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「ドラゴンがいっぱい!」

ジョー・ウォルトン「ドラゴンがいっぱい!―アゴールニン家の遺産相続奮闘記」ハヤカワ文庫FT

ドラゴンが、人間よりも北の土地で、市民生活を営んでいるという設定。
いきいきしていて、めちゃくちゃ面白いです。

一代で財を築いたアゴールニン家の当主であるドラゴンが、地下の洞窟で死を待っていました。
邸は、娘婿のデヴラク士爵が継ぐことになります。
遺言で、既に家を構えている上の子達は形見だけをとり、年下の息子エイヴァンと二人の娘セレンドラとヘイナーに財産も遺体も分けるようにと。

遺言を聞いたのは、長男のペン。
ベナンディ珀爵領で、教区牧師となっています。
妹のセレンドラを引き取って、結婚相手を見つけようということになります。
もう一人の妹ヘイナーは、デヴラク士爵のもとへ。
セレンドラとヘイナーは仲が良い姉妹で、泣く泣く生まれ育った家を離れるときに、ある約束を交わします。
他ならぬ若きシャー・ベナンディ珀爵がセレンドラに興味を示しますが、いささか身分違い。セレンドラは、珀爵には婚約者がいると思いこんだまま。

ペンの妻フェリンは堅実な賢い女性で、義妹セレンドラを注意深く見守ります。
都市計画局に勤めるエイヴァンは、書記の女性と大人な関係。
この恋の行方は?

19世紀イギリスを思わせる暮らしをしていて、途中では時々、人間のそういう話かと思ってしまうほど。
財産相続や、結婚話でのもめ事、身分違いを乗り越えられるかどうかといった問題が話題の中心。
セレンドラ姉妹の恋愛など、まるでジェイン・オースティンを読んでいるようなんですよ。

だけど、ドラゴン…ていう。
綺麗な帽子をかぶっていて、身分や立場が察せられる。その凝りようを読んでいると、そもそも服は着ていないということも忘れそう。
恋に落ちると女性のドラゴンはピンク色になりかけ、花嫁は皆ピンク。
迫られて身体が接触しただけでもピンク色になり、未婚の娘は不名誉な立場になってしまう。
出産すると赤くなり、何度も出産した女性は紫がかった濃い紅に。
出産は命がけで、慎重に間を開けなければいけない。これは19世紀だと人間でもそうだったんじゃないかな。

ところが、死んだ竜の身体はみんなで分けて食べることになっていて、その分け前を巡って争いが起きるのです。
竜の身体を食べると、ぐっと力がつき、男性の体格は巨大になるので、その後の一生に関わることだから。
これは竜のさがなので、誰も何とも思ってないらしい。
時々そういった要素が差し挟まれるのが、秀逸なブラックユーモア。財産争いや親子の葛藤などは、ある意味、命をむさぼるような面もあるので、風刺的なニュアンスもあるかと。
領主が反抗した召使いを食べてしまい、ショックを受けた娘が奴隷身分の召使いを結婚後は解放しようと考えるいきさつも。

作者はトロロップのファンで、19世紀の作家や、19世紀風の物を書く作家の作品が好きなんだそう。
夫の一言を勘違いしたことから書き上げた作品だそうです。
2004年度の世界幻想文学大賞を受賞。
後に書いた歴史改変物の「ファージング」でも有名です。

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