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「ミーナの行進」

小川洋子「ミーナの行進」中公文庫

少女が芦屋の従妹一家と暮らした1年間の思い出。
心温まります。

朋子は小学校を卒業するとすぐに、母の姉の嫁ぎ先に預けられます。
女手一つで育ててくれている母が、東京で専門学校に行くためでした。
1972年、開通したばかりの山陽新幹線で、岡山から新神戸へ。
駅に迎えに来てくれた伯父は、栗色の巻き毛をした紳士的な男性。
フレッシーという健胃効果のある清涼飲料水を作っている会社の社長でした。

スペイン風の豪華なお屋敷に、驚く朋子。
中も、夢のように素敵なインテリアなのです。
伯父の母はドイツ人で、おっとりしたローザおばあさん。
家事一切を取り仕切る家政婦の米田さんはローザおばあさんと仲良しで、家で一番権威があるらしい。
庭仕事をする小林さんは、カバの世話が重要な仕事という元々飼育係だった人。
広い庭には、なんと本物のカバがいるのです。
ポチ子は、コビトカバで、背は子どもの腰までぐらいですが、誰でも庭にカバがいるとなればビックリでしょう。いぜんはミニ動物園だったというほど広い庭。
その動物園の生き残りでした。

長男の龍一さんは留学中で、家にいる子どもはミーナ(美奈子)だけ。
一つ年下のミーナは美少女だけど、6年生には見えないほど小柄でぜんそく持ち。
朋子はすぐに仲良くなります。
ミーナはマッチ箱を集めていて、マッチ箱に描いてある絵にちなんだちょっとしたお話を書きためていました。
このお話が小川洋子さんらしい…

ミーナに頼まれて、代わりに図書館へ通うことになった朋子。
司書の男性にほのかな好意を抱いて、自分はろくに本を読まないのに、ミーナの受け売りで感心されます。
初恋でした。

理想的な一家に見えたのですが、少しずつ抱えている問題も見えてきます。
伯父さんは、どこかへ出かけたまま戻らない日も多い。
伯母さんは一人で部屋に隠れてお酒を飲んだり煙草を喫んだり、文章を読んでは誤植を見つけるのを趣味にしていました。
長男の龍一さんが一時帰国したときは、父親の顔をまともに見ようともしません。

ミーナは学校まで20分ほどを歩くのも難しいということで、ポチ子に乗って行くことが認められます。
特製の鞍を乗せ、小林さんが付き添って行くのですが、なんともファンタジックな光景。

ミュンヘンオリンピックまで、男子バレーボールの応援に夢中になる二人。
ドイツ生まれのローザおばあさんは、日本とドイツを両方応援していました。
選手村での思いがけないテロ事件で、ローザおばあさんの過去を知ることに。

哀しい別れもあるけれど、意外なほどハッピーエンド。
もっと複雑な陰影があるかと予想していました。
病弱なミーナも、しっかり成長していくのですよ~。

昭和の雰囲気や具体的な出来事を伝えると同時に、少女時代の普遍的なものもきらきら含んでいます。
憧れや驚き、好奇心、ときめき、小さな嘘、涙、優しさ…
多くの方に読んで貰いたい物語です。
2006年4月発行。

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コメント

新聞での連載をとても楽しみにしていました。
なんと言ってもハンサムなお父さんがステキ~
お屋敷も小道具もみんなメルヘンの世界でしたね。
没落し今はなくなってしまったものを愛おしむラストだと自分で決めていたので、予想外の明るい結末に驚きました。やっぱりメルヘンなのかな?

marieさん、
連載だったんですか~☆
へえぇ‥
モチーフが楽しいので、連載で読むのもよさそうですね。
コビトカバって、普通の生活じゃないですよね。
そうそう、何となくノスタルジックな雰囲気で、はかなげで~元気な終わり方を予想していませんでした。
いろんな要素があったし、ちゃんと成長していく話だったんですね。
それも、メルヘン?♪

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