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「怪物はささやく」

パトリック・ネス ジム・ケイ シヴォ-ン・ダウド「怪物はささやく」あすなろ書房

2007年に惜しくも早世したシヴォーン・ダウドが遺したメモをもとに、パトリック・ネスが肉付けして完成させた作品。

コナー・オマリーは13歳。
母さんと二人暮らし。
ある夜、怪物がやってきました。
教会の墓地の真ん中にあるイチイの巨木が、裏庭までやってきたのです。
「コナー」と名を呼びながら。

なぜかコナーは怖いと感じませんでした。
母さんが病気になって1年。途中からコナーは毎晩、恐ろしい夢を見るようになっていたのです。
誰にもいえないその夢ほど、怖くは無かったから。

学校では母の病気が知れ渡り、かわいそうな子として遠巻きにされていました。
ただ優等生のハリーがなぜかコナーに目をつけ、子分二人といじめるようになっています。
幼馴染のリリーはコナーをかばおうとしますが、みなに事情が知れたのはリリーがしゃべってしまったのが発端なので、リリーを許せないコナー。

父は6年前に家を出て、アメリカで新しい家庭を持っています。
治療のたびに母の具合が悪くなると、祖母が世話をしに家に来るのですが、まったく気が合わないため、気が重いコナー。

たった13歳で感じやすいのに、つらすぎる状況で、心はがんじがらめ。
イチイの木の怪物は、3つの物語を話して聞かせるという。
4つ目はコナーが話すのだと。
それは‥?

イチイというのは非常に寿命が長くて、数千年もあるほど。葉や種に毒があるのが薬としても有用で、ヨーロッパでは死と再生の象徴とされているそうです。

一筋縄ではいかないイチイの怪物が話す物語に、魅了されます。
第一の物語は、この地に王国があった頃。
王には4人の息子がいたが、戦争や病気で死に、跡取りは孫だけになった。王は後妻として新しい王妃を迎える。
王がなくなったとき、孫息子が成人するまでの間、王妃が摂政として実質的に女王となった。
孫の王子には恋人がいたが、殺されてしまう。そして‥?

第二の物語は、150年前のこと。
薬草に詳しい薬剤師のアポセカリーは強欲で気難しかった。教会の司祭は進んだ思想の持ち主で、思いやりのある人柄だった。
アポセカリーがイチイの木を切らせてくれるように頼んだが、司祭は拒む。そして、アポセカリーの治療は時代遅れと村人に話したため、患者は医者にかかるようになる。
ところが、司祭の娘達が病に倒れ、司祭はアポセカリーにすがった‥

物語の意味がすぐにはわからないけれど‥
矛盾を抱えた人の心。
大事なのは、行動なのでしょう。
さまざまな苦しみを経て、コナーがたどりつくのは‥?
ハッピーエンドとまでは行きませんが。
葛藤を経て、コナーは素直な心で母のそばに‥
救いのある結末です。

大胆な筆致の黒っぽいイラストが多数挿入され、ホラーっぽいムードを盛り上げます。
中学の課題図書だったそうですね。
それにしては重いけれど、完成度は高い。考えさせる題材ですね。

パトリック・ネスは1971年アメリカ生まれ、後に渡英。オクスフォード大学で創作を教えながら、さまざまな活動をしている。
YA向け三部作の3作目でカーネギー賞を受賞している。

シヴォーン・ダウドは、1960年ロンドン生まれ。オクスフォード大学卒業後、人権擁護に携わる。2006年にデビュー。
死後に刊行された「ボグ・チャイルド」でカーネギー賞を受賞。5作目に構想していたのがこの作品。

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