「ちんぷんかん」

畠中恵「ちんぷんかん」新潮社

2007年の新作、シリーズも6作目~(他に絵本「みぃつけた」があります)
安心して読めますね。

火事で煙に巻かれた若だんなが気がついた時には三途の川の河原に。なぜかついてきてしまった鳴家たちを帰そうとするうちに…「鬼と小鬼」
お払いで有名な広徳寺の僧・寛朝の弟子となった秋英が、初めて依頼者の話を一人で聞くようにと任されたところ、お払いするはずの絵の中に入り込んでしまい…「ちんぷんかん」

他に、若だんなの異母兄・松之助の縁談をめぐっての作品が続きます。
松之助は普通の人なので、お江戸の人情物といった感じですね。

若だんなは大妖を祖母にもち、死んだ子の魂が生き返ったという運命的な生まれつきで異常に身体が弱く、長生きは出来そうもない身の上。
たとえ普通に生きたとしても、若だんなを大事に思っている妖怪の手代達から見れば、一瞬のようにはかない時間しか、一緒にいられない…
今回はそんな命のはかなさを感じさせる話が多かったような。
作者の心境を反映しているのでしょうか?
桜の花びらの精・小紅の話は季節柄ピッタリでした。

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「時の彼方の再会」

ダイアナ・ガバルドン「時の彼方の再会」(ヴィレッジブックス)ソニーマガジンズ

ガバルドンの「アウトランダー」シリーズの3作目。
「時の旅人クレア」「ジェイミーの墓標」についで、これも3冊あります。既に9冊になるわけですね。
ドラマチックで良く書き込んであり、面白いですよ。

シリーズの発端は、第二次大戦終結直後に、夫フランクの郷里スコットランドに来た若妻クレアが、ストーンサークルで何故か18世紀にタイムスリップしてしまう。
そこで出会った青年ジェイミーと恋に落ちるというもので、イングランド人を憎むスコットランド人に嫌われたり、従軍看護婦だったので治療師として活躍するが魔女と疑われたりとさんざんな目に遭いながらも~愛を深めていきます。

[すぐ読もうと思っている方は下はさらっと斜め読みにしといて下さいね。
あまり詳しい事までネタばれはしないように書いてますけども]

続く「ジェイミーの墓標」はパリでの活躍やジャコバイトの反乱、そして18世紀から戻るに至ったいきさつが語られ、現代で夫フランクの死の後に、娘ブリアナを連れてスコットランドへ。
ブリアナに実の父ジェイミーの事を話し(最初はもちろん荒唐無稽な話として信じて貰えないのですが)、研究者のロジャーの協力を得て、200年前のジェイミーの消息調べが始まります。

さてこの「時の彼方の再会」は、タイトルで、まあジェイミーの元へ戻るのね?とわかりますよね。
でも一筋縄ではいきません~。
互いに死んだと思い、生きているとしても二度と会えないと思い込んで苦しんでいるクレアとジェイミーのそれぞれの生活がまず描かれます。

現代のアメリカで子供を生み、医者になる勉強もしつつ暮らしたクレアの日々。 実体験を込めているのか、忙しい子育てがえらく生々しいです。(夫のフランクとはあまり上手くいきませんが~フランクとしては無理もない?)
戦乱を生き延びたものの謀反人として捕えられたジェイミーの苦闘の年月と、それを辿るクレア達が描かれます。

そして、ついに18世紀に戻ったクレア。
エジンバラで働くジェイミーと感動の再会!
大柄で存在感のある心のあたたかいジェイミーは健在で、よく似た娘が無事に育っている事に感動してくれます。
しかし、20年の歳月は重く、ジェイミーが置かれた立場もまた新たな危険をはらんでいました。
ありとあらゆる苦しみが襲いかかるに近いですね~でも、手を携えて危機を乗り切り、時には体当たりでケンカする2人は変わりません。多彩な人物が登場して盛り上げてくれます。
ジェイミーの甥、ヤング・イアンが何者かの船にさらわれ、クレア達は救出のために大海原へと船出します。何と、ジャマイカまで…!
苦難の航海、疫病、意外な再会、エキゾチックな南海の自然と現地の人々、むざんな奴隷貿易と奴隷の反乱。
そして、時を越える意味とは……!?
まだまだ続くシリーズです。

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「黄金の羅針盤」

フィリップ・プルマン「黄金の羅針盤 ライラの冒険1」新潮社

フィリップ・プルマンの名作。
三部作の一作目で、一番中身が濃いです。
いぜんにハードカバーを借りて読み、重厚さと迫力に驚嘆しました。
文庫を買って読み直してますが、二度目のせいか文庫のせいか映画化された写真が載っているせいか~ずっと、わかりやすく感じます。

舞台は20世紀の初め頃(1930年代ぐらいかな)のロンドンに似た異世界。
両親を亡くしたライラは、おじである探検家・アスリエル卿を後見人に、大学の学寮に預けられて育ちます。
生来活発でおてんば、嘘の得意な~近所の子達のガキ大将的存在。
自分では知らないある運命を背負った子として、途方もない冒険に飛び込んでいく事になります。
地域の子供が謎の評議会にさらわれるという噂が立ち、友達のロジャーが行方不明になるに及んで、ライラは救出に乗り出すのです。
荒っぽい女の子がイイコになるってわけでもなく、強さを生かして難局にぶち当たっていく~果敢さが良いですね。

この世界には「よろいグマ」という知能も戦闘能力も高い白熊がいて、この中のはぐれ者イオレク・バーニソンがかっこいいんです。
イオレクに出会ってからのライラは勇敢で~後半、ぐっと盛り上がります。

この世界では人は皆、分身のような存在のダイモン(守護精霊)を持ち、常に行動を共にします。
ライラのダイモンはパンタライモンという名前で、オコジョになったりカナリヤになったり蛾になったりと便利に姿を変えます。
パンタライモンはすっごく可愛いですよ~。

ダイモンの姿はその人の本質を現していて、大人になると一つの動物の形に定まります。
探検家アスリエル卿のダイモンは雪豹。
世界を揺るがす陰謀に関わっている謎の女性・コールター夫人のダイモンは、金色の猿。
ジプシャンの中の女王的存在であるマ・コスタのダイモンは鷹。という具合です。

もう一つの特異な存在は「ダスト」
これが何かは、この世界の人達にも良くわかっていなくて、色々説があります。
一体どう転ぶのか全体像が少し見えかけた所で終わるので、ひい~って感じですよね。続きも必読です。

映画公開中。キャストはピッタリの感じですね。
児童文学の枠にはまりきらない重厚さと大胆さが~映画ではどうしてもスッキリ軽くなってしまうのではないかと思いますが…見てから読めば解りやすいかも?

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「太陽の塔」

森見登美彦「太陽の塔」新潮社

大学生の笑えて切ない失恋妄想小説。
これでファンタジー大賞を受賞してデビューしたとは知りませんでした。
ファンタジーかなあ…?そういえば、そういう雰囲気もあります。
叡山電車や百万遍交差点など、京都には名前だけでもファンタジックな場所や物があるんですね~。

主人公は休学中の5回生という~大学生といってもかなり追いつめられた状況にあります。
華のない生活で、モテない同士のおかしな仲間もいるのですが、思いは3回生の時に奇跡的に出来た恋人・水尾さんへと向かいがち。
膨大な水尾さんノートなる物を作っていて、1年前にふられたのに、いまだに彼女の行動をさりげなくチェック。自分はストーカーではないと理路整然と語っておりますが…
悪い奴じゃないんだけどねえ。
ふられるに至ったいきさつも笑えます。
まあ、しょうがないさ!若い時の恋はなかなか続かない~でも失っても恋しないより恋した方が良いんだよ、と肩を叩きたくなります。

太陽の塔、ってあの!万博のだったんですね。
主人公も水尾さんもひじょうに強い印象を持っていて、水尾さんがはまっちゃったというのがまた笑える。
あとがきの本上まなみさえもそうらしい。う~ん、まあ、確かに。
岡本太郎氏はハンパじゃないですね~。

あとがきが本上まなみなのは、作者がファンだかららしい。何しろ、主人公が自転車に「まなみ号」って名付けてるんですよ。
ちょっと「夜は短し恋せよ乙女」のヒロインとも通じる所あるし…なるほど、清楚な外見で~けっこう自然に人を振り回すようなタイプが好み?coldsweats01

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「ジェイミーの墓標」

ダイアナ・ガバルドン「ジェイミーの墓標」(ヴィレッジブックス)ソニー・マガジンズ

ロマンティック・アドヴェンチャー大作「アウトランダー」シリーズの2作目。
1作目はブログを始めて間もない頃に紹介したんですが、それっきりになってたんですね。再読してみました。
第二次大戦終結直後、スコットランドを夫と旅行中に、ストーンサークルからタイムスリップしたクレアが、18世紀の若者ジェイミーと愛し合う波乱の物語です。
ジャンル的にはファンタジーですかね…歴史物の醍醐味があります。
作者は長年大学で教えた人で、細部までよく書き込んであり、臨場感たっぷり。

200年前、イングランドはカトリックの王を追放し、娘夫婦メアリとウィリアムのハノーヴァー王朝になっている時代。
スコットランドはカトリックの王を戴いて、反乱を起こそうと動きます。
クレアとジェイミーはスコットランドを出てパリで暮らし、悲惨な敗戦になるとわかっている戦闘に巻き込まれるのを食い止めようとするが?!
運命は…
現代に戻って娘を育てたクレアの回想という衝撃の展開!?まだまだ続くシリーズです。

↓以下、ややネタばれになりますので、これからすぐ読もうとしている方はご注意!

貿易商の叔父の元で暮らすクレアとジェイミーは、宿敵が生きていた事を知り、動揺します。
クレアは宮廷に出入りしつつ、治療師としても活躍。
ルイ15世の宮廷やワインの輸入商売、怪しげな薬草医など、歴史物の面白さと、スリルに満ちた恋愛描写がたっぷり味わえます。
ジャコバイトの乱が起きるのを防ごうと動いて、いったんはハイランドに戻って平和に暮らしますが、事態は急転!

反乱軍に加わるしかなくなったジェイミー達の軍勢は、戦争の実際を知らない指揮官ボニー・プリンス・チャーリーに振り回されます。
イングランド軍に追いつめられた時にイングランド女性の捕虜を装い、ジェイミー達を逃がすクレア。
預けられた先は何とどっちの味方かわからない曲者・サンドリンガム侯爵の館。パリで親しくなったメアリとアレックスとの思いがけない再会…
現代の夫の先祖にあたる一族と関わることで、歴史を改変してしまうのかと悩むことになります。
クレアが現代に戻されるいきさつ、全てを話した理由とは!?怒濤の展開です。

「アウトランダー」シリーズは本国では6作出ている模様。
こちらでは文庫で各3冊ずつ~邦訳タイトルでは「時の旅人クレア」「ジェイミーの墓標」「時の彼方の再会」「妖精の丘にふたたび」と続いているようです。
雰囲気はゴロン夫妻の「アンジェリク」が一番近いかな~。
面白いです!

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「ヴォイス」

アーシュラ・K.ル・グウィン「ヴォイス」河出書房新社

「西のはての年代記」三部作の二作目。
ル・グウィンが80歳近くなってから書き始めたシリーズで、若々しい知性とパワーに圧倒されます。
三作目の邦訳は今年、刊行予定。

一作目から20年後、南の国アンサルの首都が舞台。
オルド人に侵略され、見る影のない荒廃した姿になったアンサル。
砂漠地帯で一神教を信じるオルド人は、武力に優れた民で、口承のみで文字を持たないのです。
アンサルの都は交通の要衝で、かっては大学や図書館でも有名でしたが、駐留するオルド人は文字は邪悪な魔物として、本をすべて水中に投じます。

ガルヴァ館に住む少女メマーは、オルド人の落とし子。
ガルヴァ館の娘だった母がオルド人の兵士に襲われて生んだ子で、もしゃもしゃの羊のようなオルド人の髪とアンサル人の黒い目を持っていました。
事情をよく理解していない幼い頃から隠された図書館に出入りし、「読み手」として「道の長」の教えを受けながら成長します。
お告げの家であるガルヴァ館はアンサル人の精神的な支柱だったのでした。

前作の2人がすっかり大人になって登場。
著名な存在となっているオレックとグライはオルド人にも一目置かれ、民人の尊敬を集め、反乱の指導者に担ぎ上げられそうになりながら、慎重に場を選んでいきます。
一途なものを秘めたメマーはまだ男の子のようでさばさばした良い子だし、才能溢れるオレックとりりしいグライの夫婦が素敵。
緊迫した情勢の中でも次第に、親のないメマーと彼ら(それにハーフライオン!)が仲良くなっていくのは切ない幸福感があります。

一作目の「ギフト」では家に伝わる超能力が問題でした。
家を継ぐようなギフトではない才能のあるオレックが詩の語り手として自らの人生を見い出した今、民族全体が抑圧された状態で育った17歳のメマーは、お告げの家の役割を知るのです。
アイルランドや古代ローマを合わせたような構造の世界ですが、お告げ(ヴォイス)のファンタジックな意味合いはル・グウィンならでは~圧巻です。
前作の民話的でもあり荘重でもある雰囲気とはまた違って、社会が変わっていく活気と希望があり、グウィンにしてはわかりやすい方の作品といえるでしょう。
オルド人も一枚岩ではなく、アンサル側にも考えを異にする色々な人がいる…
安易な押しつけや暴力への根強い「NO!」の意志が感じられます。

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「竜と竪琴師」

アン・マキャフリイ「竜と竪琴師」ハヤカワ文庫

パーンの竜騎士のシリーズ、10作目。07年6月発行。
作者は60年代からこのシリーズを書いているんですから、すごいもんです!
ジャンル的にはSFでしょうが~ファンタジーが好きな人向きの話も多いです。
惑星パーンは地球人類が植民した星。科学は忘れ去られ、人々は岩山を生かした城塞と巖洞に住み、中世的な暮らしをしています。

いくつもの作品に登場し、老いた賢者という印象のある竪琴師ノ長ロビントンの生い立ちから描いた作品。
パーンは長い間、宇宙からの糸胞に襲われる事がなく、糸胞の危険に備える貴重な竜と竜騎士や竪琴師の存在意義が失われつつありました。
ロビントンはそういう時代に生まれ、難解な曲を書く気むずかしい父親に愛されずに育ちます。
母親はすぐれた歌唱師でもあり、とてもあたたかい女性なので、この母と周りに守られながら才能を伸ばす少年ロビー(!)
父との葛藤を底流としながらも、淡々と話は進んでいきます。

竜を感合することは残念ながらなかったけれど、竜の声を聞くことが出来る特異な才に恵まれ、ベンデンの竜騎士のフ-ロンと親友になります。
フ-ロンの息子達、フ-ラルやフ-ノルの時代になると、感合の時にシリーズの最初の方を思い出して、微笑ましくなりますよ。

若い時のみずみずしい恋愛と波乱の展開、各地の城塞を転任し、竪琴師に対する誤解や反発にもあいながら経験を積み、可愛い弟子に恵まれる中年期。酸いも甘いも噛みわけた長ロビントンはこうして現れるわけですね。
そして、幼いレサと劇的に出会うまで。
このままシリーズの最初になだれ込んでも楽しいかも。

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「ギフト」

アーシュラ・K.ル=グウィン「ギフト(西のはての年代記1)」河出書房新社

このシリーズがあったの、すっかり忘れてまして~あわてて読んでみたら、かなり好みでした!
「ゲド戦記」よりもわかりやすいかも知れませんね。

ギフトという特殊能力を持った一族の物語。
都を遠く離れた奥地に住む村人は、家系によって違うギフトを持ち、伝統を大事にしながら互いに牽制し合ってもいました。
主人公の少年は、なかなかギフトが現れず、ある時ふいに統御出来ない強い力を発揮したために、何年も目を封印されてしまいます。自分の能力に実感が持てないまま、恐ろしい力があると思われていることだけが存在価値という難しい立場で、思春期を送ることになる辛さ。
忍耐強い父と息子が思いやりながらも行き違い、近在の危険なギフトを持つ一家との争いに巻き込まれます。
複雑な設定のようで、普遍性も感じさせるのがさすがです。
幼馴染みの少女とは家系が違うので、ギフトを守るためになかなか結ばれないのですが、ゆっくり育っていく愛情と分かちがたい絆も好もしいです。

エメラルドの島といった表現があるのはアイルランドのイメージなのか~ケルト的世界なのでしょう。
厳しさもある展開ですが、救いのある結末です。
読み応えがありました。

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「うそうそ」

畠中恵「うそうそ」新潮社

しゃばけシリーズ5作目。
江戸が舞台で妖怪が絡む、のほほんと楽しいミステリ風味のファンタジー。いやファンタジー風の時代ミステリ?人情物というには若向き~。
長編一本というのはこれが最初かな?

若だんなが箱根へ湯治に。
江戸の大店・長崎屋の息子、一太郎はいわくつきの生まれで病みつきがち。実は祖母が妖怪で、その血をひいているのです。
湯治は健康になるためとはいえ、病弱な身体に旅行はかなりの一大事でしょう。
それが頼りになる手代の兄さん達にすぐはぐれてしまい、箱根の天狗には襲われ、地元の人には災厄を運んできたと誤解され~とんでもない展開に…

人身御供にされて妖(あやかし)となったお比女ちゃんの哀しみと何をすることも出来ない悩みを一太郎は理解し…
江戸を離れた長編で、いつもの和やかさとはちょっと違いますが、なかなか面白かったです。
要所々々で鳴家(やなり)が可愛いのがツボ。

昨年、初のテレビ化がなかなか配役が良くて、上手く出来ていました。
ジャニ系も人材豊富なこと~カツラを乗せたらちょうどピッタリなのが良くいたもんだわ。
読んでいて、仁吉や佐助の顔がちらちらしますねえ(^^)

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「夢の灯りがささやくとき」

ダイアナ・マーセラス「夢の灯りがささやくとき」ハヤカワ文庫

「シャーリアの魔女」シリーズの2作目、上下巻です。
300年前に魔女狩りにあって、先住民シャーリアの特殊能力を持った女性達はいなくなった世界。
村の治療家としてひっそり生きてきた、たった一人の魔女ブライアリーが運命に立ち向かいます。

1作目で同じ血を引く(たぶん姪)幼いメガンに出会い、養女とします。
魔女の疑いで囚われていた公爵の宮廷から脱出、恋仲となったメルファラン伯爵の手引きで山中に隠れ住みますが…
本当に魔女なわけですが、邪悪な存在ではないわけで。過去の歴史の真実を解き明かそうと、発見した文書を解読していきます。
暴走しがちなメガンの能力を推し量りつつ育てる暮らし、束の間の平穏は公爵の追っ手に気づかれて破れ、逃避行になります。

そんなこととも知らず、故郷へ戻って、窮屈な宮廷生活で悶々と日を送るメルファラン。
綺麗だがそりの合わない妻と、とんでもないその家族、どこまで信用して良いかわからない配下の貴族達の顔色を窺いつつ、重大な決断を迫られます。
ブライアリーを守り抜くには、公爵を倒すしかない…?!

夫婦の小さな食い違いなど詳しすぎて、メロドラマ風。臨場感はあります。いささか冗長ですが~素質は良いものを持っているが、かなり孤独だったメルファランのこれまでがじわじわとわかってきます。誰が味方なのかも…
大きく時代が動きそうな所で、乞うご期待!?で続きます~。

表紙は綺麗な絵だと思ったら皇名月(コミックの時は皇なつき)さんなんですね!

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「天山の巫女ソニン2海の孔雀」

菅野雪虫「天山の巫女ソニン2海の孔雀」講談社

生まれてすぐに巫女として見い出され、天山に連れて行かれて修行を積んだが12歳になっても才能が開かず、親元に戻された少女ソニン。
私物を持たない修行の身から、ごく普通の貧しい庶民の暮らしに入って戸惑ううちに、社会の歪みが幼い目にも自然に目につくという展開になっていました。
目立たない末っ子の王子と出会ったことから宮殿の侍女に上がり、王子達が姿を変えられた事件で思わぬ活躍をすることになったのが前作。

2作目では、子供ながら意外な才覚のある侍女として注目され、元巫女は何をするかわからないとやっかみ半分の視線も浴びているソニン。
王子と共に異国に招かれ、その地での跡継ぎ争いに巻き込まれます。
大人の世界はドロドロですが~落ちこぼれ巫女のぴかぴかの素直さが良いですね。
12歳にしてはしっかりし過ぎかも知れないけど、目の前のことに真っ直ぐ突き進むだけで、ぜんぜん恋愛にはならないのが12歳かな。
色々な要素がうまくまとまっていて、好印象でした。

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「おまけのこ」

畠中恵「おまけのこ」新潮社

「しゃばけ」シリーズ4作目。
江戸は日本橋の大店・長崎屋の若だんな・一太郎が主人公。
病弱なため大甘な両親に大切にされている若だんな(若だんなといってもまだ男の子ですが)~気が優しくてなかなか頭も良い。
実は妖怪の血を引いていて、周りについている手代も妖怪。屏風にも妖怪…
部屋は妖怪だらけという生活で~身近に起こる事件を解決していきます。
読みやすくて~水を飲むようにするする入ってきます。

若だんなの子供の頃の話が少年探偵団のようで可愛い。かと思うと、18になった若だんなが吉原へ?!という話の意外な展開もなかなか。
顔を真っ白に塗りたくる化粧を止められないお雛さんの話も面白かったです。
最後の話の鳴家(やなり)も可愛い~!家につく小さな妖怪できゅわきゅわ喋っているだけで害がない感じなのですが、これがほろっとする展開。
シリーズの中でも良い方だと思います。

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「アラビアの夜の種族」

古川日出男「アラビアの夜の種族」角川書店

作者不詳のアラビアの小説を翻訳した物だという体裁を半ば信じて読み始めました。
アラビア風味は濃厚で、擬古文とまではいかないかな~ちょっと前の翻訳調。マムルーク王朝のエジプトにナポレオンが攻めて来るという時代。
奴隷王朝という不思議な制度も面白く、この場合の奴隷とは私兵のようなもので、優秀な子に高い教育を施して後継者を育てるのですね。
優れた外見は中身を伴うと信じるイスラムの軍隊は美しく装っていたとか。
しかし実力は逆。必死に迎え撃つ側は万能執事アイユーブの計画で「災厄の書」をフランス軍に送り込もうと…

読まずにはいられない物語を女語り部(夜の種族)が語り始めます。
美しい女語り部のつむぐ3人の魔術師の物語~
スルタンの末子アーダムは世にも醜く生まれ、邪悪な稀代の魔術師に。蛇神の宿るジンニーアに魅入られ、魔都を封印して眠りにつきます。
千年の後、森の民に育てられた捨て子のファラーは自らの生い立ちを誤解し、人間で一番優れた者になる道を探し求めます。黒人種の血をひきながら白皙という孤独なファラー、なかなか魅力的です。
一方、王弟の王位簒奪により落ち延びて泥棒一家に育てられた王子は、天性なのか健やかに成長し、運命の導きによって従妹の姫に恋をする…
それぞれの心のありよう、あがき求める気持ちが哀しい。
奇想天外な設定で命運が二転三転する波乱の展開ですが、3人の魔術合戦はRPG風で意外と思い描きやすい!?

本に取り憑かれた人々の読む物語という入れ子構造。
濃厚な物語で何とも複雑!最後はミステリ的な要素も。
結末にいたって後書き装丁を見直し、創作だと確信しました。
元ネタがあっても、おかしくはないですが…
しかし教養がありますね~いや、想像力があるというか、遊び心があるというべきか…どういう人なんだ!?

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「オラクル」

キャサリン・フィッシャー「サソリの神1 オラクル-巫女ミラニィの冒険」原書房

エジプトとギリシャを合わせたような古代世界が舞台の物語。
神殿に仕える9人の巫女の一番下っ端だったミラニィが「神の運び手」に抜擢されますが、これは捧げ持つサソリに刺されなければ神意にかなうといった危険な役。
神の宿るアルコンが代替わりする時に将軍の陰謀と戦い、真の少年を探し出す役割に。神が10歳の少年に宿るというあたりはチベットみたいでもありますね。
最高位の巫女と将軍を向こうに回し、書記や老楽士と共に大立ち回りすることになります。

知らない作家で、どの程度の物かわからなかったのですが~なかなか面白かったです。
まあ翻訳が井辻さんですからね~ファンタジー作家としてちゃんとした人ということでしょう。
個人的に~7月は女性ファンタジー強化月間だったりして。
なんかミステリよりも元気が出るかな?という気がしたのと、読んでない作家が沢山あることに気づいたからです~。

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「鏡の森」

タニス・リー「鏡の森」産業編集センター

しばらく読まないでいるうちに、たくさん本が出ていたタニス・リー。
読みやすそうなのから物色してます。

これは白雪姫がメインのストーリーで、さらにルーマニアの伝承、ギリシア神話など、様々なモチーフを駆使して織り上げた、きらきらと妖艶でダークな物語。
お姫様ではあるけれど親の愛を知らずに育つ母娘2代の白雪姫の波乱の人生~相変わらず女っぽい雰囲気です。
しかし女の人生をリアルに描いたあげくに童話の残酷さが加わってくると、ちょっとどうかな~て気も。
特に母親の方に感情移入したら大変ですよ~略奪されて生んだ実の娘に何の愛情も感じず、継母と誤解されるという展開ではね。
シガーニー・ウィーバーが継母役をやった映画の方がまだ立つ瀬があったかも。
王子のサイテーぶりには笑っちゃいますが。白雪姫の王子はどんなもんか?というのはありますよね。

タニス・リーで一番有名なのは「闇の公子」でしょうか。薄いので初めての方にはオススメです。
評価が高いのは「タマスターラー」とかかな。

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「海より生まれし娘」

ダイアナ・マーセラス「海より生まれし娘 - シャーリアの魔女1」早川文庫

綺麗な表紙イラストに目をひかれて読んでみました。「シャーリアの魔女」シリーズの一作目。
中世風の異世界が舞台で、実は未来の異星のようです。

ヒロインのブライアリーは海辺の村の治療師。
支配層アレマニ人による長い年月の魔女狩りで、最後の魔女になったかも知れないと思いながら海辺の洞窟に住み、孤独な暮らしをしていましたが、しだいに治療した村人との間に信頼関係が出来ていきます。
まだ19歳の娘ですが、感応力によって患者を見つけ、その痛みを引き受けることで治療するという~果敢で有能な治療師ぶりが良いですね。

伯爵の妻の難産を救い、敵であるはずの伯爵の意外な理解を得るのですが…
魔女の疑いをかけられてしまい(事実なんですが~大抵の人はそんな存在を信じない時代になっていて)、裁判を受けるために公爵領へ出頭し、非道な公爵とその部下に尋問されることに。それは彼女をかばう伯爵にとっても余りに危険な賭だった…!

描写はわかりやすく丁寧ですが、時々訳語が固い。
魔女の歴史の真実や、素質を持った幼女との出会いなどもあり、展開はスリリング。やや甘めですが十分楽しめました。
2003年発行、原著は2001年。

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「バビロンまでは何マイル」

ダイアナ・ウィン=ジョーンズ「バビロンまでは何マイル」東京創元社

英国ファンタジーの女王、ダイアナ・ウィン=ジョーンズ97年の作品です。
日本では「ハウルの動く城」の原作者というのが通りが良いでしょうか。

魔法管理官マジドのいる多元的な世界が舞台になっています。
マジドになってまだ2年目の真面目な青年ルパートが、欠員の出たマジドを選抜する仕事を任され、魔法が公認されていない地球のイギリスと、マジドは公認されているがとんでもない紛争中の帝国とを行き来しながら~悪戦苦闘します。
一方、ヒロインのマリーは小柄で気の強い、最近ふられたばかりで何かとついてない獣医学生。
事情もわからずにいきなり大混乱の中に巻き込まれますが、実は…!?

ルパートが魔法を駆使してマジド候補者を集めたのは、何とファンタジー大会の会場。
これは作者の実体験を交えたものらしく、作家と愛読者(つまりは変人の集まり?)のコスプレ含めたはじけっぷりが笑えます。

ルパートの兄達や謎の隣人、クワックの雛やケンタウロスも良い味出してます。従弟のニックの寝ぼけぶりや魔女祓いの踊りには大笑い。この辺がかなり気に入りました。
敵役はホントに嫌な感じ!でもあくまで役割というか~どこか罪を憎んで人を憎まず、みたいな視線を感じます。見て気分が悪くなるようなとこまでは行かないのね。

ダイアナ・ウィン=ジョーンズならではの多層的でちょっぴりビター、ホットでものすごくにぎやかなファンタジー。
最初は反発し合うルパートとマリーが互いにだんだんと違う風に見えてくる様子が面白い~つまりロマンス有り。
個性豊かな若者達それぞれの相当すごい未熟さが、上手いこと成長してくるあたり、これも鋭い!ツボついてます~。

06年3月発行。「花の魔法、白のドラゴン」の前日譚だそうですが独立して読めます。

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「憑かれた鏡」

「憑かれた鏡 エドワード・ゴーリーが選んだ12の怪談」河出書房新社

挿絵画家・作家・編集者でもあったエドワード・ゴーリーが目利きのところを生かして選んだ短編に、一枚ずつ挿絵をつけて、まとめた本。
挿絵はオーソドックスなペン画で、古風な味わい。
翻訳も端正で内容に合っていて、わかりやすいです。

怪談というだけあって、かなり怖い話も載っていますが、怖さより古典としての風格の方が印象に残りました。
名作揃いなのでどこかで読んだ物もあるし、何しろディケンズやスティーブンスンも入っているのですから~19世紀風なイメージが強いのです。
でもゴーリー氏は長生きなので、意外と最近まで生きていた感じなんですが!?

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「太陽の王と月の妖獣」

ヴォンダ・N・マッキンタイヤ「太陽の王と月の妖獣」ハヤカワ文庫

ネビュラ賞を受賞した作品なので、SFに分類されていますが、内容的には歴史ファンタジーといった感じ。
17世紀フランス、ルイ14世の晩年の宮廷の様子をよく調べてリアルに描いてあります。
史実と違うのは、ヒロインに近い人物と、海の妖獣という人魚に似た生物が存在したという設定のみ。

神父で科学者でもある青年イブ・ドラクロワが大海原に妖獣が集まる場所を推測して、王のために本物を捕らえる勇ましいシーンから始まり、妖獣一体をはるばる宮廷に持ち込んで、巻き起こる事件を描きます。
主人公はイブよりも、その妹マリー=ジョゼフの方。
頭は良いが田舎育ちで修道院から出たばかり。本来は活発でのびのびした個性の持ち主のようだけど、宮廷ではそれがいささか悪目立ち。いきなり王弟妃の侍女となったため、まごまごしながらも宮廷の華やかさに魅せられています。
妖獣の世話を任されたことから、その知性に気づき、不死の霊薬を取り出すために殺される予定の妖獣を何とか助けようと尽力することになります。

実在した王弟妃やマントノン夫人が目の前にいるような描写、当時の科学と宗教の関係や、瀉血をメインとする医学治療の乱暴さ、優雅なようで奇怪な宮廷の慣習など、興味は尽きません。
豪華な衣装や髪飾りの描写はゴロン夫妻の大長編「アンジェリク」を思い出しました。  

取っつきはあまり良くないように思いますが~そこがネビュラ賞なのかも?
ヒロインの正直な感情を視点に描いていったら、ライトノベルになりそうなストーリーなんですよ。前半、ヒロインがおぼこで鈍すぎるんですが~宮廷ロマンス物としても後味は悪くありません。
登場人物との距離感の取り方がライトノベルと違うのかな、と思いましたね。

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「ねむり姫」

澁澤龍彦「ねむり姫」河出文庫

澁澤龍彦ならではの耽美な世界~
あ、これ、読んでなかったんだ!と喜々として読みました。
後白河法皇の時代に眠り続けるうつくしい姫に魅入られた腹違いの童子の話や、狐の子を産んだ奥方の話など、日本の時代物を揃えた中短編集。
教養に裏打ちされた流麗な文章で読ませます。
古今東西の知識がどう関わっているのか、注釈本が読みたいわ。

今読むと、時空を超えた古典的魅力と共に、最近流行のお人形の美しさとも通じる所がまた何とも摩訶不思議。
所々わざとのような肩すかしがある粋な作りなので、ストーリーは??
だが、耽美は論理的じゃないのね~役には立たないのよね~文学にはオチがないのよねと何やら納得。
なかなかこの味わいは他に求められません。

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「青い鷹」

ピーター=ディキンソン「青い鷹」偕成社

「エヴァが目ざめるとき」「キングとジョーカー」が面白かったディキンスンのこれは児童文学。
児童というより文学の方に比重がかかっていると思って下さい。
小学生には難しい内容です~主人公は子供ですが。
紀元前2千年あたりのエジプトがモデルらしい歴史ファンタジー。
77年ガーディアン賞受賞作。

神官として修行中の少年タロンは、神殿の儀式で「神の羊」に選ばれます。
年に一度、王の命の蘇りを象徴して青い鷹を生け贄にする役なのに、具合の悪そうな鷹を連れてふと会場を出てしまう…そのため命も危うい立場となり、荒野で一人、鷹の訓練をすることに。
鎖国状態で神官が王の生命も握る閉鎖的な国の有様に、しだいに気づかされるタロン。若い王の信頼を得て、神とは何かと問いかけながら、巡り合った人々と力を合わせていきます。 

エジプトって、そのまま書いてもファンタジーなんですよね。詳しい資料や長編小説が残っているわけではないので、もちろん、作家の想像力によるものですが。
なかなか面白かったですよ~「ゲド戦記」やサトクリフの児童文学がお好きな方にはぜひお勧め。

知る人ぞ知る人気作家というか~ジャンルが多岐にわたるのと日本では名前の表記がディキンスン、ディッキンスン、ディキンソンと違うために全貌がわかりにくくなっているようです。
しかし名前と姓の間に・じゃなく=を使うのは変じゃないですかね?

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「ゆめつげ」

畠中恵「ゆめつげ」集英社

「しゃばけ」のシリーズで人気の作者の別作品。
江戸が舞台で、ちょっとひ弱な主人公の、和風ファンタジーテイストなので~しゃばけファンにも面白いと思います。
妖怪は出てきませんが。

幕末という設定で、小さな神社の跡取り息子・弓月が主人公。
家に伝わる夢告(ゆめつげ)という占いの能力があるのですが、これがあまり実効がない…しっかり者の弟に叱られながら暮らす毎日。
格式ある大きな神社の依頼で、行方知れずの子供を捜すことを頼まれ、自信はないものの、屋根の修理費のために引き受けます。神社といっても、色々あるんですね~。
のっけから辻斬りに遭遇し、大店の跡継ぎ騒動から事件は思わぬ方向へ…

幕末の揺れ動く世相がこんな風に関わってくるとはね…
江戸時代は神仏混合で、神社にはお寺が付属し、誰しもどこかのお寺の檀家になっているという日本独特の体制になっていました。
ところが事情はだいぶ変わってくるわけです…ほとんど忘れてましたが、当時は大事件に違いありません。
登場人物は個性的で、なかなか面白かったですよ。
ややこしい時期の設定なので長いシリーズは難しいのかも知れませんが、続編ぐらいは書いて欲しい所です。

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「チャーリーとチョコレート工場」

映画「チャーリーとチョコレート工場」

友達に貰ったDVDで見ました。
ジョニー・デップが何と言っても魅力的です。まったく何をやっても、はまって見えますねえ。彼の妙な個性と楽しげなパワーのおかげで~お子様向きかという心配なく見ていられます。
チャーリー役のダニー・エルフマンは「ネバーランド」でもデップと共演、ピーターパンのモデルのピーター少年をやった子ですね。貧しくて素直なチャーリーを演じて、前のぴりぴりした疑い深い目つきがなくなってるのね。この子も名優だなあ!
貧しい一家がメルヘンぽくて~お爺さんも良い味出してます。

チョコレートの天才が作った工場に招待された5人の子供達、ほとんどはお金持ちの嫌みな子で、工場で次々に災難に遭う様子は因果応報というべきなのか~ややブラックな展開。
最後にどうなるのかちょっとハラハラ…でも本筋はハートウォーミング。
クリストファー・リーのきびしい歯科医の父というのが似合っていて、老いてからの登場にも涙~。

一方、とんでもない目にあってもめげない子供達もたくましい~さすが根性ワルと言うべきか?けっこう笑える展開でほっとしました。
言いなりに甘やかした親がいけないので、ちょっと態度を変えれば何とかなりそうな。他の出会いでも揉まれるだろうし。いや、そんなに真面目に考えることもないのか!?

カラフルでイメージ豊かで飽きさせない、特にウンパルンパの顔つきと滑らかなダンスが傑作で、抱腹絶倒~さすがはティム・バートン監督ですね。

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「チャリオンの影」

ロイス・マクマスター・ビジョルド「チャリオンの影」東京創元社

初ビジョルド。SF作家として有名らしいですが、これは宮廷物ファンタジー。チャリオンは国の名前です。
ドラマチックで冒険あり恋愛あり呪いあり~厚さ1㎝ぐらいの文庫・上下巻。ほどほどに書き込まれていて、わかりやすいので~広範囲の方にオススメ出来ます。

若き司令官だったカザリルは敗戦で捕虜となり、ガレー船の奴隷となっていました。やっと解放された時には、35にして既に老人のような外見に。
これからは平和に暮らしたいと子供の頃に仕えた国主の母を訪ねたところ、思いがけなく16歳のおてんばな国姫の教育係に任ぜられます。
やがて国姫と弟が跡継ぎ候補として都に招かれたため、否応なく宮廷での陰謀のまっただ中に巻き込まれ…!?

よれよれで登場した欲のない主人公、実は自覚のない高潔な人物だったのですね。
次第に能力を認められていくあたりはなかなか楽しく読めます。人格を磨かれていくため?の苦難は半端ではないのですが…!

五柱の神を信仰する世界とのことですが、まとまった説明がないのでちょっとわかりにくい。生活にとけ込んでいて、この世界の住人の視点でどんどん話を進めているからかな。呪術やお告げが生きている世界で、登場人物にも最初はわかっていないことがあるからか…
基本は中世スペインがモデルのようです。
この世界で主人公の違う小説はまだ書かれているとのこと。楽しみです。

読んだのは4月の風邪をひく前…元気な時には波乱があって良かったけど、頭がぼんやりしてから思い浮かべると、ちょっとややこしいなぁ(苦笑)
でも、面白かったですよ!

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「安徳天皇漂海記」

宇月原晴明「安徳天皇漂海記」中央公論新社

前半は鎌倉の実朝に仕える人物の視点から、孤独な三代将軍・実朝の苦悩と、壇ノ浦に沈んだはずの幼い安徳天皇の不思議な運命が描かれます。
雰囲気たっぷりの古典ファンタジー。
澁澤龍彦の「高丘親王航海記」と似ていると思ったら、海を渡って天竺まで行ったという伝説のある高丘親王に実朝が憧れていたということを踏まえてのストーリーだったのですね。

そういえば、大河ドラマで昔、実朝が船を造って海を渡ろうとしたが、船が浮かばなくて挫折して失笑の種になったという話がありました。
現役の将軍が海を渡ろうというのもかなり無茶な話ですが、船が動かないように北条家が手を回したか、或いは不可能だと見越していたのじゃなかったかなあ?
兄の頼家が母方の北条家に殺された後に将軍となったという痛みを抱え、誠実な人柄で歌の才能はあるが、政治には向いていなかった実朝のありようが丁寧に描かれていて引き込まれます。

後半は、モンゴルに敗れた南宋の少年皇帝との時空を超えた交流にマルコ・ポーロが絡むという~さらに意外な展開!
ぐっとファンタジックになって~これもまたなかなか独創的。
よく似た美少年が並んだところは何やら人形めいた耽美な世界を現出させているようでした。

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