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「千年の愉楽」

中上健次「千年の愉楽」河出文庫

薄い文庫ですが、中身は濃厚で、土俗的な雰囲気。
改行も少なく、ぎっつり畳みかけるように。

熊野の地で、「路地」の若い者のすべてを取り上げた産婆オリュウノオバが見守っていきます。
中本の一統という血をひく様子が、色々な子に現れるのです。
蔑まれる貧しい暮らしでも、なぜか生まれつき見た目は良く、色白で顔立ちが整っていて人を惹きつける。
先祖に貴族でもいたのか、それも放蕩を尽くした千年前の平家の家系でもあったのでは、と思わせるほど。

しかし、男達はどこか危なげな性格で、澱んだ血が内側から滅ぼしていくかのように早死にしてしまう…
主人公は一話ごとに変わっていきます。
男ぶりが際だっていた半蔵は、女の方から次々にやってくるのだが、ついには…
盗みや博奕に入れあげ、ヒロポンのせいか目を病んだ三好。
オリエントの康という異名のある男。
集団で南米の新天地に移住しようと企画するが…

男女の仲も、本能のままに、肉弾相打つといった露骨さ。
戦争中、戦後まもなく、などという時代設定も、危ういものをはらんだ空気にフィット。
夫が僧となり、オリュウノオバは子供らを取り上げるという生死に関わる暮らしをしていた夫婦でした。
しだいに百年も千年も路地を見守ってきたような感覚になっていくオリュウノオバ。
命が立ち上る原初の時代のようで、圧倒される熱気ですが、読んでいて妙に醒めてくることも。
諦観や毒気も混じっているせいなのか…?

オリュウノオバと呼ばれた女性は実在し、晩年に作家が何度か取材して聞き書きしたことをもとに書いた小説。
ただし、産婆ではないそう。
オリュウノオバの夫で寺を持たない僧侶となった礼如のモデルは、法名を礼静といって、かなり実像に近いという。

著者は1946年、和歌山県生まれ。
76年、「岬」で芥川賞受賞。
この作品は1980年から連載開始、82年単行本化。
92年、急逝。

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