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「いつか還るときは」

シャーリン・マクラム「いつか還るときは」ミステリアス・プレス文庫

手持ちの本の再読です。
ミステリアスプレスだから絶版ですね~。図書館や古本ならあると思います。
実力派の女性作家が、真摯なタッチでぐいぐいと、土地に生きる人間たちをがっつり描き抜いた作品です。

アパラチア・シリーズの1作目。
1990年の作品で、1991年の第4回マカヴィティ賞受賞作。
(マカヴィティ賞は世界最大のミステリクラブの会員の投票によるもの。しっかり書き込まれた好感度の高い作品が多いようです)
作者が育ったアパラチア山岳地帯を舞台にした作品で、郡保安官のスペンサー・アローウッドが1作目の主人公ですが、シリーズは彼の事件簿という感じではないようです。

スペンサーは38歳。
戦没者記念日の朝、兄のキャルの墓を一人訪れます。
フットボールの花形だった兄は町でも目立つ存在で、ヴェトナム戦争で英雄となり、今も惜しまれていました。
実は、大人しい弟をいじめる気まぐれな兄だったのですが。
保安官助手のレダンはヴェトナム帰りで、どこか人と距離がある男。
通信係のマーサは、痩せていて気が強い、今は「夫と夫の間」というフリーな身の上。スペンサーとは高校の同級生で、ちょうど同期会の準備を始めていました。
同級生だったジェニーと少し前に離婚したスペンサーにとっては、苦手な話題ですが。

かってのスター歌手ペギー・マリヤンが町に越してきました。誰もが知るフォークシンガーですが、最近はぱっとしない。
差出人不明の葉書が届き、ヴェトナムで死んだはずの恋人からの脅迫としか思えない内容に、ペギーはスペンサーに助けを求めます。
美しいペギーにスペンサーは惹かれ始めますが。
折しも、女子高校生が行方不明になる事件も起き、町は不穏な空気に包まれる…

レダンは帰還兵仲間がどうしているか、様子を見に行きます。
フラッシュバックで戦闘状態と勘違いして暴れたり、ひとなかで普通に暮らせなくなっている者も多いのです。
皆、犬を飼っている…ヴェトナムでも安心して触れるぬくもりは犬だけだったから。

マーサは同期会のことで、ティンドルとサリーに会います。
クラスの花形だった二人に気後れしていましたが、ティンドルは母親の介護のために帰郷していたので面やつれし、かっての面影はほとんどありませんでした。
サリーは大学教授で若々しいが、母親の世代には認められていないと感じていました。寛恕たちの母親の世代は、ほとんど専業主婦だったんですね。
マーサは、陰のあるレダンに惹かれていましたが…

兄キャルへの複雑な気持ちを抱えたスペンサー。
歌手としてやり直そうとしているペギー。
ヴェトナム体験で破綻した人生に戸惑うレダン。
介護で疲れ果てていくティンドル。

それぞれに葛藤を抱え、人には言えない苦しみがありますが、全く違う経験に対してはほとんど無知な状態がありありと。
孤立しているようで、どこかでふと関わりが深まり、手を取り合うことも。
ヴェトナム戦争の影響が、日本とは全く違うものなのだと感じます。とはいえ、アメリカ人の間でも相当な温度差があるんですね。
今から考えると、9.11も3.11もまだなかった時代は、いくらか良い時代のように思えなくもないのですが。

保安官事務所のメンバーは数が少ないので、事件の捜査だけに集中するわけではなく、事があれば州警察に応援を仰ぎます。
地元に根を生やし、互いに理解を深めていく仲間なんですね。
結末はしみじみと感動的でした。

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