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「いつも彼らはどこかに」

小川洋子「いつも彼らはどこかに」新潮社

どこかに動物が絡んでくる短編を集めたもの。
小川洋子さんらしい、ひそやかで切ない、心あたたまるというか、心が鎮まるような世界です。

「帯同馬」
スーパーで試食販売の仕事を続けている女性。
モノレールで行ける範囲に限っていました。その理由とは。
フランスで開催される競馬の凱旋門賞に出る名馬の緊張を和らげるため、付き添いで行く帯同馬に、思いをはせる‥

「ビーバーの小枝」
20年も自作を翻訳してくれていた翻訳者が亡くなり、家を訪問する作家。
森の中にある家は快適で、その森にはビーバーが住んでいます。
翻訳家はビーバーが齧った小枝を机の上に乗せていました。

「ハモニカ兎」
町のシンボルであるハモニカ兎。
その看板に、「オリンピックまであと何日」という日めくりが掛けられ、それをめくる仕事を担当する男。
ところが‥?

「目隠しされた小鷺」
修理屋の老人はなぜか「アルルの女」をテーマ曲に流していました。
小さな美術館の受付をしている女性は、老人がたびたび来館するため、しだいに顔なじみになります。
修理屋もほとんど客がないようでしたが、ある日‥

「愛犬ベネディクト」
学校に行かなくなってしまった妹は、ドールハウス作りに熱中するようになりました。
妹の入院中、愛犬ベネディクトの世話を頼まれる兄と祖父。
ベネディクトとは‥

「チーター準備中」
hを手放してから何年たつか、考えないことにしている女性。
動物園の売店で働いているたある日、チーター(Cheetah)のスペルにhが入っていることに気づきます。

「断食蝸牛」
断食施療院に入院している女性。
風車を見物に行くのを楽しみにしていましたが‥思わぬことに?

「竜の子幼稚園」
調理補助の仕事を定年で辞めた後、身代わり旅人の仕事に就いた女性。
身代わりガラスに依頼主の決めた小さなものを入れて首にぶら下げ、代わりに各地へ出向くのです。
代わりというよりも、一緒に行く気配を感じ取っていました‥

センスのいいタイトルで、中身を期待させますね。
淡々と働いている人々のささやかなこだわり、胸の奥にある悲しみ、目に映る光景の中のきらめき、意外なことが呼び起こす一瞬の思い。
丁寧な文章に吸い込まれるように、どこかの世界に自分も入り込んでいる‥
切なさとともに、じんわりと染み入るように、静かな喜びがこみ上げてきます。

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