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「ペテロの葬列」

宮部みゆき「ペテロの葬列」集英社

「誰か」「名もなき毒」に続く杉村三郎シリーズ3作目。
ドラマ化もされて放映されました。

日常に潜む悪がテーマのシリーズ。
杉村はごく穏やかな妻子ある30代男性で、その人のよさが救いとなっています。

今回はバスジャック事件が起きるという出だしで、しょっぱなから事件性が高い。
仕事で海辺の町に住むかっての社員にインタビューに行った帰り、女性編集長の園田とともにバスジャックの人質となってしまいます。
犯人は言葉巧みな老人で、人質達は言われるがままになり、緊張しつつも非現実的な感覚になっていました。
ピストルを持っていて、本気だとはわかるのですが、どこか紳士的で、しかも事件に巻き込んだ慰謝料を後から送るという奇想天外な提案をします。
小さな工場を経営している中年男性は、金の話に目の色を変えるのでした。
若い男女にも、それぞれにお金が欲しい理由はあった‥

杉村は何か出来ないかと模索しつつ、うっかり手は出せずに推移を見守ります。
バスジャック犯の老人にも、冷静で頼りになる、事件に慣れているのではと指摘されるほどでしたが。
しっかり者のはずの園田はひどく動揺している様子を見せ、早めにバスから降ろされます。
何が原因で、それほど動揺したのか?

人質だった人たちは、その後も何度か相談に集まることになります。
ハイジャック事件の理由が、少しずつわかってきて、それは現実に起きた事件を思わせ、かなり怖いです。
人の気持ちをコントロールしようとしたセミナーがかってあり、後にそれを金儲けに利用しようとした人間も少なからずいた。
儲け話に引き込まれた人間が、また仲間を引き入れ、成績を上げようともくろむ‥
そういう悪が現実に犯罪として今も広がっていることを思うと‥
こういう社会的に大きな影響がある問題を取り上げ、変わった角度で描いていく力量はさすが。

杉村の置かれている微妙な立場が、これまでより以上に延々と書き込まれているその理由とは‥
杉村三郎は菜穂子と恋に落ち、結婚の条件として、菜穂子の父の経営する会社に入りました。
今多コンツェルンの会長に直属する社誌編集部員となったのです。
菜穂子は会長の愛人だった画廊経営者の娘で、母の死後引き取られ、何不自由ない財産を分け与えられていましたが、会社の経営に関しては何の力もないという条件付きのことでした。
杉村は会長の娘のヒモ呼ばわりされ、実の両親から結婚に猛反対され、ほぼ義絶しています。
兄や姉は連絡をよこしますが。
‥‥そこまで反対するようなことなんですかね?

何年かたつうちに和解するのが普通なんじゃないかな。
菜穂子は待ちきれなかったというか。
夫の立場の苦しみを気に病み、不満に違いないと思ったらしい。
夫の浮気を疑い、何が大事なのかを見失ったような行動をとります。

杉村が気づかなかった菜穂子の苦しみもあると思いますけどね。
愛人の娘という立場だし、菜穂子の耳に毒を注ぎ込む輩にも事欠かなかったよう。これが悪のような気も‥
杉村のほうは、嫌な視線や閉塞感にも耐えていけそうな人間でした。
とはいえ事件に夢中になったのは、しだいに内側でストレスが高じていたせいかもしれない。
義父である会長を尊敬するあまり、菜穂子を自分の妻というより大事な預かり物のように見るようになっていたような。
妻が一番望んでいることを与えられなかったのか‥
まあ、ないものねだりというか、すべてを望むあまり、ぶち壊すって、子供か?ってとこですが。
妻のほうは、本人すら気づいていなかった夫の苦しみに気づいていたともいえます。
肝心なことを互いに話していない夫婦だったようですね。

違う立場となった杉村が主人公の事件話も今後、書かれるのでしょうか。
今回の後味を払拭してくれるといいのですが。

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