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「まぐだら屋のマリア」

原田マハ「まぐだら屋のマリア」幻冬舎

出奔した青年が降り立った尽果(つきはて)という町。
崖っぷちの店「まぐだら屋」で出会った女性は‥

及川紫紋は、神楽坂の老舗料亭「吟遊」に勤めていました。
いつか店を持つ夢を抱いて、下働きでいいと飛び込んで5年。
ところが店は偽装問題で告発され、紫紋も事件に巻き込まれてしまいます。
死を覚悟して放浪の末、たどり着いたのは「尽果」というバス停。
「まぐだら屋」という小さな店からは美味しそうな匂いが漂い、思いがけず美しい女性マリアが料理していたのです。
店を手伝うことになった紫紋は、謎めいた年上のマリアに惹かれて行きます。

店の持ち主に会うために出向くと、白髪の老女がマリアに露骨な憎しみを向けるのに驚かされます。
老女は町の有力者の桐江だったが、紫紋の料理を気に入り、マリアに惚れないことだけを条件に、正式に雇うことを許したのでした。

精錬所に勤める男達が食事にやってくるほか、尽果の町には、時には絶望した人間が吹き溜まるように現れます。
そんな人々を深く問うことなく受け入れる土地柄でした。
行き倒れていた若者は丸弧と名乗り、4年間引きこもりだったと語ります。

それぞれに重い過去を背負った人間が、身体を動かして食べ物を用意し、生きていることを実感しながら日々を送るうちに、いつしか過去に立ち向かうときを迎える。
現実にあった事件、ありそうな問題を取り入れ、原田さんにしては湿度の高い日本的なねっとりした小説という印象。
苦しみを抱えている様子も、しだいに立ち直るきっかけもわかりやすく、料理はとても美味しそう。
息子を待ち続ける母親の存在の大きさを感じさせる内容ですね。

登場人物は皆、聖書にちなんだ名前で、女性の通称がマリアなのは違和感なく、マグダラのマリアも罪を償う女性というイメージ。
(「まぐだら屋」の意味は違うんですけどね)
聖書の昔から、人の罪や迷い、その償いや再生には通じるところがあるというイメージでしょうか。
紫紋の名前は、キリストの弟子であることを否認して後悔したシモン・ペテロにちなんでいるのでしょうが~音はともかく、こんな漢字、男の子につけるかなあ。それに与羽はまだしも丸弧って‥どうしてもという必然性もないわりに、漢字のセンスがちょっと感情移入を邪魔するところが^^;

絶望から再生するストーリーはあたたかく、読み応えがありました。
きらきらと輝くような印象で、旅立ちも前向きに終わるところが素敵です。
2009年から連載したものに加筆して2011年7月刊行の作品。

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