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「あずかりやさん」

大山淳子「あずかりやさん」ポプラ社

商店街にある小さな店、そこは‥
何でも預かってくれる「あずかりやさん」の物語。
ほのぼのと切ない、心休まる空間での出来事です。

明日町こんぺいとう商店街の西のはじにある目立たない店。
藍染めのシンプルなのれんに、やさしい「さとう」の文字が抜かれているだけ。
空っぽのガラスケースの向こうの薄暗い部屋で、本を読んでいるのは店主の桐島透。
目が見えない青年の物静かなたたずまい。

一日百円で、何でも預かってくれるのです。
料金は前払いで、取りに来なければ店のものとなり、使えるものは使う、売れるものは売る、処分するしかないものは処分するという。
どうするか決めかねるものや、家において置けない事情があるものを預けに来る人たち。

点字の本を届けてくれる相沢さん。
紙を預けていく小学生の女の子。
何年も前に、事件を起こした危険なものを預けていった男。
人に託されたかばんを持ってきた少年。
大事な書類を預けていく執事。
高性能な自転車とお古のあずき色のママチャリを交互に預けていく男の子。
自転車の気持ちが泣ける‥!

視点がほとんど人間でなく、のれんに自転車、ガラスケース、猫と変わっていき、これが過不足なく描かれているところは上手いですね。
そのために店主の家庭の事情もなかなかはっきりはしないのですが、物と人との関わり方に感じるものがありました。
一人暮らしの静謐さと、おだやかな彼の淡々とした寛大さ、心がまれに揺れ動く様子、瀕死の子猫を育てた懸命さも、しんみりと心に入ってきます。

店主の手のひらで息を吹き返し、そのとき生まれたと思っている白い猫。
「社長」という名前を貰うが、ポーチドエッグがいいと思っている可愛さ。
猫の語りは一番わかるところで、そうねえ、そうだよねえ‥と陽だまりにいる猫ちゃんに、微笑みかけたい気持ちに。

テイストとしては「コンビニたそがれ堂」が近いかな? 「薬指の標本」というよりは。
もっと言葉少なく抑えた筆致ですが、ほのぼのと心温まります。

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