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おすすめ本

「村上海賊の娘 下」

和田竜「村上海賊の娘 下巻」新潮社

人気作・後編。
本願寺をめぐる戦いと、渦中に飛び込んでいく海賊の娘を描きます。

海賊の娘・景(きょう)は、自ら海賊働きにも出るおてんば娘。
合戦に憧れ、華やかなものと思い描いていました。
大坂本願寺に向かう一向宗の門徒をたまたま船で送り届け、凄惨な戦の現場を見ることに。
ただ自分の家を生き延びさせるためだけに、どんなことをしてでも命がけでのぞむ男達。
考えの甘さを泉州海賊の眞鍋七五三兵衛に軽蔑され、門徒の幼い男の子・留吉にまできつい言葉を投げつけられます。

しおしおと国許へ帰った景は、縁談を進めるように父に頼み、格好も改めます。
おしゃれな小袖を作りまくる日々。
ところが‥

戦国大名が乱立した時代から、織田信長の天下統一が成りかける頃。
村上海賊がまだ瀬戸内海の航行を支配していました。
大坂本願寺への支援を依頼された海賊たちだったのですが‥
大坂へ向かった海賊たちが小早川隆景と意思を同じくして、本願寺を見捨てると知り‥
景は立ち上がります。
村人達は極楽往生できると信じて本願寺の門徒になった。戦わねば地獄におちると騙されてもなお、命を捧げようとしているのに、と思う景。
すべての力を出し切る果敢な乙女は、もはや男たちとも対等に渡り合う。
そして‥?

海賊たちが秘密にしていた「鬼手」とは。
景を助けようとする男達もカッコイイ☆
船での戦いというのが特殊で、違う迫力の面白さがあります。
後半の合戦は盛り上がりますよー!

景に小突き回されてきた情けない弟がここで頑張り、後には有名な武将になったとか。
そんな後日談も。
ここまで実戦も頑張るんだと、ヒロインは杏かなぁ‥?
なんて思っていたら、先日作者と対談している番組がありました。

「村上海賊の娘 上」

和田竜「村上海賊の娘 上」新潮社

「のぼうの城」の和田竜の作品。
瀬戸内の海賊から見た織田信長と本願寺の戦い。
斬新な切り口で、スピーディな展開です。
本屋大賞受賞作☆

村上海賊の末っ子で一人娘の景(きょう)が、ヒロイン。
自ら海賊働きをするのが大好きで、腕は立つが気が荒い、大変なおてんば娘。
彫りの深い顔立ちは当時の基準としては醜女で、20歳になっても嫁の貰い手もありません。
父には甘やかされていて、世間知らずなのですが‥
実は現代的な顔で、オランダ人が出入りする町ではけっこう美人と思われると聞いて?
この姫が婿探しをしつつ、戦に巻き込まれていくのです。

縁談の相手の児玉就英(こだまなりひで)は、毛利家直属の水軍の長で、美丈夫だがやや権高い。
景の父が条件として持ち出した縁談を、最初は一蹴しますが‥
景が出会う眞鍋海賊の長は、眞鍋七五三兵衛(まなべしめのひょうえ)といい、力自慢の大男。
なかなか器も大きそう?
3人とも成長の余地ありなので、先の展開が楽しみです。

天正4年。
織田信長と6年も戦い続けている大坂本願寺。
さまざまな要求に応じても来たのだが、本拠地を明け渡せという要求を断り、ついに徹底抗戦の構えに。
鉄砲傭兵集団の雑賀党の鈴木孫市は、無謀な闘いと見て気乗りがしないが部下に一向宗信徒が多いため、味方として参じていました。
本願寺の顕如は、お公家さんだったという指摘も面白い。母は公家の出で父を早くに失い、若くして跡を継いだため、人柄はいいが世事に疎いところがあったのでしょう。
現代では大阪とされる一帯は当時は難波と呼ばれ、大坂といえば大坂本願寺のことを指したそう。
織田軍が砦で囲んで封鎖してくる中、立てこもる本願寺に食料を運び入れるため、海賊を頼ることとなります。

瀬戸内では、海賊がいまだ勢力を伸ばしていました。
海賊といってもむやみに略奪するわけではなく、複雑な海域を通行する船を管理するような立場で、通行料を取り、抗わなければ争うことはない。
村上海賊で一番大きい能島村上のみが独立を保ち、他は既に大名家の配下同様でした。
能島村上家の当主・武吉が、景の父親。

武吉に依頼に行くのは、小早川隆景の重臣で水軍の乃美宗勝で、武吉とは旧知の古強者。
生き残りをはかって態度を鮮明にしない毛利家も、ここへ来て織田につくか、本願寺につくかの決断を迫られます。
怜悧で賢しい小早川隆景や、豪胆な兄の吉川元治の思惑。
この二人の甥(長兄の息子)で跡を継いでいる輝元などは、今の大河ドラマでもおなじみの顔で、なるほどと楽しめます。

癖のある登場人物が生き生きしていて、ずばずばと描写され、面白く読めました。
映像化にも向いてますね。
ヒロインは栗山千明でどうでしょう。
アニメのほうがいいかもしれない‥? 

「冷え取りごはん うるおいごはん」

若林理砂「冷え取りごはん うるおいごはん」池田書店

しばらく体調不良に悩んでいて、冷えとりがやはり大事では?と。
わかりやすく、なかなか感じのいい本です。

鍼灸治療師だが、もともと身体は弱かったという著者。
漢方に基づいて食事を変えていったところ、だんだん体が丈夫になり、肌荒れや日焼けさえ!あまりしなくなったという。

タイプ分類が、わかりやすいです。
冷えと潤いの組み合わせで、何が足りないか、あるいは過剰か。
こういうのって、色んなタイプに該当してしまって、収拾がつかなくなる場合があるんですが、そういう人は自律神経失調症だそうです。
この分類だと私の場合、冷えているのは間違いなく、うるおいのほうは、やや水はけが悪いほうらしい‥

素材にも、調理法にも、冷←→熱、乾←→湿の段階があるそうです。
体質別のおすすめレシピと、注意点。
難しい料理はあまりないので、カラフルな写真で、作れそうな気分になれます。
季節を春夏秋冬だけでなく、梅雨と秋の長雨の季節もある6つに分け、湿度が高い時期の注意点もあるのが興味深い。

簡単な出しのとり方なども。
正しい姿勢や歩き方、呼吸法、体質による便秘対策の違いなど。
生活の仕方についても色々。

無理しないで、自分に合う食べ物を見つけ、だんだん心地いい生活にしましょうね、という語り口。
毎日きちんきちんと頑張るのではなく、時には不養生をして楽しむ。
大昔ならちょっと無理すると治らない病気になってしまうこともあったかもしれないが、現代では環境も良くなり、いろいろな治療法が発達しているので、少しぐらい勝手なことをしても、取り返せると。
食養生を始めるときに迷うようだったら、まずは一食ドカ食いしてから、という手もあるというのが楽しい。

「天上紅蓮」

渡辺淳一「天上紅蓮」文藝春秋

白河法皇と養女・璋子(たまこ)の愛を描いた作品。
今の大河ドラマの最初の方に出てきた年の差カップルですよ。

白河の側室・祇園女御に子がなかったため、5歳で養女として引き取られました。
藤原北家の閑院流の公実の末娘。実母は、堀河天皇の乳母。

祇園女御(松田聖子の役)が元は人妻で、白河が略奪したのだったとは。やれやれ。
白河は、20歳で天皇になった人物。
天皇だった時代に中宮を亡くした後に荒れたそうですが、10年ほどは祇園女御で落ちついていたのでしたが…

可愛がられた少女が花開いていき、15の頃には相思相愛に。
法皇は、このとき63歳。
この作家でこのテーマならこうもあろうかという~予想&期待にはまあ違わないでしょう。
当時の人にしては、妙に現代的な知識や感覚も混じっているけど。

50代で死ぬ人が多かった時代。
治天の君として権力を誇った白河が、60過ぎて、燃え上がった恋。
自分の最愛の女性を国で最高の地位につけようと考え、しかも璋子の最初の子だけは自分の子を、と望む。
作家は肯定的に恋の情熱を描いていますが、この悪魔的な発想が世を乱す元となったのでは。…それが恋?!

孫に当たる鳥羽天皇は、いい迷惑…
といっても、自分を天皇にしてくれた祖父には逆らえず、年上で美貌の璋子への敬慕もあったらしい。

後に崇徳天皇となる皇子は、まあ白河の子なんだろうとは思ってましたが、ここまで作為的に行われたとは?
その意図までは証明されてはいないのでしょうが、里帰りの時期は記録が残っていて、確かに異常に頻繁で、そう解釈も出来るようです。
この頃妊娠したという研究まであるそう。畏れ入りました~。

妊娠の度に、璋子の安産を祈って大がかりな祈祷や寄進が行われ、貴族達も右往左往。
すべて白河の仕切りで、鳥羽天皇は知らん顔だったという。
璋子は待賢門院という院号を与えられ、財産も出来て、白河鳥羽と共に出かけることを三院行幸などと言われていました。
3人で熊野詣でに行ったり、揃って行事に顔を出すことは珍しくなく、少なくとも一見した所は和やかだったんですね。

璋子は7人も子を産んでいて、おそらく3人目からは鳥羽の子。
二の皇子、三の皇子の二人は病弱だったのが、一番の気がかりだっただろうという。
第四皇子が、後の後白河です。

白河法皇が亡くなると、鳥羽は別な皇后を立てたんですね。
大河ドラマでは端折られていましたが、藤原氏の身分の高い37歳の女性。
藤原家でも、璋子とは別の家系と手を組むという意味でしょう。
璋子が「自分は何とも思わないがこれは自分への嫌がらせだ」という意味の手紙を残しているとか。

鳥羽上皇が寵愛するようになった得子(なりこ)の隆盛に、璋子がうつ状態になったため、得子の家族の何人かの役を解いたり追放するなどの処分を、崇徳天皇がしたこともあったそうです。
上皇になっても鳥羽のほうが政治の権力を握っているとはいえ、いったん天皇大権で決定すれば、上皇といえどもすぐには覆せない。
得子の家族に、人も無げな振るまいがあったと察せられます。
崇徳は、母思いではあったのですね。

璋子が尼になることを決めた後も、そのために新たな寺を建てる財政に不自由はなく、晩年は崇徳や娘のいる邸に身を寄せていたとか。
穏やかな日々もあったのかな。

「雛の鮨」

和田はつ子「雛の鮨―料理人季蔵捕物控」角川春樹事務所(時代小説文庫)

時代小説の人気シリーズの一つです。
男前な料理人が主人公。

季蔵はもとは武士でしたが、「塩梅屋」の料理人になって5年になります。
28歳の長身、引き締まった体つきのかなりいい男。
銀杏長屋に住み、今日も棒手振りの三吉が売りに来た納豆を買います。
朝飯のためではなく、料理の研究のためでした。
平和な朝を過ごしていたのですが…

店主で仕込んでくれた恩人でもある長次郎が、亡くなります。
大川端でおろくが上がったという騒ぎに駆けつけると、自身番屋に運ばれていたのです。首の後ろに小さな刺し傷がありました。
ところが同心はやる気のない様子で、覚悟の自殺と決めつけます。
殺されたのに、川で落ちたとして、すまされてしまう…

納得がいかない季蔵と、長次郎の娘・おき玖。
おき玖は、真っ黒に輝く目をした可愛い娘。
少し前に千代乃屋の若主人が急死する事件も起きていて、やはり首の後ろに傷があったという?!
捜査がされない理由には、意外な背景が‥

塩梅屋には別棟があり、特別な客の接待をする場所になっていました。
これは主人の長次郎だけがしていて、季蔵は手を出したことがなかったのです。
別棟のご贔屓客とは…
北町奉行の烏谷椋十郎(からすだにりょうじゅうろう)に関わりがあったとわかります。

季蔵が侍をやめるについては、無念ないきさつがありました。
堀田季之助と名乗っていた頃、鷲尾家用人の娘・瑠璃が許嫁だったのですが、鷲尾家嫡男・影守に奪われたのです。
その過去がまた、動き出す…?
長く続いているシリーズだけあって、過不足無く書き込まれ、先の広がりも感じさせる仕上がりです。

「のぼうの城」

和田竜「のぼうの城」小学館

成田長親は、武州忍城(おしじょう)の城主・氏長の従弟で跡取りだが、でくのぼうという意味で「のぼう様」とあだ名される不器用な大男。
野良仕事が好きでよく田畑を手伝うが、それも邪魔になるばかり。
城代である父の泰季を尊敬していたのですが、父の方は家老に跡を継がせようかと考えるほどでした。

北条攻めに際して、城主・氏長は、長年恩顧の北条の味方をせざるを得ず、小田原城へ。
けれども秀吉の力はもはやまぎれもないという時期なので、こっそり敵方とも内通、攻めてきたらすぐ降伏するように指示します。

のぼう様こと長親は、軍議の場でもぼんやりと、どちらにも味方せずにこのまま暮らしていけないのかとつぶやいていました。
そんな長親に見込みがあるのかないのか?迷いつつ見守っているのが~家老の丹波守利英でした。
城主の娘・甲斐姫を秀吉に差し出せと言われて、長親が降伏の予定を覆します。
家老の丹波らと共に百姓の力を借り、意外な善戦をしてのけるのです。

さかのぼること8年前の天正10年、秀吉が行った高松城の水攻めの規模の大きさに感嘆していたのが、若き石田三成でした。
その一ヶ月後には本能寺。
この天正18年には北条攻めに加わり、三成が初めて戦闘の指揮を執ることになったのです。

秀吉のそばにいすぎた三成がちょっと気の毒になりますが…まあ自業自得な所もあるから仕方ないですね。
対照的な長親と三成が、最後に相まみえることになります。
軽快な筆裁きで、面白くまとまっています。

作者は69年生まれ。
この話と同じ「忍ぶの城」の脚本で03年に「第29回城戸賞」を受賞。
小説は07年12月発行。

[お詫びと訂正]信長の北条攻めと書いてしまってました…??
申し訳ない。読んだときのメモにはなかったんですが、ふっと書き足してしまって…頭がヨワ~イのね。
「忍びの国」とごっちゃになったようです

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