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「春から夏、やがて冬」

歌野晶午「春から夏、やがて冬」文藝春秋

地味に暮らす一見平凡な男に、何が起こったか。
誰に起きても不思議はないかも知れない~事件を描きます。

大手スーパーで警備員を勤める男・平田誠。
今日も万引きした女性をつかまえ、「これは犯罪だ、あなたは泥棒なんだよ」と諭します。
万引きの被害は、ベンキョードー吉浦上町店だけで年間、一千万円にもなるのです。
だが身分証明書を見て、予想以上に彼女・末長ますみが若かったのに驚き、すぐ解放することにしました。
顔色が悪くてやつれていたため、老けて見えたのです。
昭和60年生まれの20歳というその年齢は…娘の春夏と同じ。
ますみとの曖昧な関係がちらほらと続くうちに、しだいに平田の過去が明らかに。

17歳の時に自転車に乗っていて、ひき逃げされ、帰らぬ人となった春夏。
妻の英理子は茫然自失、やがて事故の目撃者を求めて、熱心にチラシを配り始めます。
何もわからないまま1年が過ぎ、英理子は娘が側にいるかのように話しかけるようになりました。
平田は、事故が起きるのを止められなかった後悔にさいなまれます。
2002年当時は、自転車走行中に携帯電話を掛けることは、まだ禁止はされていませんでした。
だが、注意義務を怠った非は、被害者にもあるとみなされたのです。
生意気盛りで父親をちょっとばかにしていた娘に、押され気味だった平田。携帯を使うのは危ないと、もっとキッチリ言えば良かったと。

娘も妻も失い、仕事に身が入らなくなって、自ら退職しようとしたが慰留され、環境を変えたらと違う土地での勤務になりました。
左遷されたと思われていて、誰とも付き合わない平田はしだいに妙な目で見られるようになります。
万引きをした娘と一緒にいる所を見られて、何かあるのではと疑われてしまうのでした。

ますみに何度も待ち伏せのように話しかけられ、当惑しながらも、春夏と同じ年齢で、苦労している様子のますみを突き放すことが出来ない。
何か出来るのなら、助けてやりたいとさえ思うのです。
ますみという女性も弱々しく危なっかしいが、ただお金を貰うわけにはいかないと遠慮したり、それなりの考えもあるのでした。
ところが、同居している男リョウはたちが悪く、平田に強請を仕掛けてきます。
ある日、事件が。
平田の主治医は思わぬ事を知り、驚きますが…?!

突然、一人娘を失い、やりきれない思いに苦しむ夫婦。
交通事故は残酷ですね…
その後の思いがけない成り行きで読ませます。
人を思いやる心が一筋の光にはなっているけれど、救いというよりも、悲痛さがきわまります。
2011年10月発行。

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