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「萩を揺らす雨」

吉永南央「萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ」文春文庫

気丈なおばあさん・草(そう)さんの事件帖。短編連作です。

紅雲町(こううんちょう)は、丘の上の観音様が見下ろす田舎町。
和食器とコーヒー豆の店「小蔵屋」は古民家風の造り。
今は数えで76歳の杉浦草が、65歳のときに思い立って改装したものです。

もともと同じ屋号の店は祖父が始め、両親が何でもある雑貨屋を営んでいました。
29歳で離婚して実家に戻り、家業を手伝っていましたが、両親もなくなって久しく、人生の最後に好きなことをしてみようと賭に出たのです。
コーヒー一杯は無料で試飲出来るようにしたため、それ目当てのお客さんも多い。
店員の森野久美は27歳。若いときはスキーの選手だったというがっしり型で、頼りになる明るい娘です。

常連のお客さんが喋っているのを聞いて、おかしな事が起きているのではと心配した草は、マンションが建っている通りの様子を見に、何度も散歩に行くようになります。
階上の主婦が話していた~夫婦げんかが絶えない家で、大きな物音がしたという話。
女の子達が話していた~窓に張り付いた手が見えたという話。
それが同じ家だとするならば…
草は警官に不審尋問され、徘徊と誤解されたと気づいて、失礼なと大声をあげる。「そう興奮しないで」となだめられ、その時のことが評判になってしまう。
しかし…
空き巣狙いと出くわしたことからの意外な解決と、たくましい行動力、そして草の過去に秘められた悔恨…

表題作は、幼なじみの男性・大谷清治から数年ぶりの電話。
おしゃれな着物に着替えようとした草は、途中で気持ちを変えます。
清治のかっての恋人・鈴子が死んだという。
清治は両親を亡くして大谷家の養子に入り、議員となった男。
妻子ある身で初めて恋したのが、若い鈴子でした。
その話を初めて聞かされたとき、草は自分の気持ちに気づいたのですが、女として見られていないことにも気づいて、口には出せないまま。
親に結婚を猛反対されて鈴子は他の男性に嫁ぎましたが、夫の子として生み育てた清史はじつは清治の子。
出来れば引き取るか援助したいという意向を伝えますが、清史にその気はなかった…
清史が何かの事件に巻き込まれていると気づいた草は?!

人生にありそうな幾つかの難題が、現実的な重みを感じさせます。
解決出来ることも出来ないこともありつつ、何かしら手は貸せる。
過去に悲しみを背負った草が、温かい目で人々を見つめながら、ぴんしゃんと生きていく。
年月を重ねて着こなした着物のように、さらりとした感触が心地良い。
単行本は2008年発行。

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