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「母性」

湊かなえ「母性」新潮社

この作者でこのタイトル。
怖い。

女性には、母になれる人と、娘でいたい人がいる。
母性は誰にでもあるものだろうか?
という問いかけ。
やはり重い話でしたが、殺人事件というわけではなく、中心になる祖母、母、孫娘の三世代は‥嫌な人間というほどではなかったかな。
母は状況が過酷なためにこうなったという感じで。

ある事件の報道を皮切りに、母の手記と娘の手記が交互に。
やさしく愛情深く教養もある祖母に育てられた母は、結婚しても子供が出来ても実家の母親を頼りにしていました。
結婚も母親が褒めた相手だから応じた面があり、母親に褒められたい一心で、何事もする傾向がありました。
しだいに親離れできていけば、それでよかったのかもしれないのですが‥

ある災害をきっかけに、祖母は命を落とし、一家は夫の実家に身を寄せることに。
地方のことで、姑はきつく当たり、お嬢さん育ちの若妻に慣れない農作業までのしかかります。それに対して夫はかばうこともありませんでした。
幼い娘は母を慕っていますが、母を守ろうと姑に逆らうことは、疲れ果てた母の困惑を招くだけ。
そんな二人を見るのが内心つらい夫。

夫がどういう人間なのかは、後半でだんだん明らかになります。
祖父が暴力をふるう家庭で、のこされた祖母に逆らうことも出来なかった。
妻の味方をすれば、火に油を注いでしまうから。
「お母さんは頭が良い人だから言わなくてもわかってる」と娘に言うのですが、どうかなあ‥それがそもそもの誤解ってことですか。
あんなにつらい目にあわせて、放っておいて良いわけ?
ありがちなことだという現実も、まったくわからないではないけど。
誰がサイテーなのかっていうと‥
夫? 実の子だけを可愛がる姑? その亡き夫?

逆に出来すぎの亡きおばあちゃんにもある意味、原因はありますね。
母に愛されていると思えない寂しさを抱えた孫娘。
おばあちゃんだけが無償の愛をくれたと感じています。
母のほうは、娘を愛しきれないということばかりで悩んでいるわけではないんですね。娘のほうに拒否された感覚もある。
心に傷を抱えてはいるけど、はたの人間が思うのとは、ずれがあるんじゃないかなあ‥
などと色々、考えさせられました。

近所の人との付き合いや、義妹の動向に振り回されつつ、しだいに友達も出来て、年月は過ぎ行く。
迷い、ぶつかり合う家族の長い葛藤を描ききった力作でした。
結末は穏やかです。

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