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「ラブレス」

桜木紫乃「ラブレス」新潮社

昭和を生き抜いた姉妹と、その娘達の人生。

母親の百合江の様子を見に行って欲しいと、従姉妹で作家の理恵に頼まれた清水小夜子。
百合江は位牌を握りしめて倒れていて、すぐに入院することに。

百合江は小夜子の母・里実の姉でしたが、いつしか実の娘とも妹とも疎遠となり、生活保護を受ける身に。
里実は気丈で仕切りたがりで、小夜子とも上手くいっていませんでした。
小夜子は気楽な付き合いをしていた男との間に、45歳にして子を宿し、どうしたものか揺れています。

百合江と里実の子どもの頃からの話が長く、北海道の小さな村で、貧しい杉山一家での生い立ちが語られていきます。
昭和25年。
親戚に預けられていた里実が、家に戻ってきたのは10歳の頃。
夕張の旅館の女将に養女同然で可愛がられていたのに、実家の貧しさにショックを受け、ママちゃんのところを懐かしがる里実。
長女の百合江が薬局に奉公に出ることになり、そうなると弟たち3人の面倒を見る人間が必要だったのでした。

百合江は旅の一座の歌手・一条鶴子の歌を聴いて夢中になり、奉公先を飛び出してしまいます。
一座でテネシー・ワルツなどを歌いながら、里実とは手紙のやりとりを続けるのですが。
百合江は、一座の女形の滝本宗太郎と東京に出ることに。リクエストに応えて歌えば上手いと言われるのですが、歌手としてデビューするには、二人とも何かが足りないのでした。

里実は理容師になり、釧路の店にスカウトされます。
店長の息子の嫁にと見込まれて、結婚しますが、その先は苦難もありました。
百合江はお腹が大きくなって北海道に戻り、何かと里実の世話になりながら、裁縫で母子の暮らしを立てていきます。
やがて勧められた相手と、結婚することに。
ところが、誠実に見えた夫の高樹春一は、じつは借金まみれ。

百合江は借金を返すため、無給で温泉町の仲居として働くことに。
ここで百合江の歌が評判となり、意外に性に合った暮らしになるのでしたが。
何かと気にかけてくれる旅行社の石黒と惹かれ合いますが、微妙な関係から踏み出せません。
ところが、まだまだ波乱が起こります。

清水家の長女・小夜子は、従姉妹の理恵と一緒に双子のように育ちます。
どちらかというと、面倒を見てくれたのは、小夜子には伯母の百合江。
母の里実が、下の娘にばかり愛情を向けているからでした。
その理由を知りたげな様子の小夜子に、百合江からは何も言えません。

しっかり者の里実と、浮き草のように流れていく百合江。
里実は働く分だけ発言権も得るけれど、人に好かれるとは限らない。
悲惨ともいえる運命にも、時には意地を通すこともあり、それなりに折り合いを付けていく柔軟性があるんですね。
百合江が握りしめていた位牌の秘密とは?
弱い性格の人間が追いつめられたとき…
貧しさを背景にした重い内容ですが~数奇な運命にも、こういうこともあるんだろうなという納得感がありました。

著者は北海道釧路市生まれ。
2002年デビュー。
本書は、2012年8月発行。
これまでの作品で一番評価が高いようです。

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