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「湿地」

アーナルデュル・インドリダソン「湿地」東京創元社

アイスランドの巨匠、初登場。
北欧五カ国のミステリの中で最優秀と認められる「銀の鍵賞」を受賞した作品。

アイスランド共和国の首都レイキャビク。
北の湿地(ノルデュミリ)にあるアパートで、ホルベルクという老人が発見されました。
ずさんで不器用な突発的な強盗殺人のようで、最初は典型的な「アイスランドの殺人」(自嘲的にこう呼ぶらしい)かと思われたのです。
しかし、現場に残されたカードには、三つの単語からなるメッセージが。
計画的な犯行か?
レイキャビク警察の犯罪捜査官エーレンデュルの捜査が始まります。

エーレンデュルは、昇進を断ってまで現場にこだわり続けるベテランの警官。
上司も同僚も,、エーレンデュルの言うことはそのまま通すようになっています。
若いシグルデュル=オーリは、新しい捜査法に通じている違うタイプだし、女性警官のエーリンボルクも不満を感じることがあるようでした。

ホルベルクを調べていくと、過去にレイプで訴えられていました。
応対した警官がひどい態度をとったらしく、女性は訴えを取り下げていたのですが‥
ホルベルクの複雑な過去が、しだいに明らかに。

こういう題材にしては書き込みは少なめですが、文体にある種心地よい緊張がみなぎり、できるだけ簡潔にしようとしている意図が伝わってきます。
読みなれている人なら、途中から展開も読めると思いますが。
アイスランドならではのある事情を背景に、何の罪もない人に起きた思いがけない出来事の痛みがなんとも‥言葉を失う思いにさせられます。
しみじみと哀切な印象が長く残る、やはりこれは傑作でした。

エーレンデュルは、もじゃもじゃの髪の大男で、50歳になります。
別れた妻とは、20年も会っていません。
子供二人と会うこともできなかったのですが、子供のほうが、大きくなってから父親を探し当てました。
エーレンデュルは両手を広げて迎えましたが、子供達は悲惨な状態にありました。
娘のエヴァ=リンドの抱える闇は深く、薬を買うための金をせびりにきます。息子は少しだけましですが更生中というか。
間に合ううちに子供達を捜さなかったことを深く後悔し、できるだけのことをしようとしているのでした。
エヴァ=リンドとのやりとりが短いけれど、たびたび出てきて、印象としてはかなりの比重を占めています。
緊迫して救いがない苦痛に満ちた関係のようでいて、立ち直りたいという気持ちがないでもないエヴァ=リンドの様子に、目を開かされます。
妊娠したエヴァ=リンドが、エーレンデュルの苦しみに寄り添おうとするシーンも。
シリーズを読み続けていたら、ここは感動的なところだろうと察せられます。

アイスランドは、北海道と四国を合わせたほどの国土に、人口は32万人。
そのうち20万人が都市に住む。
火山が多く、家の暖房は地熱でまかなわれているとか。
人の正式名は名前のみで、電話帳も名前のみ。
家の名というものはなく、姓にあたるものは、親の名前にその息子、その娘という意味がつくものしかない。
インドリダソンというのはインドリディの息子という意味。

著者は1961年レイキャビク生まれ。
父親は高名な作家で、インドリディという名前。
新聞社に就職、後に映画評論家となる。1997年にエーレンデュルのシリーズ第1作で作家デビュー。
小さな国なので連続殺人やカーチェイスなどは似合わず、ミステリは彼が登場するまで軽んじられていたらしい。
3作目の本書と、次の作品で、ガラスの鍵賞を連続受賞。
次の作品ではCWA賞も受賞しています。
シリーズは世界40ヵ国で出版され、700万部を超えるヒット作に。

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