「宰領 隠蔽捜査5」

今野敏「隠蔽捜査5 宰領」新潮文庫

お気に入りのシリーズも5作目。
読みやすいので、少し読むのを延ばしていました。
一気に読み終わっちゃうので、もったいないから☆

大森警察署の署長・竜崎伸也は、もとは警察庁の官僚という大変なキャリア。
おそろしく堅物なのだが、合理主義者なため、じつは現場でも有能な男なのです。

警視庁の刑事部長の伊丹俊太郎から、衆議院議員の牛丸が行方不明になったという連絡を受けます。
牛丸を誘拐したという電話も来ましたが、神奈川からだったため、合同捜査が決定します。
じつは神奈川県警と警視庁は犬猿の仲?
前線本部に派遣された竜崎は、ピリピリした空気の中、本部がいっこうに機能していない様子に驚かされることに。 折りしも、竜崎の息子は浪人中で受験の時期を迎えており、家族も緊張していました。
そんなときに家を離れることになってしまったのですが‥
周りにはその心配を隠しているが署員にはバレバレの事情も抱えつつ。

横須賀で、対抗意識を剥き出しにする県警の刑事に手を焼きながらも、合理的に捜査方針を決めていく竜崎。
その判断の妥当さで捜査が進んでいき、当然のごとく、土地勘のある地元民を立てるやり方もとっていきます。
いつの間にか、納得していく刑事達。
そして、神奈川県警のSTSが現場で待機するクライマックスへ。

竜崎以外の人物がちょっと、おばかさんに見えてくるきらいはありますが~
ぐいぐい楽しく読めます。
幼馴染の伊丹との関係も、頑なな竜崎に対して伊丹の片思いっぽいのだが、相変わらず何となくにやにやさせられます。
そして、奥様のさすが、しっかりした賢夫人ぶり。
竜崎の考え方のスッキリしているところが、何と言っても、いいですね!

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「猫の形をした幸福」

若夫婦が猫を飼い、とても幸せに暮らしていましたが‥?
愛あふれる切ない物語。

小手鞠るい「猫の形をした幸福」ポプラ文庫

若夫婦が猫を飼い、とても幸せに暮らしていましたが‥?
愛あふれる切ない物語。

彩乃と未知男は見合いで出会って一目惚れ。
すぐに結婚して北米にわたります。
どちらもバツイチで、抱えているものもありました。
理想的な相手と、きれいな田舎町で暮らすことに。
まるで少女の夢見た物語のように、甘く可愛らしい展開。

保護施設で見つけた長毛のうつくしい雄猫マキシモ。
猫のことで毎日笑い、夢中になり、猫を中心にすっぽりと愛に包まれた暮らしが積み重なってゆきます。
そして16年。
猫の病気を見守る日々から、喪失へ。
これまでの幸福が暗転したかのように、苦しむことになります。

愛猫との暮らしぶりと、その後の嘆きがあまりにリアル。
設定は私小説というわけではないのでしょうが。
猫を見送った辛さを、こういう形で描かずには、乗り越えられなかったのかも。

夫婦でも悲しみ方にも違いがあり、慰め合おうにも当初は互いの顔を見ても悲しみが増すばかり。
やがて、二人の胸の中に同じ形をした空洞があると思うに至ります。
やっと少しずつ、気持ちの整理がつきかけたところまで描かれています。
まったく身動きの取れないようだったのが、いつしかさらさらと変化していく兆し。
そのことを救いに。

経験があるので、気持ちはわかりすぎるほどでした。
でもね‥出会えた喜びは、別れの辛さよりもきっと強いと思うんですよ。
悲しみは完全に消えることはないけれど、苦しみはだんだん薄れていってくれます。
そして、愛と幸せな思い出は、いつまでも続きます。

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「私のなかの彼女」

角田光代「私のなかの彼女」新潮社

プラチナ本という紹介があり、傑作を読み落としていたのか!?と読んでみました。
作家になる女性の話で、具体的には違っても、自伝的要素もあるのかもと思わせます。

本田和歌には、大学時代から、仙太郎という恋人がいました。
仙太郎はアーティストとして個性を認められ、ちょっとしたスターに。
とくにやりたいこともなく就職した和歌は、結婚を夢見つつ、置いていかれた気分。

祖母のタエが作家志望であったことを知り、どんなことがあったのか想像をめぐらして、初めて小説を書いてみます。
ボーナスでワープロを買い、記念にと応募した作品がなんと受賞。
母親には露骨に嫌がられますが、いつしか作家として生活することに。
祖母は若い頃、作家修行に先輩作家の元に身を寄せ、家族にとってはスキャンダルだったらしい?

売れなくなった仙太郎と、仕事に打ち込む一方の和歌とのすれ違い。
とうに別れてもいいのではと傍からは思うほどだけど、そんなものかも知れないですね‥
致命的なことが起きるまでは。

仕事にのめりこんでいく状態。
パートナーにわかってもらいたい気持ち、認めてほしい気持ち。
それが無理だと気づき始めても‥

祖母のタエについて少しずつわかっていくことがあり、そのときに応じて和歌の解釈も変わっていく。
最後のほうの解釈に救いが感じられます。
ちょっと痛いけど、それだけ、読み応えのある内容でした☆

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「野菜畑で見る夢は」

小手鞠るい「野菜畑で見る夢は」文春文庫

とても可愛らしい小説。
タイトル、表紙イラスト、作者名そのまんまです。
小手鞠るいさん、初読み。

3人の女性の恋模様が、いとおしむような雰囲気をまとった、わかりやすい文章で、さわやかに語られていくお話。
ひとつのエピソードが次の短編へと絡んでいき‥
ああ、そういうことだったのか?と。
恋愛部分はよく読めばビターな要素も少し入ってますが、そこにはほとんど触れられない。
わくわくしたり、きゅんきゅんしたり。
ちょっとした問題もいつしか、あま~く解決☆

美味しそうなお料理が出てくるのも楽しいですね。
毎回、野菜や料理が絡んでくるため、ちょっとした知識も頭に入ります。

とても読みやすいですが、甘すぎると感じる人もいるかも?
ここまで可愛らしいのって、そうないので~
こういうものが読みたい!
という気分のときなら、最高ですよね。
気持ちのいい木陰で、取れたてのお野菜と、小さなデザートを楽しみながら☆

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「猫の惑星」

梶尾真治「猫の惑星」PHP研究所

この惑星の支配者は猫?
少年と猫が冒険するファンタジーSF。

イクオは、シテンという閉ざされた場所で、大勢の子供たちと暮らしているという設定。
ある種の素質を持った子供が集められ、超能力の訓練を受けて、いずれは卒業?してどこかへ行ってしまう。
ふだんは「ママ」たちが世話をしてくれています。
シテンの長は「パパ」で、すべてはパパの指示にしたがって行われていました。
離れたところに、普通の町もあるらしい。

イクオは、中庭で猫を眺めるのが好きでした。
いつしか、その中のボス的な存在のウリという猫と、テレパシーが通じるようになります。
ある事件が起きて、シテンを脱出することになったイクオは出会う人たちを助け、助けられながら、共に町へ向かいます。
賢い猫のウリからは、思いがけない話を聞くことに。
ほかの猫たちも次第に集まってきて‥?

設定は意外に?しっかりしたSFらしい導入だけど、この小人数でどう展開するのかな、まとまるのかな‥?
と思っていると~
なるほど、短い期間だけど命の危機もあり、ちょっとした切なさもあり、書き込みは少ないけど、小人数の中での展望や決着もあり。
いい意味でも軽い意味でもジュブナイル。
猫たちの個性や賢さは、わかる感じだし~
悪くない読後感でした☆

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「今日も一日きみを見てた」

角田光代「今日も一日きみを見てた」角川書店

初めて猫を飼った角田光代さん。
おずおずと可愛がり、感嘆し、だんだんと愛が深まっていく様子が、控えめな筆致で描かれています。

猫好きなら、わかるわかるの連発!
最初は犬派だった作者が書いているので、猫好きでない人にも、入っていけるでしょう。

トトちゃんの、なんて可愛らしいこと。
大きな目、柔らかい身体、お茶目な態度、優美なポーズ。
そっと寄りそってくれる猫らしい優しさと、猫らしくない?ちょっと、とぼけたところも(笑)
角田さんとダンナさまの撮った写真ならではの、信頼感溢れるくつろぎぶり。
見ているだけで、癒されますね。

どちらかといえば犬派と自認していた角田さん。
大ファンである作家(西原理恵子)さんから、いきなり、子猫が生まれたら欲しいならあげるという話をされて、驚きつつも、もともと猫好きなご主人は大喜び。もちろん、否やはありません。
ドキドキしながら一緒に、子猫が生まれるのを待つのです。
そして、後に‥
なぜ、あのとき、子猫をあげるといわれたのか、がわかり‥

猫飼いはすべての猫の幸せを願うようになる。
そのわけとは‥
共に暮らし、目で追い、触れ合い、心通い合う。
この幸せを多くの人が実感してくれますように。
出来るだけ長く続きますように☆

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神戸屋のグリルランチ、そして

150718_132956友達と東京駅で待ち合わせ、とある美術館へ向かいました。
展覧会を見る前に~まずはランチです。
神戸屋のレストランがあるというので、そこへ。
ちょっと奮発して~
パンはお代わり自由、飲み物ではコーヒーもそうなのです。
コーヒーを先に持ってきてもらって☆
パンは席まで持ってきてくれるので、2回選びました。
150718_134325
パンをお代わりできるなら、パスタよりも‥
メインは「カサゴとカレイのグリル、2色ソース」に☆

150718_1343432色ソースとは、イタリアンソースとルッコラソース。

う~ん、美味しい!

150718_153503そして、目的地がこちら。

150718_1534203階の通路から中庭を見たところ~三菱一号館美術館です。


150718_155718撮影可の巨大ポスター。

化け猫に驚いている絵ですが~
ほんとの猫をモデルに描いているのがありありの猫が可愛くって[かわいい][ぴかぴか(新しい)]
三菱一号館美術館の「画鬼・暁斎展」
狩野派の日本画家で、ありとあらゆるものを描いた鬼才・河鍋暁斎の展覧会。
面白かったです!

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「鴨川食堂」

柏井壽「鴨川食堂」小学館

京都の小さな店で、思い出の料理を捜し、再現してくれるという。
美味しそうな料理とあったかい名推理に、ほっこりします。

何の変哲もない家で、看板も出さずにやっている鴨川食堂の料理人は、鴨川流。
つまり、地名ではなく苗字なのです。
料理専門誌に一行出した広告を見て、訪ねてくる人々。
娘の鴨川こいしが事情を聞き取り、調査するのと料理するのは父親の流。
何気ない父娘の会話にも、ほのぼの。

亡き妻が作ってくれた鍋焼きうどんを、土地を離れる前にもう一度、食べたい。
55年前に初恋の人と食べたビーフシチューの味は。
子供の頃に近所の女将さんに食べさせてもらった鯖寿司の独特な味は。
他にも、とんかつ、ナポリタン、肉じゃが、と、誰にでも懐かしさのあるお料理。
そんな忘れられない料理を作ってくれた人にも、料理にこめた思いが‥
それぞれに人生の転機を迎えて、思い出の味を食べたくなるのにも理由があるのでした。

作者は、京料理の監修などの仕事もし、本も出してきた人だそう。
いろいろな土地の昔の料理についての知識も、半端ないわけです。
さらに別名義・柏木圭一郎でのミステリ作家でもあるのですね。

この作品は、謎解きの過程や苦労は詳しく書かれておらず、調べたことと料理の腕がすらっと披露されます。
人情味あるお話ですが、その辺はややあっさりした印象。
こいしちゃんをもっと活躍させたほうがいいんじゃないかな。
さらりと読めて、ひたすら美味しそう!
さりげなく最初に出されるおまかせの料理もすごく美味しそうなので、通りがかりにこれだけでも食べさせてもらえたらなぁ~‥と、よだれが出そうになりますね(笑)

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「破門」

黒川博行「破門」角川書店

直木賞受賞作ということで読んでみました。
疫病神シリーズの5作目らしい。

建設コンサルタントの二宮はいちおう堅気なのですが、亡き父がヤクザだった縁で、いろいろ繋がりがあり、それで仕事もしていました。
収入は減り気味で困っていますが、優しい母親に借金し、何とかやりくりしています。
迷い込んだオカメインコのマキちゃん(自分で名乗っていて良く喋る)の世話をしたりと、けっこうのんきな暮らしぶり。
事務所によく顔を出す従妹の悠紀には、啓ちゃんと呼ばれて仲良くしていました。

ただ、二宮には腐れ縁の桑原がいたのです。
気の荒いザ・ヤクザの桑原に妙に気に入られ、何かと振り回される毎日なのでした。
二宮を啓坊と呼ぶ若頭の嶋田が映画に出資するという話に、桑原も乗ったはいいけれど、プロデューサーの小清水が金を持って行方をくらましてしまう。
金の行方を追いつつ、絡んでくるヤクザと喧嘩になったり、組同士の揉め事から身を隠したり、マカオに渡ってギャンブルにはまったりと忙しい。

テンポのよい会話で追いつ追われつの事件が飽きさせずに展開、意外ととぼけた要素も多いです。
お金が全くないかと思えば、急に美味しい物を食べるためにぱーっと使ってしまう。
高そうな店の名前や料理名は多いけど、具体的に美味しそうに書かれてはいません。
さすがに読み通せるけど‥結局、共感できる内容ではないですねえ。

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「木皿食堂」

木皿泉「木皿食堂」双葉社

脚本家・木皿泉のエッセイや対談集。
「すいか」「野ブタ。をプロデュース」「Q10」などで知られる夫婦の合作ペンネームです。
小説の「昨夜のカレー、明日のパン」が面白かったので、読んでみました。

全体としては、作品を書き上げるのに苦闘する様子が一番印象に残りました。
脚本家というのは視聴率のプレッシャーがあって大変だろうとは思うものの、ここまでのたうち回る仕事だとは。
ところどころにきらりと光る言葉があって、なるほど、そこまで言葉を大事にしているから、この文脈でこう出てくるのだろうと。
人に何を届けたいのか。
何が幸せなのか、そこにいていいのか‥
どうやって伝えるのか。葛藤しつつ生み出しているんですね。

漫画家の羽海野チカとの対談は、微笑ましいです。
羽海野さんが必死で書いている様子は内容からもあとがきからも以前から想像がついていたので、似たもの同士理解し会える人に出会えてよかったねー‥と。

「Q10」は好きでしたねー。
「すいか」はよく覚えていないし、「野ブタ」はちょっとしか見ていないので、細かいところとどう照らし合わせるような話なのかがはっきりわからなくて、残念。
普通の恋愛物を書きたくないという人だというのは、言われてみれば、なるほど、です。
美男美女の俳優が誰がやってもいい恋愛のプロセスをたどるだけ、という恋愛もの批判はちょっと謎でしたが。
時期的にも、ちょうど恋愛ものが飽きられてきたタイミングだったようです。

茫洋としていてたまに神様のような発言をするという木皿泉(男)という旦那さん。
言葉数多く、どんどん書くのと同じようにどんどん話題にも食い込んでいく印象の木皿泉(女)さん。
夫が大福、妻がかっぱというあだ名で載っている対談もあります。
病に倒れた旦那さんを介護しながらの生活。
受け止めてくれる、甘えてもらえることが幸せだという。
性格はドライと言いつつ、ご夫婦のお互いをかけがえがない大事な存在としている様子が伝わってきて、じわじわ心温まりました。

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