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おすすめ本

「梨園の娘」

東芙美子「梨園の娘」角川書店

歌舞伎の名優の子に生まれても、才能があっても、女の子は歌舞伎役者にはなれない‥
勝気な女の子が奮闘する物語。

俳優・藤村霞右衛門(風間京二郎)は、歌舞伎のみならず映画やテレビでも成功した何拍子も揃った大スター。
突如見合い結婚し、生まれた双子を可愛がるようになります。
というか、跡継ぎの男の子のほうには厳しく、女の子の方を溺愛。
無条件に愛することの出来るのは、娘だけだった‥
皮肉なことに女の子の葵のほうが、演劇の才能があった。

子役のうちは女でも舞台に立てますが、それが出来なくなる日が来ました。
納得できない葵に対し、父とその親友?皆川翔十郎(柳沢凱史)らは葵が女優になることにもあくまで反対して、バトルが続きます。
身を案じる溺愛のあまりとはいえ、中年男の妙な頑張りがおかしい。
(前作では若き日の俳優達の愛と葛藤?が描かれているらしいです)
芸能界でも力のある父親らに望みを叩き潰されながら、それでもいつしか活路を見出していく葵。

歌舞伎俳優仲間が何人も登場して、特殊な世界のきらびやかさ、厳しさ、濃密さを垣間見せる印象的な展開。
モデルはあるのか?どこの一家の誰なのか‥?
と気になりましたが、該当者なし(笑)
人柄や芸風が違うし、これがモデルというのだったらちょっと失礼でしょう。
いまどき、女優になることをこんなに反対するかなという気も。
とはいえ、ポンポン話が進むようなキャラ設定で、ぐいぐい読ませるストーリー。
むっちゃ面白かったです☆

「エチュード春一番 第一曲 子犬のプレリュード」

荻原規子「エチュード春一番 第一曲 子犬のプレリュード」講談社タイガ

荻原規子の新シリーズ。
女子大生の家に迷い込んだ小犬は、八百万の神と名乗り‥?!
もう2作目も出ています。

渡会美綾は大学生になったばかり。
家族は父の海外赴任に同行したため、とつぜん独り暮らしに。
家に迷い込んだパピヨンをとりあえず世話していたら、ある日とつぜん言葉を喋り始め、「八百万の神」と名乗りました。
驚愕する美綾。
犬に宿っているので、犬として過ごしていることもあるのですが‥
愛くるしい見た目と違って、喋りだすとやたら偉そうなのですが、人間になりたいという気持ちがあって、人間のことを知りたがり、時には鋭い発言も。

大学1年生の経験する事はリアルでわかりやすく、実体験も入っているのかという感覚がありました。
(あまり意識していなかったけど、作者と年代が近いってことかも)
荻原さんにしては平坦というか、今のところは現実から離れすぎない内容。
慣れない大学生活で、サークルに入ったり、友達付き合いが少しずつ出来ていくけれど、そこで問題が起きて、謎めいた出来事に悩みながら‥

大人しめでおくてなヒロインが、これから、色々な事にぶち当たっていくのか‥?
でも八百万の神って‥茫漠としてますが、そのうちの一人ってことですかね。
荻原さんなので楽しみなのと、油断できないな~みたいな期待もあります(笑)

「天下人の茶」

伊東潤「天下人の茶」文藝春秋

2016年、第155回直木賞候補作ということで、読んでみました~初読みの作家さん。
なかなかの迫力です。

茶の湯がなぜ、戦国時代の終わりに、あれほど持てはやされたのか?
ふと一抹の疑問が浮かぶことがありますね。
織田信長が大名を支配するための新たな方策の一つとして、意図的に盛り立てたという。
戦って奪い取った土地を恩賞として分け与えるのには、限りがあったからだと。

秀吉も当初は千利休を重用しますが、しだいに葛藤が生じます。
侘び寂びを追及した利休だけれど、秀吉の派手好みは認めていたという解釈をとっています。
それは人真似でない本物の個性だから、のよう。

利休は堺の商人であり、武家と深く交わり、茶の湯という芸術を追い求めた、多面性のある人物。
多くの武家に気持ちのよりどころと安らぎを与えもしました。
弟子達にとっては、難解な発言をする厳しい師匠なのです。
牧村兵部、瀬田掃部、古田織部、細川忠興。
それぞれのやり方で、違う道を開いていく弟子達も、面白い。

利休がかなり意図的に政治を操作したというストーリー。
え、そこまで?という気もしますが~
殺すか殺されるかという危機もある中を、何とかして生き残っていく戦国時代。
皆が将来を真剣に見据え、天下のあるべき姿を思い描いていた時代だからこそ、そういうこともあり得たかも知れない!
ぞくっとする面白さがありました☆

「魔道師の月」

乾石智子「魔道師の月」創元推理文庫

「夜の写本師」に続く2作目。
同じシリーズで登場人物もダブりますが、続きというのとはちょっと違います。
若い魔道師二人の運命が帝国の危機に交錯し、さらに数百年前にまでさかのぼり絡み合う人々の物語。
コンスル帝国が繁栄を謳歌していた時代。
大地の魔道師のレイサンダーは、心のうちに闇を持たない半人前。
幸運の守りとして献上された<暗樹>が帝国を蝕んでいくとき、恐ろしいものだとはわかっても何をするすべもなく、城から逃げ出してしまう。
レイサンダーは追われる身に。

黒髪に緑の目で長身、という特徴がレイサンダーと似ていたキアルスは書物の魔道師。
心に深い傷を負い、衝動的に貴重な書物「タージの歌謡集」を燃やしてしまった。
レイサンダーと共に、不思議なタペストリーの中へと入っていくことになる‥

タペストリーに描かれているのは、かってコンスル帝国に侵略されて抵抗した人々。
一介の少年テイバドールが苦難を経て成長し、魔道師らの力添えを得て‥
古代を思わせる辺境の民人の暮らしに魅力があり、勇気ある決断を応援したくなります。

へたれの若者二人がこのタペストリーに学びながら、協力し合い、力を尽くしていく。
誰も見たことも聞いたこともない現象を、言葉の力だけでありありと描きあげていく筆力に感嘆しました。
結末は、それまでの濃厚さに比べると、急に終わる感じもなくはないですが。
希望の持てるシーンに、一気に風景が変わったところに自分も立っているような心地になりました☆

「三匹のおっさん ふたたび」

有川浩「三匹のおっさん ふたたび」新潮文庫

「三匹のおっさん」の続編。
元気なおっさん達が、町内のちょっとした事件や家族の直面する問題をめぐって活躍します。

剣道の達人のキヨ(清田清一)、がっちりした武闘派のシゲ(重雄)、一見大人しそうだが実は危険な頭脳派のノリ(則夫)。
3人が力を合わせれば、なんでも解決!

清田家の嫁・貴子はお嬢さん育ちで早く結婚し、舅から見ていささか危なっかしい女性でした。
一念発起してパートを始めますが、そこでトラブルが。
大人の女性も何かのきっかけや経験あって、少しずつ成長するのが頼もしい。

キヨの出入りする本屋では、中学生による万引きが多発。
キヨの孫息子・祐希は、見た目は万引き犯に間違われるような男子だけど、中身は真面目。
中学生をとっ捕まえたおっさんらは、しっかり説教。
祐希の存在も子供らには睨みが聞いたのが面白かったり。

ゴミの不法投棄、連続する不審火、近所のお祭りをどうするか、といった起こりそうな事件と絡めつつ、対抗するようにパトロールを始めた別なおっさんが出てきたりとユーモアも含めて。
身近なテーマでわかりやすく、まだまだ枯れないおっさん達の存在が嬉しくなります☆
頑張ってくれ!(笑)

「スクープのたまご」

大崎梢「スクープのたまご」文藝春秋

週刊誌に配属された新人の奮闘を描くお仕事小説。
地味な女の子を配したところがみそかな☆

信田日向子は、真面目で大人しい女の子。
老舗の出版社・千石社に奇跡的に入社することが出来て、最初はゆったりめのPR誌の仕事でテンポが合い、満足していました。
ところが、悪名高い週刊誌に突然の移動。
入社前にも、そこだけは嫌だと思っていたところなのに‥

地道な裏取りのために、話を聞けそうな相手に電話を入れたり、一軒一軒たずねていくのが主な仕事。
ほとんどは断られるか、何も知らないと言われてしまう仕事なのです。
ヒロイン同様、週刊誌の記事といえば~辣腕なライターが突撃取材してあざとく書き上げるようなイメージがありますよね。
正社員でない人間の書いたものを丸ごと信用するわけにはいかないと言われてみれば‥それは思わず納得。

悩みながらも少しずつ道を進み、方向性を見出していく日向子がすがすがしい。
子供っぽく見える容姿を生かす機会もあったり。
めったにないことだろうという気もするけれど、時には週刊誌の立場でしかつかめなかった事実を知って報道したり、事件解決にまで関わっていくことにも。
後半はミステリ要素も絡めて、面白く読めました。
週刊誌のイメージがちょっと変わりますね。
でも‥違う面もあるのでは?、という気もしないではないけれど(笑)

「ママがやった」

井上荒野「ママがやった」文藝春秋

「ママ」といっても79歳の女性がある日突然、「やった」わけとは‥?
ろくでなしの父親とその家族をめぐる連作短編が、とぼけた味わいで読ませます。

母親は小料理屋の女将。
父は7歳年下で、仕事はしたりしなかったりという有様ですが、何故か女心をひきつけるところがあり、別れてはまた性懲りもなく女を作っていました。
そんな夫との間に、三人の子をもうけた母親はどう考えて生きてきたのか‥
母親も含め、視点を変えて描かれます。
時子、文子、創太は、父にあきれつつ、自分の中にも少しは似たところがあるのではと感じている様子。

章のタイトルが傑作で、何とも苦いけど突き抜けたような軽みもあり。
少しずつ明かされる駄目夫の妙な感じとないようであるような存在感。
淡々と事態に対応しようとした家族もまた、何だか妙な感じ‥?

かなりブラック・ユーモアただよう内容。
誰にでもオススメするというわけにはいかないかも。
奇妙な味わいの連作短編と聞いて食指が動く人向け。
なかなか面白かったです☆

「書店ガール 4」

碧野圭「書店ガール 4」PHP文芸文庫

あ、書店ガールって、4も5も出てたんだ?とあわてて読みました。
主人公は西岡理子と小幡亜紀ではなく、バイトの愛奈と別な書店の彩加。
若い世代の就活などの話なので、より広い対象向けに、わかりやすく描かれていると思います。

新興堂書店でまだバイトを続けている高梨愛奈。
周りではもう就職活動が活発になり、「書店に就職するつもりなの」と聞かれます。
書店員は、けっこう重労働なわりに給料などは決して高くないので、普通は目指すべき仕事ではないらしい?
愛奈の友達に、あまり本を読む子がいないっていうのが、なんとも‥ですが(苦笑)
バイト先でのちょっとした出来事も、本好きには楽しいエピソードですね。

別な駅中書店で働く宮崎彩加は正社員になることができたが、地方の小さな書店の店長にと打診されます。
故郷の沼津では伯母が本屋をやっていて、近くに出来たパン屋と提携する話が持ち上がる‥?!
それぞれ本人にとっては大問題だけど、どろどろした状況ではなく、可能性が広がって面白いです。

4作目はドラマ化の頃に発行されたらしい。
ドラマは視聴率的に惨敗とのことですが~ちょっとキャラの性格やストーリーの狙いが絞りきれていなかったよね。
悪くはなかったんだけどなぁ。私は全部見ましたよ☆

「菜の花食堂のささやかな事件簿」

碧野圭「菜の花食堂のささやかな事件簿」(だいわ文庫)大和書房

小さな店でお料理教室をする先生と助手、生徒さんたち。
丁寧に料理を作りつつ、身近な困りごとを解決していくお話で、和みました。

東京郊外の古い町並みにある~菜の花食堂。
休業日に月2回行われる料理教室は大人気なのです。
オーナーの靖子先生は、さりげなく料理の基礎を取り入れながら、日常的に作りやすくて美味しいレシピを教えてくれるのですから。

婚約者に自慢の手料理を食べてもらったら、別れを告げられてしまった?
初老の男性が苦手だった茄子の、唯一食べられた料理とは‥
頼まれて買ったケーキが捨てられた背景には何があったのか。
元気なおばさんの不審な行動の理由は?

助手の優希は、職を失って困っているところを、たまたま靖子先生に助けられました。
かっての同僚に引っ掻き回されたとき、あとでバッサリ切ってくれる先生がかっこいい。

優しくて細やかで鋭い、しっかり者の先生は、出来すぎなぐらいですが~
意外なことに実の娘とは上手くいっていない。
子供が自立しようとするとき、出来すぎな親は実は厄介な難題なのかも?
それも解決へと向かう方向で、終幕へ。
ほのぼのする読後感で、とても素敵でした。

追記:昨日アップした記事が改行されていなかったので、やり直してみています。
水曜日の分は後ほど。

「黄金の烏」

阿部智里「黄金の烏」文藝春秋

八咫烏シリーズ3作目。
雪哉のもとに若宮が現れ、思わぬ事態に‥?!

2作目で朝廷に勤めに出たものの、若宮に忠誠を誓う気になれなかった雪哉は、故郷に戻って暮らしていました。
近くで思わぬ事件が起こり、若宮が訪ねて来ます。
危険な麻薬〈仙人蓋〉が出回っており、この地域でも異変が起きていると。
故郷を守るため、やむなく行動を共にする雪哉。
ぼんくらなふりをしているが、これがやれば出来る少年なのです(笑)

辺境の村が謎の大猿に襲われ、壊滅状態になっていました。
一人だけ生き残った少女・小梅は、なぜ助かったのか?
都まで同道し、事情を探る雪哉。
八咫烏の世界は侵食されつつある‥?!

雪哉がすぐ登場するのは予想通りだけど。
この世界の設定がだんだん明らかになり、これまでとは趣向が違うので面白く読めました。
嫌な人物のねっとり感も、一作目よりも安定した感があります。
若宮は好きな性格ではないけど、背負っている運命がこういう設定だったのかー‥と。
また違う展開で面白がらせてくれるかな☆

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