと、ハンナも現代からタイムスリップしたような女性ではなく、激動の時代を体感しつつ生きたのかな、と。
人のさまざまな感情を濃く描きつつ、歴史の大きな揺れ動きを実感させる展開。
面白く読めました!

「愛憎の王冠 上」

フィリッパ・グレゴリー「愛憎の王冠 上 ブーリン家の姉妹 2」集英社文庫

映画化された「ブーリン家の姉妹」のシリーズ2作目。
主人公はアン・ブーリンと妹ではなく、次の世代の話。
メアリー女王と後のエリザベス女王という異母姉妹の激しいせめぎ合いを描きます。

主人公は、この二人に仕える娘ハンナ。
ユダヤ人であることを隠して暮らしている本屋の娘でした。
若きロバート・ダドリーと師のジョン・ディー博士に神託の才を見出され、道化として宮廷に上がることに。
当時、聖なる道化という、召使の序列から少しずれた存在が王族に可愛がられていたのですね。

父親のヘンリー8世亡き後、王位は姉妹の弟のエドワードへ。
少年王は病弱だったため、権力は宰相ダドリーに握られていました。
王位継承順位は、エドワードの次が長女のメアリーと決まっていたのですが。
宰相は他の人物を立てようとを画策、失敗に終わります。
ハンサムなロバート・ダドリーはこの宰相の息子で、エリザベスの幼馴染で後の有名な恋人ですが~とうぶんは謀反人の息子の汚名を着ることに。

メアリー女王のことは、あまりよく知りませんでした。
スペイン出身の最初の妃キャサリンの娘ですが、思えば気の毒な生い立ち。
王女として生まれ育ちながら、若い頃はずっと、父親の浮気と両親の離婚に苦しみ、弟が王位についた後もカトリックなので不遇だったのですから。
ハンナの目を通して、地味だが誇り高くて忍耐強く、危機に際して立派な振る舞いを示した様子が語られます。

このハンナ、エリザベスにも憧れてしまうんですけどね。
弟とも仲が良く、国民に人気のあったエリザベス。
すらっとして若々しく、人の気持ちを惹きつけるところがあったのです。
それは生き延びるための知恵でもあったのでしょうが‥

ハンナ自身は、ユダヤ人であることがバレたらと怯え、初恋のロバートに逆らえずスパイの役を務め、親の決めた婚約にも乗り気になれないまま。
宮廷の華やかな人々とその危機に次ぐ危機に幻惑されたように日を送ることになります。

知らなかった事情や、年代の変化が丁寧に追われていて、さらにイングランドだけでなくユダヤ人の世界も描かれるので、非常に濃くてドラマチック!
2作目がこんなに面白いとは予想外でした。
下巻の感想は明日に。

「ささやかで大きな嘘」

リアーン・モリアーティ「ささやかで大きな嘘」創元推理文庫

米英のベストセラー、150ヵ国で読まれているそうです。
美しい海辺の町の幼稚園に子供を通わせている親たちの間で、どんなトラブルが起きたのか?
事件があったことだけを最初に書いておき、それから半年前に遡って、事件までが語られていきます。

名門の幼稚園では、資金集めや派閥争いが盛ん。
富豪の子供もいれば、その家で働く人の子供もいるという。
シングルマザーで質素なジェーンは、引っ越してきたばかりで、最初は子守と間違われてしまいます。
しかも、ジェーンの息子がいじめをしたという疑惑をかけられ、不本意だが晴らすことが出来ないまま。
おしゃれで気っ風がいい庶民のマデリーンは、幼稚園のボスたちとは距離があり、ジェーンに味方します。
マデリーンと親しいセレストは、裕福な銀行家の妻で、かけねなしの美人なのに、なぜか遠慮がちな性格。
この3人のいきいきした個性と友情がそれぞれの秘めた内心と共に描かれ、なかなか読ませます。

マデリーンは、別れた夫が近くに戻ってきて、再婚した妻との間にできた子を同じ幼稚園に通わせることになったため、猛烈にイライラ。
セレストは、ひた隠しにしているが、夫の暴力に苦しみ、大したことはないと考えてみたり、自分のせいと悩んだりしていた‥
セレストの考え方は、現実にDV被害者が考えがちなことだそうです。

幼稚園での派閥争いや、行事の度の張り合い、保護者たちの抱えた秘密、もつれ合った感情が、資金集めの懇談会で爆発‥
その真相は?

展開に意外性もあり、テンポが良くて、面白かった!
重い部分を含んだ話なので、どこまで行くのかなと不安もありましたが‥
読後感は大丈夫、良かったですよ~。
なるほど、映画化も企画されているわけです☆

「貧乏お嬢さまと王妃の首飾り」

リース・ボウエン「貧乏お嬢さまと王妃の首飾り」原書房

貧乏お嬢さまのシリーズも5作目。
正しくは?英国王妃の事件ファイル。

公爵令嬢のジョージーは、王族ですが親が破産したため、財産は全然ないのです。
なんの職業訓練も受けていないので、あれこれ工夫はするのですが。
いつもにもまして、お金に困っている出だし。
イヂワルな義姉の仕打ちがひどいのだが‥笑える結果に。

英国王妃のコレクションから「嗅ぎ煙草入れ」が紛失。
その行方を探る司令を受けたジョージーは、一転して、豪華列車で南仏へ行くことになります。
しかも、あのココ・シャネルに出会い、頼まれてショーに出ることに。
長身を活かして、珍しく贅沢なファッションに身を包むことになったのですが‥?
早くに離婚して出ていった女優の母の別荘に滞在して、ふだん一緒にいられない母親と暮らす事も出来たり。

恋人と思っていたダーシーには、他の女性の影?
ドタバタ騒ぎの中にも、ハンサムな大富豪のフランス貴族に誘われるというお楽しみもあり。
1933年なので、シンプソン夫人と付き合っている皇太子も出てきたり、「ダウントン・アビー」と同じ頃なんですね。

ついに、ダーシーとの仲も、微妙に進展~
そう来なくっちゃ!
ヒロインが前向きでチャーミングだから~応援したくなります。
お気に入りのシリーズ、満足な読後感でした☆

「眠れる森の美女にコーヒーを」

クレオ・コイル「眠れる森の美女にコーヒーを」原書房

クレアのシリーズも14作目。
コージーにしては書き込みの多い作品です。
今回はちょっと味わいが変わっている?

クレアは、ニューヨークの老舗コーヒー店のマネジャー。
元姑がオーナーで元夫がバイヤーという複雑な環境ながら、才能ある店員たちにも恵まれています。
クイン警部との恋も、遠距離になった悩みを抱えつつ、進行していきます。

セントラル・パークでの秋のフェスティバルに参加することになったクレアたち。
おとぎ話がテーマなので、扮装をした人物が公園内にいっぱい。
クインの子供たちの子守をしていた娘も、プリンセス役を演じることになっていました。
ところが‥?

元夫マテオに容疑がかかり、クレアは手がかりを探して奔走することに。
マテオが買い付けた不思議な効能のあるコーヒーを使って、幻夢を見ることまで試み‥?
大学の研究者がデータを取るといった実験になるのが面白いところ。

リアルさと奇想天外な要素、ニューヨークならではの派手さ、ユーモアやロマンスと盛りだくさん。
好奇心は旺盛とはいえ真面目な性格のヒロインで、よくここまで盛り込めるものです☆

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