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「冬姫」

葉室麟「冬姫」集英社

直木賞候補に何度か挙がり、先頃受賞もした葉室さん。
こちらは、織田信長の娘の冬姫を描いた作品です。

冬姫は1557年頃の生まれ。
信長の大勢いる子供の一人で、母を早く亡くしたため後ろ盾もなく、あまり有名ではありませんが。
信長に似た気性で、夫・蒲生忠三郎(のちの氏郷)も見所があると信長に見込まれていた?という想定。
章ごとに作者が物語を発想した理由もわかるような書き方で、資料や後の出来事に触れ、歴史好きの心をそそります。

しかし信長のネーミングセンスって。
長男に奇妙丸、側室に鍋の方、娘に五徳…
冬姫は良い方ですね。
正妻の帰蝶は子供もなく、美濃を滅ぼされてから信長との間が冷えている様子でした。
鍋の方は側室ですが、信長が最も愛した亡き吉乃に似た美貌で、勢力がありました。
先夫を亡くして子供を取り返すために信長を頼ってきたのですが、のちに冬姫の夫となった相手は、先夫の仇の孫。
蒲生家に怨みがあるため、冬姫のことも快く思いません。
そして、冬姫の身に起こる怪しい出来事は…?

家康の長男・信康に嫁いだのが、五徳。
信長が最も愛した吉乃の娘で、冬姫から見れば別格な扱いを受けていました。
元亀3年、五徳が三月も寝込んだというので毒でも盛られているのではと疑った信長が、15歳になった冬姫を見舞いに差し向けます。
護衛代わりに、相撲取りをつけて。
築山殿が姑で、蜘蛛合戦を強いるという~五徳が受けていた妙な意地悪が冬姫にも回ってきます。
築山殿の心中も、案外寂しいものだった様子が描かれます。
この7年後に起きた築山殿の事件も、この頃のことが遠因では、と。

信長の正妻・帰蝶も意外な存在感。
冬姫には、出生の秘密が…?

天正十年(1582年)六月、安土城そっくりの細工物が届けられます。
安土城を設計した者の弟子が作った物で、城の正確な構造は軍事機密になるため、うかつな所には置けないと冬姫のもとに来たのです。
安土城にいるかのような幻覚を見て、父・信長の声を聞く冬姫に、異変の知らせが。
秀吉は、悪い秀吉と良い秀吉の二人いるかのような二面性があると感じていた冬姫ですが、秀吉の側につくと宣言します。

北庄の落城の際には、三姉妹を城から連れ出す役割を担う冬姫。
淀君のライバル意識というのも~わかるような不思議なような。
信長の姪であることが誇りなら、信長の娘がいては目障り…?

冬姫の夫は見た目も良く、利休の高弟の一人でもあり、キリシタンになったという。
冬姫は戦国時代には珍しく幸せな妻だったみたいな…だからこれまであまり描かれていなかった?!
秀吉は高山右近を追放したのちに後悔したのか、他のキリシタン大名については厳密な棄教を強いなかったので、助かったとか。
キリシタン故に、細川ガラシャとも関わりが出来ていきます。

忍びでもある侍女のもずと、護衛の大男・又蔵を従えて、危機をかいくぐりながら生きのびていく冬姫。
朝鮮出兵する秀吉に諌言しようとした氏郷は、毒を盛られたらしく病に倒れます。
醍醐の花見が、ラストの盛り上がり。

蒲生家は息子が跡を継ぎ、冬姫は長生きしますが、蒲生家はどうも早死にの家系で、冬姫が生きているうちに1634年大名家としては絶えてしまうのですが。
そうだったのか…
会津の親戚が住む土地に蒲生っていう所があったわ、そういえば。

きつい女性が多い印象だけど、戦国時代ならやむを得ないかも。
姫君それぞれの鮮烈な印象が残りました。

著者は、1951年北九州小倉市生まれ。
地方紙記者などを経て、2005年作家デビュー。
この作品は、2010年から連載、2011年12月単行本発行。
これまでとは少し違った印象で、新境地だったのでしょう。

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