フォト

おすすめ本

« インドカレーでランチ | トップページ | バービーの赤い服を着るアメリ »

「源氏物語 紫の結び <3>」

荻原規子「源氏物語 紫の結び <3>」理論社

脇筋を省略した荻原規子版・源氏物語。
光源氏が「女三の宮」を正妻として迎え入れていて、波乱の生涯も終盤です。

光源氏の娘の「明石の姫君」は、春宮(皇太子)の妃となっていますが、めでたく懐妊して里帰りしてきます。
「紫の上」にとっては、育ててきた娘。
姫君と対面するついでに、女三の宮(先帝・朱雀院の三女)とも会うことに。
まだ幼さの残る女三の宮は、実質的な正妻である紫の上が若々しいので、親しみを覚えるのでした。

身分の高い女三の宮(天皇の三女)の降嫁で正妻の座を奪われた紫の上は、内心の失望を表には見せません。
ただ、何度も出家したいと源氏に訴えます。
源氏はとんでもないと却下し、その気持ちもわかりますが、二度目三度目ともなったら、紫の上の心をもっと深く思いやるべきでしたよね。
さらに美しくなってきた紫の上に対する源氏の愛情は、かえって増すばかりだったにもかかわらず‥
その辺の成り行きを描ききる紫式部って、なんて頭がよくて意地悪なんだ!と千年も昔の女性作家の観察力と筆力に脱帽です。

紫の上が倒れた後は、そちらにかかりきりとなり、女三の宮は放置状態。
少女だった三の宮も、この頃は20歳ほどになっています。
そして、前々から三の宮に憧れていた柏木が、一目だけでも会いたいと思いを募らせ‥
三の宮に仕えている女房たちは若く華やかだがあまり賢いとはいえない。そんな環境で起きてしまったこと‥
源氏は驚愕しますが、若き日に藤壺の宮を愛したことで父の帝を裏切った自分の因果応報を思うのでした。
紫の上を亡くした後は、かくも光り輝き続けた源氏の命運もついに衰えを見せます。
やはり最愛の女性であったのでしょう。

荻原さんは、このあたりが一番書きたかったのかと思える力の入り方で、読み応えがありました。
紫の上の辛さがよくわかるため、ちょっと読んでいて気持ちが落ち込みますが。
この部分、確かに話のポイントではあるのですが、他のバージョンだと他の色んなことに紛れて、そんなに突きつけられる印象はなかったんですよ。
あとがきで、さらに念押しされます(苦笑)

源氏物語をあまり好きじゃない人の一番の理由は、あまりにも大勢の女性を相手にした話っていうことじゃないでしょうか。
いけいけのプレイボーイの話的な。いや、そうなるには理由があるし(物語の成立が恋愛のエピソードを集めたところから始まってるっていうこともあり)、いい思いばかりはしてないですよって。
二番目は、嘆き憂う部分が多いしんねりむっつりした印象?
どっちも一面ですが、当時の結婚形態や身分社会の様相、読まれた背景などがわかってくると、あまりに的確な描写に恐れ入る感じなんですよね。
物憂げなようで、こんなにビシバシ怜悧に鋭く描かれた話だったとは。
宮中というのは、それだけ女性の感性が研ぎ澄まされる環境だったってことかな。

« インドカレーでランチ | トップページ | バービーの赤い服を着るアメリ »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/145558/59803762

この記事へのトラックバック一覧です: 「源氏物語 紫の結び <3>」:

« インドカレーでランチ | トップページ | バービーの赤い服を着るアメリ »

2018年8月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

カテゴリー

無料ブログはココログ

最近のトラックバック