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「愛の旋律」

アガサ・クリスティー「愛の旋律」ハヤカワ文庫

アガサ・クリスティが別名義で発表した、ミステリではない小説。
クリスティの人生に波乱が起きた後に書かれた長編で、ドラマチックで面白い。
渾身の出来に、さまざまな思いが浮かびます。

原題は「巨人の糧」で、天才は才能にすべてを捧げつくすといった意味合いが主で、さらに二重の意味も‥
オペラ劇場で画期的な新作「巨人」が公演され、評判となるプロローグ。

さかのぼって、作曲家ヴァーノン・デイアの子供時代から。
幼いヴァーノンは内気で、空想の友達と遊んでいました。
みごとな邸宅でナースと女中達に囲まれ、裕福に育ったのですが。
実は父は邸宅を維持するために結婚し、母は留守がちな父をなじり、喧嘩が絶えない。
生命力豊かで美しいが夫を理解しない、やや愚かしい母親。この母のイメージがいささか強烈ですが、この後に出てくる人たちも皆どこかで、愛しても思うようにならない葛藤を抱えることになるのです。

奔放な従妹のジョーと、隣人のセバスチャン・レヴィンが親友となり、3人の長い付き合いが続くことになります。
幼馴染のネルが美しく成長し、社交界で結婚相手を探していました。ヴァーノンと恋に落ちますが、ネルの母は借金を抱えていて‥
ヴァーノンは就職しましたが、それでは自分の実家を維持する費用もないのです。

子供の頃は音楽が苦手だったヴァーノンは、実は天才だった。
すべてを得ようとして得られず悩む彼の前に、ジェーンという年上の女性が現れます。
自由な生き方をしている才能ある歌手なのですが、オペラを歌うには声が細く、喉をつぶす危険を冒していました。
裕福な相手とヴァーノンの間で迷うネル。
ネルとジェーンの間で揺れる運命となるヴァーノン。
そして、第一次世界大戦が‥
行方不明になったヴァーノンは‥?

評判のテレビドラマ「ダウントン・アビー」と近い時代なので、似たモチーフもあり、服装は大体ああいう格好ですね。
アガサ・クリスティは、家庭でユニークな母(ただし夫婦仲はよい)に教育を受け、内気な子供だったよう。オペラ歌手を目指していた時期もあり、天才を目の当たりに見た経験もあるのでしょう。

夫の愛人発覚、自身の一時的記憶喪失、離婚、再婚という波乱を経て、登場人物のいろいろな面に経験を生かしているようです。
ミステリでは描ききれなかった思いがほとばしるよう。
あるいは、作家としての成功が夫との亀裂を招いたという思いもあるのかも‥
(ハンサムな最初の夫とはあまり共通点がなく、クリスティの作品ではハンサムな男性はたいてい悪党なのはそのせいかもしれません?!)
めでたく再婚した年に発表された小説ですが、書かれたのはもっと前でしょう。
ハッピーエンドとは言い切れないのですが。オーケストラのように盛り上がる構成に、苦難を乗り越えて生きていく力強さも感じられます。

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