「街の灯」

北村薫「街の灯」文春文庫

15歳のお嬢さんを主人公に、昭和初期の上流階級の世界を描くシリーズの一冊目。
2002年に書かれた作品「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」3作収録。

女子学習院に通う花村英子は社長令嬢。
本好きで、好奇心が強く、頭の回転が速い。
華族令嬢にも友達はいるが、それよりはだいぶ気楽な暮らしぶり~といっても当然のようにお出かけには振袖を着て「ごきげんよう」と挨拶しあい、運転手や女中頭のお供がなければ外出もままならない。
学校の送り迎えをする運転手に若い女性の別宮みつ子が雇われます。これは異例のことで、父の知り合いだったから、娘に少しは社会勉強をさせるための案内役と護衛にという気持ちもあってのこと。
ベッキーさんと呼んで、すっかり仲良くなり、一緒に小さな事件を解決していきます。

世間を知るクールで控えめなベッキーさんがやたらカッコイイんです。
壮士もお坊っちゃまも圧倒する文武両道、必殺・男装の麗人?運転手!
この段階では正体は不明で、事件の推理もけっこう少女の方が中心です。
優雅さ漂う暮らしぶりとちょっと懐かしいような銀座の風景などが楽しい。
レトロな魅力がありますが、実は5.15事件とか剣呑なことも起こっている時代なんですね。江戸川乱歩を良家の子女は読んではいけないというあたりも面白い…ま、そうでしょうねぇ。
2作目を先に読んでピンと来なかったんですが、こっちが先の方が良いですね。

北村さんをアップするの、このブログでは初めてかなぁ。
初期の物は8割方読んでると思います。血なまぐさい事件がなくて、素直な女の子がヒロインで、心安らぐ感じが貴重だったから~いいんですよね。
女3人の友情と闘病中の遅ればせの恋を描いた「ひとがた流し」はとても良かった!直木賞とるべきだったと思ってます。

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「時の彼方の再会」

ダイアナ・ガバルドン「時の彼方の再会」(ヴィレッジブックス)ソニーマガジンズ

ガバルドンの「アウトランダー」シリーズの3作目。
「時の旅人クレア」「ジェイミーの墓標」についで、これも3冊あります。既に9冊になるわけですね。
ドラマチックで良く書き込んであり、面白いですよ。

シリーズの発端は、第二次大戦終結直後に、夫フランクの郷里スコットランドに来た若妻クレアが、ストーンサークルで何故か18世紀にタイムスリップしてしまう。
そこで出会った青年ジェイミーと恋に落ちるというもので、イングランド人を憎むスコットランド人に嫌われたり、従軍看護婦だったので治療師として活躍するが魔女と疑われたりとさんざんな目に遭いながらも~愛を深めていきます。

[すぐ読もうと思っている方は下はさらっと斜め読みにしといて下さいね。
あまり詳しい事までネタばれはしないように書いてますけども]

続く「ジェイミーの墓標」はパリでの活躍やジャコバイトの反乱、そして18世紀から戻るに至ったいきさつが語られ、現代で夫フランクの死の後に、娘ブリアナを連れてスコットランドへ。
ブリアナに実の父ジェイミーの事を話し(最初はもちろん荒唐無稽な話として信じて貰えないのですが)、研究者のロジャーの協力を得て、200年前のジェイミーの消息調べが始まります。

さてこの「時の彼方の再会」は、タイトルで、まあジェイミーの元へ戻るのね?とわかりますよね。
でも一筋縄ではいきません~。
互いに死んだと思い、生きているとしても二度と会えないと思い込んで苦しんでいるクレアとジェイミーのそれぞれの生活がまず描かれます。

現代のアメリカで子供を生み、医者になる勉強もしつつ暮らしたクレアの日々。 実体験を込めているのか、忙しい子育てがえらく生々しいです。(夫のフランクとはあまり上手くいきませんが~フランクとしては無理もない?)
戦乱を生き延びたものの謀反人として捕えられたジェイミーの苦闘の年月と、それを辿るクレア達が描かれます。

そして、ついに18世紀に戻ったクレア。
エジンバラで働くジェイミーと感動の再会!
大柄で存在感のある心のあたたかいジェイミーは健在で、よく似た娘が無事に育っている事に感動してくれます。
しかし、20年の歳月は重く、ジェイミーが置かれた立場もまた新たな危険をはらんでいました。
ありとあらゆる苦しみが襲いかかるに近いですね~でも、手を携えて危機を乗り切り、時には体当たりでケンカする2人は変わりません。多彩な人物が登場して盛り上げてくれます。
ジェイミーの甥、ヤング・イアンが何者かの船にさらわれ、クレア達は救出のために大海原へと船出します。何と、ジャマイカまで…!
苦難の航海、疫病、意外な再会、エキゾチックな南海の自然と現地の人々、むざんな奴隷貿易と奴隷の反乱。
そして、時を越える意味とは……!?
まだまだ続くシリーズです。

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「天璋院篤姫」下巻

宮尾登美子「天璋院篤姫」(下)講談社

大河ドラマの原作、後半です。
御台所にはおさまったものの、将軍である夫は身体が弱く、たまのお渡りをただ待つしかない日々。
それでも篤姫には夫婦としての情がわいていきます。
ハリスに通商条約を迫られる中、夫・家定の急死。
それも将軍の死はしばらく伏せられる習慣で、既に亡くなっているのも知らされず、病と聞いても看病に行く事すら出来なかったのは、無念だったでしょう。そういった心の動きをぐいぐい描き込んで読ませてくれます。

次の将軍となった家茂はまだ少年で、いぜんから本丸に住んでいたので馴染みがあり、篤姫を母上と立ててくれます。
しかし、和宮降嫁で京都と江戸それぞれの女中達が対立、大奥を揺るがす騒動となります。
和宮は4年の結婚生活で同居は2年6ヶ月、これでも篤姫よりは少し長いんですね。

10歳しか違わない和宮とは、江戸城明け渡しに際して、力を合わせて奔走することになります。
晩年は、共に江戸の町見物もしたという~微笑ましいエピソードも。
国政の大変動期を内側から描いて迫力があり、面白かったです。

徳川家は一大名となり、後には公爵となります。篤姫がさっさと薩摩の迎えに応じて城を捨てていたら、扱いはもっと悪かったかも知れませんね。
跡取りを江戸屋敷で育て上げた後半生はけっこう充実していたでしょう。手狭になった暮らしも今泉で育った頃を思い出させて、大きな大名家で生まれたお姫様よりもずっと適応しやすかったのでは。
尊敬された一生だったという事で、何だかほっとしました。

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「ジェイミーの墓標」

ダイアナ・ガバルドン「ジェイミーの墓標」(ヴィレッジブックス)ソニー・マガジンズ

ロマンティック・アドヴェンチャー大作「アウトランダー」シリーズの2作目。
1作目はブログを始めて間もない頃に紹介したんですが、それっきりになってたんですね。再読してみました。
第二次大戦終結直後、スコットランドを夫と旅行中に、ストーンサークルからタイムスリップしたクレアが、18世紀の若者ジェイミーと愛し合う波乱の物語です。
ジャンル的にはファンタジーですかね…歴史物の醍醐味があります。
作者は長年大学で教えた人で、細部までよく書き込んであり、臨場感たっぷり。

200年前、イングランドはカトリックの王を追放し、娘夫婦メアリとウィリアムのハノーヴァー王朝になっている時代。
スコットランドはカトリックの王を戴いて、反乱を起こそうと動きます。
クレアとジェイミーはスコットランドを出てパリで暮らし、悲惨な敗戦になるとわかっている戦闘に巻き込まれるのを食い止めようとするが?!
運命は…
現代に戻って娘を育てたクレアの回想という衝撃の展開!?まだまだ続くシリーズです。

↓以下、ややネタばれになりますので、これからすぐ読もうとしている方はご注意!

貿易商の叔父の元で暮らすクレアとジェイミーは、宿敵が生きていた事を知り、動揺します。
クレアは宮廷に出入りしつつ、治療師としても活躍。
ルイ15世の宮廷やワインの輸入商売、怪しげな薬草医など、歴史物の面白さと、スリルに満ちた恋愛描写がたっぷり味わえます。
ジャコバイトの乱が起きるのを防ごうと動いて、いったんはハイランドに戻って平和に暮らしますが、事態は急転!

反乱軍に加わるしかなくなったジェイミー達の軍勢は、戦争の実際を知らない指揮官ボニー・プリンス・チャーリーに振り回されます。
イングランド軍に追いつめられた時にイングランド女性の捕虜を装い、ジェイミー達を逃がすクレア。
預けられた先は何とどっちの味方かわからない曲者・サンドリンガム侯爵の館。パリで親しくなったメアリとアレックスとの思いがけない再会…
現代の夫の先祖にあたる一族と関わることで、歴史を改変してしまうのかと悩むことになります。
クレアが現代に戻されるいきさつ、全てを話した理由とは!?怒濤の展開です。

「アウトランダー」シリーズは本国では6作出ている模様。
こちらでは文庫で各3冊ずつ~邦訳タイトルでは「時の旅人クレア」「ジェイミーの墓標」「時の彼方の再会」「妖精の丘にふたたび」と続いているようです。
雰囲気はゴロン夫妻の「アンジェリク」が一番近いかな~。
面白いです!

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「コキュ伯爵夫人の艶事」

藤本ひとみ「コキュ伯爵夫人の艶事」新潮社

フランスを舞台にした四つの短編で構成されています。
「コキュ伯爵夫人の艶事」は1682年、
「令嬢アイセの秘事」は1722年、
「ダンフェル夫人の断頭台」は1792年、
「農夫ジャックの幸福」は1794年、
と移り変わっていく時代背景に絡ませながら、個人の幸福と意外な運命を描きます。

当時のフランスでは、貴族の子供はすぐに里子に出されて親の愛を知らずに育ち、特に女の子は修道院に入れられて、親の決めた結婚までは世間の風に当てない習慣でした。
結婚後は急に、夫の浮気は当たり前な退廃的な社交界の荒波に投げ出されるわけで、女性も恋愛出来ないわけではないのですが~男性のようにはいかないあたりが微妙。
年代や階級によっても違ってくることで、そのあたりの変遷を巧みに取り入れながら、面白い話に仕立てています。

1994年から95年にかけて発表されたもの。
18世紀を中心にしてフランスを舞台にした小説を書き続けてきた手練れぶりを見せる作品群。
「貴腐」も似た系統の小説集ですが、あちらはちょっと~後味が良くなかった。(宮廷での恋愛遊戯やサド公爵に興味があれば、読んでも良いと思いますが)

こちらの後味が良いのは、最後の「農夫ジャックの幸福」が効いているんですね。
一代で農場を広げた頑固な働き者の老人 …だが、彼の幸福とは?
人生は何だったのか振り返りかける時、革命も末期になって思いがけない出会いがあり…ぐっと来る話になっています。

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「悪女の物語」

藤本ひとみ「悪女の物語」中央公論新社

小説ではなく歴史書というか~人物に焦点を当てた本です。
マリー・アントワネットの娘マリー・テレーズと、16世紀後半を生きたマルゴ王妃の2人を取り上げ、丁寧に人生を追っています。
小説と違って冷静な筆致で、時には自身の述懐もちらり。
2000年に婦人公論に連載していた物。

マリー・アントワネットの娘というと、王妃のふくらんだスカートにしがみついて「お母さまぁ!」と言っているイメージしかない人が多いのでは。
牢獄から家族がだんだん移されたり処刑されたりでいなくなっていった後に一人残されていたそうで、少女の運命としては余りに苛酷です。革命が終わってから帰国、従兄と結婚し、一瞬だけ王妃にもなるという数奇な運命には驚きました。
多分事実としてどっかで聞いた事はあったんだろうけど~印象に残ってませんでした。
反動の起きている時代にギロチンに多くの人を送り込む旗頭となっていたとは。厳格な顔つきで、一度も笑った事がなかったとか。
怖いけど、こういう人を悪女っていうのかなあ?
その点は作者も~悪女とされがちな人、という同情的な捉え方です。

マルゴも性格悪いというよりは時代に翻弄された感じです。
男を虜にするという点では、マリー・テレーズよりも悪女の名にふさわしいような気がしますが。
動乱の時代にカトリーヌ・メディシスの娘として生まれたのが運の尽き?
19歳で敵方だった恋人と引き裂かれ、アンリ・ド・ナヴァール(後のアンリ4世)との政略結婚と、聖バルテルミーの虐殺が同時期に起こるという大変な目に遭います。
映画の「王妃マルゴ」で大体の様子は知っていましたが~王妃になったもののその後はナレーションで、幽閉されて生涯を終わるみたいな印象だったので、それだけではないと知ってちょっとほっとしました。
夫とは疎遠で名ばかりの王妃だったわけですが、幽閉先でも監視者を籠絡する魅力があったのなら、まあそれなりに幸福も味わったのでは。
兄達との関係まで噂され、淫乱といわれてますが、いくら何でも普通これだけ次々に恋人出来ないでしょう。強迫的だったのか?よほど恋愛体質だったんですね。
61歳までの生涯に名前が解っているだけでも24人以上いて、亡くなったのも恋人の腕の中だったとか…色気たっぷりの美女だったってことですね。

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「HAPPY AGE」

吉野朔美「HAPPY AGE」集英社

先日、押し入れを捜索中に出てきたコミックスの一つです。
これ、大好きだったんですよ~!

1926年のニューヨークを舞台に、繊細なペンタッチで描く、小粋でお洒落で、ちょっと不安定な~都会の若者達のお話。
新聞社のカメラマンで人の良い、赤毛のオーガスタスが主人公。

一章目の「キャバレーN.Y.」では、撃たれて入院中のギャングのボスの写真を撮りに行き、その情婦と目される気の強い少女カルラと出会います。
20年代のボブカットと、すとんとしたドレスが可愛い。
二章目の「10セント・ダンス」というのは、10セントでお客と踊るダンサーの仕事。半ばホストのようなもんですね。
仕事が少ないオーガスタスが上役のサーにバイトを紹介されて、ダンサーの仕事をしに出かけます。
そこで再会したのは、不思議な魅力を持つ中性的な美少年アレックス。
頻発する放火事件の現場にたびたび居合わせる彼は、亡命したロシア貴族で、カルラと同じく孤児の身の上でした。

昭和59年の連載、コミックスは1985年発行…つまり翌年ですね。
この間の「銀流砂宮殿」と同じ年!同じ棚にあったわけだわ~昭和48年デビューの文月さんとはキャリア違いますが。
吉野さんは昭和55年にデビューしてるので、まだ5年目。

ライザ・ミネリ主演の72年の映画「キャバレー」がベルリンの1930年頃の話でした。ヒロインの髪型が似ています。
最近だったら「シカゴ」の方がわかりいいかな?
これも元は「キャバレー」と同じ頃の大ヒットミュージカル、同じボブ・フォッシーの振り付けです。
ダンスの方は確か大スターのルドルフ・ヴァレンチノが若い頃やっていた商売です。
バレエダンサーのルドルフ・ヌレエフが主演した映画「バレンチノ」(77年)もありました。
どっちも見に行きましたよ~懐かしいです。
映画のパンフが「スティング」の手前に置いてありました!「スティング」は1936年の設定なのかな。

他に近いのはボウイ主演の「ジャスト・ア・ジゴロ」
これは風邪をひいて見に行けなかったんですが、友達がパンフをお見舞いにプレゼントしてくれましたconfident

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「信長の棺」

加藤廣「信長の棺」日本経済新聞社

「信長公記」を書いた太田信秀(後の牛一)を主人公に、本能寺の変の謎を解き明かしていく物語。
信長に事務方として仕えていた牛一は、本能寺の変の直前に信長からひそかにある物を託されたという設定。
凶報に衝撃を受けながら、逃げまどう家臣達の中でいかに行動するべきか考える緊迫した描写が面白い。

信長に傾倒する彼は、隠居後も一人で信長記を書き続けていました。
秀吉の正式な依頼で、それを秀吉の意図に添うように書き直していかなければならなくなります。
信長の残酷な面はあまり書きたくなかった牛一。
秀吉は自分の残酷な面を目立たせないために、信長のそういった部分は書かせたがるという~さもありなん?
秀吉には見せない部分をひそかに書いていたり、一部が盗み出されて流布したり、かくて色々なバージョンが出回るわけです。

子供の頃は秀吉が好きだった事を思い出しました。残酷な面は子供向きの「太閤記」ではほとんど書かれていませんからね…
信長は好きというのではないけど~カッコ良くあって欲しいキャラかな?

牛一は信長の遺体がどこにあるのか見つけてちゃんと葬りたいという気持ちも抱きながら、ひそかに光秀謀反の真相も探り続けるのです。
信長の遺体を廻る謎があるとは知りませんでした。
秀吉が探し回っていたが見つからなかったとか、遺体を見た人が綺麗な顔だった(つまり本能寺で焼失してない)という証言がどこかにあるのでしょうか?
どの辺が史実で、どれぐらい根拠があるのか?どこからが独創なのかが解りませんが~変わった角度から描いてあって、なかなか面白かったです。
地味な人間同士の信頼関係がしだいに生きて来るという話の展開だから、夢がありますね。

作者は1930年東京生まれ、経済経営畑の著作の多い人だそうで、05年発行の本書が作家デビュー。
年末にテレビでやっていたのを録画したのに、見切れずに消してしまいました~しまったなぁcoldsweats02

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「天璋院篤姫(上)」

宮尾登美子「天璋院篤姫」(上)講談社

今年の大河ドラマの原作。
テレビで見やすいホームドラマ調の展開に慣れていたため、漢字が多い!と思ってしまった。
新装版は字が大きくて読みやすいです。
それに平家物語などよりは時代が近いので~まだ解りやすいですけどね。
150年前かぁ…

すぐに濃厚な語り口にぐっと引き込まれました。
桜島を見るのも最後になるだろうと思う出立の日から回想していきます。
幸せそうな家庭でしたが、実は父親には側室が2人もいたりしたんですねえ。そういう経験もあった方が御台所になるには良いかも知れませんが。

乳母の菊本のエピソードは原作通り。
他は幼い頃の話は少なく、尚五郎は影も形もありません…
西郷は篤姫の輿入れの道具を揃える仕事をしたんですね!似合わないけど~史実なので、どこかでも聞いた覚えあります。

養女の話が出てから御台所になるまでには何年もかかったとは、驚きました。
南の果ての薩摩の分家から、段階を踏んで出世街道を上がっていく、ところがその頂点の将軍家というのが~豪華な暮らしはしていてもねえ…
夫となる将軍は病弱で変わり者…篤姫の戸惑いや愛情がよくわかり、自然に感情移入出来ます。
世継ぎを誰にするかという激しいせめぎ合いが一段落しそうな所まで。以下、下巻!

身分制度がはっきりあって、皆がそれを受け入れていた感覚というのはどんなものでしょう。
そして、それがもろくも崩れ去っていく…
ちょうど黒船も来航したとドラマでもやっている所ですが。
明治になるまでもうあと、ほんの15年ぐらい?
どっちへ転ぶか~難しい時代だったんですねえ。

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映画「スティング」

映画「スティング」

先週、アカデミー賞受賞作品をいくつか、BSで放映していました。
その中に大好きな作品があったので、取り上げてみたいと思います。

ジョージ・ロイ・ヒル監督、1973年アメリカ映画。
出演ロバート・レッドフォード、ポール・ニューマン、ロバート・ショウ。
第46回アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本、映画音楽、美術、音響、衣装デザインの7部門を受賞。
1925年生まれのニューマンが円熟期に入った代表作と言えるのに、賞は縁遠くて貰い損なってますね…どうもハンサムで人気のある俳優はなかなか貰えないようです。(後にハスラー2で受賞)
レッドフォードは主演男優賞にノミネートされたけど、逃してます。36年生まれだから、この時はまだ若いですねえ!

物語は、1930年代のシカゴを舞台に、気のいい詐欺師達が力を合わせて、大ギャングに一泡吹かせるという~小粋でしゃれた復讐劇。
けちな仕事で日銭を稼いでいた若者ジョニー・フッカーが、ひっかけた金がギャングへの支払いだったことから、親代わりの師匠を殺されてしまう。
自分も命を狙われながら、敵討ちのために伝説的な賭博師ヘンリー・ゴンドーフを探し出し、手を組む事を依頼する。ひょうひょうとしたゴンドーフに信用しきれないものを感じつつ、次第に仲間が集まって、仕事は盛り上がっていき…

監督と主演2人は69年の「明日に向かって撃て!」と同じコンビ。
息の合ったチームで、ニューシネマと言われた前作とはまただいぶ違った大人のコメディとなっています。
敵役のロバート・ショウも貫禄があって、いい味してます。
ヘンリーの愛人も姉御肌で、大人の魅力。
詐欺師の中でも紳士的な風貌の人なんかも好きでした。
軽快なテンポで、とにかく楽しい~大好きな映画です。長い間、ベスト1でした。
ラグタイムピアノの音楽も最高!

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「似せ者」

松井今朝子「似せ者」講談社文庫

江戸時代の歌舞伎役者をめぐる短編集。
テンポの良い語り口で、読ませます。
帯のコピーに「芸に生きる人間達の愛、業、切なさ、人情」とあります~なるほどね。

一作目の「似せ者(にせもん)」
名優・坂田藤十郎の番頭を30年もつとめた与市が、藤十郎の没後、そっくりな旅回り役者に二代目を継がせる顛末を描きます。
「狛犬」
悪役の似合う助五郎とぼーっとした広治。
対照的な若い役者2人の微妙な葛藤と皮肉な盛衰を、幼馴染みの女性を絡めて、助五郎の視点から描きます。
「鶴亀」
一世一代のはずの引退興行を繰り返す人気役者・鶴助と、仕打ち(興行師)亀八の奇妙な関わり。
「心残して」
囃子方の見習い・巳三次とたまさかお囃子に加わった若いお侍の出会いと別れ。「心残して」というのはお侍の歌った幕切れのせりふ。切ないです。
どの作品も情景が生き生きとしていて、まるでその時代に生きていたよう?

作者は53年京都生まれ、松竹に入社して歌舞伎の企画製作に携わった経歴。97年小説デビュー。この作品は直木賞候補にもなっています。

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「ガラスの宮殿」

アミダヴ・ゴーシュ「ガラスの宮殿」新潮社

1885年、ビルマ最後の王がイギリス軍に追放される所から、百年以上に渡る大河小説。
ビルマとインドの3家族3世代の物語です。
重量級の作品ですが、文章はわかりやすく、エピソードが生き生きしているので、広範囲の方にお勧め出来ます。
私にとって上半期ベスト1になるかも。

インド系の孤児ラージクマールは、ビルマに置いていかれ、王宮の前にある屋台で働く事になります。
折しもイギリス軍が侵攻し、光り輝く宮殿(グラス・パレス)に仕えていた幼い侍女ドリーは、王一家と共に追放されてインドの孤立した館で軟禁状態に。
ラージクマールは2度見かけただけのドリーを忘れられず、中国系のサヤー・ジョンに雇われて材木商として金持ちになってから、初恋のドリーにはるばる会いに行きます。

追放の地で、孤独なドリーは大人になっていました。
王家を見張る立場の高官の妻ウマと親友になります。ドリーと終生助け合うウマは、後にアメリカへ渡り、やがてインド独立を目指す活動家へ。
サヤー・ジョンの息子夫婦は農園をモーニングサイドと名付け、そこへ集う子や孫の代までの恋愛や不思議な縁がありありと描かれます。
映画的なシーンも多く、鮮烈。

後半、第二次大戦中に日本軍が侵攻してくる時、イギリスからの解放になると期待する人に、ドリーの次男がまだ十代で、独逸や伊太利亜のようなファシストになりたがっているだけと切って捨てるように言い放つシーンがあります。
同じ頃に日本の十代の子は全然わかっていなかったんじゃないか。報道管制があり、偏った知識しか与えられていませんからね。
当時のビルマもインドも政治情勢は複雑です。
ウマの甥は、イギリス軍に入隊してインド人初の士官となりそれが名誉と思っていたが、独立の気運も起きてきた時に、何が忠誠か?どう生きるべきか?引き裂かれてしまう…
どう転ぶかわからない時期には何とも難しい問題で、何が正しいかは時代によって変わり、解決策というのはなかなか見つからない。しかも置かれた立場によって、決断する間もなく流されてしまうことも多いんですね。
現在でも、情報はあるけれども、あり過ぎるのか~真相は見極めにくい難しさ。
アウンサンスーチーもちらっと登場する時代で終わります。

互いに葛藤し、時には運命に押しひしがれながらも生き抜く人間達。
年月を経た後のミャンマーでの出会いと、思いがけないエピソードのおまけが余韻を残します。
どの人物にも血の通った存在感があり、、心があたたまる読後感でした。

作者は1956年カルカッタ生まれ、新聞社勤務を経て文化人類学で博士号を取得、ニューヨーク在住。
2000年にこの作品を書いて世界的ベストセラーに。日本では07年10月発行。

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大河ドラマストーリー「篤姫」

NHK大河ドラマ・ストーリー「篤姫」前編

篤姫関連の物を幾つか見ていたんですが~これがわかりやすいようでした。
薩摩の事はあまり知らないんで、少し何か読みたかったんですよ。
いぜんの大河ドラマ「翔ぶが如く」も面白かったんです(西郷と大久保が西田敏行と鹿賀丈史というのが適役でした)が~1990年なので、細かい事はすっかり忘れてしまいましたし。
高橋英樹が島津斉彬を前にも演じたような気がしていたんですが、斉彬は加山雄三で、英樹氏は久光をやったんですね~。
外様でありながら大大名の薩摩が海外に目を向けるいきさつ、幕府との婚姻政策や反発…時代のうねりが感じられる所です。

その後に、年の初めは多く出ている着物関連の本や雑誌を見ていて、またここに行き着きました。
篤姫だけでなく主な登場人物の着物姿が綺麗に写っていて、なかなかの見応え。奥方様の着こなしも品が良いですが~奥女中は当時トップクラスのキャリアウーマンですよね。
衣装考証担当の人の話も載っていて、興味深いところ。
大奥で一番華やかになるように、その前は少しずつ引き算してデザインしているそうです。
篤姫の衣装は、白生地を選ぶところから始めて、染めて貰い、刺繍もするので、三ヶ月もかかるとか。
普通の反物は三丈あるそうですが、裾を引きずる振袖は四丈五尺も必要だとか。

丈って!?…調べたら、一丈は十尺で、約3メートルというのを見つけましたが、これは建築の場合。
ところが着物の場合、一尺は38㎝となっていました。えっと、そういえば八寸名古屋ってのが30cmぐらいですもんね~一尺には足りないんだ。
尺には二通りあるとは!
3.8mの4.5倍…すごい~勉強になりました~。

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「銀流砂宮殿」

文月今日子「銀流砂宮殿」小学館FCコミックス

とうとつですが~懐かしい少女漫画のご紹介です。
「エロイカ」の原作を探していて、掘り返した物の一つ。
これ、大好きだったんですよ!
パルミラの女王ゼノビアの波乱の生涯を一冊で描ききった作品です。

文月今日子さんは、もともと絵はスゴク上手いのですけど~可愛らしい絵柄で、さばさばと明るいコメディを得意としている漫画家です。
この作品は大人の女性を描いた例外的な作品。
私が持っているのは昭和60年発行の初版~文月今日子作品集の⑤。アマゾンでは3種類出ているみたいでした。

アラブの遊牧民の首長ザッバイの娘として生まれたバト・ザッバイ。
この作品では異母兄ハッサンとの複雑な愛憎を経て、子連れでパルミラの王ウダイナに嫁いだ事になっています。
パルミラは隊商都市で、砂漠の真ん中にあるためにどんな強国からも容易に支配されず、独自な位置を保っていました。
夫ウダイナと共に戦列を率いて戦場にも出て、夫亡き後に幼い息子を擁して女王となったゼノビア(ギリシア名)ことバトが数カ国語を解し、知的で美しく、古代ローマ帝国の勇将も恐れさせたほどだったというのは史実。
大したもんです~。
強い光を放つ黒い瞳、堂々とした立ち姿に、傷ついた頑なな表情、たくましい母性、戦う烈しさと、これまでにない魅力がありました。
流麗なペンタッチが生きるイスラム風の薄布の衣装のライン、砂漠の光景…
題材が特殊なせいもあって、今見ても少しも古くないですね!

夫ウダイナの代にパルミラは最強となり、ローマ帝国もそれを認めますが、数年後にゼノビアは敗れる事になります。
晩年には異説もあるようなので、史実も気になる所です~。

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「紙の迷宮」

デイヴィッド・リス「紙の迷宮」ハヤカワ・ミステリ文庫

これ一時話題になっていて、読んだつもりになっていてすっかり忘れていたわ~、と思って読み始めたら~実は読んだのを忘れていた、という…(爆)
2001年アメリカ探偵作家 クラブ最優秀新人賞を受賞した作品でした。

18世紀初めのイギリス。
元拳闘家の主人公ベン・ウィーヴァーが捜し物を手伝う探偵業の走りのような仕事を始め、やがて金融界の闇に立ち向かいます。
まだ警察もない時代、盗品を取り返す仕事をして英雄と目されているのが実は盗賊の大本締めという有様。これは実在人物です。
主人公は堅物で冷たい父に反発して家出、若い頃は非行を重ね、裏事情にも通じているという設定。大本締めのライバルとなっていきます。

落ちぶれた貴族のバルフアの訪問を受け、バルフアの父が馬車に轢かれた事件はウィーヴァーの父の死とも絡んだ殺人事件だと言われます。
久々に家族の元を訪れ、成功した株屋だった父の関わった南海会社の株偽造事件を調べる事に。
気の良い外科医の親友と共に進める調査は、(何しろ探偵小説もないわけだから)何のノウハウもないので、なかなか進みませんが~
ユダヤ人社会の様子や当時のカフェや仮装パーティーなど、歴史好きなら興味が尽きません。
時代的には「トム・ジョーンズの冒険」あたりと近いですね。そのちょっと前になります~。

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「エル・アルコン」

青池保子のコミックを原作とした宝塚の舞台を見てきました。
星組で、主役のティリアン・パーシモンは安蘭けい。
女海賊ギルダに遠野あすか。
ルミナス・レッド・ベネディクトに柚希礼音。
宝塚は久しぶりなので、すっかり代替わりしていて、知らない人ばかり…

16世紀後半、イギリスとスペインとフランスが海の覇権を争う時代。
イギリスはエリザベス女王の治世、スペイン系の母を持つパーシモン家の御曹司ティリアンはスペインに憧れていました。
多くの愛人を同居させている父は、自分の事は棚に上げて妻とその従兄の不貞を疑い、見るからにスペイン系の黒髪のティリアンは父に疎まれて、友達もなく育ちます。
野望を秘めて海軍に入り、異例の昇進をとげて大佐となるティリアンは、船乗りとしては優秀で部下には尊敬されるが、人を愛さない冷たい目をした男。
大商人ベネディクトを陥れてスペインのスパイとして処刑させ(自分がそうなんですが)、ティリアンを恨むベネディクトの息子のルミナスは、海賊レッド(といっても義賊)となってティリアンとの対決を目指します。
女海賊ギルダはもともと貴族として所有するウェサン島を守るためにスペインと争い、ティリアンとは良きライバル?として何度か邂逅を持ちます。傷だらけの誇り高い女性に、いつになくティリアンの心も動き、ウェサン島は侵攻すまいとするのですが…
実の父かも知れない母の従兄までも反逆罪として葬り去り、ティリアンはついにスペインに亡命、間もなくイギリスと無敵艦隊との闘いが始まり…

舞台は主要人物総登場のシーンから、まず少年時代のエピソードへ。
一気に派手な赤い衣装の大人になったティリアンへと転換し、レッドの父を陥れる場面へ。時代色の出ている衣装は特にマントが素敵です。
細面の暗い美貌のティリアン、目元が原画に似ていました。レッドは明るい存在感があって、声質も違い、良い対比になっています。
海軍としての活躍は多少はしょってありますが、愛憎半ばするギルダの存在はクローズアップされてます。娘役トップ、しっかりした演技でした。
付き従う少年ニコラスが可愛いんだけど~セリフは少ない。若手なためらしいですね。

ティリアンは悪い男なので、昔の宝塚では出来なかったでしょうね。
青池さんの絵だとめちゃくちゃ迫力があってセクシーなのです。
ストーリー的には、レッドを主人公にした「七つの海七つの空」でティリアンを敵役という展開もありかな?
でも、圧倒的な魅力を持ち作品世界を支配するティリアンは、トップ男役にふさわしい役柄ですね。
劇評で「次々に女性をレイプし、その女性が恋に落ちてしまう展開」みたいな書かれ方をしてましたが~それは違う!レイプじゃないんですよ。
途中でクラッとさせているので、強引ではありますが~ちゃんと口説き落としてるわけです。
悪い男だから、恋しても幸せになれるってわけじゃないですけどね(^^;

宝塚を最後に見た時(4年前?)とはそんなに劇場は変わっていないと思うのですが、10年以上前の印象の方が強いので、昔よりずっと音響が良いのに感心。音そのものをちゃんと聴いていられますね。
全員のスタイルが良くて顔も小さく、漫画とのギャップが大きくないから見ていて何となく楽ですね(^^)
ショーは夢の世界だわ~。
カラフルで、次から次へと繰り出されるドレスやかっこいいタキシード…
ラインダンスが大人っぽくて良かったです。
タンゴ調で黒い衣装のせいもあるけど、昔は健康的で可愛いダンスの方が多かったと思うの。今はずっとハイレグになった衣装で脚の長いこと~みんな綺麗でした!

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「赤き死の訪れ」

ポール・ドハティ「赤き死の訪れ」創元推理文庫

クランストン検死官とその書記を務めるアセルスタン修道士が主人公の歴史ミステリ。シリーズ2冊目。
14世紀、フランスとの百年戦争がまだ決着していないというあまり知られていない時代。
エドワード3世と息子のエドワード黒太子が相次いで亡くなり、幼いリチャードが跡を継いでいます。
歴史物の雰囲気は横溢しているので私には親しみやすい世界ですが~どれぐらいの読者に受けるんだか、はらはらしてしまいます(^^;

ロンドン塔の塔守ホイットン卿が雪の夜、屋上の個室で殺された。何かに怯えて用心していたらしいのだが…
足跡もない密室での殺人事件で、一緒に暮らしていた家族や召使い達もいかにも怪しい。
ロンドン塔はまだ刑務所専門ではないのですが、当時既に「赤き死の館」という異名があったらしく、秘められた謎はいかにもロンドン塔らしい。

貧しい地域の教会を担当する痩せて真面目なアセルスタン修道士と、身分ある豪快な大食漢のクランストン卿は名コンビ。正反対なので、理解し合う所までは行ってませんが、少しそんな気配もありですね。
大酒飲みのクランストンの人物造形は時代色が出ているのか…現代物の困った上司よりも喜怒哀楽が激しいです。 最愛の妻のことではすぐに動揺するのがちょっと可愛い。
ルネサンス的というか~もっと古い時代なので中世的人間像かな?

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「うそうそ」

畠中恵「うそうそ」新潮社

しゃばけシリーズ5作目。
江戸が舞台で妖怪が絡む、のほほんと楽しいミステリ風味のファンタジー。いやファンタジー風の時代ミステリ?人情物というには若向き~。
長編一本というのはこれが最初かな?

若だんなが箱根へ湯治に。
江戸の大店・長崎屋の息子、一太郎はいわくつきの生まれで病みつきがち。実は祖母が妖怪で、その血をひいているのです。
湯治は健康になるためとはいえ、病弱な身体に旅行はかなりの一大事でしょう。
それが頼りになる手代の兄さん達にすぐはぐれてしまい、箱根の天狗には襲われ、地元の人には災厄を運んできたと誤解され~とんでもない展開に…

人身御供にされて妖(あやかし)となったお比女ちゃんの哀しみと何をすることも出来ない悩みを一太郎は理解し…
江戸を離れた長編で、いつもの和やかさとはちょっと違いますが、なかなか面白かったです。
要所々々で鳴家(やなり)が可愛いのがツボ。

昨年、初のテレビ化がなかなか配役が良くて、上手く出来ていました。
ジャニ系も人材豊富なこと~カツラを乗せたらちょうどピッタリなのが良くいたもんだわ。
読んでいて、仁吉や佐助の顔がちらちらしますねえ(^^)

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「幼き子らよ、我がもとへ」

ピーター・トレメイン「幼き子らよ、我がもとへ」東京創元社

アイルランドの修道女フィデルマをヒロインにした歴史ミステリ。
うら若い美女ですが、高位の資格を持つ裁判官でもあり、支配権の絡む地方の争いを調べに、事件の起きた名門の修道院へと赴きます。
荒涼とした土地の描写に歴史物らしいムードがあり、危機感迫ります~貴重な本が集められた修道院に危険の匂いがぷんぷんするのは「薔薇の名前」的?

2冊目の翻訳ですが順序通りではない模様。(この前のが4冊目で、これが3冊目?)
7世紀とは古すぎて~知らない時代ですが、これがなかなか面白い。
当時のアイルランドは意外にすぐれものの法律が整備されていたんですね!

とはいえ、若い女性と見て侮る悪党共は数知れず。
フィデルマが王の妹(この作品の途中で王になります)と知って、しぶしぶ敬意を示すあたりは水戸黄門的?
修道士カドフェルがお好きなら、ぜひご一読。気の強い若いヒロインが活躍するのが好きな方にも。この尼さん、馬も乗りこなすし、護身術も使えるんですよ。
真っ直ぐな若さがみずみずしいけれど、いささか性急な行動をとってしまう展開は、頭が良く身分の高い恵まれた女性が、これから荒波に揉まれて成長していく含みを持たせたものでしょう。
それにしても初登場した作品もローマが舞台という変わった設定なので、読んでみたいですねえ。

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「吉原手引草」

松井今朝子「吉原手引草」幻冬舎

直木賞受賞作。
たぶん、受賞した後に図書館にリクエストして、11月末に回ってきたんじゃないかな~。

吉原に関わる人物が、かわるがわる、葛城という花魁のことを語っていきます。
普通は幼い頃からそのために優雅に育てられて教養も仕込まれ、水に馴染んでやっと高級な花魁になるのだが、大きくなってから入った少女の異例な抜擢だったこと。
評判の高い花魁だったが、身請けが決まった後に突然失踪したらしい。
足抜けは大事なのだが、どうにも行方がつかめない謎のまま。
江戸時代に遊女の集められた吉原という特異な場所のしきたりが、初心者にも次第にわかって来るという趣向。
ミステリ的な要素もありますが、ミステリ読みよりは~歴史物好き向きかな。

質問しているのは誰なのか?
二枚目らしいが正体は不明。それは最後に明かされます。
立場の違う江戸っ子のお喋りがいきいきしていて、面白かったです。

これを読んだ後、年末にテレビで「吉原炎上」を見たら、えらくわかりやすかったです。時代はもう吉原が終わる頃なので、違うんですが。
年明けにテレビでタモリの歴史番組があり、ここでも吉原が取り上げられていました。
人気のある花魁になると、一度会うまでに一千万もかかったとか。しかも、そこで振られてしまう場合もあるそうです。
花魁道中とは、申し込んでやっと花魁に会える時に少女を従えて行列で出てくることだとか、ちょっと違うんじゃないかと疑問もありました。花魁は確かに一人では出て来ないかも知れないけど、ふだんはその楼閣の奥の座敷に暮らしていて、花魁道中といえば~表通りを練り歩く特殊なものなんでは?
吉原は300年も続いたそうなんで、時代による違いもあったかも知れませんけどね?

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「双生児」

12月に読んだ本です。1月も20日になってしまい、慌ててます~。

クリストファー・プリースト「双生児」早川書房

5部に分けた構成で、最初の語り手はノンフィクション作家のグラットン。
第二次世界大戦の頃に良心的兵役拒否者でありながら戦争の英雄だった人物がいたというチャーチル首相の記述に興味を抱きます。
これが双子だったからというだけならまあそれまでだが、幻想小説の大家プリーストがそれだけで終わらせるはずがない!?

頭文字も同じJ.L.ソウヤー。
ジャック(ジェイコブ・ルーカス)とジョー(ジョナサン・レナード)の双子は、ボートの選手としては息がピッタリで、ベルリン・オリンピックにも出場したほど。そこでナチスの幹部にも会うことになります。
滞在した家庭が実はユダヤ系で、そこの娘の亡命を手伝うあたりから、2人の道は分かれ始めます。

明るくやや単純なジャックは、空軍の爆撃機乗りに。
爆音の聞こえそうな描写で空爆がリアルに描かれ、そのあたりに興味のある人にも面白く読めそうです。
やや頑なな考え深いジョーはドイツから連れ戻った娘と結婚し、良心的兵役拒否者となって、村の人に白い目で見られながら、やがて赤十字の仕事を見つけて遠方へ勤めることになります。違う形とはいえ戦争に深く関わる皮肉な運命。
妻は孤独にさいなまれ、助けを求めたのは…?

ジャックの手記は、戦闘中に死にかけて記憶を一時失い、取り戻しかけた記憶を辿りながらつづられた物。
一方、ジョーもまた事故で死にかけた時に真実をかいま見…
幻想なのか、ねじれた関係の中にちらっと見えるのはあり得た未来なのか、双子の人生の不思議。

歴史改変SFに近い感触もありますが、改変してしまうんではなくて、メビウスの輪のように…
実在人物も登場、当時の政策に疑問を投げかける内容ともなっています。
ある時、歴史が大きく変わるかも知れない、そんな可能性に思い至る感動がありました。
緻密な描写で個性豊かな人間がばしっと容赦なく描かれ、不思議さと希望の残る結末に人生の哀歓が胸に迫ります。

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「飛鳥とは何か」

梅原猛「飛鳥とは何か」集英社

もともと哲学者ですが、既に長年、古代史研究に波紋を巻き起こしている梅原さん。
何といっても聖徳太子怨霊説の「隠された十字架」が非常に面白かったので、コミックの「日出処天子」もあの刺激で生まれたという時代がありました。

これは梅原猛著作集の中の一冊。最近の興味からハードカバーを図書館で借りて読みましたが、文庫でも出ているんですね。専門的でずっしり重い読み応え。猛烈に面白いので、いずれ買うと思います。

飛鳥や斑鳩の土地の意味に思わず納得~うならされました。
古代朝廷は死のけがれをいとう気持ちからか、代替わりするたびに宮殿を点々と移動しているのですね。飛鳥を出たり入ったりという状況~天皇の力が弱い場合に飛鳥の狭い地域に戻る傾向があるという指摘でした。
元々の土地勘がなさ過ぎるので、新しい知識ばかりで興味津々。定説とどれぐらい違うのか、わかりませんが…

梅原説のすべてに同感というわけではないけれど、紀皇女と弓削皇子のあたり、説得力あります。
弓削皇子は晩年の額田王と歌のやり取りをしているために私としては気になる存在。額田王の孫にあたる葛野王と一緒に日本書紀にも登場しています。どちらも持統女帝の時代に傍系になってしまった皇子なんですね(葛野王のほうが早くに生き方を見極めたようなんですが)
万葉集は日陰の存在や悲劇の人の歌を取り上げていることが多いので(歌の役割として鎮魂の意味もあったように思います)、確かに~弓削皇子もたまたま出ているだけではなさそう。
弓削皇子が高松塚古墳の主なのではという説です。

[追記]弓削皇子は天武の大勢の子供のうちの一人。
母は天智の娘の一人で、つまりは持統の異母妹ですから、かなり血統が良い方です。ということはちょっと邪魔な存在になりかねない。祖母は持統には劣りますが。
持統の一人息子・草壁皇子が皇位につく前に早世したため、持統は孫(後の文武)に位を譲るまで頑張ることになります。

そして、紀皇女は弓削皇子が恋歌を送った相手。
紀皇女のことは知りませんでしたが、残された歌の意味深なこと…
実は文武天皇の后だったのではないかという説です。
当時、皇后には皇族を立てるのがしきたりだったと思われるのに、文武には皇后がないまま。皇女は数少ないので、紀皇女しか相当しうる人物がいないんですね。
一度は妃になったのに、皇后になるのを阻止されたとか…藤原家が宮子を強引に天皇の妃に送り込んだ犠牲になったのかも??
他の妃が地位を格下げされるという妙な事件も起こっているし…読めば読むほどあやしい気配が~興味が尽きません(^^)

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「額田王の実像」

向井毬夫「額田王の実像