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「尼僧とキューピッドの弓」

多和田葉子「尼僧とキューピッドの弓」講談社

初・多和田葉子。
一番とっつきやすそうな物を選びました。ほかのを読んでいくと、どうなのかわからないけど…?

前半は、エッセイ風。
ドイツのハンブルグにある、開かれた修道院に滞在して、取材する女性の視点から~。
歴史ある建物を保存するのには、人が住むのが一番という理由から、尼僧院となっていました。
教会の隣にあり、千年前にはカトリックの修道院だったのです。後にプロテスタントになり、今はさらに自由な雰囲気に。
信仰に関してはそれほど厳重ではなく、昔ながらのしきたりで修行しているわけではありません。
ただ、修道院に入るには、独身が条件。
たいていは夫を亡くしたか離婚したかした中年以上の女性が、集団で安全に静かに暮らし、講演を企画したり、幼稚園の手伝いをしたり。
個室で自炊したり、庭作りを楽しんだり。
週に1度の日曜日には礼拝、もう一度水曜日に集会があります。
出て行くのも自由。
尼僧院長は、一戸建ての家に住めるようになっています。

このとき、手紙で連絡を取った尼僧院長は急に出て行った後でした。
禅と弓道に興味があるといっていたのですが…
尼僧院長代理はしっかりした人のようですが、尼僧院長は別に募集して選ぼうとしています。
院長の仕事は経営者と同じなので忙しく、自分の研究をする時間が取れないからだそう。尼僧院に入ってから大学に通い、修士までとった人なのです。

尼僧院の体制が面白くて、取材そのままのように読めますね。
個性的な人物が揃っているし。
漢字であだ名を付けていくのは、ちょっとユーモラス。「私」には親しみだけでなく~距離感もあるのでしょうか。
女性同士の微妙なせめぎあい、あるでしょうねえ。
作者は、実際に一ヶ月滞在したそうです。
ただ、ひょっとしたら、実際より面白くしたのかなあ…と後で考え込んだけど。

第二部は、別な「私」の視点から。
最初は同じ人かと思ってしまうが、全く違う人生。
でも裏表のようなものなのかも?

若い頃から描かれているので、謎はほとんど無くなります。(とはいえ、創作なんだけど)
夫との間に距離が出来て、他に女が出来た夫と別れて、尼僧院長に一度はなった女性が、夫が追いかけてきたために…
ドイツ人だが、弓道の師範という夫。
キューピッドと弓道は、ちょっとイメージが違うんだけれど。
その辺についても、言及と考察があります。
何かのご縁のような、でもある。

前半の~男性がいなくてさばさば!という状態から、どろどろ~のケースへ戻るのが何というか。
熱っぽさ、もどかしさ、愚かさも生きている証?

多和田葉子は1960年、東京生まれ。1982年よりドイツ在住。
ドイツ語と日本語で小説を書いている。
1991年、群像文学新人賞。
1993年、「犬婿入り」で芥川賞。
発表するたびに何かの賞を受賞している才能溢れる作家です。
2010年の作品。

読んだ本がだいぶ溜まってきたので、この月末は紹介を増やし、写真の記事がある日にも~本の記事をアップしました。

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