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「不機嫌なメアリー・ポピンズ」

新井潤美「不機嫌なメアリー・ポピンズ―イギリス小説と映画から読む「階級」」平凡社新書

イギリスがいまだに階級社会だというのは、時々聞きますよね。
確かに、王様もいれば貴族もいる。
その実態とこだわりについて、日本人が解説してくれます。
お馴染みの映画や小説がたっぷり出てきて、とても面白いですよ。
「ブリジット・ジョーンズの日記」「レベッカ」「大きな遺産」「コレクター」「ハリー・ポッター」等々。

原作のメアリー・ポピンズは、確かに不機嫌なんですよね。
先に読んでから映画を見たので、にこにこと明るいジュリー・アンドリュースには違和感がありましたっけ。
イギリスの上流社会では、子どもの世話を一般にナニーに任せるのだそうで、子ども部屋で寝起きを共にするのだそう。
…それは不機嫌にもなるかも?

いや、他人が厳しく躾けなければ、子どもは良い子に育たないという考えが根底にあるのだそうで、甘やかすことは期待されていないのです。
しかし、ナニーになる女性は自分が教育されたこともないことを子どもに教えなければならなくなる。
言うことは聞かせなければならないけれど、子ども達よりも身分が低く、それを子ども達も知っているという難しさもあるそうです。

ガヴァネス(女家庭教師)というのはまた別な存在で、召使いよりは身分が上。
これは、教えられるだけの教育を受けている出身を示しているから。
育ちの良いお嬢さんが、家が没落したために働きに出た場合も多く、淑女が面目を保てる職業はこれだけだったのだというのは、聞き覚えが。
ジェイン・エアが雇い主のロチェスターと恋に落ちるのも、実はそんなに極端な身分差ではないらしい。

上は貴族を含むアッパー・クラス、真ん中がミドル・クラス、そして下層が肉体労働者のワーキング・クラス。
それがさらに細かく分かれて、ミドル・クラスは、アッパーミドル、ミドル・ミドル、ロウアー・ミドルとなる。
これらは、イギリスで日常的に使われている分類だという。
著者は留学したときに、たまたま階層の違う学校を経験して、発音の違いに驚いたそうです。
イギリスでは育った環境で発音や言葉遣いが違うため、すぐに階層がわかるんですね。
「マイ・フェア・レディ」のように完璧に発音を変えれば、見事に上流階級になりすますことが出来るわけですが。
いまだに階級意識が強いことの証には、世論調査の結果を、男女や年齢だけでなく、階層でも分けて示すということが普通にあるとは。

同じミドル・クラスでも、アッパー・ミドルは知的な職業たとえば聖職、研究職、軍隊の士官クラス、金持ちの商人などで、それはもともとアッパークラスの長男以外の息子達が就く仕事。
アッパーとの繋がりが強い。
それに対して、ロウアー・ミドルとは、もともとはワーキング・クラスでありながら、教育などの恩恵により事務職や小規模の小売業などに就く人々。
こういったロウアー・ミドルがさらに出世して子どもに良い教育を与えて、より良い職業に就かせると、ミドル・ミドルと呼ぶようになったのだそう。

「眺めのいい部屋」についても詳しい解説があります。
あの映画は、日本人にも階級の微妙な差がわかりやすかったと思う。
ただ原作の方が、階層の違いは強調されていたらしい。
所々で、原作と映画の違い、俳優の魅力についての言及があるのも面白い。

確かに…日本では階級というのはあまり意識されませんね。
一億総中流という言葉があったように。
階層がいくつもキッパリと段になって分かれているのではなくて…
よほど極端な場合でなければ、流動的なものだと思われている感じ。
でも玉の輿という言葉があるように、釣り合わない結婚みたいな感覚はけっこうあると思うけどね。

著者は1961年生まれ。
香港、日本、オランダ、イギリスで教育を受ける。イギリスでは三つの学校に通った。中央大学法学部教授。翻訳家でもあります。

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