「ちんぷんかん」

畠中恵「ちんぷんかん」新潮社

2007年の新作、シリーズも6作目~(他に絵本「みぃつけた」があります)
安心して読めますね。

火事で煙に巻かれた若だんなが気がついた時には三途の川の河原に。なぜかついてきてしまった鳴家たちを帰そうとするうちに…「鬼と小鬼」
お払いで有名な広徳寺の僧・寛朝の弟子となった秋英が、初めて依頼者の話を一人で聞くようにと任されたところ、お払いするはずの絵の中に入り込んでしまい…「ちんぷんかん」

他に、若だんなの異母兄・松之助の縁談をめぐっての作品が続きます。
松之助は普通の人なので、お江戸の人情物といった感じですね。

若だんなは大妖を祖母にもち、死んだ子の魂が生き返ったという運命的な生まれつきで異常に身体が弱く、長生きは出来そうもない身の上。
たとえ普通に生きたとしても、若だんなを大事に思っている妖怪の手代達から見れば、一瞬のようにはかない時間しか、一緒にいられない…
今回はそんな命のはかなさを感じさせる話が多かったような。
作者の心境を反映しているのでしょうか?
桜の花びらの精・小紅の話は季節柄ピッタリでした。

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「中庭の出来事」

恩田陸「中庭の出来事」新潮社

2007年の作品で、たくらみに満ちた複雑な構成のミステリ。
ホテルの中庭で行われたパーティで、再婚したばかりの劇作家・神谷華晴が毒によって謎の死を遂げます。
「告白」という一人芝居を演じる女優を選ぶために、3人の女優をオーディションしている途中のことでした。
大女優、中堅の個性派、若手のサラブレッドという~まったく違う3人。
しかも、女優自身の人生の要素を交えて脚本を構成し直そうという野心的な企画。何か裏があるのでは、という可能性も…?

事件と、オーディション、捜査段階で繰り返されるシーン。
そのたびに少しずつ変化していく供述と推理。
劇作家・神谷のインスピレーションの元となったらしいのが、新宿のホテルの中庭で起きた若い女性の死。これについての推理も随所に挟まれてきます。
さらに、山の中の廃駅を劇場にしたという場所での舞台公演をめぐっての話も絡んできます。

ただのミステリじゃ物足りない!?という人向けの知的遊戯というのか~迷宮のような感覚を楽しめれば面白いでしょう。
作者の演劇好きも感じられて、女優のオーディションというのは面白いのですが~ちょっと、過程がややこし過ぎて、解決した感覚が起きないのが難かなあ?

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このミス2008

「このミステリーがすごい!2008年版」宝島社

2006年11月から2007年10月までに出た広義のミステリの人気ランキング本です。
国内73人海外73人ずつの投票で6冊ずつ選び、1位10点、2位9点、以下~6位5点という計算法。
20周年ということですが~20年の総括は前のだったか、特集号だか、どっか他の本でやっていたような。

出た時点でぱらっと立ち読みはしたんですが~
自分が少ししか読んでいないのはともかく、上位に食指の動くのが大してなかったのが寂しかったですね。でも細かくチェックすれば、おっといろんなのがあるぞ、というわけで。

国内編1位は佐々木譲「警官の血」、2位は桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」
読んでません~どっちも図書館にずっと前にリクエストしてあるんだけど。
国内で読んでるのは…
7位の「サクリファイス」8位の「楽園」17位の「悪人」18位の「中庭の出来事」(昨日読んだばかり)
21位以下(これ以下は順位がつかない)13点以上のリストの「私の男」「吉原手引草」
ベスト10にも足りないわ~まぁ仕方ないっすね…

海外編1位はディーヴァーの「ウォッチメイカー」ハイ、読んでます!
あとは~3位の「TOKYO YEAR ZERO」を最近読んでみたけど、好みじゃなかったです。
13位「病める狐」…やっと、このへんですかね~。
15位「双生児」…去年の作品として印象的ではあるけど、どっちかというとSF。
17位「異人館」知る人ぞ知る実力派ヒルの単発物。
18位「夜愁」ウォーターズは前作でミステリの女王になりそうな勢いでしたが、これはもう普通小説~評価は高いけど。
21位以下「再起」「終決者たち」「幼き子らよ、我がもとへ」
え、これだけ?誰も投票しなかったやつで、何か読んでるかしらね~。

仮に私が投票するとしたら、国内では「楽園」1位、「悪人」2位、「吉原手引草」3位、「私の男」4位、「中庭の出来事」5位、「ちんぷんかん」6位かな。

「悪人」は連載で読んでいたためブログで紹介はしてませんが~出会い系サイトで知り合った男女の関係を描き、犯人の男は悪人とされるわけですが、これが(問題はあるけど)悪いヤツじゃなくて気の毒で泣かせます。
「ちんぷんかん」の畠中恵はいちおう巻末のリストに入ってるけど、時代物かファンタジーの要素が強いので、誰も投票しないみたいですね~13点以下なのかも。
あれ、伊坂幸太郎は?去年じゃないのか~。

海外だったら~1位「ウォッチメイカー」最近のディーヴァーでは一番気に入ったので。
2位「再起」フランシスの復活を祝して。
3位「病める狐」お気に入り作家ミネット・ウォルターズのまずまずの力作。
4位「異人館」歴史がらみだし、なかなかの出来で好感度高し。
5位「夜愁」じつは一番印象が強いんだけど、ミステリとは言い難いので、このへんで。
6位「幼き子らよ、我がもとへ」歴史物だから~ひいきしてみました。アイルランドの7世紀というのが渋い!ヒロインは清新です。

次点「警視の週末」これは女性作家のコージー系と思われてるのかも知れませんが読み応えあります。「異人館」とちょっと似た要素があって、面白かったですよ。
あら、「終決者たち」が入らなかった…う~ん?

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「楽園」

宮部みゆき「楽園」文藝春秋

あの「模倣犯」に出ていたライター前畑滋子のその後。
いちおう解決はしたものの、あまりに悲惨な事件に深く関わったため痛手を抱えてしまい、事件についてまとまって書く事も出来ないまま、9年がたっていました。
夫の両親を見送り、夫の仕事が忙しくなった後、ライターの仕事をぽつぽつと再開。
というところへ、事故で亡くなった幼い息子が生前に描いた絵を見て欲しいという女性の訪問を受けます。

サイコメトラーというのか、後に殺人事件があったと発覚した家の絵を描いていたというのです。
古風なお母ちゃんといったふんわりした雰囲気の女性にほだされて、半信半疑で話を聞くうちに、他でもないあの事件の現場の絵を見つけ、衝撃を受ける滋子。
仕事抜きで過去の事件の真相を洗い出すことに…

頭の中でぐるぐるする物を絵に描いたという12歳の少年・等の能力とは何だったのか?
16年前に、非行に走った長女を両親が思いあまって殺したという事件のあった一家の次女の依頼を受けて、滋子は周辺を当たります。
同じ頃、幼い少女が興味を持った家には… という脇筋も展開。
家族が手を離れていく時、特に我が子が道を外れた時、周囲はどうしたらいいのか。
事件は重すぎるほど重いですが、救いのある結末になっています。

「模倣犯」の続編で地味めと聞いて、すぐには手が出ませんでした。
作中人物の滋子もなかなか立ち直れなかったように…
後書きによると、作者も前作を書き上げるのに非常に苦しんだそうです。
この作品も、読んでいる途中でちょっと暗い気分に覆われました。
が、その後は何とか!事件のあった街の幼馴染み達や、滋子のダンナさんなど、元気な人々に救われました。
トータルでいえば~さすが筆力があり、目の付け所も確かな作品です。
前作を読んでいなくても読めますよ。

トマス・ハリスは楽しんでべろべろ読めちゃう(心の準備は多少必要だけど)のとどう違うかというと…
トマス・ハリスの方が登場人物に対して距離のある描き方で、エンタテインメントとしても一個の作品としても昇華されているのかな。
こちらは日本の話だから~読む側にとって現実味がずっと大きい、ということもあります。

宮部さんはおだやかで冷静な書き方をする人で、作者自身の感情や主張をストレートに出すことはしません。ただ、弱い立場の人が理不尽な目に遭うことに対する憤りは、間接的には一番感じられる所です。
今回は女性が中心なので、いつもよりも、色々な立場の登場人物と共に考えさせるような書き方になっている気がしました。

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「骨の城」

アーロン・エルキンズ「骨の城」早川書房

ハヤカワ・ミステリ文庫で出し直しているエルキンズの作品、いつの間にか8冊目。(うち一冊はクリス・ノーグレン物)
これはスケルトン探偵ギデオン・オリヴァー物の新作です。

古城で行われるシンポジウムに愛妻ジュリーが出席することになり、お供で参加したギデオンは、かっての友人とも再会します。
自然保護がテーマだからパークレンジャー(公園で遊ぶみたいだけど森林保護官とでもいうのか)のジュリーも発表の機会が与えられたのですが、2年前の学会では過激なメンバーが対立、さらに女性関係で大揉めになったことを知るのでした。
その後、当時のメンバーが行方不明に?
退屈しのぎに訪れた地元の小さな博物館に保存された遺物の中から、つい最近の骨を発見したギデオンは…

イギリスならではの中世の城を舞台に、クロムウェルの時代にちなんだ部屋の名前など、ご当地色を出しています。
最初は不機嫌で手のつけられなかった警官の人間像なども、ある意味イギリスっぽいのかな。もしかしてモデルがいるとか。
遺体探索を専門に訓練された犬も活躍し、面白く読める要素を入れています。
円熟の味ですね~。

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「サクリファイス」

近藤史恵「サクリファイス」新潮社

最近、決まったばかりの本屋大賞2位です。
候補に挙がったと聞いて読んでみたもの。
初めての作家さんで、タイトルでも見当がつかなかったけど~自転車ロードレースの話。
日本ではマイナーなスポーツで、ルールも解りにくいけど、独特なルールゆえの面白さに焦点を当てているので、だんだんに解ってきます。

白石誓(ちか)は中距離でインターハイにも出たほどの選手でしたが、本人は勝つことに意味を感じられないでいました。
チームプレーに魅力を感じてロードレースに転身。アシストに力を尽くします。

5時間以上スピードを出して走るので、先頭にいる選手は風圧を受けて消耗することになるため、競い合うチームでも先頭は時々交替するのがマナー。その辺が紳士のスポーツなんですね。
チームのエースを守るためには、他の選手がその前を走ったり、先頭集団に入って全体を引っ張ったりするという作戦をこらす。個人の成績は二の次で、エースを立てるのが、アシストの役割なんですね。

誓は、ワンマンなエースの石尾豪を尊敬していましたが、石尾には伸びてくる若手をつぶすという黒い噂が…
その真相は?
突っかかってくる同世代のライバルと共に練習し、ベテランのアドバイスを聞きつつ、世界へ出ていくチャンスに胸を弾ませ、別れた恋人との再会に葛藤し…
ぐいぐい引き込んで、あっと言う間に読ませてくれます。
別れた恋人が誓の性格を全く理解していないのが、苦みとして効いてるような…
最近ヒットが多い~女性が描くスポーツものの一つと見ることも出来ますね。

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「終決者たち」

マイクル・コナリー「終決者たち」講談社文庫

ボッシュ・シリーズも11作目ですよ~。
2007年9月発行。原著は2005年。講談社文庫は4作目~以前のは扶桑社から出ています。

3年間私立探偵をやっていたハリー・ボッシュだが、ロス市警に復帰。
迷宮入りの事件を再検討する未解決事件斑に配属され、かっての相棒キズミン・ライダーと組むことになります。
頼りになる黒人女性のキズは、ボッシュの復職に力を尽くしてくれたのでした。
チームプレーの大切さを再認識して大人になったボッシュ、かっての暴走ぶりは影を潜め、ストレートな警察官物になっています。
腐敗を一掃しようとする時代の流れにも乗っていて、アメリカでは大好評だったというのも、うなずけます。
娼婦の息子でベトナム帰り、組織に馴染まない、いぜんの独特な陰影がほとんどなくなったけど~確かに私立探偵はやりにくそうだったんで、一匹狼のようでも根っから警官だったんですね。

終決者とは、事件の捜査をクローズさせる人という意味ですね。
他のタイトルと間違えなくて良いかも。( この前の3作は「夜より暗き闇」「暗く聖なる夜」「天使と罪の街」というハードボイルドっぽい長いタイトルで区別がつきにくいのよ)
新たなDNA鑑定の証拠を手に、17年前の少女殺人事件を再捜査するボッシュとキズ。
少女の母は娘の部屋を当時そのままに、父は行方知れずでホームレスらしいという家庭崩壊した状況にあり、事件の痛みはまだ長く続いていた…いつものように目線を低く、今は子を持つ親としても共感を保ちながら、捜査するボッシュ。
当時の警察の捜査が不十分だったことを突き止め、警察内部の反発を食らいながらも、猟犬のごとき本能を発揮します。
まっすぐに事件解決へ向かうボッシュはやはりいいですね!

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「街の灯」

北村薫「街の灯」文春文庫

15歳のお嬢さんを主人公に、昭和初期の上流階級の世界を描くシリーズの一冊目。
2002年に書かれた作品「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」3作収録。

女子学習院に通う花村英子は社長令嬢。
本好きで、好奇心が強く、頭の回転が速い。
華族令嬢にも友達はいるが、それよりはだいぶ気楽な暮らしぶり~といっても当然のようにお出かけには振袖を着て「ごきげんよう」と挨拶しあい、運転手や女中頭のお供がなければ外出もままならない。
学校の送り迎えをする運転手に若い女性の別宮みつ子が雇われます。これは異例のことで、父の知り合いだったから、娘に少しは社会勉強をさせるための案内役と護衛にという気持ちもあってのこと。
ベッキーさんと呼んで、すっかり仲良くなり、一緒に小さな事件を解決していきます。

世間を知るクールで控えめなベッキーさんがやたらカッコイイんです。
壮士もお坊っちゃまも圧倒する文武両道、必殺・男装の麗人?運転手!
この段階では正体は不明で、事件の推理もけっこう少女の方が中心です。
優雅さ漂う暮らしぶりとちょっと懐かしいような銀座の風景などが楽しい。
レトロな魅力がありますが、実は5.15事件とか剣呑なことも起こっている時代なんですね。江戸川乱歩を良家の子女は読んではいけないというあたりも面白い…ま、そうでしょうねぇ。
2作目を先に読んでピンと来なかったんですが、こっちが先の方が良いですね。

北村さんをアップするの、このブログでは初めてかなぁ。
初期の物は8割方読んでると思います。血なまぐさい事件がなくて、素直な女の子がヒロインで、心安らぐ感じが貴重だったから~いいんですよね。
女3人の友情と闘病中の遅ればせの恋を描いた「ひとがた流し」はとても良かった!直木賞とるべきだったと思ってます。

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「私の男」

桜庭一樹「私の男」文藝春秋

第138回直木賞受賞作。
本屋の店頭に平積みになっているので、知っている方も多いことでしょう。
女性だって知ったのはいつだったかな…ライトノベルを一冊読んだことがあるきりだったので、化けたな~という。何年もたっていることを考えると…知性、繊細さ、未成熟な強さなど~やはり通じる所もありますけどね。

ねっとりした文体で危険な匂いをさせつつ、わかりやすいイメージも連ねて、引き込みます。
腐野花という(とんでもない名前!?の)ヒロインが、24で苦労知らずの青年と絵に描いたような結婚をしようとしている所から話は始まります。
ただし、新婦側の親族は養父一人だけ。
震災で家族をすべて亡くした9歳の時から、遠縁の若い男性・淳悟に引き取られて、2人だけで生きてきた花。
北の海で起きた暗い過去を捨て去ろうとしますが…
孤独な2人の運命的な結びつきが描かれます。

このタイトルでこのカバー絵、父娘の話というので、ちょっと引き気味でやっと読みました。
なるほど、期待させるような色っぽさや暗さも出しているけど~意外な展開で少しずつ空気をかき混ぜ、嫌悪感まで行かないようにしてあるような印象。
現実の中でもがき、破綻していく状況でも、一途な気持ちというのは切なさがありますね。
人が人を求める原点を感じさせます。
こういう人物像を魅力があるように書いちゃうのもいかがなものか、という気がしないでもありませんが…破滅的な人間の危険な魅力?
脇役に実在感があって、ちょっとした登場シーンも読ませます。
色々な要素を含みながら、こってりと力強い文学的な空間を構築、上手いこと書けています。
ラストがこの地点というのも、なかなか。

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「ウォッチメイカー」

ジェフリー・ディーヴァー「ウォッチメイカー」文藝春秋

昨年発行、リンカーン・ライムのシリーズも7作目。
このミスでも文春でも海外部門1位でした。なるほど~快作です。

犯行現場に古い時計を置いていく連続殺人犯…
4日間のスリリングな事件がスピーディに語られます。
初期作品ほどの張りつめた緊張感はないけれど(あそこまで怖いのもそう何度も読むの大変だしね)~どんどんページをめくり、鮮やかなどんでん返しの連続を楽しむ事が出来ます。

ニューヨーク市警の鑑識の専門家だったリンカーン・ライムは仕事現場の事故で大怪我、半身不随となりました。特異な才能のために再三要請を受けて捜査に協力、今では彼の家は警察の支部のようになっているのでした。
動けない彼の代わりに現場に出向いて、手足となり目となるのが美しい巡査アメリア・サックス。2人は恋人になっています。
今回は、警官だったアメリアの父の過去も明らかに。

今回初登場するのはカリフォルニアから来た尋問の専門家のキャサリン・ダンス。無意識の身振りや表情で嘘を言っているかどうか見抜くという面白い才能を磨いた人。子育て中の彼女は大人の女性で、わがままな天才・ライムとも若いアメリアとも違う魅力がありますね。
所々に911以後を感じさせる展開もありました。
次回作はキャサリンが主人公の由。

ジェフリー・ディーヴァーは1950年シカゴ郊外生まれ。
雑誌ライター、弁護士を経て、1990年から専業作家に。
リンカーン・ライムのシリーズは、97年の「ボーン・コレクター」(日本では2000年の発行)から「コフィン・ダンサー」「エンプティ・チェア」「石の猿」「12番目のカード」「魔術師」そして本作となります。

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「骨の島」

アーロン・エルキンズ「骨の島」早川書房

2005年発行のスケルトン探偵ギデオン・オリヴァー物。
未訳の一作目を含めて11作目だそうです。…そんなに読んだかなあ?(順不同ですが「暗い森」「古い骨」「遺骨」「呪い!」「断崖の骨」?「死者の心臓」?~内容覚えてませんが)
同じハヤカワの文庫でも当初はオレンジ色のミステリアスプレスというシリーズで発行されていた物から、選んで赤い背表紙で出版され直している所なので、ややこしいです。
これは新訳だったんですね。

事の起こりは1960年。
イタリアの貴族デ・グラツィア家の当主ドメニコは、跡継ぎが出来ないので姪に代理出産を依頼します。
時は流れて数十年後、跡継ぎは建築業で成功し事業を拡大しています。
ところがドメニコの孫息子が誘拐され、一方グラツィア家の島で白骨が発見されます。

ギデオンは友達のツアーに愛妻ジュリーと共に参加して、当地に来ていました。グラツィア家の遠縁にあたる友達と領地の島にある邸宅を訪れ、捜査に参加する事に。
ある程度予想はつきますが~イタリアの景色や食べ物、美しい邸宅、個性ある登場人物を堪能出来るので、満足感があります。

後書きによれば、アメリカでは珍しい本格物シリーズとのこと。
え、そうだったんだ…
コージーじゃないけど、安心して読めるシリーズって印象ですね。
確かにハードボイルドでもサイコサスペンスでもないしね…
原題はGood Blood,骨ばかりじゃないのですね~。

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「チーム・バチスタの栄光」

海堂尊「チーム・バチスタの栄光」宝島社

2005年の第4回このミス小説大賞受賞作。
最近映画化もされてるので、ご存じの方も多いのでは。
阿部ちゃん主演と聞いて最初は桐生医師かと思ってしまった…それじゃ主役じゃないもんね。探偵役の設定はブサイクなのでつい。

バチスタとは平たく言えば~肥大した心臓を切り取って小さくする手術で、発明者の名前が通称となっているんだそうで。
東城大学医学部付属病院では、アメリカ帰りの天才外科医・桐生恭一を中心に、バチスタ手術のためのチームを結成。驚異の成功率を誇っていました。
ところが3例続いての死亡という異常事態に。
たまたまなのか、医療過誤か、悪意によるものか…?
高階病院長は神経内科の万年講師・田口に予備調査を依頼します。

田口公平は、不定愁訴外来という(愚痴外来と噂される)暇な部署で満足している~のんびりした男。
外科は門外漢なので、素人同然に説明を聞いていく事になります。
導入としては上手いが、結局手術中の事なら解明出来ないのでは?まして読者には解決の予想の立てようがないのでは~?
と思いつつ、読み進むと…

後半は、全く違うタイプの探偵役が投入され、事態を混乱させつつ、面白く読ませていくのです。
医療過誤を調査する組織を立ち上げようとしている厚労省の窓際役人・白鳥、才気はあるが性格も見た目も良くないという~こいつがわざと(というか自然に)人を怒らせて真相を暴いていきます。
特殊な才能があるという点ではホームズタイプになるのかな。
事件の解決は、手段はともかく、機会や動機などはだんだんと読者にも推理出来ます。
大学病院という組織内のいかにもありそうな対立や力関係あれこれや天才外科医と名コンビの部下の手術ぶりなど、こういった話に読者が期待する物もしっかり用意されています。
なるほどね~飽きさせずにスイスイ読ませるのがデビュー作にして大ヒットも納得。

映画だと田口の役を女性にして、竹内…う~ん、まあ…理解は出来るけどね。
登場人物を2回尋問して、別な面を見せるというのは映画にもしやすいでしょうね。

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「病める狐」

ミネット・ウォルターズ「病める狐」東京創元社

CWA最優秀長編賞受賞作。
2002年の発表、こちらでは昨07年の発行。
ミネット・ウォルターズはお気に入りの作家ですが~ブログで取り上げるのは初めてかも。

ドーセットの寒村シェンステッドでは、不穏な空気が渦巻いていました。
狐は次々に罠にかかり、ある子供は虐待され、深夜に嫌がらせの電話がかかり、移動生活者(トラヴェラー)達が地主のいない空き地を占拠し、権利を主張する…
トラヴェラーのリーダーはフォックス・イーヴルを名乗る。その正体は?

シェンステッドの名家ロキャー-フォックス家の問題多い子供達レオとエリザベスはとうに家を出て音信不通になっていました。
当主ジェイムズの妻の不慮の死、犯人と疑われた老ジェイムズは次第に追いつめられていきます。
前半の重苦しさを跳ね返すような颯爽としたヒロインが登場。
ジェイムズを守ろうとする弁護士マークが探し当てたのは女性軍人ナンシー。勇気百倍のジェイムズと3人で、不審な出来事に立ち向かいます。

個性豊かな登場人物が描き分けられ、さまざまな愚かさや異常さがオンパレード。善意でも行き違ってしまった辛さもあるけれども~人の交流の暖かさも希望もある…
ぐいぐい食い込んでくるシャープな現実味。
辛口だがやや薄味かと思ったが、う~ん、さすがウォルターズ!
「鉄の枷」と「蛇の形」の中間ぐらいの重さかな。
視点が変わるのがややこしいので最初少し入りにくいが、実はいかにも英国的ミステリらしい展開なのでは。
視点が変わるのもクリスティがよくやっていたことで…クリスティが読んだら高く評価しそうな気がします。

ミネット・ウォルターズは49年生まれ、92年「氷の家」でミステリ作家デビュー。「女彫刻家」でMWA、「鉄の枷」と「蛇の形」でもCWA賞最優秀長編賞を受賞してます。
巻末を見ると翻訳されていないのもあるんですね……地味めなのか?
この前の作品「蛇の形」は傑作だけど~人間の醜さをえぐり過ぎるほどで、万人向きではないからかな…?

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「れんげ野原のまんなかで」

森谷明子「れんげ野原のまんなかで」東京創元社

「千年の黙」でデビューし、時代ミステリの印象が強い森谷さんの現代物。
受賞後第一作だったんですね。
秋庭という市の端っこにある図書館が舞台です。

図書館司書の若い女性・文子が博識な上司の能瀬らと、図書館をめぐって起こる小さな謎を解き明かしていきます。
子供達が図書館に忍び込もうとするわけは?
ほとんど動かない洋書の本棚で作られた暗号とは?
地元の大地主が寄贈した場所に建てられた図書館なので、土地柄に秘められた謎もあります。

風邪で寝ている時に読むのにピッタリでした。ちょっと北村さんの初期作品ぽいかな?
季語をあしらった章タイトルが森谷さんらしい。
本好き、図書館好きなら思わず、にっこりするような話題もあって~かなり好印象。

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「オーデュボンの祈り」

伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」新潮社

私にとっては「死神の精度」「終末のフール」と遡って3冊目の伊坂幸太郎作品です。
作者は71年生まれ、95年東北大卒、SEに。
96年、サントリーミステリー大賞佳作。
本作品が第五回新潮ミステリー倶楽部賞受賞で、初の単行本に。

主人公・伊藤は、目を痛めたために、5年勤めたシステムエンジニアの仕事を辞めます。
二ヶ月後には衝動的にコンビニ強盗を起こすダメ男っぷりですが~現れた警官は中学の同窓で非常にたちの悪い男(生まれつき残虐で、これが権力を持ったという最悪のパターン)
伊藤は事故ったパトカーから飛び降りて逃げ、なぜか目が覚めた時には謎の土地・荻島にいたのです。

百年以上、鎖国のように存在を知られずに来た島だというんですね。
異世界ファンタジー…というわけでもありませんが…
「他の誰も書かないような作品を書こうという意気込みが感じられる」という選評には、なるほどと思いました。

たった一人だけ外界とボートで行き来している老人もいて、少しは情報も入り、荻島の人々は一見普通に暮らしていますが、どこかがずれている。
何でも知っている予言者のような喋る案山子・優吾の存在、どこか謎めいた住人達。
百年以上もよそ者は来なかったのに、伊藤の前にも何だか嫌な奴が一人島に来ているんです。それは何故か?
案山子に会った伊藤は、かっての恋人に葉書を出すように言われて…

この島の中で起きている事件とは?そして伊藤は元の世界へ戻れるのか?
奇想天外な設定ですが、人間像は意外にリアリティがあります。
さすがに初期の作品で、若いなあ。

オーデュボンは鳥の写真を撮影した写真家の名前。
絶滅種の鳥が生き延びるのを祈る…
そのイメージは良いんですが、何だろう…伊藤という青年が空っぽなような。鳥に興味があった様子もないし。仕事や恋人の断片的な事以外にも、もう少し自分自身の思い出とか、この長さだったらあってもいいのでは。
誰にでも感情移入出来るように、ということなんでしょうか。
奇抜な設定と展開を書き込むのに重点を置いているのかな~。

本人にとっては、好きなものは入れたい、思う存分書きたいという思い入れがあるのでしょう。
読む側にとっては、モチーフが響き合う構成になっていないと、唐突に感じて何だかな?と首を捻る事になる~その辺が、後の作品だと変わってきます。
自分が何を書くのが得意か、という見極めが出来ていったのが感じられますね。

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「略奪」

アーロン・エルキンズ「略奪」講談社

美術探偵リヴィアの一作目という事です。
第二次大戦中にナチスによって強奪された著名な絵画をめぐるサスペンス。
スケルトン探偵が有名なエルキンズですが、絵画物ではクリス・ノーグレンのシリーズが3作あります。
こちらのリヴィアは中年男の奮起がテーマになっているようです。

元学芸員のリヴィアは転職を繰り返し40になっても腰が定まらず、元妻に愛想を尽かされた身。
親しくなった質屋の老人シメオンの元に持ち込まれたベラスケスの絵に大興奮!
ところが美術館と連絡を取っている間にシメオンが襲われ、殺されてしまい、絵の来歴を辿ってヨーロッパを飛び回ります。
シメオンの姪で元妻とはタイプの違う生き生きした女性も登場、ほどほどに面白い。
アクション・シーンも多く、ちょっと「ダヴィンチ・コード」ぽい展開~多分、この方が早いと思いますが。(再読ですが、ストーリーはほとんど忘れてました)
ものすごく素晴らしいとか、新しさがあるというのではないけれど、絵画への愛が基調になっていて、気分転換には安心して読めるレベル。
ロシア・マフィアに有名絵画というと、エロイカと少佐が絡んでもいいような話だなあ。

エルキンズを未読の方なら、初期の「古い骨」「暗い森」をオススメします。
こちらはちょっと他にない味わいですから。

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「幸運は誰に?」

カール・ハイアセン「幸運は誰に?」(上下)扶桑社ミステリー

このミスなどで名前を見かけたカール・ハイアセンの作品を読んでみました。

ジョレイン・ラックスは動物病院に勤める黒人女性、美人でタフだが男運には恵まれず、男と別れた年齢の数字でロトくじを申し込み続けたら~これが大当たり!
ところが、同じ数字を書いたのがたちの悪い2人組のチンピラで、半分ずつになるところを全額を我が物にして当然と根拠なく考えてジョレインを襲ってくる。
当たりくじの取材に来た新聞記者トムがジョレインと意気投合して、対抗手段をこうずるが…?!

ジョレインの住む町はいささかインチキな宗教がかった客寄せで有名で、宣伝に協力を求められたジョレインは可愛がっている亀をその店に預けるが、その亀に奇跡が…?
トムが別れようとしている妻はミュージカル版の「羊たちの沈黙」に出ているとか、ちょっと笑えるくすぐりもたくさん。
悪役はちゃんとした家庭に育ったのに悪くなってしまった白人優越主義者というサイテー男。言動が気色悪いけど~言い訳のきかないアホでまぬけなアメリカ人っぷりが痛烈に書かれてます。
奇人変人大集合のはちゃめちゃなコメディーです。
イヴァノビヴィッチより皮肉だけど~キャラがぶっ飛ぶ所がちょっと似てるかな。頼りになる脇役も出てくるし。

作者は53年マイアミ生まれ。
マイアミ・ヘラルド紙の辛口コラムで知られ、自然保護運動にも力を入れているそうです。
それでヒロインは動物好きで、自然を守ろうとするんですね。
トムは作者の分身&願望なのか?新聞社の中間管理職の情けなさや意味のない賞など、妙な実感こもってます。
97年の作品で、こちらでは05年発行。

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「とっても不幸な幸運」

畠中恵「とっても不幸な幸運」双葉社

時代劇の「しゃばけ」シリーズで人気の作者の短編連作。
現代物です。
新宿の古いビルの地下にある「酒場」という名の酒場。商売気のない強面の店長となぜか入り浸りの常連ばかりで成り立っているのでした。
30代でやもめの店長が義理の娘を引き取ることになったというので、似合わない家庭生活をちゃんと過ごせるのか~!?と危ぶむ常連達。
中学生の娘のり子が100円ショップで買った「とっても不幸な幸運」という缶を開けた時…?

現代物も書けるのねと思わせます。
ちょっとした謎を解きながら明かされる、それぞれの人生…
軽い味わいですが、不幸な幸運てのは~確かにあるかもしれないですよね。

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「水底の骨」

アーロン・エルキンズ「水底の骨」早川書房

懐かしい気がするアーロン・エルキンズ。
スケルトン探偵ギデオンのシリーズの最新作です。
初期の物は大好きだったのだが、途中から熱が入らなくなった…のは、何故だったんでしょう?
これはなかなか佳作です。

ハワイで成功した牧場主一家で起きた謎の死と失踪。
スケルトン探偵の異名をとる文化人類学者(でいいんだっけ?)ギデオンは、ハワイ出身の親友ジョンと休暇を過ごしに訪れた先で、水没した飛行機から発見された骨を鑑定する事になります。
北欧系のハワイ移民というのが面白く、長老格の伯母のかくしゃくとした様子が存在感あって良かったです。
大富豪と癖のあるその一族、過去の謎、美しい風景と変わった料理、ジョンとの捜査に愛妻ジュリーも途中で合流し、色んな要素がほどほどに組み合わされ、なかなか上手くできています。
後味もよくて、読みやすい。

これの前の作品を読んだのかどうか、別シリーズのクリス・ノーグレンものはどうなっているのか?さだかではありません~そのうち、調べておきましょう。

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「名もなき毒」

宮部みゆき「名もなき毒」幻冬舎

「誰か」の続編~事件は違うので、独立して読めます。
1年ぐらい前の話題作かな。

財閥の娘と結婚した杉村三郎が主人公。
いたって欲のない、人が良いだけの若い父親という~探偵役としては異色の設定。
若く美しい金持ちの妻を持つ人も羨む境遇だが、会社は継がないと決まっているのに金目当てという誤解から非難も浴び、親には勘当される始末~嫉妬の視線にも晒されて実は気苦労の日々なのでした。
この普通の男が妙に事件を呼ぶ?日常に潜む悪を描くシリーズのようです。

バイトに雇った娘の異常な行動を調べているうちに、コンビニでの無差別殺人の被害者一家と知り合い、二つの事件に対応する羽目に。
クレーマーとでもいうのか、この娘の嫌がらせや凝りなさかげんには閉口します。
名もなき毒というのは、飲み物に入れられた毒と、ハウスシックの原因になる土壌汚染などの毒、そして人の心に中にあり周りを害する毒…という三つの毒のようです。
ハウスシックの症状は、不定愁訴と言われたり他の病名がついたりしやすいような、ごくありがちなものなので~え、私の症状も?と考えてしまったりして。
穏やかなタッチで淡々と描かれますが、すぐそこにあるようでリアル~!で怖い…
リアルすぎて後味はさっぱりはしませんが、読んだ甲斐はありました。

主人公とは違って?プロ意識の感じられるルポライターや、新入りのバイトになるゴンちゃんなど、新しいキャラが新鮮。
主人公はだんだん探偵になりそうな感じですが、どうでしょう~見るからに幸せそうな人って、犯人や被害者の反発を買いそう?事件にも向き不向きがありそうですね!?

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「紙の迷宮」

デイヴィッド・リス「紙の迷宮」ハヤカワ・ミステリ文庫

これ一時話題になっていて、読んだつもりになっていてすっかり忘れていたわ~、と思って読み始めたら~実は読んだのを忘れていた、という…(爆)
2001年アメリカ探偵作家 クラブ最優秀新人賞を受賞した作品でした。

18世紀初めのイギリス。
元拳闘家の主人公ベン・ウィーヴァーが捜し物を手伝う探偵業の走りのような仕事を始め、やがて金融界の闇に立ち向かいます。
まだ警察もない時代、盗品を取り返す仕事をして英雄と目されているのが実は盗賊の大本締めという有様。これは実在人物です。
主人公は堅物で冷たい父に反発して家出、若い頃は非行を重ね、裏事情にも通じているという設定。大本締めのライバルとなっていきます。

落ちぶれた貴族のバルフアの訪問を受け、バルフアの父が馬車に轢かれた事件はウィーヴァーの父の死とも絡んだ殺人事件だと言われます。
久々に家族の元を訪れ、成功した株屋だった父の関わった南海会社の株偽造事件を調べる事に。
気の良い外科医の親友と共に進める調査は、(何しろ探偵小説もないわけだから)何のノウハウもないので、なかなか進みませんが~
ユダヤ人社会の様子や当時のカフェや仮装パーティーなど、歴史好きなら興味が尽きません。
時代的には「トム・ジョーンズの冒険」あたりと近いですね。そのちょっと前になります~。

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「殺しはノンカロリー」

コリン・ホルト・ソーヤー「殺しはノンカロリー」創元推理文庫

理想的な老人ホーム「海の上のカムデン」に暮らす元気な老婦人2人組が探偵するシリーズ。4作目かな…?
小柄で辛辣なアンジェラと、巨体でおおようなキャレドニアは共に提督の未亡人。キャレドニアの感化で、わがままなアンジェラがだいぶ丸くなってます。

今回は、滞在型のエステサロン(美容スパというらしい)を経営する友達に頼まれ、客として潜り込んで事件の捜査をすることに。
グルメで大の運動嫌いな2人が何とか逃げようとしつつ、悪戦苦闘。
でもトランポリンが楽しそうだったり~表紙のイラストにもなってます。
いつもよりも容疑者の年齢層が少し若く、美貌だったりするのがみそ?
いつものハンサムな警部に心配かけつつも~仲良く解決。
このシリーズはかなり安定してますね。
作者本人も、高級な老人ホームで悠々自適の身だったらしいんです~。

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「祝宴」

ディック・フランシス、フェリックス・フランシス「祝宴」早川書房

「再起」で復活したフランシス、今度は息子のフェリックスとの共著という形での新作です。
子供の頃から父と母が自作について語り合うのを聞いて暮らし、何年か前から一家全体のマネージャーという仕事をこなしてきたんだそうです。
家庭が小説工房だったんですねえ。

さて今回の主人公はマックス・モアトン。
若い時にミシュランの一つ星を史上最年少で受けたという栄誉もある、若手のシェフ。
ニューマーケット競馬場の近くに店を出しています。

ある日、食中毒が発生、店は閉鎖の危機に見舞われます。
翌日、競馬場で豪華なランチを出していた時に、近くの座席が爆破され、テロ行為と思われたのでしたが…
食中毒の方は身に覚えのないインゲンの害(生だと毒なんだそうです)が報告され、何者かが混入したかと自ら調査に乗り出します。
雇っている人間が東欧からの難民など多彩なのは~時代ですね。

主人公の外見ははっきりした描写がないんですが、ハンサムなんでしょう!?
ヴィオラ奏者の美女も登場、最初は食中毒で訴えられるという出会いですが、軽口をたたき合いながら順調に恋が進展します。
まだ30で人生はこれからが本番という空気、全体に若々しく、読者を楽しませようというムードですね。

家族が競馬関係で本人は違うというのは、フェリックスの視点に合わせているのかも。
危険を察知してからの行動がやや無防備なような気もするが、探偵の専門家ではないし、あのシッド・ハレーですら隙があったんですからねえ(^^;
特別な傑作ではないけれど、水準は行っています。
次回作も楽しみに待てそうです。

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「飛ぶのがフライ」

ジル・チャーチル「飛ぶのがフライ」創元推理文庫

主婦探偵ジェーンのシリーズ9冊目。
サマーキャンプの候補地の下見に、隣の週のキャンプ地にやってきたジェーン。
出来たばかりのキャンプ地の様子がなかなか変わっていて、そこの経営者や視察仲間の家族も含め個性的。
人里離れた緑深い土地に、キャンプらしさも醸し出しつつ~お風呂などの設備は近代的な、立派な建物がどーんと建っているんですね。
理想を描いているのか、現実にこういう所があるのか…?
ひととき家事を離れて、経営者が実演してくれる野外料理を楽しめばいいと思っていたら~ジェーンは死体を発見してしまう!のはお約束(^^;
今回は家族や恋人とは離れていて、ジェーンとは対照的にきちんとした親友シェリイと掛け合い漫才が続きます。

ジル・チャーチルの作品は他のシリーズの方が出ていて、これは5年ぶり。1年前に出ていたんですけどね~やっと読みました。
翻訳の浅羽莢子さんが途中で亡くなってしまわれたのですね…他にも色々読ませて頂いていました。歯切れの良い文章で世界に引き込んでくれて、本当にお世話になりました。知識が豊富で掛詞などの翻訳も巧みな方だったと思います。惜しいことでした。

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「夏期限定トロピカルパフェ事件」

米澤穂信「夏期限定トロピカルパフェ事件」創元推理文庫

「春期限定いちごタルト事件」の続編です。
小鳩君と小山内さんの小市民を目指す高校生活も2年目の夏に。

過去を知る登場人物との葛藤があり、次第に本性が出てきます。
えらく大人しそうな?名前で、見た目も小柄だったりする2人、実は復讐が生き甲斐の危険な娘と探偵好きの生意気な男の子なんですね。
学校生活で復讐を企むようなことをされるというのも剣呑だが…
探偵好きの本性は生かさないと無駄なんじゃないですかね?
日常的な謎からだんだんと事件へと発展、そして「えっ、ここで終わるの!?」というダークなラストへ。

スイーツはやたらと美味しそうで、どこの町がモデルなんだろうと行ってみたくなります。
作者の理想なんだろうか?
小鳩君は別に甘い物好きじゃないんだと言いつつ、小山内さんに付き合っているんだけど、作者が甘い物好きのせいか、説得力ありませんよ。
しかし~秋を書かないわけじゃないでしょうね?待ってますよ!
秋季限定マロンなんとか…とか?

20日から続けて感想をアップして10冊目!
ようやく12月分が終わりかけてます~。

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