フォト

おすすめ本

« 「死を哭く鳥」 | トップページ | 庭の花たち »

「ヒア・カムズ・ザ・サン」

有川浩「ヒア・カムズ・ザ・サン」新潮社

2作収録。
7行の設定から書いた小説と、同じ7行から舞台化されたものを見て書いた小説と。
登場人物は同じですが、途中からの展開が違います。

古川真也は、出版社に勤める30歳。
実は物に触ると、そこにこめられた過去の感情記憶を読み取ることができる能力があるサイコメトラー。
普段はできるだけ封印していますが、編集者としての仕事に活用できる場合もあります。

同僚の大場カオルとは、恋人同士。
カオルの父親が渡米するときに両親が離婚して、以来20年父とは会っていなかったのです。
今回帰国したHALというペンネームの映画脚本家・白石晴男を雑誌「小説ポラリス」で取り上げることになりますが、それがカオルの父なのです。
売れない脚本家だった父は、夢をあきらめられず、アメリカで再出発する決意をしたのですたが、そのとき母はついていくことを拒んだという。

アメリカではなおさら成功するわけもないという苦い現実。
一度も帰ってこない父への不満と葛藤。
20年会っていない間に何があったのか?という謎が、パラレルな二つの物語の存在を可能にしています。
面白い企画ですが~読み終わると、ちょっと混ざっちゃいますね。
帰国を待ちわびた少女の頃のカオルが、かわいそうで。
この父親、痛々しいし‥
いや、父親の実像が二つの話で違うのが~だんだん見えてくる話なんですけどね。

カオルの父親の話を親身に聞こうとする真也。
やたらと景気のいい自慢話をする父親に、そこまでのはずはないといたたまれない思いもしつつ。
時には能力を使って真実を探り、カオルのために良かれと願うのです。

なんだか恋人が父の味方になってしまったように感じるカオル。
何も悪いことをしていない自分のほうが、なぜ折れなければならない?
野暮に見える編集長が、真也の気持ちをカオルに気づかせます。
親を許せないままでいると、後悔することになるのを心配しているのだと。
いつか死なれたら、カオルが自分を責めることになる。

真也もまた、カオルがどうしたいのか聞くという基本を忘れていました。
一度でいいから謝ってほしいというカオルの思い。
このあたりはなかなか面白くて、さすが!有川さん。

結婚を控えて、真也が自分の能力を告白しなくてはと思いつめますが、この件は?
カオルは太っ腹に受け止めます。

一つ目の作品のほうが印象が強いです。
2作目はたぶん、舞台の上で俳優が演じたら、意外な展開が光ってくるのでしょうね。

« 「死を哭く鳥」 | トップページ | 庭の花たち »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/145558/57207019

この記事へのトラックバック一覧です: 「ヒア・カムズ・ザ・サン」:

« 「死を哭く鳥」 | トップページ | 庭の花たち »

2018年8月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

カテゴリー

無料ブログはココログ

最近のトラックバック