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「褐色の文豪」

佐藤賢一「褐色の文豪」文藝春秋

アレクサンドル・デュマ3部作の真ん中。
波乱の人生を送った同じ名前の三世代を描いたもの。
伝記的な小説です。
一番有名な大デュマから読んでみました。

ナポレオンの時代に将軍にまでなった父アレクサンドルは、カリブ海の植民地(今のハイチ)人を母に持つ黒い肌の大男。
その息子アレクサンドルは、幼い頃に父をなくし、女手ひとつで育てられます。
父よりは薄い色ですが~褐色の肌にちりちりの髪、ぎょろりと大きな目、エネルギッシュな性格は父譲り。
母には溺愛され、そのせいか楽天的な性格に育ちます。
亡き父の話を理想化して思い描いていて、それが幸せでもあったのですが、父にはかなわないという葛藤もどこかに抱いていたらしい。

ナポレオンが敗走してくるのを目撃、英雄の時代は終わったと子供心に思います。
公証人事務所の助手になりますが、身が入らない。
4歳年上の女性と恋仲になっても、双方の親の猛反対で引き裂かれます。

友人ルーヴァンと語り合い、パリに出て劇作家になろうと夢見ます。
当初はそれほど文学青年というわけでもなかったようなのですが。
達筆だったので、オルレアン公の事務所の秘書という仕事口を紹介してもらえます。オルレアン公の図書室の本が読み放題でした。
当時の有名作家ノディエに脚本を持ち込み、面白く描写する天性の才能を見出され、劇作家として成功。
パリでもカトリーヌという年上の恋人が出来ますが、母の反対を恐れて愛人のまま。最初の子供アレクサンドルのことはすごく可愛がるのですが。
母をパリに呼び寄せた後も隠し通します。こういういきさつだったのね‥
周りの人間がデュマを心配したり、嫉妬したり、ああでもないこうでもないと悩むシーンが多く、それも読みどころ。

同じ年齢で早くから天才詩人と認められていたヴィクトル・ユゴーが、突然出てきたデュマの活躍に、プライドを刺激される様子も。
あの「レ・ミゼラブル」を描く前の段階ですね。
「三銃士」のアラミスのモデルが、ユゴーというのは、どうなんでしょう?
理屈っぽくてプライドが高いが、けっこう女好きという‥(笑)

革命後の19世紀フランスは、体制が二転三転していました。
それも時代を追って描かれるので、わかりやすいですよ。
血の気が多いデュマは、将軍だった父の息子だという思いもあって、何かあると参加したがります。
危地に飛び込んでの活躍も、実際にあったのは驚き!

産業革命が進む時代でもあり、新聞が出始めた時代だったというのも、そうだったのかと。
識字率があがったため、新聞を読める人間が増えましたが、あまり固い内容や難しいものは読みこなせない。そこで新聞小説に人気が集まり、そこでデュマの「三銃士」と「モンテクリスト伯」が大ヒット。
モンテクリスト伯が住んでいたような宮殿を手に入れるまでになります。

デュマは歴史資料の下調べを助手に頼んだり、売れない若い作家の原稿に手を入れて世に出したりしていました。デュマが2割ほど手を加えると、魔法のように面白くなるのです。
それはしまいに、デュマ工房というべき体制に。
盗作疑惑の本まで出ますが、助手達は自分の担当だけしていればいいのでデュマの御殿でのんびり飲み食いし、好きなだけ金を持ち出す暮らしぶり。
デュマのほうは、寝る間を惜しんで加筆し続ける状態だったという。

イタリア統一をめぐってガリバルディに協力、充実感を味わったらしい。
ガリバルディの失脚後もしばらくはイタリアにとどまり、ガリバルディとの約束を果たそうとしていたほど。帰国後は力尽きたようにパワーが衰えてしまったそう。それまでの破天荒な活躍で、十分生ききったのだろうとは思いますが。
息子の小デュマは、あちこちにいる愛人の子供達の世話をし続けたそうです。
自分は父に愛されたからと。

地元の友人でともにパリに出てきたルーヴァンは、スウェーデン貴族の末裔。文学の素養はデュマよりもありましたが、作家としてはあまり成功せずじまい。晩年にデュマのところを訪れるシーンも面白い。
デュマの息子とはずっと親しくしていたそうで、ほほえましい。

ドラマチックで、読み応えがありました!

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