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おすすめ本

「黒いダイヤモンド」

マーティン・ウォーカー「黒いダイヤモンド」創元推理文庫

警察署長ブルーノのシリーズ3作目。
好感の持てる作品です。

フランスの、のどかなサンドニ村。
ブルーノは警察署長といっても、村でただ一人の警察官。
村長の直属で、地域に溶け込んでいる駐在さんのような立場。いや、もっと存在感大きいかな。

名産のトリュフの収穫で、市場がにぎわう季節。
ブルーノは、狩猟仲間のエルキュールから、調査を依頼されます。
粗悪な中国産トリュフが紛れ込み、評判が落ちかねないという。
ところが、そのエルキュールの身に事件が。
実はエルキュール、かって情報部に所属した秘密警察官で伝説的な存在だったのです。犯人の動機は何だったのか‥?

騒動に巻き込まれた友人のベトナム人夫婦の世話をしたり、村の製材所でも揉め事が起こり、四方八方ブルーノは飛び回ることに。
恋人のパメラとの仲はやや危険信号‥?
子供達にラグビーを教えているブルーノ、子供と大人の試合に出たりするお楽しみも。

事件は今のフランスの状況と歴史的な背景を踏まえ、かなり本格的な構造になっています。
とはいえ、ブルーノは料理上手で、生活を楽しむフランス人たちが織り成す出来事は、コージー的な要素も。
元恋人と仕事で顔を合わせたかと思うと、また新たに魅力的な女性が登場するのは、男性が書く男性主人公だから?(笑)
頼りになるお巡りさんと村人のあたたかい気持ちの通い合いに、読後感はわさやかです☆

「空棺の烏」

阿部智里「空棺の烏」文藝春秋

八咫烏シリーズ、4作目。
雪哉が主人公の学園ものの部分が多く、なかなか楽しい。

八咫烏が支配する世界「山内」。
若宮の近習となった雪哉は、護衛として力をつけるため、「勁草院」に入峰します。
「勁草院」とは、宗家を守る「山内衆」を養成するための全寮制の士官学校のようなもの。

若宮の近習であったことは伏せつつ、小柄でのん気な少年のように見せながら、しだいに実力を発揮していく雪哉。
「勁草院」では、若宮派と、若宮の兄・長束派の対立があり、身分による格差もある。
明留、茂丸、千早と個性の違う少年達が、厳しい訓練に取り組みます。
時には理不尽な目にもあいつつ、迷い、張り合い、どこでどう頑張るのか?
若宮の周辺は人材少なすぎたから、彼らが将来どう活躍するか、楽しみ。

いっぽう、若宮の即位をめぐって、意外な問題も起きます。
このファンタジー世界全体を揺るがす要素は、先を期待させますね。
最後のほうは急展開で、付いていきそこないそうになりますが~
ちょっと意地の悪いところはこの作家の味?
十分、楽しめる内容でした☆

「幽霊はお見通し」

エミリー・ブライトウェル「幽霊はお見通し」創元推理文庫

「家政婦は名探偵」のシリーズ3作目。
ヴィクトリア朝の英国ロンドンが舞台。
家政婦のジェフリーズ夫人をリーダーに、召使が探偵団として活躍します。

ウィザースプーン警部補は、殺人事件が大の苦手。
なぜか捜査の腕があると思われていますが~
実は陰で大活躍をしているのは、優しいご主人を思うお屋敷の使用人たちなのでした。

評判の霊能者が開いた交霊会。
家に帰宅した直後の裕福な女性が襲われた事件が起きます。
最初は強盗かと思われましたが‥?
器量よしのメイドのベッツィも交霊会に興味を抱いていることに、しっかり者の御者のスミスが不満で喧嘩になったり。
頼りない従僕のウィギンズも、懐いてきた野良犬に優しかったりと、人間味のある展開。

アメリカから来た未亡人のルティ・ベル・クルックシャンク夫人の執事ハチェットも初参加。
渋い雰囲気ながら、独自の腕を発揮しそうです。
事件はけっこう考えてあって、途中でわかりますが、それなりに推理を楽しめます。
ものやわらかなジェフリーズ夫人が、ご主人様とお茶を飲みながら、真相にたどりつくよう上手に誘導するのが、何ともユーモラス。
楽しく読めるのが嬉しいですね☆

「月は誰のもの 髪結い伊三次捕物余話」

宇江佐真理「月は誰のもの 髪結い伊三次捕物余話」文春文庫

人気シリーズの14作目。
ただし、初の文庫書下ろし。

8作目の「我、言挙げす」のラストで火事があって家を無くした伊三次とお文一家。
9作目「今日を刻む時計」では、10年後の話になっていたのです。
この10年間の空白に起きた出来事を描く内容になっています。

伊三次の妻で芸者のお文は父親を知りませんでしたが、察してはいました。
お座敷の客として訪れた侍の海野との偶然の出会いから、互いにそれと気づきます。
さっぱりした気性のお文の、胸のうちに秘めた思いが切ない。
互いに名乗りはしないまま、手を差し伸べてくれる実の父親の気持ちを受け取ります。
祖父とは知らずに懐いていた伊予太の言葉がタイトルというのもいいですね。

一方、不破の息子龍之進ら奉行所の見習いの若い者らは、無頼派を名乗る若者集団を追っていました。
事件が落ち着いた後にふと出会い、互いを認め合う成り行きがまた妙味があります。

伊三次が焼け出されてお文と離れていた時期の出来事。
不破友之進の妻いなみの、年を重ねた妻の思い。
一捻りした味わいが深く、読んでいてこちらも江戸市中をさまよい、人の心にまで共感したような心地になりました☆

「カルニヴィア2 誘拐」

ジョナサン・ホルト「カルニヴィア2 誘拐」ハカヤワポケットミステリ

イタリアが舞台の、濃~い国際謀略ものアクション・ミステリ。
三部作の二作目です☆
1作目で知り合った憲兵隊の女性大尉カテリーナ、駐留米軍の少尉ホリーという二人の女性と、SNS「カルニヴィア」の創始者ダニエーレ・バルボが再び活躍します。

米軍少佐の娘ミアが誘拐される事件が発生。
憲兵隊の大尉カテリーナは、前作で起きた問題で隊のなかで孤立していましたが、この捜査に加わることに。
ホリーもまた、少佐の家に急行。
軍人の家庭によくある厳しい仕付けを受けて育った様子に気がつくホリー。

ミアが誘拐されたことに、カルニヴィアでの連絡が関係しているかもしれないと、協力を求められたダニエーレ。
カルニヴィアは、ヴェネツィアを模したネット上の都市。
完全に匿名で参加できることに価値があるのだが、自分は匿名で実在人物についてあることないこと書き込めるという点もあったり。

アメリカがいまだに行っている拷問方法に対する報復として、拷問される様子が公開される事態に。
はたして、その目的は抗議のためだけなのか?

一方、米軍基地の建設現場で、古い遺骨が発掘される。
アメリカがかって、イタリアの政治体制に深く介入した過去が、しだいに明らかになっていく‥
軍人家庭に育ったホリーは自らの問題と感じるようになるが?

アメリカがそこまでひどいことを‥いや、やりかねない?
どこまでが公然の事実で、どこまでが推測、どこからが創作なのか。
男性作家なのにここまで女性を活躍させ、告発的な内容を含む作風は高評価できますが。
ちょっと、酷い目に遭い過ぎる‥

イタリアらしい美味しい食べ物やちょっとしたお洒落の話なども。
カテリーナの上司も含めた主要人物の関係性のややこしい変化が興味をそそり、とくに孤独なダニエーレとホリーの心の通い合いは、惹かれるものがあります。
読み応えは十分です。

「梨園の娘」

東芙美子「梨園の娘」角川書店

歌舞伎の名優の子に生まれても、才能があっても、女の子は歌舞伎役者にはなれない‥
勝気な女の子が奮闘する物語。

俳優・藤村霞右衛門(風間京二郎)は、歌舞伎のみならず映画やテレビでも成功した何拍子も揃った大スター。
突如見合い結婚し、生まれた双子を可愛がるようになります。
というか、跡継ぎの男の子のほうには厳しく、女の子の方を溺愛。
無条件に愛することの出来るのは、娘だけだった‥
皮肉なことに女の子の葵のほうが、演劇の才能があった。

子役のうちは女でも舞台に立てますが、それが出来なくなる日が来ました。
納得できない葵に対し、父とその親友?皆川翔十郎(柳沢凱史)らは葵が女優になることにもあくまで反対して、バトルが続きます。
身を案じる溺愛のあまりとはいえ、中年男の妙な頑張りがおかしい。
(前作では若き日の俳優達の愛と葛藤?が描かれているらしいです)
芸能界でも力のある父親らに望みを叩き潰されながら、それでもいつしか活路を見出していく葵。

歌舞伎俳優仲間が何人も登場して、特殊な世界のきらびやかさ、厳しさ、濃密さを垣間見せる印象的な展開。
モデルはあるのか?どこの一家の誰なのか‥?
と気になりましたが、該当者なし(笑)
人柄や芸風が違うし、これがモデルというのだったらちょっと失礼でしょう。
いまどき、女優になることをこんなに反対するかなという気も。
とはいえ、ポンポン話が進むようなキャラ設定で、ぐいぐい読ませるストーリー。
むっちゃ面白かったです☆

「プラム・ティーは偽りの乾杯」

ローラ・チャイルズ「プラム・ティーは偽りの乾杯」(コージーブックス)原書房

お茶と探偵シリーズ、2016年5月発行の新作。
15作目あたりかと思いますが‥ 数字をつけるのをやめたようですね。
紅茶専門店をやっているセオドシアがヒロイン。
これから呼んでも差し支えありません。

アメリカ南部の古都チャールストンで、ティーショップを出しているセオドシアは30代。
赤毛で長身の明るい女性で、もとはキャリアウーマン。
頼りになる専門家のドレイトンと、若い女パティシエのヘイリーという仲間にも恵まれて、充実した日々を送っています。

高級ワイナリーの試飲パーティに招待されたセオドシアとドレイトン。
新しい銘柄の披露に、チャールストンの主だった人々が集合していました。
ところが、ワイン樽が開けられたとき‥?!

素人探偵として知られているセオドシアは、ワイナリーのオーナーから事件の解明を依頼されてしまう。
恋人には反対されているのですが、持ち前の親切心と好奇心で突き進む結果になります。
その一方、ティーショップでは、テレビドラマ「ダウントン・アビー」のような英国の貴族風のお茶会を催すことに。

美味しいお茶と食べ物がたっぷり出てきて、気の合う大事な仲間とタッグを組んでの仕事ぶりが楽しい。
今回はワインという新しい題材も目を引きます。
脇には変人も勢揃い~
初期の素人っぽさはだんだん薄れて探偵仕事は慣れてきたようですが、その分ちょっと気が強くなったかな。
気楽に読めるシリーズです。

「宰領 隠蔽捜査5」

今野敏「隠蔽捜査5 宰領」新潮文庫

お気に入りのシリーズも5作目。
読みやすいので、少し読むのを延ばしていました。
一気に読み終わっちゃうので、もったいないから☆

大森警察署の署長・竜崎伸也は、もとは警察庁の官僚という大変なキャリア。
おそろしく堅物なのだが、合理主義者なため、じつは現場でも有能な男なのです。

警視庁の刑事部長の伊丹俊太郎から、衆議院議員の牛丸が行方不明になったという連絡を受けます。
牛丸を誘拐したという電話も来ましたが、神奈川からだったため、合同捜査が決定します。
じつは神奈川県警と警視庁は犬猿の仲?
前線本部に派遣された竜崎は、ピリピリした空気の中、本部がいっこうに機能していない様子に驚かされることに。 折りしも、竜崎の息子は浪人中で受験の時期を迎えており、家族も緊張していました。
そんなときに家を離れることになってしまったのですが‥
周りにはその心配を隠しているが署員にはバレバレの事情も抱えつつ。

横須賀で、対抗意識を剥き出しにする県警の刑事に手を焼きながらも、合理的に捜査方針を決めていく竜崎。
その判断の妥当さで捜査が進んでいき、当然のごとく、土地勘のある地元民を立てるやり方もとっていきます。
いつの間にか、納得していく刑事達。
そして、神奈川県警のSTSが現場で待機するクライマックスへ。

竜崎以外の人物がちょっと、おばかさんに見えてくるきらいはありますが~
ぐいぐい楽しく読めます。
幼馴染の伊丹との関係も、頑なな竜崎に対して伊丹の片思いっぽいのだが、相変わらず何となくにやにやさせられます。
そして、奥様のさすが、しっかりした賢夫人ぶり。
竜崎の考え方のスッキリしているところが、何と言っても、いいですね!

「カルニヴィア1 禁忌」

ジョナサン・ホルト「カルニヴィア1 禁忌」ハカヤワポケットミステリ

イタリアが舞台の、読み応えある怒涛のミステリ。
冒険物のタイプですね。
三部作の一作目です☆

ヴェネツィアのとある教会前で、司祭の格好で倒れていたのは実は女性。
それはカトリックの教会では今もあり得ないことでした。
捜査に当たるのは、憲兵隊の大佐ピオーラと、女性の大尉カテリーナ。
イタリアの警察というのは複雑で、憲兵隊と別な組織が張り合っているんですね。

米軍基地に赴任したばかりのアメリカ女性のホリー少尉も、捜査に関わってきます。
イタリアの基地育ちのホリーは、故郷に帰ったかのようなくつろぎを感じていたのですが‥?

ヴェベツィアっ子のカテリーナはすごい美人でかなり奔放だけど、野心家で何より大事なのは仕事。
ホリーはもっと親しみやすそうな若い娘でおだやかな性格だけど、陸軍少尉ですから訓練で身につけた勇ましい所も。
この二人に加えて、異色な人物が加わります。

SNSで本物のヴェネツィアそっくりというカルニヴィアを作り上げた天才、ダニエーレ・バルボ。
彼は幼いときに誘拐されて犯人に鼻と耳をそがれ、トラウマで自閉症になっていた壮絶な過去がある。
豪華な古い館から出ることもなく過ごしていましたが‥

イタリアにある米軍基地がそれほど大きいとは知りませんでした。
ヴェネツィアというだけでも魅力がありますが、戦争犯罪、マフィア、米軍基地への反対運動、秘密組織の暗躍、カトリック内部や警察内部の葛藤、さらに男女の問題など、思わぬ要素がてんこ盛りで~思いっきり濃い!

「ミレニアム」と比較されてしまうと、う~ん、どうだろ‥ていう気にもちょっと、なりますが。
読み応えは十分です!

「エチュード春一番 第一曲 子犬のプレリュード」

荻原規子「エチュード春一番 第一曲 子犬のプレリュード」講談社タイガ

荻原規子の新シリーズ。
女子大生の家に迷い込んだ小犬は、八百万の神と名乗り‥?!
もう2作目も出ています。

渡会美綾は大学生になったばかり。
家族は父の海外赴任に同行したため、とつぜん独り暮らしに。
家に迷い込んだパピヨンをとりあえず世話していたら、ある日とつぜん言葉を喋り始め、「八百万の神」と名乗りました。
驚愕する美綾。
犬に宿っているので、犬として過ごしていることもあるのですが‥
愛くるしい見た目と違って、喋りだすとやたら偉そうなのですが、人間になりたいという気持ちがあって、人間のことを知りたがり、時には鋭い発言も。

大学1年生の経験する事はリアルでわかりやすく、実体験も入っているのかという感覚がありました。
(あまり意識していなかったけど、作者と年代が近いってことかも)
荻原さんにしては平坦というか、今のところは現実から離れすぎない内容。
慣れない大学生活で、サークルに入ったり、友達付き合いが少しずつ出来ていくけれど、そこで問題が起きて、謎めいた出来事に悩みながら‥

大人しめでおくてなヒロインが、これから、色々な事にぶち当たっていくのか‥?
でも八百万の神って‥茫漠としてますが、そのうちの一人ってことですかね。
荻原さんなので楽しみなのと、油断できないな~みたいな期待もあります(笑)

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