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「丘をさまよう女」

シャーリン・マクラム「丘をさまよう女」ミステリアス・プレス文庫

アメリカならではのミステリです。
1995年、アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞をトリプル受賞した作品。つまり~批評家にもコージーファンにも一般のミステリ好きにも、評価されたということですね。

山間の村で、起こる事件。
終身刑で服役していた男ハーム・ソーリィが、63歳で脱走したのです。
本人はコルサコフ症候群で最近の記憶はすぐ消え、何で服役したのかも忘れている状態でした。
時折若い頃の自分に戻った感覚になり、どうやらその状態で脱獄を実行したのですが…
生まれ育った土地に向かったかも知れないと、捜査が始まります。

今も広大な原生林を含むアパラチア山脈。
アメリカ独立いぜんは、イギリスとの契約で、先住民(当時はインディアン)の土地として守られていました。
クーガの姿は滅多に見られないが、今も住んでいるという<豹の谷間>を意味する土地。
自然溢れる情景の描写が素敵です。

山の中に住む老女ノラは、子供の頃から、山を走って逃げる女の幻を見ていました。
その女ケイティが18世紀に誘拐された当時の歴史を研究している学者ジェレミーは、女性一人が驚異的な逃避行を成し遂げた山を自分で歩いてみようと試みます。
ハイキングの経験もないので、無謀な試みでしたが‥

警察の無線担当だったマーサは、保安官助手に昇格することを希望し、見習いとして捜査に同行するようになります。
保安官は、穏やかな性格のスペンサー。
保安官助手のレダンとマーサは付き合っていましたが、仲がぎくしゃくし始めます。
マーサは、これまで知らなかった怒りや恐怖に直面することに。

ラジオ番組で<北部出のハンク>で通っているディスクジョッキーのヘンリーは、脱走したのがどういう人物なのか調べ始め、情報提供を募集します。
ハームは血気盛んな一家育ちでしたが、裁判は不当と言えるほどいい加減な物だったようで、殺された隣人の方にも原因があったらしいとわかってきます。

ハームの元妻リタは、終身刑が決まった後に離婚手続きを取り、再婚して25年にもなる。
今は街中のりっぱな家に住んで、庭の手入れに余念がない暮らしをしていました。
娘シャラーティは大学で地質の研究をしているが、ラジオで母の名前を聞いて、駆けつけます。
しかし、リタは行方不明になってしまい‥?

それぞれの事情や願いを抱えた登場人物の行動が、交錯していく様子が面白い。
読み応えがありますよ。
翻訳が浅羽莢子さんだし。
ミステリアス・プレスだと、絶版かなあ…
発行当時に読んだけど、具体的な内容を忘れたので、再読。
スペンサー保安官が出てくる3冊目だそうで、ということはマーサの成長を描いた集大成になっているのかも知れませんね。

著者はアパラチアで育ち、現在も近くに住む。
作品には三つの系統があり、「暗黒太陽の浮気娘」というSF大会を描いたコメディタッチの異色作の作者でもあります。

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